スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION   作:拳を極めし者

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いよいよ模擬戦開始!
4対1となのはとの訓練と同じ条件ですが、これはどちらかがやられるまで終わらない危険な模擬戦です。

ちなみにここから結構重大な設定が登場します。


第五話「正義 -贖罪と信念-」B

【スバルside】

 二日目の訓練開始前になのはさんから言い渡されたナッシュ中尉との模擬戦の報せ。ただの模擬戦なら大して気にする事もなかったんだけど模擬戦はナッシュ中尉の提案であたし達の腕試しを自分でしてみたかったという事らしく、更にはなのはさんに「模擬戦で何を言われても、何が起こっても、感情的にならずによく考えながら戦ってね」って言われたからずっとナッシュ中尉の事が気になってたんだ。

「何を言われても」ってのはナッシュ中尉の口が悪いって事かな?あと「何が起こっても」ってのは模擬戦の最中に怪我してもって事かなぁ。でもそんな当たり前の事ならわざわざ言ったりしないよね。そうなるとやっぱり分かんないや。

 

 それからあっという間に日は過ぎ、なのはさんの言った事がどういう意味か分からないまま模擬戦の当日を迎えた。

 

 

 

[ 4月某日 機動六課敷地 湾岸部]

 今日は早起きして準備を整えてから模擬戦の舞台の陸専用空間シミュレーターに向かうと、そこには以前あたしとティアが昇格試験を受けた廃棄都市街が姿を見せていた。

 

「おはようございます、なのはさん」

「おはよう。体調は整えてきた?」

「もちろんバッチリです!」

「うん、いい返事。…ところで私が言ったこと、覚えてる?」

「はい。正直まだ答えが分からないですけど…とにかく一生懸命やってナッシュ中尉に認めてもらえるよう頑張ります!」

「……その気持ち、絶対に忘れないでね」

「?…はい。分かりました」

 

 なのはさんが急に真剣な顔になった。あたし、何か変な事言ったかな…。

 

「ところでなのはさん、ナッシュ中尉は?」

「もういるよ。ナッシュ中尉、準備をお願いします」

 

 なのはさんが声をかけるとビルの中からナッシュ中尉が出て来た。発足式の時に目が合った事はあるけど、直接会って話すのは今回が初めてだ。

 

「話は聞いているだろうが、私が君達の相手になるチャーリー・ナッシュだ」

「スバル・ナカジマ二等陸士です!」

「ティアナ・ランスター二等陸士です」

「エリオ・モンディアル三等陸士です!」

「キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります」

「「「「本日はよろしくお願い致します!!」」」」

 

「……よろしく」

「「「「……」」」」

 

 随分暗い雰囲気の人だなー。しかも表情もちょっと寂しげというか物憂げな感じだ。フォワードのみんなも同じ事を思ってるみたい。

 

 模擬戦の開始前にジャッジを務めるなのはさんの説明が始まり、質疑応答に入るとナッシュ中尉がティアにちょっと挑発的な事を言ってきた。ティアだけでなくあたしもちょっとムカっとしたけどなのはさんの言葉を思い出して感情を呑み込んだ。

 

 質疑応答が終わるとあたし達とナッシュ中尉はスタート地点へ移動。到着するとなのはさんから通信が入る。

 

『それではナッシュ中尉対機動六課スターズ分隊・ライトニング分隊隊員合同チーム…』

 

「(互いに非殺傷設定じゃないから怪我は避けられないけど…そんな事は気にせずあたしの思いを全力でナッシュ中尉に届ける!)」

 

『READY……FIGHT!!』

 

 

 

 遂に戦いが始まった。あたし達とナッシュ中尉は互いに中央のビルを挟んだ半径2kmの直線上にいる。

 フォーメーションはあたしとエリオが前衛、中衛にキャロ、後衛にティア。あたしとエリオで相手を食い止めて、補助系魔法が得意で特にブースト系(魔法等の性能を強化する)の魔法に優れたキャロが主にブーストで援護して、ティアが射撃で牽制しながら指揮を執る形だ。なのはさんの話によると「このフォーメーションは仮のもので後々変更する」って話らしい。

 舞台はビルが多くて見通しが悪いけど、中央の大きなビルに向かって幅の広い道路が延びている。ティアに「中央のビルに行って」って言われたから今は全員でそこを目指して道路を真っ直ぐ移動中。ティアは建物の屋上をアンカーガンで移動している。

 

