無印最終回です!
この後は短編的な話をやるつもりだったり、
ギャグやらちょっと脇道にそれそうな話だったので出すのを断念した話を書きます。
ユーノが右に立ち、アクアが左に立つ。
願いは一つ。
シリアル13に届けられた思いはいま、形となった。
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
「なんだ!? この光は!?」
青く輝く宝石はその光を増し、オーガという闇を飲み込もうとしている。
それだけでは足りない。だが、オーガの心に不安が溢れる。
今誕生しようとしているものが怖いのだ。
今、この場に現れるものが怖いのだ。
「ヤメロ、その光を消せェェ!!」
だが、祈りは届けられた。オーガ一人ではその祈りを止めることなどできない。
ジュエルシードを中心に、二人の姿が一つに重なる。
辺りを照らすその輝きは、朝日のようであった。
◇◇◇
「これは、一体……」
「どうやらジュエルシードの力によるものと思われます」
アースラでもこの現象を捉えていた。
ジュエルシードの力が高まったと思ったら、二人が融合を始めた。
それだけは分かったが、まるで暴走していないのだ。
「たぶん、正しくジュエルシードの力を使ったのだと……」
「ありえない、そんなことが」
リンディ達はありえないとも思ったが、それに異を唱える少女が二人。
「ううん、私達が信じていたから、だから奇跡は起きたんだよ」
「信じているから、絶対に負けたりしないって」
画面の向こうでは融合が完了し、一人の少年が立っていた。
髪の色は金色がベースだが、前髪の部分が一部だけ銀色。
服装は白いコートを基本とし、両腕を組んで仁王立ちしていた。
雰囲気はもとが二人の少年とは思わせないほど、威風堂々。
そして、少年は跳んだ。
◇◇◇
わけが分からない。それがオーガの心だった。
二人が融合し、まるで別人のような風格をもった少年が自分を蹴り飛ばし、そのまま着地した。
いや、何故蹴り飛ばせているのだ。完全雷化を身に着けたのに、何故?
「何故だぁぁぁぁ!?」
「……うるさいぞ小悪党」
「何!?」
「だまれ小悪党。天が呼ぶ地が呼ぶ、悪を滅せよと自分を呼ぶ声が聞こえる。ならば答えよう! 名は融合者ユスアート! お前を倒すものだ!!」
「カッコつけやがって……黙りやがれェェ!!」
「ふむ、こういう時はこのセリフが似合うな……さあ、お前の罪を数えろ!」
アクアとユーノが元であるとは思えないような性格。右手にはユーノの魔力光である翠、左手にはアクアの魔力光である紫の光をともし、拳を構えるユスアート。
「シネェェ!!!」
オーガは瞬間的に最大出力を放つ。その威力は管理局に存在するどの記録をも上回っただろう。だが、それをユスアートは右手で止めた。
いや、それでは語弊がある。右手の人差し指で止めたのだ。
「なん、だと?」
「あくびが出るな。まったく、攻撃とはこうやるものだ!!」
左手に溜めた魔力、魔力で強化した拳、それだけをオーガにぶつける。
先ほどまでなら意味は無かっただろう。
だが、その拳はあろうことかオーガの骨を粉砕した。
「ガあぁアアアアあぁぁぁああ!?」
「何をわめいている……お前が殺した人たちはもっと痛かったんだぞ。お前が傷つけた人たちはもっと苦しんだんだぞ、それを分からないとは言わせないぞ」
「チクショウ、チクショウ、あり得ない、あってはいけない! 俺は生き残ったんだ! だからこの力を手に入れた。なのにこんな、こんなことはあってはいけないんだ!! お前らこそ人の命を奪う覚悟が無いのに戦いやがって、ふざけている!!」
「なにを言っているのか分からないが……人を殺した時点で、自分の最後が惨めなものであると、不殺(ころさず)の戦いがどれほどきびしく、尊いものか考えられぬのか……それにお前の言うそれは覚悟ではなく、現実を見ていないというのだ。殺す覚悟とはすなわち罪を背負っていく覚悟であり、自分の最後は惨めなものであるということを分かれということだ。最初から間違えているお前では、勝つことなど不可能!」
「ウルせェェェ!!!」
