徐々にシリアスになりますぜ。
アクアはフェイトに抱きつかれた状態で目が覚めた。
流石に本能の暴走とかは年齢的にも無かった(実際、培養液から出て5年も経っていない)ので、そういう心配はないが、無かったが、色々と精神的にキツイのだ。
密着することで、普段は封じているリミピッドチャンネルが無意識のうちに鋭利になってしまう。そうなるともう、あとはひたすら般若心経を唱えるしかない。
とてつもなく強力な能力なのに、色々とデメリットも多いのだ。
「そうだよな……今回の事件、デメリットの方が多いよな」
ベタービースト事件では、リミピッドチャンネルのデメリットばかりが目立つ。
まず、無意識に感情を拾うこともあるためノイズのような情報が頭を駆け巡ることがある。これは時々あるのでそこまで問題じゃない。
だけど……ミッシングリンクの思考が読めないのはキツイ。おまけに、ベターマンの思考も読めないのだ。
ベターマンどうしなら、リミピッドチャンネルを介した思念通話が可能だが、一方的に心を読むことは出来ない。モラルの関係上、無意識の場合を除き普段は絶対にやらないが、事件などで人の命が関わった場合は躊躇無く使う。だが、今回はそれが出来ない。
ミッシングリンクにいたっては感情の波のようなものさえ感じ取れない。
事件現場に残された残留思念を調べたが、被害者の心しか分からなかった。
いや、この場合はデメリットも多い。痛いのだ。死んだ時の感情が一気に流れ込んでくるこの感覚は、筆舌に尽くしがたい。
「さて、と……あーハンドウの新武装のチェックもしないとな」
まだまだ謎の多いこのデバイス、どうやら色々な後付装備の設計図が保存されていたようで、管理局でも解析の後、試作しているようだ。
装備の多くがハンドウにしか装備できなかったり、ベターマンの能力を用いることが前提のものだったりと中々に厳しいものがあるそうだ。
だが、使えるものもあるし、そうでなくても技術転用できれば魔力値の低い局員の戦う手段が確立されるかもしれないとのことだ。
「えっと、ディメンションプライヤーにカーペンターズか」
どうせまたミスターXだかエージェントXだか知らないが、ようはXさんが設計図描いたんですね。なんていうかもうパターンだよな。俺以外の誰かにも接触して無いだろうな……知り合いの誰かに聞いてみるか。まあ、どんくさそうな高町は違うか。
後で高町にも聞いておけばよかったと落ち込むがそれはまた別の話し。
「あーカーペンターズってのが、独立したAIによる自動行動デバイスみたいなもので、それが6種類。量産され、破壊された市街地などの修復に当てられる。か……まだ試作段階だから大型次元船と本局に少数配備か。で、ディメンションプライヤーはカーペンターズの内の3機の合体による空間修復マシン。って、何処で使うんだよ……」
いや、アルカンシェルの暴発とかそういうときの対処か? ディメンションプライヤーはハンドウに接続することで色々と強力な効果を発揮するのか。まあ、単体でも使えるみたいだけど。
ちなみに、俺に支給されたのはハンドウやプレトに接続して使われるワンオフ物。プライヤーズと別扱いで呼称されるようだ。
他の新武装もチェックしておくか。
「水中活動用装備……だから、使う予定ないって」
「んぅ……どうかしたの?」
「ああ、起こしちゃった? いや、局から新武装のデータが送られていてな。そのチェックだよ。この後とりに行くから」
「そう、……ふぇぇえええええ!? なんでアクアがここにいて一緒に寝てるの!?」
「お前がこの状況を作ったんだろう!?」
自分で泊まらせておいて、少しばかり理不尽に感じた。
◇◇◇
あの後、フェイトはすぐに自分で泊まらせたことを思い出して顔を真っ赤にし、ものすごい勢いで謝罪した。そのまま土下座になりそうだったからすぐに止めたけど。
「はぁ、疲れた」
装備を取りに来たのはいいけど、高官の人の話の長いこと長いこと。
管理局に協力しているベターマンは俺だけだし、色々と特殊な権限を与えられていることもあってか、こうした時に高官に顔を合わせると話しが長くて困る。
権限を与えられるのは、そういうエサを与えることで俺を引き止めたいから。
高官の話が長いのは自分の方が偉いと俺に思わせるため。
実際、偉いのはわかるし、過去に色々と武勇伝もあるのも知っているけど、ホント長い。
ソンナコトしなくても裏切ったりしないっての。むしろ長いのヤメテ。
「今日はまた、随分とお疲れだね……なんか変なロボット連れているし」
「あープライヤーズだよ。ユーノにはカーペンターズって言ったほうが分かりやすいか?」
「もう完成していたんだ……」
「あくまで、俺が使うワンオフの方だけね。量産には時間がかかるからオリジナルデータで修正の必要が無い俺の分だけ試作という形で貰った」