「(相手は一人…。中央さえ押さえれば後はワイドエリアサーチで先に見つけて先手を取れる!)」

 

「(今思えば格闘家の人とまともに戦うなんて初めてだ。リュウさんとは昇格試験の時に戦ったけど…あの時は攻撃避けられまくってビックリしたなー。

 でもよく思い返してみると手加減されてたんだよね、あれ。全く手足を使ってなかったからね。手加減されてあの強さなら、本気になったリュウさんがどれだけ強いのかなんて想像も出来ないや。ナッシュ中尉もリュウさんみたいに強いのかな?)」

 

 走りながらそんな事を考えていると、中央のビルから飛び出して動く物陰が見えた。目を凝らして見てみるとそれはナッシュ中尉だった。ナッシュ中尉は隠れもせずに一直線に走っている。

 

「(速ッ!いつの間にビルへ!?)」

 

 あたし達はまだ半分を過ぎたばかりなのにナッシュ中尉はビルに到達したどころか通り抜けてこっち側へ走ってきていた。2kmの距離を30秒くらいで…。

 あたし達は固まって移動していたから遅かったとはいえ、あまりにも速い。あたしはスピードには自信があるけどそれはローラーブーツを履いた上での話。この距離を生身で、しかもこんな短時間なんてあたしには到底不可能だ。

 

〈みんな物陰に隠れて!〉

 

 あたし達フォワード陣は地上にあたしとエリオ二人、少し離れてキャロが一人、そしてビルの屋上にティアと三手に分かれて物陰に隠れた。

 

〈前にも言ったけどナッシュ中尉は『音速攻撃の使い手』だそうだから迂闊に近付かないでよ!あと音速の飛び道具もあるらしいわ!先ずはあたしが牽制するからあたしの指示が出るまで全員隠れてて!〉

〈〈〈了解!〉〉〉

 

「(勢いで返事したけど…音速…。あらかじめティアから聞いてはいたけど…)」

 

 ナッシュ中尉本人を前にして言われると不安になってきた。

 あたしは音速の攻撃なんて喰らった事も無ければ見た事も無い(フェイト隊長は移動魔法で音速が出るらしいけど)。リュウさんだって音速の攻撃は簡単には出せないみたいだし…。

 そんなスピードで殴られたり蹴られたりしたら一撃で終わりそうだ。それにあたしは格闘戦が得意と言ってもそんな攻撃を躱す自信は全く無い。

 

「(あたしの唯一の取り柄が通用しないかもしれない…。そんな人相手に…あたしが役に立つの?)」

 

 不安が段々と大きくなっていく。

 

 

 

 あたしの不安を他所にキャロがティアのいるビルに上がっていって、その間にティアは連射を開始した。

 

 ナッシュ中尉はステップで悠々と回避してしまったけど、偶然にも数発の弾がステップで着地する一瞬の硬直を捉えた。当然その弾は命中した…と思ったその瞬間、その弾は「消えた」。

 最初は何が起こったのか分からなかったけど、ナッシュ中尉をよく見るといつの間にか右腕がまるで振り抜かれたように拳を握って左側へ伸びていた。その腕を見てあたしは気付いた。

 

「(まさか…素手で弾を払ったの!?)」

 

 シュートバレットは威力が低いと言ってもコンクリートを割ったりオートスフィアの装甲に穴を開けるくらいの威力はあるし、弾速だって普通の人間じゃ反応する事すら困難な速さだ。本来なら見てから反応するのは難しい上にバリアジャケットも無しに物理破壊設定で人体に命中すれば痛いだけじゃ済まない筈。なのにこの人は…。

 

 

 

 呆気に取られているととティアが射撃を行いながら話しかけてきた。

 

〈みんな!作戦を手短に説明するからよく聞いて!〉

 

ティアの本領発揮だ!

 

〈先ず始めにキャロはブーストであたしを強化!その後は状況に応じてあたしが指示した魔法を使って!〉

〈はい!〉

〈スバル!あの人の周りの足場を崩すからスバルは合図したら射撃!リボルバーシュートで吹っ飛ばして確実なダメージを与える!〉

〈うん!〉

〈あとあんたはもっと落ちつきなさい!この距離で警戒さえしてればあんたなら躱せるはずよ!〉

〈…!!〉

〈返事!〉

〈うん!ありがとう!〉

 

〈お礼は終わってから!で、エリオはあたし達の所に来てあたしとキャロを守って!あたし達じゃ他のことに気を回しながら音速の飛び道具を躱すのは無理!

