サブタイトルが雰囲気変わりましたが、心機一転新章突入ということで。
ちなみに、ガオガイガーネタはちゃんとやりますよ。
新たなる火種
あの戦いから決着もつき、小さいものだがプレシアとアリシアの葬儀が終わってから数日がたった。現在フェイトはアースラ内にて暮らしているのだが、プレシアを失ったことにより不安定だった。
だが、今現在落ち着いてきたため、アースラのクルーたちとも会話ができるようになっていた。
……しかし、彼女が周りを見る余裕が出来たということは、とある火種を意識してしまうということなのである。
これから始まるのは、乙女の戦いの記録。
◇◇◇
「うわぁぁああああああああああああああああ!?」
フェイトは自室にて叫んでいた。完全防音でなければ壁ドンされていたであろう絶叫っぷりで、現に隣で寝ていたアルフはその声量に気絶してしまっている。
床を転げ周り、頭をかかえ、顔は真っ赤に染まっているフェイト。
「なんで思い出すのぉ!?」
思い出すのは彼――アクア・プロト・ベターマン(管理局で名前を記録する際に追加した)のことだ。
最初は怖いと思った。だけども……次々と思い出すのは彼が助けに来てから自分にかけてくれた言葉の数々。
『んー泣いている女の子を助けるのに理由は要らないんじゃないかな』
『笑ってありがとうって言えばいいんだよ』
『折角可愛いのに勿体無い』
色々と恥ずかしいことを沢山言われた。
っていうか、可愛いって!?
フェイトは今まで男性というものに出会ったことが殆ど無い。というかアクアが初めてまともに会話した男性だった。
あとはユーノやクロノ達アースラのクルー、あとは母の敵の憎きあの男ぐらいだ。
そのため絶望的に男性への耐性が無かった。
「ああああああ忘れてた!?」
色々なセリフが頭をよぎっていく中で、思い出したのは彼にありがとうって言うこと。
じつはまだちゃんと言っていない。
言うって決めていたのにとんだ失敗だ。嫌われたらどうしよう。そんな言葉が頭を駆け巡る。
「どうしよう、どうしよう……ねぇねぇアルフ、なんかいいアイデア出してよぉ!」
「――ビーフジャーキーで手を打つよ」
「寝てて」
とりあえずこの食欲のカタマリの相棒は優しく寝かせてあげよう。寝言は寝て言うものだ。この話題で食欲をだされるのは何故か嫌だった。
「ったく、あ、アクアと昼一緒に食べる約束していたからアタシさきに食堂に――」
「ねえ、私はご主人様だよね、アルフ?」
「ハイ。ゴシュジンサマ」
そのときのことアルフは後に某チビ狸にこう語っている。「あの目は本気だったね。あの時ほどフェイトにプレシアの血が流れていることを感じさせることは無かったよ。いや、アレが最初だったからこそだね」だ、そうだ。
「じゃあ、一緒にいこ♪」
アルフは無言で頷くことしか出来なかった。
逆らってはいけない。自分はただ頷くだけの使い魔だ。そんな暗示を自分にかけるほどである。
◇◇◇
「うぅ……この毎日のために今まで生きていたんだね」
「泣くほどかな……」
「アホか、今まで俺がどんな、どんな食生活だったか!」
「あー生まれてからずっとサバイバル生活だったっけ、そういえば」
「アクアだったか、なかなかにハードな生活だったようだな」
現在、アースラの食堂ではアクアとユーノとクロノが昼を食べている。ちなみに、本当ならエイミィもいるはずだったのだが、書類編集作業に駆り出されている。
クロノは今までオーガの尋問をしていたためしばらくは休みである。真面目な彼は、今まで動機とか色々聞きだすのに徹夜続きだった。
「あーでも砂漠地帯で長期発掘とかも結構きついよ。サソリが重要なタンパク源でね」
「焼くとそれなりにイケルけど、毒とか処理がね。俺は変身のための材料に使うから取りに行くこともあるけど」
「君ら、頼むから食欲がなくなるようなことを……というか、そんな会話しながらよく食べれるな」
「食べれる時には食べた方がいいよ。食べる?」
「そうだぞ、クロノ」
