梨花 Side
「・・・花、ちゃん」
誰かが梨花の名前を呼んでいた。何処から聞こえているのかと思っていると段々意識がはっきりとしてきた。
「・・・ここは?」
梨花は脳がはっきりしないまま寝惚けているような声を出した。すると突然、誰かが梨花に抱き着いてきた。
「よかった楽屋に戻ってきた後、当然倒れたんだよ!」
聞き覚えのある声と姿を見て誰だか分かった。
「レナ、苦しいのですよ」
「わわ、ごめんね梨花ちゃん」
そう言いながらレナは慌てて離れる。
上半身を起こすとそこはライブ会場内楽屋の畳の上で、周りを見るとレナの他に圭一、小鳥、高木が居た。
(そうか・・・またこの世界に来たのね)
とさっきまでの出来事を思い出していると、
「梨花ちゃん、本当に大丈夫か?」
圭一が聞いてきた。
「大丈夫なのです、もうピンピンなのですよ」
圭一にそう返すと四人は安堵の表情を浮かべる。
「私、梨花ちゃんの意識が戻ったことを皆に知らせて来ます」
小鳥が高木社長にそう伝えると楽屋のドアを開けどこかに行った。
「梨花くん、何ともなくて本当に良かったよ」
高木社長が声を掛けてから数分後、突然ドアがいきよいよく開くと、
「梨花、大丈夫ですの!」
ユニット雛のメンバーである沙都子、やよい、真美が入って来た。
「沙都子、心配をかけさせてすみませんなのです」
「うっうーよかったのです」
「いやぁ、ビックリしたよ、君ぃ」
やよいと真美も無事を確認して喜ぶ。
「他の皆はどうしたのですか?」
「春香や魅音達は今、会場の外に出ているよ」
「そうですか、ではボクはみんなを安心させるために行くのですよ」
圭一にそう言うと立ち上がり靴を履くと楽屋のドアを開け、廊下に出た。
「梨花ちゃん、気がついたみたいだね」
声がした方を見ると、そこには双海病院の医者であり亜美真美の父親が立っていた。
「高木から倒れたと聞いてすぐに診たがどうやら何ともないようだね」
「あなたがボクを診てくれたのですね、どうもありがとうなのです」
「いやいや、医者として当然の事をしただけだよ」
そう言うと先生はさっきまで梨花が居た部屋の中に入って行った。
梨花は部屋に入って行くのを見送った後、小鳥が何処に行ったか捜しながら会場内を歩いていき、会場入り口を出た所で、
「梨花ちゃん」
と誰かが呼んだ。
呼ばれた方を向くとそこには春香たちがいた。
「梨花ちゃんもう大丈夫なんだね」
「梨花、無事でよかったの」
「古手さん、もう歩いても大丈夫なの?」
「梨花ちゃん、本当に良かったのですぅ」
「梨花もう何ともないんだね」
「もうバリバリに動けそうだね~」
「ふん、あんまり心配させないでよ」
「あらあら~、そんなこと言っちゃだめよ」
「梨花、もう体調は良いの?」
「梨花本当に心配したんだぞ」
「梨花、ご無事でしたか」
と駆け足で近づいてきたかと思うと矢継ぎ早に梨花の身を案じてきた。
「みぃ、みんな心配をかけてすみませんなのです」
そう謝り、会話をしていると何処からかスタッフの人が軽く息を切らしながら走ってきて、
「誰か双海先生を呼んで来い!女の子が倒れていたぞ」
と会場近くで仕事をしていたスタッフらに大急ぎで伝える。その途端その場に居合わせたスタッフらはバタバタと動き始めたかと思うと、
「どうしたんだ?」
同じく高木社長と話を終えたのか偶然、双海先生もその場に現れた。
「あ、双海先生。さっき会場の外を見まわっていたらワンピース姿の女の子が倒れていたのです!」
スタッフが簡潔に事情を話すと、
「わかった、すぐに案内してくれ」
双海先生は騒ぎを聞きやってきたスタッフに担架を持って来るように指示し、案内されながら現場に向かい数分後、スタッフと共に担架で女の子を搬送してきた。
「え?」
梨花は言葉を失った。なぜなら搬送されてきた女の子は、さっきまで居た謎の空間から姿が見えなくなっていた羽入だったからだ。