それに状況次第ではスバルの援護にも行ってもらうわ!その後チャンスがあったら突撃!トドメに行ってもらうから一撃で決めなさいよ!〉

〈任せて下さい!〉

〈じゃあ行くわよ!〉

〈〈〈了解!!〉〉〉

 

 作戦開始だ!

 

 

 

 

 エリオがティア達の場所へ向かった後、あたしは建物の陰から顔を出して様子を伺いながらカートリッジを一個使ってリボルバーシュートの準備をした。

 その間にティアがさっきの倍は大きい魔力弾で連射を開始してナッシュ中尉の周りを撃ち始めた。こっちの意図に気付かれないように本人も適度に狙う。ナッシュ中尉は危険を感じたのかさっきより回避に集中しているように見える。

 

 弾が地面に着弾すると大きな穴が空き、どんどんナッシュ中尉の周りの足場が悪くなっていった。このまま作戦通りにいくかと思ったその時、ナッシュ中尉は足を止めてティアの攻撃を手当たり次第に迎撃し始めた。回避できる攻撃をわざわざ受けるって事は…もしかして作戦がばれた?

 でも今度はナッシュ中尉の動きがはっきり見えた。ナッシュ中尉は目に止まらない程のスピードで両腕を振りまくって次々と弾を弾いている。

 

「(さっきのティアの攻撃は素手で払ったんじゃない…。振った腕から出た『何か』で掻き消してたんだ!でも大きい弾は消せないみたいだ。それにあの技じゃ範囲攻撃のリボルバーシュートは防げない筈!)」

〈(予定とは違うけど移動は封じた!)スバル!〉

 

 よし、ティアの合図だ!

 

 

 

 素早く物陰から出てリボルバーナックルを前に構える。

 発射しようとした正にその時…

 

「リボル…ぶっ!?」

 

 ところが突然あたしの顔が「謎の衝撃」を受けて跳ね上がった。何が起こったのか分からない。しかも打ち所が悪かったらしく、視界が白くなって意識が飛びそうになった。

 

 意識を取り戻すとあたしは後ろに仰け反って倒れそうになっていた。倒れまいと右足を後ろに突き出して身体を支える。でも頭がクラクラして膝に力が入らない。今にも倒れそうだ。

 

「んぐぐぐぐ…!(踏ん張れあたし…!ここで倒れたらもう立てないと思え!)」

 

 あたしは自分を奮い立たせてなんとか体勢を立て直して乱れた呼吸を整え、流れ出た鼻血を拭う。

 

「はあっ、はあっ…。(危なかった…。運良く一撃ではやられなかったけど…。このままじゃホントに役立たずで終わっちゃう…。これじゃフォワードのみんなにも…なのはさんにも申し訳が立たない…。だけどそんなの…絶対にやだ!)」

 

 

 

 このままじゃ終われない。そう思った途端……

 

「うああああああ!!」

 

 あたしは無意識にナッシュ中尉へ突進していた。同時にナッシュ中尉は突進するあたしに気付いて目をこっちに向ける。そして次の瞬間、再びさっきの衝撃が飛んで来た。

 

 その攻撃は見てからじゃ防御も回避も間に合わない程に速かった。だけどあたしは右腕を前に出しながら走っていたから何とかガードに成功する。

 

「(このままじゃ終わらない…終われない…!)」

 

 無我夢中で突き進んで行ったその時……

 

「うわっ!」

 

 あたしとナッシュ中尉の間に火球が撃ち込まれ、そこから一瞬で炎が広範囲に広がった。

 炎に巻き込まれないように急旋回して回避。そして突然の出来事に驚いて落ち着きを取り戻す。

 

「あ、あたし…何を…」

〈何やってんのよスバル!迂闊に近付くなって言ったでしょ!さっさと下がりなさい!〉

〈でもあたし…〉

〈言い訳は後!いいから戻り…〉

 

 突然ティアの言葉が途切れる。一体何が…。

 

〈ティア!どうしたの!?〉

〈………〉

 

 ティアからの返事は返って来ない…けどその答えは直ぐに「降ってきた」。

 

 あたしは目の前の光景に唖然としていた。炎はまだ消えていない。しかも距離は50mくらいはあるし、当然ながら熱の届く範囲は火より広い上にこの熱はただの熱じゃない。それをこの人は「跳び越えて来た」んだ。

 

 降ってきたナッシュ中尉は着地すると静かに立ち上がる。そしてあたしを鋭い眼光で睨みながら一歩、また一歩と着実に近付いてきた。

 

