スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION   作:拳を極めし者

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今回は新人達と対話して互いを理解し合う回です。
普段のクールなナッシュさんはいずこ……。


第六話「決着 -約束と結束-」B-3

[翌日 夜 機動六課隊舎 医務室]

「診察の結果、容体は良好…ですけど痛い場所は無いですか?具合は悪くありませんか?身だしなみは整えてきましたか?道は覚えてますか?」

「シャマル君…私はそんなに子供なのか?」

「い、いえいえそんな事は思ってないですよ!ただ容体から鑑みてちょっと心配になっただけです!」

「…では外出してくる…」

「気を付けて行ってらっしゃーい。門限は無いですけど日付が変わる前には帰ってきてくださいねー」

「(思ってるじゃないか…)」

 

 

 

[ミッドチルダ市街 食堂]

「(とうとう着いてしまった…)」

 

 不承不承シャマルに従ってここまで来たナッシュは土壇場でまだ悩んでいた。しかし「ここまで来たらもう後戻りは出来ない」と腹を括ったナッシュは頭を切り替え、着席しながら子供達の到着を待つ事にする。しばし呆然としたり「やはり帰ろうか」と思い悩んで30分近く経った頃…

 

「(ここまで来たら悩んでも仕方ない…先ずはシミュレーションだ。

 先に座って待つ私の視線の先に子供達→爽やかな顔で『よく来てくれたね。さあ、座ってくれ』と挨拶しながら着席を促す→全員が座っ…」

 

「お、けっこう広いね!」

「静かにしなさいスバル。お店に迷惑でしょ」

「僕、フェイトさん以外の人とこういう場所に来るのは初めてです」

「わ、わたしも…」

「(何…だと…)」

 

 予定時刻より30分以上早いスバル達の到着。自分が一時間ほど早く来た事で油断していたナッシュは予想外の事態に混乱を極め、下を向きながら呪文のようにブツブツと呟き始めた。

 

「まずいまずいぞ来るのが早過ぎるまさか高町君が気を利かせて訓練を早く切り上げたのか私とした事が彼女の性格を把握していたにも関わらず失念してしまったのかいやそれよりもまだシミュレーションが終わっていないぞこれではどうやって進行すればいいか分からないではないか先に挨拶はするとして着席した後の会話の流れはどうすればいいんだ取り敢えず模擬戦を行う事になった経緯から説明すべきだろうかだがそれだと話が長くなり過ぎはしないかそれにそうなると私から一方的に喋る事になりはしないかしかもそれだと印象が悪くなってしまうかもしれないので適度に質問を受け付けるべきかいやそれよりも子供達が私を嫌がったり怖がったりしてまともに私の話を聞いてくれるのかすら怪しいぞそれにもし謝罪しても許してくれなかったら全てが無駄になってしまうのではいやいや自分の事ばかり考えてどうするんだ私は許してもらう為に来た訳ではないだろう私がやるべき事は許してもらう事ではなく全てを話し…」

 

「あ、あのーーーー…ナッシュ中尉?」

 

「!?」

 

 自分を呼ぶ声に反応して顔を上げると、若干引き気味の表情になったスバルの顔が目に飛び込んできた。

 

「こんばんは…」

「あ…ああ!これは失礼した!さあ座ってくれ!」

 

 ナッシュに促されたスバル達はナッシュの意外な姿に戸惑いを感じながらも大人しく対面に着席した。

 

「………」

「「「「………」」」」

 

 ナッシュの緊張が伝わってしまったのか、子供達も何を話せばいいか分からないといった表情で沈黙している。

 

「(挨拶のタイミングを完全に逃してしまった…。そしてシミュレーションも総崩れ…。こうなればアドリブで進行するしかない!!)」

 

 この状況を打破しようと必死に考えていたナッシュはとうとう自分から喋り出す事を決意した。

 

 

 

「……君達には最初に言っておかなければならない事がある」

 

 そう言うとナッシュは立ち上がり、頭を下げながら…

 

「本当に…済まなかった」

 

 謝罪の言葉を述べた。

 

