スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION 作:拳を極めし者
この話はリュウが関わらないのでその方がスピーディーでいいかと思いまして。
【リュウside】
[新暦75年 4月某日 機動六課敷地 湾岸部]
今日は朝から気分が晴れない。いつもならとっくに修行を開始している時間だが、残念ながら今日はそんな時間は無い。何故ならばナッシュと子供達の対決の日だからだ。
ガイルの話を信じるならばこの対決を通してナッシュの胸の内が明かされるという。
対決場所へ向かうとその舞台である陸専用空間シミュレーターは既にセットされており、フォワード陣とナッシュと共に立会人としてはやてとフェイト…そしてなのはも揃っている。
「ナッシュとフォワード四人は全員揃っているようだな」
「おはよう。ナッシュは…やっぱり浮かない顔ね」
ガイルと春麗が様子を見に来た。数日前までは見届けるかどうか考えていたようだが、やはり見届ける事を決めたらしい。
「お、お前ら見に来たのか。来るの渋ってたんじゃなかったのか?」
「我々以上に付き合いの長い彼等でさえナッシュの真意を計り兼ねているのだ。気になるのは当然だろう」
「リインは違うですけどねー」
「我らは彼に対して何も出来んが…せめて見届けねばな」
「私はもしもの時の為の回復役ね」
俺達に続いてヴィータ、シグナム、リイン、ザフィーラ、シャマルも到着した。彼女達もナッシュの事を心配しており、歩きながらナッシュの話をしている。
「シグナムは冗談が通じねえなぁ。…それにしてもナッシュの奴、やっぱ暗い顔してやがんな」
「我々の前では見せた事の無い感情か。…事情は聞いたがやはり信じ難いな。普段の彼からはとても考えられん」
「誰だって譲れない事とか古傷の一つくらいあるさ。それに…例え真実でも、どれだけ正しくても、言葉だけじゃ相手には伝わらない事もあるし分かっていても受け入れられない事だってある。あたし達もそうだったろ?」
「……そうだったな。彼が何を思い、何を伝えようとしているのか…。見届けさせて貰おう」
「…はいです」
「そうだな」
「私の出番が来ない事を祈りましょう…」
対決の前にジャッジを務めるなのはからのルール説明と質疑応答。
「皆さんおはようございます。本日の模擬戦のジャッジを務めさせていただく高町なのはです。開始前にルールの確認を行いますのでご静聴願います。
………
………
………
「ルール確認は以上です。質問はありますか?」
「質問ではありませんが一つよろしいですか?」
「どうぞ、ランスター二等陸士」
「見たところナッシュ中尉はジャケットを装着してませんよね?なのにあたし達が非殺傷設定にしないのはあまりにも危険…」
「私は子供に心配されるほど軟弱な鍛え方はしていない。心配なら自分の身の安全の心配でもしていろ」
「なっ…!」
「私は平等を期す為に君達の情報の一切をカットしたんだ。むしろ感謝して欲しいものだ」
「そんな言い方…!」
「二人共落ち着いて。…ナッシュ中尉、こう言っていますが如何ですか?今からでも魔力資質の無い方でも装着できるジャケットを支給出来ますが」
「何度も言わせないでくれ。不要だ」
「…了解です。では他に何かありますか?無ければ以上で締め切ります」
互いに無言。という事はいよいよだ。
「では締め切ります。双方所定の位置へ移動して下さい」
質疑応答が終わるとナッシュとフォワード陣は互いに離れた所定の位置へ向かい、それぞれが着くと通信機を通してなのはが語り掛ける。
『双方所定位置へ到着。それではナッシュ中尉対スターズ分隊・ライトニング分隊隊員合同チーム…。READY…』
「(ナッシュ…。お前の真意、確かめさせて貰うぞ!)」
『FIGHT!!』
闘いは始まった。
五人の様子はモニターでも確認出来るが、俺はこの目で直接見届けたかったので舞台でなのはと共に視認可能な位置で見届ける事にしていた。
開始してから間も無くガイルと春麗もやって来た。最初は渋っていたがやはり二人も自分の目で見届けたいようだな。
他のメンバーはこちらには来ず、モニターで見ているらしい。話によると「自分達は部外者。友人であるあなた達は近くで見届けるべき」とはやてが言っていたそうだ。
「ちわッス」
「ヴァイス、お前も来ていたのか」
そして先程はいなかったヴァイスが突然俺達の場所にやって来た。
「ヴァイス君。今いるメンバー以外にこの模擬戦の事は知らされていない筈なんだけど…誰から聞いたの?」
「ガイルの旦那からッスよ。…ナッシュの旦那の事を聞いたら他人事と思えなくて、ね」
「何時ぞやの詫びのついでにこいつの身の上話を聞いてな。その時にこいつになら話しても大丈夫だと思って話したのさ。全部ではないがな」
「(口の硬いあのガイルが…俺達にさえ頑なに話さなかった事をヴァイスに話したのか。変われば変わるものだな)」
