アイドルのかけら解   作:オヤシロノツカイ

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二話 説明と始まり

 梨花 Side

 

 

 いきなりの出来事だった。

 さっきまで姿が見えなくなっていた羽入が突然担架で運ばれて来た事に梨花が困惑していると後ろの方から、

 

「梨花、羽入殿が運ばれた部屋に行ってみましょう」

 

 貴音が梨花の手を軽く引きながら言い、羽入が搬送されていった楽屋の方へ駆け足で行くと、丁度廊下で高木社長と話をしている双海先生がいた。

 

「それで、診断結果はどうなんだ?」

「診てみたところ特に異常はなくただ気を失っているだけだ」

 

 と会話をしていると双海先生は梨花と貴音が来ている事に気づき二人の方を見た。

 

「ん?さっき運ばれてきた子が気になったのかい?あの子ならそこの部屋だよ」

 

 と部屋を指差した。

 

「貴音くんも気になったのかね?」

「ええ、先ほどお見かけしたとき気になりましたので」

 

 貴音が高木に返事をしている中、梨花は扉の前に立つと、意を決して扉を開けて中に入ると其処には羽入が畳の上に敷かれた大きめのタオルの上で同じ大きさのタオルを枕にして横になっており。その近くには羽入を搬送したスタッフが二人いて、一人は窓を開け放して外の空気を入れて、もう一人は濡らしたタオルを羽入の額に乗せていた。

 

 梨花は畳の上で気を失っている羽入に近づき屈む。

 

「羽入、しっかりするのです!」

 

 そう言うと羽入の傍にいたスタッフの人が「この子は君の知り合いなのか?」と聞いてきた。

 

「え?ええと」

「この子は梨花の親戚の方です」

 

 急に聞かれた梨花は何て答えようかと口ごもっていると貴音が助け舟を出してくれた。

 貴音の言葉に納得したスタッフは、窓際にいたもう一人のスタッフに声をかけ床に置いていた担架を持ち上げて部屋を出て行った。

 

「貴音、フォローありがとう」

「いいえ気にしないで下さい」

 

 梨花は貴音に礼を言いまた羽入を見ると何か違和感があることに気付く。

 

「ん、何かおかしいわね?」

「え、羽入殿のどこがおかしいのですか?」

 

 梨花に言われ貴音もよく見てみるとその瞬間違和感の正体に気付いた。

 

「羽入殿のお姿は何度も見ているはずなのに、わたくしとした事がどうして直ぐ気付かなかったのでしょう」

「え、どこなの?」

「梨花、羽入殿の頭を見てください」

 

 そう言われた梨花は羽入の頭を見てみると同じく気付いた。

 

「な、ないわ!?」

 

 羽入の頭を見た瞬間梨花は驚きの声を上げる。なぜなら本来羽入の頭から生えているはずの二本の角がきれいに無くなっていた。

 

「角以前にその生えていた跡すらありません」

「どうなっているの?」

「分かりませんが羽入殿が人の姿で現れたことに何か関係があるのでしょうか?」

 

 貴音は横になっている羽入の頭を手や目でよく調べてみたが見つからず、梨花と貴音が二人して考えていると複数人の足音が聞こえてきた後、二人がいる楽屋のドアが開き春香、美希、千早の三人が入って来た。

 

「梨花ちゃん、此処にいたんだね急に居なくなったから驚いたよ」

 

 と梨花に春香が言った。

 

「ごめんなのです。あれ?ここに来たことは春香たちも羽入の事が気になったのですか」

「そうなの、ミキ達も気になって梨花と行こうと探したけど見つからなくて、もしかしたら先に来ているのかもって来たの」

 

 美希が言い終えた直後また足音が聞こえてきて今度は圭一とレナが部屋に入って来てそのあと続いて魅音と沙都子が入って来た。

 

「圭一達も来たのですね」

「うん、女の子が倒れていたって騒ぎを聞いて廊下を担架を持って歩いてたスタッフに話を聞いたら、まさかと思って急いできたんだよ」

 

 レナが梨花に説明した。

 

「しかし、一体全体何が起きているんだ」

「羽入ちゃんはたしか本来、人には見えないはずだよね?」

「貴音、何か心当たりはないか?」

「圭一殿、この様な事はわたくしも驚きを隠せません」

 