「「「「………」」」」

 

 スバル以外のメンバーは予想していなかった謝罪にしばし呆然としながら顔を見合わせ、ナッシュは顔を上げてスバル達を一瞥すると着席して話を続けた。

 

「…どうやらナカジマ君以外は私が『何故謝罪しているのか分からない』といった表情だな。さて、何から話せばいいか…」

「あの…ナッシュ中尉…。あたしからいいですか?」

「構わないよ。何だ?ナカジマ君」

「…質問の前に一つ言いたい事があります。ファミリーネームで呼ばれると他人行儀な感じでやなので『スバル』って呼んでください」

「…分かった、気を付けよう。では質問とは?」

「模擬戦の時のお話でだいたいは分かったんですけど…みんなはそれを聞いてないし、あたしも改めて詳しく聞かせてほしいことがあります。どうしてあの模擬戦をやろうと思ったんですか?」

「…そうだな。先ずはそこから詳しく話そう。それは私がこうして謝罪する理由にも繋がっているからな」

 

 ナッシュははやて&フェイトとの話し合いの内容、子供を戦場に立たせる時空管理局を訝しんでいた事、そして子供が自分の意思に反して闘わされてはいまいかと考えていた事を話した。

 

「失礼な言い方になってしまうが…私は君達が『自分の意志でその道を選んだのかどうか』、そして自発的にしろ強制的にしろ『闘いに臨む覚悟がどれ程のものか』という事を確かめる為に八神部隊長に模擬戦を組んで貰ったんだ」

「そうだったんですか…」

「だが私はそれを確かめた上で、身勝手にも君達を戦場から遠ざける為に闘いに対する恐怖を植え付けようと考えてしまったんだ。その結果は…ただ君達の心身を傷付けただけだった…。謝って許されるとは思っていないが今はそれしか出来ない…。済まなかった…」

 

 ナッシュは表情を曇らせながら再び頭を下げた。するとスバルがテーブルに手を突いて勢いよく立ち上がり…

 

「そんなことないですよ!」

 

 …と声を上げた。

 

「あたしってちょっと抜けてるから叩いて鍛えてもらうくらいがちょうどいいって思ってたトコなんですよ!」

「………」

「…なんちゃって…あはは…」

「(スベったわね…)」

「(これは…私を励ましてくれたのか?)」

「と、とにかくあたしは全然気にしてませんから!」

「ありがとう、ナカジ…スバル君」

 

 そう言ったナッシュの顔は僅かながら明るさを取り戻したようだった。

 

「…君達はどうだ?私の事をどう思っているのか、そして模擬戦の前後で自分の気持ちに変化はあったのかどうか…。私の事は気にせず本音を聞かせてくれ。先ずは…ランスター君、いいかな?」

「は、はい…。(本人を目の前にしてるのに面と向かって『自分の事は気にするな』なんて言われても気にしない訳ないじゃない…。頭いいのにムチャクチャな事言うわねこの人…。それにしてもこの人、スバルみたいにじっと目を見て話すのね。やり辛い…)」

 

 ティアナは渋々ながらもナッシュを悪く思ってはいない事、自分の人生は一貫して兄の汚名を返上する事であり兄の夢である執務官になる事だと答えた。

 

「全ては兄の為、か。それが今の君の原動力なんだな」

「はい。これはあたしの人生を賭けてでもやらなくちゃいけないんです。そのためなら何だってやるしどんなことにも耐えてみせます」

「うむ、若いのに見上げた心構えだ。だがそれを踏まえて答えてほしい。君は『その後の事』をどうするか考えた事はあるか?」

「その後?」

「ああ。目標を成し遂げた後の事だ」

「考えたことはありません。今はただ前へ進むだけで精一杯で他のことを考える余裕は無いですから。まあ、当然執務官になったらそれを続けていこうとは思ってますが他には特に…」

「そうか。無理にとは言わないが心の余裕ができた際に少しでいい、将来について具体的に考える時間を設けた方がいいな」

「……はい。肝に命じておきます。(なんか…保護者みたいにあたしのプライベートにクビをつっこむわね。今まで誰にも…言われた事もなかったわ…)」

 