「そう……ところで、ベタービースト事件のほうだけど」
「なんか進展あった?」
「……」
「ユーノ?」
「むしろ、後退したかな」
「詳しく話してくれ」
「君のほうにもすぐに連絡がいくと思うけど――一ヶ月前と今回じゃ、犯人が違うかも知れない」
「なに?」
不可解な点はいくつもあったらしい。不死者にしては、今回の被害は大きすぎること。不死者は現場に殆ど戦闘痕を残さない。
死体だって、食い破らないし、中身を転移させたかのような状態の死体や、血や脳を吸われたような痕跡などが特徴だ。
牙の形だって、似ていたけど二つの牙の間が不死者のものより長いのだ。
そこまで聞いたとき、俺には嫌な予感が奔った。
「ちょっと待てよ……不死者と戦っていないしても、今回の事件はベターマンは関わっているのは間違いないぞ」
被害者の残留思念を読み取るのは困難だったが、誰かが変身する様子は見えた。
それに、ミッシングリンクとベターマンのみは思念を読み取れないことからもそれは……
「まさか、ベターマン同士の争いってことか?」
「ああ、その可能性が高い。だけど……いや、調べたり無いんだ」
「なら無限書庫を使ってくれ」
「で、でもあそこ使えるの!?」
「整理はされていないけど情報はある。それに、俺にある程度与えられた権限なら使用許可も下りる」
「……まったく、無茶するよ。で、そこまでする理由は?」
「…………被害者が泣いていたから。同じベターマンがあんなことをしたなら、俺はそれを止める。いや、止めたいんだ!」
「オーケー。まかせて」
◇◇◇
ユーノにも話さなかったけど、俺はミッシングリンクの思念が読み取れないと気付いたのはオーガと戦っていたときだ。
アイツとの戦闘中、リミピッドチャンネルの力は高まっていた。それなのにも関わらず、アイツの心は黒くて何も見えなかった。
おかげで、攻撃も喰らいまくった。結局誰も気がついていなかったが。
読み取れるのもあくまで表面上だし、高町との模擬戦では役に立たなかったが、オーガのように本能に身を任せたような攻撃をしているなら余裕で避けられる、そのはずだった。
「こりゃぁ……大変になるな」
「どうしたんだい? アクア君」
「なんでもないですよティーダさん」
いま、一緒に行動しているのは執務官志望の局員、ティーダさん。
ミッド地上にての任務なので、現地に詳しい人が必要だったのだ。そこで白羽の矢が立ったのがこの人だったというわけだ。
まあ、ある程度機動力があって後衛が出来る人、頭脳面でも優秀な人物ということだったが。
「で、どうなんだい?」
「なにがです……犯人の痕跡ならなんとも。いくらベターマンっていっても変身中でも理性はあるはずなのに、こんな獣同然の戦い方おかしいですよ」
「根拠はあるのかな。出来れば聞きたいものだけど」
「まず第一に、ベターマンが変身して使う能力は基本的にどれも一撃必殺。周辺被害を出したり特殊な姿だってあるけど、こんな力任せなのはあり得ない」
今、俺達がいるのは先の被害現場。
大きな爪あとが残っていたり、ただ力任せに攻撃したようにしか思えない。
せめて、もう片方のベターマンの痕跡があれば……
「ねえ、これはなんだと思う?」
「布、ですかね……なんていうか帯の切れ端みたいですけど」
「真っ白いし、僕もそう思ったんだけど、なんていうか、ぶよぶよしていて気持ち悪いというか」
「なら触る前にデバイスで確かめてくださいよ」
「いや、反応無しなんだよ。デバイスを介して見ると、まったく認識できないんだ」
「え?」
そんな馬鹿なと思い、ハンドウのアクセプトモードで調べるが、ちゃんと表示される。
ただ…………一切の思念を通さないかのようにリミピッドチャンネルはその物質に対して使えなかった。
「なんだよ、これ」
「こんなものがあったらすぐに見つかると思うけど、やっぱり現場じゃ魔力調査だけだったみたいだね。最近多くて困るよ、まずは目視が基本だろうに」
ティーダさんの言葉は耳に入っていなかった。このぶよぶよしたもの、これを見ていると不思議と不安な気分になる。
なんだ? 俺は何を忘れている?
「どうかしたのかい?」
「いえ、何でもないです」
分からない、だからそう答えた。
局に戻ってこの物質を解析したが結局わからない。魔力や思念を通さない特殊なものだというのは分かったが、何でできていて、生物の肉片なのか、新型の兵器の一部なのかさえ分からなかった。
だけど一ついえるのはあの現場で見たときは不安になったのに、他の場所でこれを見ても平気だったということだ。
ティーダさんの口調が分からない。
とりあえずイメージで書いていますが、修正するべきなら教えてください。