リリカル・W・ボーイ   作:アドゥラ

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今作のユーノ君は若干オリ設定が入っています。
これは、彼がどういう出生を遂げたのか、何故レイジングハートというデバイスを持っていたのか、自分なりに考察したからです。
っていうか公式でもかなり謎な部分が多いんですけど彼……

ユーノ君のサイドはシリアスになっていく傾向があります。
無印が終わるまでには何とかしたいですが。

今回の用語、勘のいい人はなんのことか判ると思う。


スタートアップ・Y・ホーム

 ユーノは彼の姉代わりであった女性の死から2週間の間、まるで死人の顔のようだったと、その事件を担当した管理局員は言っていた。

 犯人の男も転移を繰り返すものの、管理局員の操作網から完全に逃げ出せずにいたのでしばらくの間近くの次元にいた。

 当然、局員の面々も駐屯しており、精神状態が不安定だったユーノは管理局、次元船の中の医務室で面倒を見られていた。

 

 そんな彼が、再び生気ある顔になったのは、遺品を相続する関係で女性の家に来た時だ。

 局員が調べたところ遺書が見つかり、ユーノに存続させるという内容が書かれていたのだ。

 照合や手続きで少しばかり遅れた上に、ユーノもまともな判断能力を取り戻すのに時間がかかっていたので本来ならもう少しはやく渡される予定だった。

 

「はい、これが彼女の遺品。それからこっちが遺書よ」

「……ありがとうございます…………少し整理させて欲しいので、一人にしてくれませんか?」

「いいけど、私達も立場があるから家の外にいるわね」

 

 そう言い、管理局員達は外に出る。

 女性が一人に、男性が二人。共通するのは物悲しそうな顔だけだ。

 

「まだ若いのに……こんな酷い事件を防げない自分に腹が立ちます」

「しかたないわよ……所詮、私達は事件があってからでないと動けない。事件が起こる前に解決するなんて神様ぐらいにしかできっこないのよ」

「それでも、僕達にはあの子のために何かしたい。そう思ってしまいますよ」

「……そうね、どうすればいいか分からないけど彼のことは何とかしてあげたいわね」

「しかし、スクライアって旅をする流浪の民族でしょう? なんで家を持っていたんですかね?」

「遺品を見た人たちによると、どうも被害者は『ミッシングリンク』の可能性があるわ」

「えっと、なんですかそれ?」

「たしか……魔法学的にどういった道順を辿ったか分からない魔法体系の魔道師、もしくはそれに準ずるものでしたっけ?」

「まぁ、色々皮肉を込めた呼び名なんだけどね。今まで確認されただけでも『不死者』、『ミスターX』、『デビル』とかいるわね。予言のレアスキルをもっている人によると全部で12人いるらしいけど……ようはロストロギア級のレアスキルをもっている人たちってこと。ただし、その全員がどんな魔法体系を辿ればそうなるのかまったく分からないの」

「……色々と、とんでもないですね」

「で、そんな規格外な奴らだからね……管理局では一人、死亡が確認されて残り11人。今回の被害者がそうだとすると、残りは10人」

 

 そこまで、女性局人が言ったところで仲間の一人が何かを思い出したかのように呟いた。

 

「そういえば、この事件の犯人ですが……妙な魔法を使うと聞きましたね」

「妙な魔法?」

「なんでも、全身を雷に変換する魔法だとか。魔力を異常に消費していたので滅多に使えるわけではないらしいのですが」

「よくそこまで情報を引き出せているわね……ロストロギアを使っていないのなら、間違いなく『ミッシングリンク』のはず」

「ええ、どうも能力は高いらしいのですが戦闘技術はほぼまったく無いそうです。目撃者によるとユーノ・スクライアのチェーンバインドを解除できなかったようですから」

「……そういえば『ミッシングリンク』の中にはそういう連中ばっかりって噂程度に聞いていたけど……本当なのかしら?」

「自分も聞いたことがあります。『不死者』とか一部例外はいるみたいですが」

「まあ、長く生きていれば嫌でも経験をつむってことじゃないのかしらね。全次元中出会いたくない人物ナンバー1の危険な奴だけど。年の功ってのは馬鹿に出来ないのかもね」

「それにしても、なんか静かですね。彼は大丈夫ですかね?」

「自殺したりしたら困るから生体反応は確認しているけど……別に平気ね」

「いつのまにそんなことを……」

 

 ◇◇◇

 

 局員が外で話している頃、ユーノは遺書を読んでいた。

 手は震え、涙で目の前がぼやけそうになる。そのつど、胸にあるレイジングハートが自分を慰めるように点滅するのがユーノには感じ取れた。

 

「スゥ……ハァ」

 

 深呼吸をし、気持ちをなるべく落ち着けてから遺書を読み始める。彼女が何を思ってこれを書いたのか。ユーノは知らなければいけなかった。

 

 

