リリカル・W・ボーイ   作:アドゥラ

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新章、ジャバウォックの声編開始です。
今回から少しずつグロくなっていきますので、ご注意ください。

ベターマン要素も盛り込みたいのですが、最初ということでネタ多いかも。


ジャバウォックの声
暗闇から覗く瞳


 地球においての6月下旬、ミッドチルダでは謎の怪事件が世間を騒がせていた。

 

「また被害者が……」

「そう、これで13人目。まったく嫌になるわね」

 

 クイント・ナカジマは通称「吸血鬼事件」について調査していた。

 被害者は全員、首の辺りに牙で噛まれたような傷があり、そこから血を吸われたかのように全身の血か抜かれているのだ。

 遺体によっては、心臓を失っていたり、脳を吸いだされたかのようになっていたりと現職の局員でさえ直視できないほどのものがある。

 

「ロストロギアか、誰かが開発した凶悪な魔法なのか……少なくとも質量兵器では起きえない現象よね。手がかりもないし、どうしたものかしら……」

「今回は女性の方……どうやら、その」

「どうしたの? はっきりしないわね」

「それが……子宮を直接食い破られているようでして」

「ああ……ごめんなさい、たしかに言うのも憚られるわよね。でも、なんでこんなにひどいことができるのかしらね」

 

 過去に何度か起きているとも噂される吸血鬼事件。その全てが迷宮入りし、しばらくは起きなくなる。

 空は曇り、クイントの内心を表すかのようだった。

 

 ◇◇◇

 

「ふぅ……とりあえず合格したな」

「よかったねアクア」

 

 地球での滞在を終えて、アクアは管理局にて嘱託魔道師資格を取得していた。事情が事情だけにかなり速いスピードで資格を取得できたのは驚いている。

 なんでも、希少な上に管理世界にもない術式を使うのと、もともと存在自体が少ない儀式魔法に特化した魔道師が点数を上乗せしたらしい。

 技術を吸収できれば儲けものだし、それでなくとも希少な能力を持つものが自分達の組織に所属しているというのはメリットが大きいのだろう。色々と。

 もっとも、アクアの場合、管理局にはそれ以上に彼を必要とする理由があったのだ。

 

「にしても……まさかベターマンの技術が管理世界にまで広まっていたなんて」

 

 ベターマン、アクアはそのプロトタイプとして造られたのだが……なんと、セカンドタイプ、サードタイプと後継とも言うべき存在が幾人も生み出されているのである。

 流石に表立って広まっているわけではないが、その気になれば単体で国一つは滅ぼせてしまうベターマンだ。抑止力的な意味でもアクアの存在は欲しいのだろう。

 

「ユーノ、俺のほかにわかっているベターマンは?」

「赤頭巾を被った僕等と同い年くらいの女の子と、地球で言うお坊さんに似た格好の男の人。こっちは結構お爺さんみたい」

「うーん、俺が最初に造られたはずだからお爺さんってのがなんかなぁ」

「たぶん成人状態で生まれたんだろうけど、細胞の老化が激しくてこうなったんだと思うよ……君は大丈夫なの?」

「俺の場合、魔力を水に変換することもできるからな。どうもそういう細胞面はかなり安定しているみたいだ。その爺さんってもの見た目の老化は激しくても中身がやばいかもしれないしな」

 

 気になるのは、自分のようにプレトみたいな補助ユニットがないこと。試作体の自分とは違い、何かしらの対策を施されているのかも知れない。

 

「あ、その対策が不十分だったから老化が激しかったのか……ってことは、赤頭巾のほうはまずいな。完成体とでも言うべき奴じゃん」

「まあ何もしないならそれでいいんだけど……」

「こうして被害でているからなぁ」

 

 ユーノとアクアが居るのはミッドチルダの西部、最近吸血鬼事件などがあった場所だ。

 時期は既に7月下旬。吸血鬼事件の被害者が出なくなってからもう1月も経っていた。

 

「なんていうか、大きな戦いの痕跡だよな」

「間違いなくそうだろうね……」

 