オーガは最早言葉を出さない。ただ、叫び、単調な攻撃を繰り返す。
いや、ただ速いだけで攻撃は最初から単調単純、まるで素人の動き。
「……お前に殺された人たち、その痛みを知れ! クラウ・ソラス!!」
ユスアートの右手に、輝く光で作られた剣が現れた。そして、その切っ先をオーガの肩へと突き刺す。
溢れる血液、オーガは右肩を押さえて絶叫する。
「がああぁあぁあぁあ!?」
「安心しろ、回復術式も同時に送り込んだ……痛みはあるが、ダメージは無い」
その言葉通り、痛いが腕は動く。むしろ先ほどより調子がいいくらいだ。
だが、思い通りに動かない。怖い、この子供が怖いのだ。
「さてと、来いティルヴィング」
今度は左手に紫の光剣を出す。
その輝きは禍々しさを感じさせ、オーガの足をすくませる。
「……では、始めよう。どうした? かかってこないのか?」
「チクショウ、チクショウ……ふざけるなぁぁああああああああああ!!」
激昂。いや、逆恨みや逆ギレと言ったほうが正しい。魔力自体は無尽蔵だし、回復能力も高い。だけども時間が進むほど、ユスアートはそれを上回る。
まるで、融合した二人がお互いを高めていくようだ。
描くのは螺旋。時が進むほど渦は重なり、強くなっている。
「剣舞、開始!!」
鬼の懐に飛び込んだ勇者は、両手の剣で鬼の四肢を何度も切りつける。回復と殺傷、その力が同時に叩き込まれることでオーガの体は先ほどよりも回復する。
だが、その心は切り刻まれる。右のクラウ・ソラスで切られれば、自分を育ててくれた親の顔や、友人、温かかった思い出が頭の中に浮かび、
左のティルヴィングで切られれば、自分が命を奪った人々の顔、その最後の表情。傷つけた人たち、遺族、今までの暗い過去が呼び起こされる。
「やめろ、やめろぉぉお!」
それでも、オーガは止まれない。止まることが出来ない。
最早その身は狂気に堕ちた。人の心は戻ることは無い。
過ぎた力は、方向性を間違えたとき止まれなくなる。
「アアアアアアアアアアアアアア!!」
その身で体現した力は自然災害。雷そのもの。
故にオーガはただの雷として、目の前のユスアートを殺すことしか考えられなくなった。
「罪悪感は感じても、いや感じることも出来なくなっていた。既に人ではなく、ケダモノに成り果てたからこそそれだけの数のジュエルシードを取り込めたわけか」
もう、オーガという人間ではなく現象そのものだった。
今までの意識は、粘着質な思念が現象に取り付いていただけ。
ならば、その現象を止めればいい。
「まずは、その動きをとめる!」
左手のティルヴィングが変形し、ブーメランのような形状になる。
そのまま投げ飛ばし、複数に分裂した後、バインドのように空中へオーガを縫い付ける。
「いくぞ! 必殺!!」
クラウ・ソラスを掲げる。いや、すでに形は変わっていた。螺旋を描く巨大な三角錐。そう、それは……ドリル。
「ギガドリルブレイク!!」
オーガに突撃し、その身体を貫こうとする。
膨大な魔力同士がぶつかり合うが、結果は目に見えていた。
爆発が起こり、鬼は地面にひれ伏し、勇者は立っていた。
ただ、それだけのことであった。
◇◇◇
「終わった、彼らの勝利です!!」
アースラは歓声に包まれていた。
次元震がおさまり次第救助できるように、包帯などの準備を始める。
なのはは一息つき、フェイトは緊張の糸が切れたのかその場に倒れてしまう。
「さて、迎えにいきましょう」
画面の向こうでは、融合が解けて二人の少年が魔力切れで倒れるところだった。
早く行かないと、二人の少女が泣き出す。もっとも、脅威は去った。
こうして、ジュエルシードを巡る戦いはひとまずの幕を下ろしたのだった。
◇◇◇
一週間後、アースラ内の病室。
次元震の影響でしばらくは動けないアースラは不可視状態で地球の近くにいた。
「母さん、いやだよ、母さん!!」
いま、この場では一つの命が消えようとしていた。
そう……プレシア・テスタロッサである。
結局のところ、オーガという次元犯罪者も絡んだりしたために事件はどういう形で終息をつければいいか混乱していたが、フェイトの分の罪はプレシアが負うことになった。