 貴音が圭一に答えていると、

 

「そういえば前々から気になっていたの、羽入っていったい何者なの?」

 

 美希が貴音や圭一達に質問する。

 

「ミキがトラックにはねられそうになった時や閣下が実体化した時に現れたけど未だに羽入の事がよく解らないの」

「美希、それはだな」

 

 美希の言葉に対し圭一は何て答えようかとすると続けて言う。

 

「これはミキの勘なんだけど、ハニーたち何か隠している事はない?その証拠にトラックや閣下のとき羽入を見てもハニーたちはあまり驚いていなかったの。それにIUの打ち上げの後六人して会議室で『運命』や『羽入』とかの言葉が入った会話をミキ聞いたの」

「そ、それは」

 

 矢継ぎ早な追求に圭一は反論できなくなっていたその時、貴音が口を開いた。

 

「分かりましたこれ以上隠しても仕方ないでしょう、羽入殿についてお話しいたします」

「話していいのか貴音?」

「ええ、いずれ話さなくてはならない時や場合になったら明かすつもりでした」

 

 貴音はそう言うと羽入の隣に座った。

 

「羽入って確か閣下ちゃんの悪い部分が私に憑りつかない様、身代わりになっていたんだよね」

「そうです。そしてその悪い方は羽入がどこかに消したのです」

 

 春香と梨花がそう話している中、貴音は話し始めた。

 

「先ずは羽入殿の正体から順に説明いたしましょう。少し長くなりますがいいですね?」

 

 そして貴音は春香たちに羽入の事について、説明していき時々美希や春香からの質問に答えつつ話していった。

 

 十数分後

 

 

「だいぶ分かったわ、私や美希が閣下の姿を見れたりIU会場で起きたあの時が止まったような空間の中で意識があった訳が」

「うん会場で初めて会った時はよく分からなかったけどまさか神様だったんだね」

「にわかには信じられないけど要するに羽入の力の一部がミキ達に宿っていたことで良いんだよね?」

 

 貴音の説明が終わり三人はそれぞれ納得し、貴音たちは安堵した表情を浮かべていると、

 

「う・・・う」

「ん、今の声は?」

 

 圭一はどこからの声か見まわすと畳の上で気を失っている羽入が、眉を少し動かしたり体を軽く捩ったりと動く。

 

「羽入ちゃんの意識が!?」

 

 圭一、春香たちはハッとして気を失っている羽入の顔を覗き込んだ。

 羽入は眉や体を動かす動作を何回か繰り返し、目をゆっくり開けながら呻くように言う。

 

「う・・・り・・・か」

「羽入、何ともないですか!?」

 

 名前を呼ばれた梨花はすぐに羽入の手を握り呼びかける。すると梨花の声に反応したのか瞼を数回瞬いた後、ゆっくり上半身を起き上がらせて手を握っている梨花の方を見た。

 

「りっ梨花、どうしたのです?」

「どうしたって、今羽入がボクを呼んだのですよ?」

 

 半分涙目で梨花は言い返した。

 

「あぅ、ごめんなさいなのです。あれ?なんで梨花は僕に触れられるのですか?」

「触れられるていうかバッチリ姿が見えていましてよ」

 

 沙都子は羽入の質問に答えながらウエストポーチから取り出したコンパクトを羽入に渡すと羽入はコンパクトの鏡を見た。

 

「!!僕が鏡に映っているのです」

 

 驚いた羽入は自分の顔や腕などを軽く引っ張ったり触ったりして自分がここに居る人全員に見えている事にまた驚いていると、

 

「なんだか頭が少し軽いような?」

 

 コンパクトを沙都子に返し、羽入は両手で頭を確認してみると角が跡形もなくなっているのに気付いた。

 

「無い、角が無いのです!?」

 

 コンプレックスだったとはいえ無くなっているのに羽入が動揺していると、貴音が羽入に質問する。

 

「羽入殿、いきなりですみませんが人の姿になった事に何か心当たりはないですか?」

「あぅ心当たりですか?それが僕にもわからないのです。祠で梨花と吸い込まれた後今まで気を失っていたので」

「祠?どの様な祠でしたか」

「それが、どんな祠だったかよく覚えていないのです」

「そうですか」

 

 貴音はそう言い少し考え込むと、

 