 アクアが今回の事件、「ベタービースト事件」に呼ばれたのはこの戦いの痕を残したのがベターマンである可能性が高いから。

 ユーノはジュエルシード事件のことも評価され、民間協力者として要請をうけたからだ。

 

「そういえば、フェイトも嘱託の資格取ったんだよね?」

「ああ……他にも似たような現場があるしそっちを見てもらっている。こっちほどグロくは無いし」

「たしかに……彼女には見せられないよね」

 

 戦いの痕だけでなく、そこらに散らばる死体の数々。肉は抉れ、血は流れ出ている。

 そして、まるで食われたかのような痕。

 

「ビーストとはよく言ったもので……まあ、これをやったのはベターマンじゃないだろうけど」

「どうしてそう言えるんだい?」

「ベターマンが生み出された理由だよ……『不死者』だな。貰った資料にも対『不死者』用生体兵器として生み出されているデータが沢山あった。俺はプロトタイプだから『不死者』の魔力を感知する力はないけど……」

「他のベターマンはそれを実装している可能性が高いってこと?」

「それだけじゃなくて、一時的に感情を消すような処置もとられているかもな。俺を生み出した人たちはそういうことはしないけど、他の誰かならやるかもな」

「まだ推測の域をでないことをこれ以上論じても仕方が無いよ。とりあえず報告してからもどろう」

「ああ……地球はこれから夏休みだし、顔を出しにいくのにこんなことになるなんてな」

「仕方が無いよ。それに遺体の傷跡からも吸血鬼事件の特徴が出ていた」

「俺達の管轄から外れそうだな……なら地球に行けるかもだけど、なんかスッキリしない」

「それは僕も同じさ。じゃあ僕は報告したら帰るけど、君は?」

「あーフェイトのところに顔を出すよ」

「お熱いことで」

「何の話だ?」

「……相変わらずだね君も」

 

 ◇◇◇

 

「結局、フェイトも担当外されたのか?」

「うん……流石に吸血鬼事件は子供が担当するには危険過ぎるって」

「俺もベターマンが絡んでいても、直接の犯人じゃなかったみたいだしな……」

 

 ここはミッドチルダ南部のアルトセイム地方。時の庭園が元々あったばしょで、現在は戻されている。フェイトやアルフもしばらくはここで寝泊りしていた。

 

「ただ、どうにも腑に落ちなくてな……遺体を調べたんだけど、ベターマンじゃないほうが血を吸っていたにしても、身体のパーツのいくつかがまるで食べられたかのようになっていたんだ」

「たべっ?!」

「これはまた、嫌な話だけどさ……」

「二人も注意しておいてくれよ。なんていうか、嫌な感じがするんだよ」

 

 現場をリミピッドチャンネルを用いて調べてみても、何も分からなかった。

 誰にも言わなかったけど、こんなことは二回目だ。

 

「まったく、何で厄介ごとが次々に」

 

 逮捕されたオーガのリンカーコアを調べて分かったのは、ミッシングリンクは独特なリンカーコアの形状をしていること。

 まるで、渦を巻いているような不安定な形。それでいてミッシングリンクは全員同じ形のようだ。

 以前聞いた、死亡したという一人と同じ形状。ただし、中央にローマ数字のようなものでナンバリングされていたらしい。

 オーガは9番、死んだという人は3番。そして、ユーノの姉代わりだった人のコアも記録が残っていて、12番。

 予言系の能力によると、全部で12人。ナンバリングの順番に理由があるとするなら、能力の強さ……ただ、予知と肉体の電気化って順番のつけようが…………

 

「あー3番目の能力も結局不明だし、無限書庫はカオス過ぎて使えないし……はぁ」

「えっと、ご飯作ったんだけど食べる?」

「うん」

「元気出して、私も力になるから」

「うん」

「……なのはが二代目の道を駆け上がっているんだよ」

「うん」

「今日一緒にお風呂に入ろう」

「うん……うん?」

「もう言質はとったからね」

「……え?」

 

 ◇◇◇

 