『ユーノへ 私がこの手紙を書いているのは、私が長く生きられないからです。貴方も噂程度には聞いたことがあるはずです。ミッシングリンク、私もその一人だから、それが原因で私はきっと長くは生きられないでしょう。

 優しいユーノは、きっと私が死ぬようなことがあったら自分のせいだと思ってしまうでしょう。ですが、それは違います。

 私は貴方に出会えてよかったと思っていますし、貴方と一緒に暮らせてうれしかったです。

 ……私のミッシングリンクとしての能力は未来を予知する能力。それもかなり正確に。

 ミッドでもベルカでもない、誰も知らない魔法体系。いえ、体系にすることさえ出来ない力。それがミッシングリンクです。

 未来は様々な選択でどのようにも姿を変えます。ですが、はっきり分かっていることがあります。

 近々私の命が終わること。貴方がミッシングリンクと戦わなくてはならなくなること、ですが、その先に絶望などない。そう信じています。

 二つは確実に起こる。なんとしても防ぎたいですがこの遺書を読んでいるということは私はもう此の世にいないでしょう。

 未来は必ず変えることができる。貴方は本当は強い子。自分を信じて』

 

「お姉ちゃん、相変わらず心配性で……僕は何も出来なかった」

 

 ユーノはうつむく。彼女はいつもそうだった。何かあると自分を心配して。過保護すぎるのだ。自分を庇うことは無かったのに。なんで、なんで……

 

《マスター、最後の方に何か反応を感じます》

「……反応? でも、魔力検査や暗号の解読とか防犯のために管理局が調べているはずだけど?」

《いえ、果汁のようなものがあるようです。彼女が教えてくれたアレではないですか?》

「…………まさか!?」

 

 ユーノの頭に、ある出来事が浮かんできた。前に彼女が教えてくれたあぶりだし、というものだ。

 魔法という便利な通信手段があるためか、次元世界にはあまり知られていない技法だったためか、局員にも気がつかれなかったようだ。

 彼女が教えてくれたあぶりだしは、二重のロックになっていて、まず火等の熱源に紙を当てる。果汁に彼女の魔力が微量だが混ぜられてるのでこのままでは文字が出てこない。

 そこで、熱源に当てつつ自身の魔力を当てて果汁に含まれた魔力を取り除かないと字が読めない仕組みなのだ。

 この方法を知っているのは次元世界広しと言えど、自分と彼女、それにレイジングハートだけであろう。実際、彼女が編み出した技法らしく、信頼できる友達以外には話すなといわれている。

 

「出てきた……」

 

『レイジングハートもいるからこのメッセージに気がついたと思う。最後に言っておくよ。私達の写真が入っている写真縦の裏、そこにユーノへのプレゼントがあるよ。ミッシングリンクの中には心を操る人がいる。そのリストバンドはそういった力を寄せ付けない。きっと役に立つと思う。

 追伸 貴方は優しい子。私が誰かに殺されても、それを忘れないでね』

 

 

 ◇◇◇

 

 ユーノが外に出ると、管理局員は慌しかった。なんでも、犯人が包囲網を突破して逃げたらしい。会話の中でミッシングリンクという言葉が聞こえていた。

 

「きっと、このことなのかな……ミッシングリンクの人と戦うことになるって」

《マスターユーノ。大丈夫ですか?》

「……あの人は僕を狙っていた。だったら、いつか絶対に来るはずだ…………」

《彼女の言葉、覚えていますか?》

「うん、大丈夫……でも、許すことなんて出来ない。だから、一生かけて償わせてやる」

 

 姉であった女性の言葉、それがユーノをユーノのままつなぎとめた。

 大きな傷を心に負ってしまっただろう。それでも、道を間違えずにすんだのだ。

 幼いが、不屈の心をもった少年。ひとまず彼はジュエルシードを発掘するまでは表舞台に出てこないであろう。

 だが、運命の日は刻一刻と迫っている。

 ユーノにはまだ、宿命とも言うべき秘密が隠されていたのだから。

 




今回の用語
『ミッシングリンク』

ミッドでもベルカでもなく、他の魔法体系からも、どういう風な進化をすればたどり着けるか分からない魔法のこと、もしくはその使用者。
進化の道筋が分からないことからこう呼ばれる。
聖王教会にいる予言のレアスキルを持っている人や、そのほかの予言型スキルの所持者による予言の結果、宇宙の始まりから終わりまでに12人出現することが分かっている。
古代ベルカに二人存在し、内一人は大昔の大戦で行方不明になり、もう一人は『不死者』と呼ばれる、現在でも生きていると噂される人物。管理局はその存在を掴んでおり、捕らえようとしている。
確認されているのは5人ほどで、何故かここ数年で一気に出現した。

予言スキルをもつもの曰く、この時代で集結、もしくは全員でそろうのではとも言われている。

共通するのは
「子供の頃から不自然なほどに大人びている」
「解析不能の能力を持つ」

また、戦闘能力は高いのに、何故か素人の動きをしている場合が多い。

以上が管理世界に伝わる話である。
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