「会場で会った時は怖かったけど今はとても可愛いね」

「そうなの、思わず抱きしめたくなるような愛くるしさなの」

「確かにあの時のようなオーラが無いわね」

 

 春香たちが羽入を撫でまわしたり頬ずりし始めた。

 

「あぅあぅ!?やめて欲しいのです」

 

 羽入はもみくちゃにされる事に嫌がる声を上げ逃げようとすると次の瞬間、

 

「はぅ~!!お持ち帰りー!!」

 

 かぁいいモードを発動したレナが背後から羽入を抱き上げ、グルグルと回り始めた。

 

「あぅー目が回るのです~!!」

 

 と羽入が悲鳴をあげると悲鳴を聞きつけた双海先生と高木社長が部屋に入って来る。

 

「何だ今の悲鳴は!?」

「た、助けてほしいのです~!!」

 

 部屋に入って来た二人はレナが羽入ごと高速で回転している光景に、驚きのあまり声が出なかった。

 

 それから数分後。

 

 

 

「はう。はう。はぅ~」

「レナ、落ち着いて」

 

 魅音、圭一、春香、千早が四人がかりでレナが暴走しないよう押さえつけその間、双海先生は羽入の目や舌を診ていた。

 

「どうやら特に問題はなさそうだな」

 

 先生の診察が終わると同時に暴走状態が治まり、レナが大人しくなったのを確認した四人はレナから退いていった。

 

「レナくんはやっと大人しくなったようだね」

「ええ四人がかりでやっと羽入を引き離す事が出来ましたよ、いてて」

 

 圭一は顔にできた痣を撫でながら言う。

 

「まさか車田飛びを生で見れるなんて」

「正面から助けようとした圭一くんを遠心力を利用した拳で殴り飛ばしたからね」

「ハニー少しジッとしててほしいの」

 

 春香と千早が先ほどの一部始終を思い返す中、美希は濡れタオルを畳に座っている圭一の顔に優しく当てた。

 

「ありがと、美希」

 

 美希に礼を言いタオルを当てて貰っていると高木社長が腕時計を見て、

 

「おっともうこんな時間かそろそろ私はみんなのもとに行かなくては」

「ライブが終わったから皆帰らないといけないの」

「羽入はボクと一緒に帰るのです」

「あぅ分かりました」

「俺も行かないと、今頃楽屋の方へ全員戻っているだろうからな」

 

 圭一は靴を履きながら言い、立ちあがると魅音達に聞く。

 

「魅音、貴音お前らはどうするんだ?」

「そうだね、ライブ成功祝いとして響誘って今夜ラーメンでも食べに行こうかね」

「魅音それは真ですか!」

 

 ラーメンと聞いた途端貴音が目を輝かせながらうれしそうに言った。

 

「ほんと貴音はラーメンが好きだね」

「ええわたくし、らぁめんには目が無いのです。特にあの麺と絡む、すぅぷと具が」

 

 貴音が魅音にラーメンについて熱く語っているの背中で聞きながら部屋を出た圭一は社長、春香たちと765プロと張り紙がされた楽屋に行き、中にいたメンバーに労いやお疲れ様と声をかけて、社長のお言葉が終わった後解散となった。

 

 ライブ会場 敷地内駐輪場

 

 

 

「さてこれからどうしようかな」

 

 自転車に跨りながら圭一はつぶやくと何処からか魅音がやって来た。

 

「あ、いたいた、圭ちゃん」

「ん、魅音どうした?」

「今からラーメン屋に行く所なんだけど、圭ちゃんもどうかなって?」

「そうか。別に良いぜ今日は親父もお袋も用事で帰りが明日になるから今日の夕食どうしようかと考えてたとこなんだ」

「良かった、それじゃ行こうか。貴音と響は向こうで待っているし早く行かないと貴音が空腹で発狂しかねない」

 

 圭一は魅音と貴音達がいる所へ行くと梨花と羽入もいた。

 

「貴音に誘われたのでボクたちも行くのですよ」

「あぅ、ラーメン楽しみなのです♪」

「はは、まあ人数が多い方が楽しいしそれじゃあ行きますか」

 

 魅音がそう言い出発したその後貴音おススメの店でラーメンを食べ、貴音の食べるラーメンの量に圭一達は度肝を抜かれたり。圭一と魅音が大盛り辛味噌ラーメンの早食い勝負をしたりと時間は過ぎていき店を出た時にはすっかり夜になっていた。