最後の、母としてできることとして。
病気の身体にもかかわらず、プレシアは奇跡的にまだ息をしていた。だが、それももう続かない。
「フェイト、あなたは、泣き、虫ね……それじゃあ、心配、」
「もういいよ、もう喋らなくても……」
「……アクア、だったかしらね」
そこでアクアの名前を呼び、アクアは近くに行く。
「…………フェイトをよろしく、お願い、しま、す――」
そして、プレシア・テスタロッサは此の世から去った。
アリシアの遺体とともにプレシアの身体は埋葬された。あの世では、せめて仲良く暮らせるように……
◇◇◇
その後の話をしよう。
オーガ・デルグランは殺人やロストロギアの強奪など、様々な罪により逮捕。最後に喰らった攻撃は、どうやら対ミッシングリンクの最終プログラムだったらしく、オーガのリンカーコアを永久封印しただけだったのだ。爆発は、そのときにオーガの身体から出た魔力。
リンカーコアの魔力を空にしたうえで、完全封印されたオーガは二度と魔法を使うことは出来ない。
プレシア・テスタロッサには罪が残されたが、過去にアリシアが死んだ事件を洗いなおした結果、彼女に様々な罪を擦り付けられていることが分かり、帳消しのようなものになった。プレシア自身はジュエルシードの強奪のみで、それもユーノが彼女ではなく、別のテロリストに襲われたと証言したことでフェイトへの追及も無かった。
フェイトはしばらくの間アースラに引きとられる形となる。身よりも無くなり、今後どうするかはじっくりと考えることになった。
使い魔のアルフとともに、少しづつだが生きる気力を取り戻している。
高町なのはは一旦家に帰るも、無断で家から飛び出していたからか、初めての家族喧嘩をする。だけども、本音で語り合えたことで、今まで以上に仲がよくなったそうだ。
魔法に関しては、まだ話さないでもう少し時間を置いてからにするつもりと述べている。
アースラのクルーは5月末まで動けそうに無いので、点検作業や事後処理に終われるも、時折地球に下りて観光しているようだ。
なお、リンディ艦長は翠屋のケーキを食べた際、本気で地球に移住できないか考えていたらしい。
ユーノはアースラと共に一旦スクライアへ帰る予定だが、その間に約束の翠屋で一緒にケーキを食べるなどがあったが、色々と大変だったらしい。おもに、なのはの父や友人の関係で。
決着をつけることは出来たが、残った謎、自分とアルハザードの関係について調べるつもりだ。
アクアは管理局の人たちと共に再度、自分の生まれた研究所を調べた。
やはりここを襲撃したのは管理局ではなかったらしい。
謎もかなり残っているが、彼は今後次元世界へ渡るつもりだ。
この戦いで自分にはまだ戦う力が全然無いことを思い知った。
だけども、諦めることはない。
こうして、1ヶ月に及ぶ戦いは幕を閉じる。
ジュエルシード、完全回収。
だけども彼らはこの戦いで生まれた小さな火種を忘れていた。
少女の暴走はゴールデンウィーク、なのは達が休日なこともあり、魔法関係は伏せたままだが、新たな友人として紹介されるところから始まる。
まさか、こんな火種があったとは、誰も思っていなかったが。
今回の用語
『ユスアート』
アクア・プロトとユーノ・スクライアが融合した姿。
性格が元々とは随分と違う。
技名などはアクアの心の奥底にある部分から引き出されたりする。
また、ユーノの知識に影響されているから神話ネタも多い。
右手に翠、左手に紫の魔力を宿して戦うのが基本スタイル。
お互いの能力が融合しただけでなく、足りない部分を補い合うどころか強化している。
魂とも言うべきものが螺旋状に融合していて、螺旋が増えていくほど強くなる。
「ギガドリルブレイク」は言わずと知れた天元突破のアレの必殺技だが、べつにもとの作品を覚えているわけではなく、本能的に再現しただけ。
ちなみに、ユーノの魔力制御、演算能力やバインド。
アクアの瞬間的な魔力放出量、破壊力、などなど、お互いの力が融合しているからこそ撃てた。
実は魔法で再現した場合、かなり高度な技だった。