「いやいい……というか、何だそれは?」
アクアとユーノが食べているのは……一言では言いにくいが、丸い生地に色々な具材をのせて、紅いソースや黄色い溶けた物質をかけた上で焼かれる食べ物だ。
まあ、いわゆるピッツァである。
ただ……
「なんで、赤い仮面にマントの男の絵柄に具材がのせてあるんだ!?」
具材で表現された謎の男。クロノは頭をかかえてしまう。
「コックの趣味じゃね?」
「小さいこと気にしていたら大きくなれないよクロノ」
「余計なお世話だ!! あと僕は14歳だぞ! 年上にタメ口か!?」
「「……え、てっきり同じくらいか年下だと」」
「君たちなぁ!? 執務官が君たちよりも年下なわけがあるかぁぁぁぁ!!」
クロノ・ハラオウン、真面目な性格がゆえに、力を抜いた生活ができない堅物な14歳であった。もっとも、師匠達や母親、エイミィのせいでツッコミ気質だが。
「まったく……ん、もう部屋をでても大丈夫なのか?」
「は、はい。ご心配をおかけしました」
と、そのあたりでクロノはコチラに近づいていたフェイトに気がついた。隣にはアルフがいるが、顔が青くなっているのを見て風邪でも引いたのか? と、その程度に考えてしまう。
もうすこし考えていればこの後の悲劇に巻き込まれないですんだものを。
「えっと、あの……」
「どうかしたのか?」
フェイトはアクアに近づき、指先をもじもじし始める。その様子からユーノは漠然ながらも何かに気がつき、皿を片付けるという名目で席を立つ。
アルフもそれに乗って一緒に離れる。
残されたのはアクアにフェイト、そして真面目がゆえに、重要参考人であり、今回の事件の中心にいた二人を見ていたほうがいいなと考えてしまったクロノが残った。残ってしまった。
「ええと、ええと……あ、あり、あり」
「あり?」
「アリシア姉さんって料理上手だったのかなぁ! って……その、ハイ」
「享年5歳だし料理は出来ないだろ」
「そ、そうですよ、ね……はは」
「えっと、大丈夫かフェイト?」
「う、うん! もう全然ヘッチャラ!!フェイトちゃん元気いっぱい!!」
「ちょ、なんか本当に大丈夫か!? キャラがおかしいし、お前そんなテンション出すようなやつか!? それこそアリシアさんの領分……プレシアにお前のこと頼まれているし、なんか悩みがあるなら相談に乗るけど?」
「ふぇ?」
そこで、フェイトは思い出す。母が、最後にアクアに言っていた言葉を。
自分を頼むと、よろしくお願いしますと……つまり、これは、いわゆる一つの――
(親・公・認!!)
違います
プレシアはそういう意味で言ったわけではない。
だが、フェイトの頭の中は今現在お花畑だった。
「ううん! な、悩みなんて無いよもうハートフルだよ!」
「いやホントか!?」
アクアはフェイトが明後日の方向へ暴走していることは分かったが、原因までは分かっていない。いや、アクアだけでなくクロノも分かっていないようで、頭の上にハテナを浮かべている。
――クロノはここで帰った方が身のためだっただろうに。
「えっと、ありありありが、その……ご、ご飯貰ってくるね!」
「あ、うんいってらっさい」
思わず変な口調になるアクア。クロノも何が起こっているのか理解していない。だが、そろそろ退席したほうが良さそうだということに気がついた。
だけども、彼は遅かった。遅かったのである。
「さて、僕もそろそろいくか」
「あ、お疲れ」
「ああ……さて、ん…………あーフェイト・テスタロッサ?」
「どうかしたんですか、クロノさん?」
「その手に持っているのはなんだ?」
「えっと、リンディさん監修のお茶だって」
「そ、そうか……じゃあ僕は――」
「ああ、それハラオウン家秘伝らしいからクロノに渡しとけ。クロノ何も食べていないからそれぐらい飲んどいた方がいいだろ」
「――なぬ!?」
リンディ茶。日本茶に大量の砂糖を打ち込んだ代物である。
飲める人はただ一人。その甘さに幾人もの豪傑が沈んだ一品。