「はあっ…はあっ…」

 

 あたしはその場から一歩も動く事が出来ず、距離が縮まる毎に身じろぎ呼吸が乱れていく。気付いたらナッシュ中尉は互いの手が届く距離まで近付いていた。

 

「(やばい…!)」

 

 そんな距離になるまで動けなかった自分を悔いながら咄嗟に攻撃しようとした瞬間にあたしの顔をとんでもなく速い何かが掠めていき、それに驚いて思わず後退る。

 

「(い、今のはパンチ…だよね…。全く見えな…)」

 

 その時、横の髪が切れてはらりと落ちていった。

 

「…え?」

 

 同時に頬やバリアジャケットに何ヶ所もの鋭利な切れ目が入る。

 

「(な…何これ…。打ってきたのはパンチのはずなのに…なんで刃みたいに…。しかも…今の一瞬で何発…)」

 

 自分のその状態を見た途端、背筋に寒気が走る。でも今は相手が目の前にいる。謎の攻撃の恐怖を何とかごまかし、意を決して再びナッシュ中尉に振り返る。

 

「怖いか?」

「!?」

 

 …信じられない。相手が目の前に、しかも手の届く距離にいるこの状況で話し掛けてくるなんて理解出来ない。でもあたしは身体が震えて動く事も出来ず、ただ立ち尽くすしかなかった。

 

「それは当然だ。人は自分に死を予感させるものや自分の想像を超えたものが自分に牙を剥いた時、恐怖を感じるものだからな」

 

 声にならない声を振り絞って必死の反論を試みる。

 

「あ、あたしは怖くなん…」

「だが戦場ではそんな甘えは許されない。恐怖に足が竦んだ者に訪れるのは『死』のみだ。戦争でないこの闘いでさえもそんな状態になってしまうなら尚更だ」

「………」

 

「そして危険に対する警戒心の無い者も生き残れない。もしここが戦場だったなら君は四回は死んでいた。

 最初は私が君の顔を撃った時。私達の世界ではヘッドショットは喰らえば即死だ。今の私の力ではそこまでは無理だがな。

 二回目は君が私に突進して来た時。私は一回目の時と同じく君の顔を狙ったが、ただ止めるだけならガードが難しく尚且つ当たれば確実に動きが止まる足元を狙うのがベストだった。だが私は君を誘い込んで一撃で止めを刺す為にあえて君がガードしやすいように同じ場所を狙ったんだ。君は君の仲間の援護が無かったらあの後終わっていたんだよ。

 三回目は私が炎を跳び越えた時。これも本来なら落下しながら攻撃して一撃で止めを刺せたがそれをしなかった。

 そして四回目は先程私が君に歩いて近付いた時。これは決定的だ。敵が自分の目の前にいるのに君は攻撃するどころかこの距離になるまで動こうともしなかった。私も結局は先程の攻撃を当てなかったが…それは君とこうして話をする為だ。これが何を意味するか分かるか?」

「………」

 

 何も言い返せない。多分…全部事実だから。そして質問の答えが分からない。あたしはただ沈黙するしかなかった。

 

「…やはり分からんか。では質問を変える。君は何故、何の為に『機動六課にいる』?」

 

 あたしが機動六課にいる理由…それは…

 

「…憧れた人に追い付く為、助けを求める人を一人でも多く助ける為、もう一人の自分に勝つ為…です」

「………」

 

 あたしが答えるとナッシュ中尉は目を閉じて少しの間沈黙した。

 

「そうか…。理由はそれで全部なんだな?」

「…はい」

「最後の質問だ。君に『覚悟』はあるか?」

 

 覚悟?覚悟なら4年前のあの時からできている。

 

「…昔のある出来事をきっかけにずっと…。どんなに辛くても険しくても、必ずやり遂げます。それがあたしの…全てだから」

 

 またナッシュ中尉が下を向いて沈黙。再び顔を上げると突然ナッシュ中尉の雰囲気が変わり……

 

「そうか…。ならば『お前』は…」

 

 そして一言こう告げた。

 

「機動六課から去れ」

 

 

 

 ナッシュ中尉のこの言葉と同時にあたしの意識は途切れる。

 でも意識が途切れる前に一瞬だけ見えたナッシュ中尉の顔が、何故か寂しげに見えたんだ。

 

 

 

【スバルside…END】




スバルがまさかの一番落ち!
でもこのまま模擬戦が終わる訳がありません。
次回はスバルの優しさとナッシュの正義感が火花を散らします。
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