 

「ふー食った食った」

「ボクも羽入もお腹一杯なのですよ」

「それじゃ自分、家こっちだから帰るぞ」

「おう、それじゃあな」

 

 響に別れつげ圭一達も帰路をしばらく歩き、やがて分かれ道に着くと、

 

「俺たちはこっちの方向だから」

「だけど梨花ちゃんと羽入はここから二人だけなるけど何だか心配だな」

「大丈夫なのです、何も起きないないのですよ」

「でも万が一何かあったら」

 

 と圭一と魅音が二人の心配をしていると、

 

「ではわたくしが二人を家まで送りましょう」

 

 貴音が二人と一緒に帰ると言い出しそれを聞いた圭一と魅音は安心した。

 

「そうか、それじゃあ貴音頼むわ」

「ええ魅音、それでは二人とも帰りますよ」

 

 圭一達と別れた後三人は街灯で照らされた夜道を歩いて行き五条神社の前に着くと梨花が羽入に聞いた。

 

「羽入あんた本当に神社で生活するの?なんでわざわざそうするのよ」

「貴音に誘われる前にも言いましたが理由は五条神社はこの世界の僕と梨花が暮らしていた家であるのともう一つ、奥にある蔵が気になるのです」

「蔵?」

「前は機会が無く調べることが出来なかった一条家や五条家、梨花の父親が遺した鬼ヶ淵村の記録などについて何かしらの手掛かりがあるかもしれないのです」

「羽入殿、蔵を調べるのは本当ですか?」

 

 急に後ろの方から貴音が羽入に聞いた。

 

「あぅ?何か不味い事があるのですか」

「実は、前に一度神社を調べた事があるのです」

「神社をですか?」

「ええ」

 

 梨花と羽入の顔を見ながら貴音は話し始めた。

 

「梨花の御両親が災厄で亡くなって間もなく四条家は神社本殿を調べたのです。その後蔵を調べようとしたのですが、扉には錠がかかっており鍵は無いか捜したのですが見つからずその後断念しました」

「錠を壊そうとはしなかったのですか」

「五条家は呪いを生業とした一族、その一族の土地でこれ以上無礼や狼藉を働けば災いが降りかかるという理由で調べられなかったのです」

 

 貴音が説明し終わると羽入は少し落ち込んだ様子で、

 

「あぅ、残念なのです」

「ですが最近になって梨花の父君が亡くなる直前このような言葉を信頼できる人に遺していたそうです」

「父が?何て言ったの」

 

 父親が話に出て今度は梨花が貴音の話に食いついてきた。

 

「ええこう遺したそうです『古手家と鬼の歴史が始まった地に一族の鍵を隠した』と」

 

 梨花は神社や父について知らなかった事が新しく分かり、困惑した表情をしていると貴音が、

 

「話はこのぐらいで終わりにしましょう。梨花、貴女を小鳥嬢の家までお送りします」

「・・・貴音、貴重な話ありがとう」

「ありがとうなのです。貴音また機会があったら話してください」

「分かりました。機会がありましたらまた」

 

二人は貴音に礼を言い梨花は羽入に家鍵を渡すと羽入は「お休みなのです」と言い神社境内の別宅に駆け足で走って行った。

 

「それでは梨花行きましょう」

 

 貴音はそう言い梨花と二人で歩いて行き、その後アパートの前に着くと入り口付近の所に小鳥が立っていた。

 

「梨花ちゃん少し帰りが遅いから心配したのよ」

「ごめんなさいなのです、でも貴音が一緒でしたから大丈夫だったのですよ」

「そうなの、貴音ちゃんどうもありがとう」

「いえ礼には及びません帰り道が同じだけでしたので」

「貴音、お休みなのですよ」

「ええ梨花、またいずれ」

 

 貴音と別れ、風呂に入った後、梨花は疲れがどっと出たのかすぐに眠りについた。

 その夜中、梨花はふと目を覚ますと眠る前までにあった出来事を思い出し整理した。

 

「神社、父、五条家。そしてこの世界に来る直前ベルンカステルが見せたカケラで起きた惨劇・・・いったいこの世界で何が起きようとしているの」

 

 梨花はしばらく考えた後疲れが残っていたのかいつの間にか再び眠った。

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