「ありがとう。では次はルシエ…」

「!?」

 

 ナッシュがキャロを見ながら名前を呼んだ途端キャロがビクッと震え、反射的に隣に座っているティアナにしがみつく。

 

「ちょっとキャロ…!」

「…怖い思いをさせてしまって…すまない…」

 

 ナッシュは再び視線をテーブルに落としながら謝る。

 

〈あちゃー…これはマズイな…。ティア、フォローお願い!〉

〈いきなり振られてもできるわけないでしょ!なんて言ったらいいの…〉

 

 ところがその様子を見たキャロは慌ててティアナから手を離してナッシュに向き合う。

 

「こ…これはナッシュ中尉がこわいとかそういうのじゃなくて……そう!ついやってしまっただけなんです!だからあまり落ちこまないでください!」

 

 キャロがそう話し掛けると、ナッシュは顔を上げて無言で再びキャロを見つめた。するとキャロはまたしても身体がビクッと震えたが、何とか堪える。そして…

 

「正直…ここに来る前までは少しこわかったです。模擬戦でわたし達に質問した時の顔とかわたしをけり飛ばした時の顔がこわくて忘れられませんでした。

 でもさっきのお話を聞いたらこわくなくなりました。会ったこともないわたし達のことをそんなに心配してくれているんだって分かりましたから。それにそれだけじゃなくて…ティアさんの将来を気にしてくれたりわたしのことでそんなに落ち込んでくれてるのを見たら…きらいになんてなれませんよ」

 

 はにかみながらナッシュに意見を述べた。

 

 すると再び顔を伏せるナッシュ。今度は顔が全く見えないくらいに角度が深い。しかも何故か肩を震わせている。

 

「その…笑顔と言葉で…救われる…」

 

 消え入りそうな声でナッシュは呟いた。

 

「??」

 

 キャロはナッシュの言葉を聞き取れなかったようだ。

 数秒間の沈黙の後、ナッシュは勢い良く顔を上げてエリオに話し掛けた。

 

「そう言えばモンディアル君、他の三人からは聞いたが君の機動六課入隊の理由は聞いてなかったな。もし良ければ聞かせてくれないか?」

 

 落ち着きを取り戻したかのように静かに話すナッシュだったが、顔が真っ赤になっている事にスバルとティアナは気付く。

 

〈あ、泣きそうなのをガマンしたんだ。かわいいところもあるんだねー♪〉

〈しかもキャロはまだ自分に対する感想しか言ってないのにそれを忘れてるわ。キャロの慰めがそうとう効いたみたいね。いきなり話を進めたのは泣きそうなのをごまかすためってところね〉

 

「分かりました。これから一緒に働くからにはお互いを知る必要がありますからね」

「ありがとう。では聞かせてくれ」

「はい。僕は生まれた頃からずっと『ある理由』で研究施設の中で育ってきました。そこでは毎日研究のために検査や実験を繰り返されて…人間としてでなく実験動物のように扱われて…。フェイトさんに保護されるまでは空の星すら見た事がありませんでした」

「星すら!?君は一体どんな人生を…」

「それはまた後ほどお話しします。…続けてもよろしいでしょうか?」

「あ、ああ…」

 

「今考えればほんとバカだったんですけど…その時はとにかく悲しくて『自分の不幸を誰も分かってくれない』って怒ってて…。保護されてから医療施設で治療を受けていた時も誰の言葉も無視して暴れてました。そんなでしたからその医療施設にもいられなくなりそうになっちゃって…。だけど報告を受けたフェイトさんが…本当は僕の事なんて無視してもよかったはずのフェイトさんが会いに来てくれたんです。

 僕が暴れたせいで自分が傷付いても僕には一切手を出さずに近付いてきて…優しく抱きしめてくれました。僕と同じ境遇だったって事を打ち明けてくれて…『悲しいのは永遠になんて続かない』『楽しい事や嬉しい事は探せば絶対に見つかる』『私もそれを探すのを手伝う』って…。『だから悲しい気持ちで人を傷付けたりしないで』って…言ってくれたんです。フェイトさんの優しさが僕の心を開いてくれたんです」