「どうしてこうなった」

「あ、あんまり見ないでよ」

「おかしい。俺はそっちを向いていないというか、この状況は一体? 超スピードとかそういう次元じゃない。お願いします。後生ですから。後生ですから!!」

「えっと、お背中流します」

「いや、無理しなくていいから。ホント、顔赤いだろ絶対!」

「ふ、ふつつかものですが――」

「ホント誰に教わった!?」

「えっと、なのはがこう言えばイチコロだって」

「高町覚えてろよぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 ◇◇◇

 

 疲れた……

 傍から見ればうらやましいことこの上ない状況においても、アクアはそう言い切った。

 魔王候補やアースラのお気楽オペレーターに色々吹き込まれたせいか、フェイトのそういう知識が変に偏っていて矯正するのも一苦労である。

 しかも、男を手中に収める方法とか誰に教わったんだよ……え、リンディさん? あの人も同類かい。

 

「さて、俺はそろそろいく……なんで俺の端を掴む?」

「……えっと、泊まって、くだ、さい……なんて」

「……」

「……」

「、……」

「……」

「――はぁ、わかったよ。泊まるよ。泊まっていけばいいんだろ」

「ホントっ?」

 

 目に見えて機嫌がよくなる。笑顔が輝いていますねぇ……なんて誤魔化したくなるが、一日、一日だけ俺が鋼の精神で頑張ればいいだけだ。

 クローン体としての脆さを補うためか、人造魔導師として強い肉体を得るためなのか、同年代より発育がいい気もするが、そんなことは関係ないのだ。気にしてはいけないのだ。

 だから、フェイト様お願いですから俺を抱き枕にするのはぁあああああああ!?

 

 ◇◇◇

 

 同時刻、ベルカ自治領。

 

「さてさて、こんな雑魚じゃ我をとめるのは無謀というもの。まったく度し難い……だが、ベターマンとはいささか趣味の悪い。それでは我がベストマンということか?」

「御託はいいのだよ。我々ソムニウムはお前、『不死者』を殺すためのみに生み出された」

「無駄な足掻きを……我が能力を知らないな。一つ、我は全次元世界でもっとも高い魔力を持っている」

 

 全てを言い切る前に、中世の騎士のような男は真っ黒いフードを被った男、『不死者』に鋭くのびた爪を突きたてた。

 だが、爪は不死者に届く前に腐敗し、粉々になる。

 

「なっ!?」

「ただの魔力圧でこうなるとは……ふん、弱すぎる。消えろ」

 

 その一言で、名も知らぬベターマンは消え去った。

 

 ◇◇◇

 

「ねえ、スズキ……まだアレとは戦わないの?」

「使命を果たすことも大切だがね。マーチ、我々はまず力を蓄えなければいけない。数多く生み出されたソムニウムも次々と数を減らしている」

「嫌になるわね、私ら完成体が手も足も出ないなんてさ」

 

 赤頭巾を被った少女と、仏教の僧のような老人。二人ともあまり似ていないが共通する部分が一つだけあった。

 

「しばらくはハンター……いや、プロトタイプに任せておけばいいだろう」

「えーアイツ嫌いなんだけどぉ! ペクトフォレースも使えない欠陥品に任せてもいいのぉ?」

「彼は欠陥品ではなく、我々とはコンセプトが違う。まあ、試作型だから色々難があるのも知っているがね」

「むぅ、だったらなんでよ」

「……彼の変身できる姿を知っているかね?」

「えーっと、いくつだっけ?」

「ネクストシリーズで生み出された姿以外はすべて変身可能だ」

「ちょ、それズルイ!!」

「しばらくは不死者も表舞台に出る気は無いだろう……コチラから刺激しない限りはな。まあ、我々の仲間……とは思いたくないが、あいつ等の相手を任せるなら適任だろう」

「そっか、そっちで勝手にやってもらっている間に、私達が強くなればいいんだね! あったまいいスズキ!」

「そういうことだよ、マーチ」

 

 二人の眼球は、血のように紅かった。

 

 




細かく伏線を入れて推理要素を出したいけど、作者の技量的に厳しいかな。
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