アクアはプレシアの遺言を守るためフェイトがそれを飲まないようにしたのだ。クロノの尊い犠牲によって。
「ちょ、そ、それ」
「そうなんだ……じゃあハイ。クロノにあげるね」
フェイト、いまだに社会というものに慣れていない彼女はものすごく天然だった。いや、むしろ天然な性格は地である。
「ほら、はやく飲めよー」
「き、君が飲んでみるか?」
「ああ、腹いっぱいだからいい。それにしばらくはプレトと栄養のやりとりするから食糧は摂取しない」
「……ぐ、タイミングの悪い」
結局、少女の純粋なまなざしに勝てずに、医務室に送り込まれた執務官がいたという。だが、それは別の話で、語る機会は一生無い。
◇◇◇
「クロノさん、あんなにダッシュして……そんなに美味しかったのかな」
「ハラオウンの血筋の者以外があの茶を口にしてはいけない。それだけは覚えておいてくれ」
「う、うん」
いずれ、再びリンディ茶に出会うときが来る。それまでに一般常識を身につけてもらおうと、アクアは決意した。
「えっと、そのトカゲ……」
「ああ、俺って人と少し構造が違うからこうやって栄養をプレトで調整しないとダメなんだよね。いまは魔力で長期間は動けるけど、定期的にプレトとこうやって栄養のやりとりしているんだ」
「そう、なんだ……悪いこと聞いたかな」
「んにゃ、別にいいよ。気にしてないし、それより俺のほうこそごめんな。お前だって普通に暮らしたかっただろうに……」
アクアが言っているのは、自分がクローンであることを突きつける結果になったことだろう。だけども、自分のなかでその事に対する答えは出ている。
「いいよ。気にしていない。それに、いつかは知るときも来ただろうし……母さんとちゃんと話せたのは、『親子』になることが出来たのはアクアのおかげだよ。だからね、
ありがとう。今の私は貴方のおかげでこうしていられる。だから、ありがとうアクア」
そう言って、ニコリと笑うフェイト。その笑顔はあの日、ケーキを買っているときの顔にソックリで、その表情が自分に向けられたかと思うと……
「そ、そそそうか! まあ、こ、こちらこそ……」
何故か顔が赤かくなる。身体もこころなしか熱くなってきてちょっと、このフワフワした空気がなんか、こう、言葉に言い表せない何かがアクアの心をくすぐる。
それが嫌ではなく、むしろ心地いいのがわけが分からない。
「ふふ、やっと言えた」
「えっと、前に言っていたこと気にしてたのか?」
「うん。私、ちゃんと笑えていた?」
「あ、ああ……そりゃもう、ビックリするぐらいに」
その後も、少し居心地が悪いような、いつまでもこうしていたい様な空気は続いたが、明日はなのはの家に行くことになっているので寝ることにした二人。
フェイトは自室に戻った後、自分のやったことの恥ずかしさに悶えるも、今までに無い位安らいだ気持ちで寝れたという。
◇◇◇
一方、アクアはというと……
「あああああああああああああ!? なんなんだコレェェ!?」
「アクア、うるさい」
食堂に行く前のフェイトのように悶えていた。
相部屋のユーノが防音結界を使って眠りだすほどだった。
しかし、この時二人はジュエルシードとは関係ないところで出会ったある少女達によって更なる火種が発覚することを知らなかった。
明日、翠屋にてそれが発覚するであろう。
乙女の戦いは、すぐそこだった。
というわけで、フェイトさんニコポスペシャルでした。
主人公ではなく、ヒロインのニコポです。破壊力は段違いです。
フェイトさん、ものすごく暴走していますが、今までシリアスだった分ラブコメ成分がここで爆発しました。
そして不穏すぎるような気もする次回への引き。
実は本編では脇道にそれすぎると思ってやらなかったネタとか沢山残っています。
そこで、この「ゴールデンカオスウィーク編」では今までの補足事項とかやっていきます。
数日後とか言って、間を端折った部分に出会いというものはあるのです。
SAOみたいに本編の中で名前ぐらいは出せればよかったな。作者の技量不足です。