「ハラオウン執務官が…そんな事を…」

 

「はい。その後すぐにフェイトさんが正式な保護者になってくれました。それからは本当にずっといろんな面倒を見てくれて…仕事で忙しいのに何度も会いに来てくれて…会いに来てくれる度にニコニコしてくれて…色々な事を教えてくれて…。なのにワガママも聞いてくれて…。たくさん心配かけて優しくしてもらって…それがどれくらい幸せだったのか、最近になってやっと分かってきたんです。だから僕はフェイトさんに少しでもその恩を返したいって思いました。

 そのためにまずは実力の証明になる魔導師ランクを取得しようと考えました。その結果…僕はちょっと珍しい能力を持っていた事もあってか短期間で陸戦Bランクを取得できました。

そして『力を身に付けた今ならフェイトさんの役に立てる』と思って、この度機動六課に志願した次第です」

「………」

 

 話を終えたエリオがふとナッシュを見ると、ナッシュは片手で顔を押さえながら肩を震わせていた。

 

「あ、あの…」

 

 その様子が気になり声を掛けようとした瞬間、ナッシュの顎からポタポタと液体が零れ落ちた。

 

「え…えええ!?」

「辛い事を…思い出させてしまって…済まない…。私はまた愚かな事を…!」

「い、いやいや!もう昔の事ですからそんなに気に病まないでください!それを乗り越えたからこそ今こうしてお話できるんですよ!」

「(何度聞いても…)」

「(切なくていい話ね…)」

 

「君は…若いのに…立派だな…」

「…今の僕がいるのは全部フェイトさんのおかげです。だからこそ僕はその恩に報いる義務が…いえ、自分の意志で報いたいと思ったんですよ」

 

 エリオの話が終わると片手で顔を押さえながらもう片方の手でポケットからハンカチを取り出し、顔を拭くとナッシュはようやく落ち着きを取り戻した。

 

「情けない姿を見せてしまって済まなかったな。もう大丈夫だ。では他に質問はあるかな?」

「はい、またあたしからいいですか?」

「お、また君か。構わないよ。何でも聞いてくれ」

「その…今更なんですけど…怪我の具合は…」

「ああ、その事か。深刻に考える必要は無い。大した怪我でもないのにシャマル先生が大袈裟にしているだけさ。もう殆ど治っているよ。だからこうしてここにいるんだ」

「(大したことがないなら手術するわけないじゃない。やっぱりどこか抜けてるわねこの人…)」

「でも…その左腕は…」

「これか?これは…フンッ!」

 

 ナッシュ中尉が左腕を上げて気合を入れるとギプスが弾け飛んだ。

 

〈何これ!?爆発する魔法でも使ったの!?〉

〈違うわ!多分急激な筋肉の膨張でギプスの負荷限界を一瞬にして超えたことによってギプスが砕け散ったのよ!〉

 

「こ…この通りだ…。気に…するな…」

 

 そうは言っているが顔には大量の脂汗をかいている。

 

〈てゆーかあれ…なんか無理してない?〉

〈…してるわね。多分あたし達に気を使って治ったフリしてるんでしょ。隠すのが下手過ぎるけどね。(やっぱり抜けてるけど…かわいいかも)〉

 

「ちなみに言っておくがこれは君の負わせた怪我ではないぞ。ランスター君によるものだ」

「「えっ」」

 

 スバルとティアナが同時に凍り付いた。

 

「ああ、別に他意は無いんだ。気を悪くしないでくれ、ランスター君」

「………(いきなり爆弾投下とはやるわね…)」

「そうだ。その時の君の技…魔法について言っておきたい事があったんだ」

「は、はい。何でしょうか?」

「その前に確認だ。あの魔法は未完成だな?」

「!?…ど、どうしてそれを!?」

「やはりな」

「さ、参考までに…どうやって気付いたのか教えてください!」

 