「あなたなら口が硬いからいいけど……ガイル少佐」
「……なんだ?」
「この模擬戦は一応非公開なので次からはこのように軽々しく他の人に話さないでくださいね?」
「わ、分かった…」
「(ガイルが気圧されるとは…。なのはめ…気当たりも強くなったな)」
「あ、あいつ眼鏡を…」
「あの子達…大丈夫かしら…」
「眼鏡?…どういう事だ?」
雑談している中でガイルと春麗がナッシュの変化に気付いて呟く。ナッシュをよく見てみると、確かにさっきまで掛けていた眼鏡を外している。だがそれが何だというのだろう。
「あの眼鏡は伊達でな。趣味として掛けていて滅多に外す事は無いんだが…何かに対して本気になった時にだけ外すんだ。本人はあまり意識していないようだがな。それを外したという事は…」
「少なくとも手加減する気は無いって事よ」
「(…無事に終わりそうにはない、か…)」
ガイル達と話していると両チームが交戦に入った。そしてこの対決を通して俺はナッシュの戦闘力と秘めた悲劇を知る事になる。
[模擬戦終了後]
「(ナッシュ…お前はそれ程の覚悟を…)」
対決は終わり、俺達の場所にはやて達も合流した。
ナッシュが闘いの最中に投げ掛けた質問と吐露した感情、全てが終わった後に語った悲劇となのはとのやり取りが充分過ぎる程にナッシュの心を露わにした。
ナッシュが意識を失った後、ガイルははやて達に口を開く。
「これは俺から言うべき事ではないかも知れんが…ナッシュを許してやって欲しい。今までの言動はナッシュなりの優しさなんだ」
ナッシュをちらりと見てからはやてとフェイトが答える。
「いえ、むしろ許してほしいのはこちらの方です。ウチはナッシュ中尉の事…勘違いしてました」
「私も…理由も考えずに感情的になっていた自分が恥ずかしいです」
「ナッシュの旦那…俺なんかよりずっとキツい目に会ってたのに必死に前に進んでたんですね…。なんだか…自分が情けないッス…」
「そう悲観するな、ヴァイス。お前の心の傷も浅くはない」
「…ありがとうございます、ガイルの旦那」
その様子を遠巻きに見ていたヴィータ、シグナム、リイン、ザフィーラは……
「わだかまりが溶けてめでたしめでたし、だな」
「ああ、一時はどうなるかと思ったがな。しかしナッシュの尋常ならざる覚悟、そして揺るぎ無き正義…。確と胸に刻んだぞ」
「私は…過ちを犯すところだった…。猛省せねば…!」
「いや、お前はあれでいい。いつ如何なる時も命を守る盾となるのがお前の使命だ。言ってしまえば私の判断も所詮結果論。下手をすれば命に関わっていたのも事実なのだからな」
「…その言葉で心が軽くなった。礼を言おう、我が将よ…」
「ん?リイン、どうした?涙なんか流して」
「うう…ナッシュさん…。そんなかわいそうなことがあったんですね…。だからあんな態度を…。キライなんて言ったリインを許してくださいです…」
「そんなに気にすんなって。そもそも嫌いって言ったのはナッシュには聞かれてなかったんだろ?」
「そうですけどー!言わずにはいられないんですー!」
「だったらナッシュが目を覚ましたら直接言ってやれよ」
「う…。それは勇気がいるですね…」
「それじゃあ私はこれから一仕事しなくちゃいけないから先に戻ってますね」
「ああ。スバルとナッシュを頼んだぞ、シャマル」
「はいはい皆さんどいて下さーい。ナッシュさんは緊急手術が必要な状態なのでこのまま運びますよー」
この時を境にナッシュとはやて達の関係は改善された。
子供達とは後日改めて話し合いの場を設けて説明と謝罪を行った結果、快く許してくれたそうだ。
元々が時空管理局でも屈指の実力者や優秀なスタッフの集まった機動六課。先日までは信頼関係で不安が残っていたが、本当の意味で機動六課が一つになった。これならば恐らく…いや、絶対にシャドルーには負けん。
ただ…気掛かりが一つだけある。それはスバルの事だ。日常生活の時には特におかしい所は無かったが、今日のスバルは様子が違った。
恐らくだがスバルは一度殺意の波動が表に出て来て以来、心の沸点が低くなってしまったような気がする。でなければいくら怒りに任せた衝動的な行動であってもあれ程までに徹底的にやる理由の説明が出来ん。
ただしこれは確証がある訳ではない。今は俺の胸の内に閉まっておいてこれから注意深く見守る事にしよう。
そして俺自身の問題も未だ解決していないが、俺達の世界の中だけでなく他の世界にまで手を伸ばし始めたシャドルーを今度こそ完全に叩き潰さなければならない。ナッシュの体験した悲劇を繰り返させない為にもな。
今は為すべき事を為しながらただひたすら拳に答えを求めるのみだ。
何故なら俺は…「格闘家」なのだから。
【リュウside…END】
この話だけ読んだらなんでみんな和解してるのかサッパリ分からないですよね。
その辺は次からじっくりとやっていきます。