「そうだな…。私が気付いた理由は大別すると三つだ。一つ目はその魔法の発動タイミング。鎖で縛る魔法で私の動きを封じてから使ったという事は命中率に難があるか、或いは発動までに時間が掛かるので時間稼ぎが必要だったという事。君の射撃の腕を鑑みるに前者は有り得ない。よって答えは後者となる。この時点で既に単独で使うには厳しい事が分かるな」

 

「………」

 

「二つ目は威力…というか性能だ。あの弾は丸い上に異常なまでに大きく硬かった。単なる射撃なら丸くするより流線形にした方が遥かに強い…という事は丸くする事に意味があるという事。私が迎撃した後も軌道を変えて飛んで来たという事は追尾性か操作性がある。君の射撃の腕からすれば空間把握能力も高い事が分かるので自分で操作した方が確実だ。よって答えは後者。

そしてその操作性と硬度からこの魔法は『迎撃を受ける事を前提としている魔法』という事が分かる。そして直撃してあの程度のダメージで済んだのは私の防御力が高かったからではなく、元々その弾の威力が低かったと考えられる。何故ならば一度迎撃したのに再度飛んで来た時の速度がら迎撃する前と変わらなかった。変わらなかったという事は本来威力は同じ筈だ…が、結果はこの通り。恐らくは防御魔法のようなもので弾を保護する為に敢えて面積を大きくしたものと思われる。それ故か君の故意かは分からないが、防御に力を割り振り過ぎて肝心の弾の威力が足りないように感じた訳だ」

 

「…!!(た、確かにあたしは弾体をバリアで包むのに精一杯で他のことを疎かにしてたかもしれない…。だけどそれをこの人は…一度喰らっただけでここまで完璧に…!)」

 

「三つ目だ。二つ目にも繋がる話だがね。これが最も分かりやすく決定的だった。

私がビルに飛び上がった時、君はダメージを受けた訳でもないのに消耗が激しかったな。その理由は直ぐに魔力のエンプティーだと分かったよ。気功使いも『気』を使い過ぎると肉体が疲労してしまうらしいからな。生命力に等しいものを使っているのだから当然と言えば当然だが…まさか魔力でも同じ現象が起こるとは思わなかったよ。

…話がずれたな。まあ、その様子を見て『あの魔法は決め手だ』と分かったんだよ。同時に性能や消耗具合を考えて『決め手にするにはリスクが高過ぎる。故にこれでは完成とは言えない』という結論に達した訳だ。

 …長々と話してしまったが…ここまでで何処か間違っている箇所は有ったかな?」

 

「い、いえ…訂正する程…間違ってはいません…。(な…何なのこの人…。消耗した理由はちょっと違うけど…魔法の事を殆ど知らない筈なのに一度見ただけでヴァリアブルシュートの全てを看破するなんて信じられない!先読みだけじゃない…、この観察力もこの人の強さの一端なんだ…!)」

「そうか、それは良かった。偉そうに説明した癖に一つでも間違えてしまったら恥ずかしいからなHAHAHAHA!」

「(ジョークで笑える気分じゃないんですけど…)」

「…そこで、だ。それらを踏まえて聞いてくれ」

「はい…」

「あの魔法はまだ実戦では使わない方がいい」

「!…で、でも…!」

 

「発動までに何秒かかった?弾速はあんなものなのか?弾速を上げられたとして操作性を維持出来るか?私より速く動き回る相手に当てる自信はあるか?」

「あ、あれはAMF対策の魔法としても…」

「関係無いな。私程度の者を一撃で倒せない威力で防御力の高い者に通用すると思うのか?仮に倒せたとして、その後も戦闘が続いたらどうするつもりだ?まさかその場で休むわけにはいかないだろう?」

「……!」

「君の為にもハッキリと言っておこう。最低でも使用後も戦闘を継続出来なければ話にならん。それまでは絶対に使うな。戦場で動けなくなった者は自分だけでなく仲間の命すら危険に晒す事になる。君達のように仲間意識が強い場合は単独で無謀な行動をするより質が悪いんだ」

「………」

 

 ナッシュが話を終えた途端、ティアナの身体が震えて瞳が潤んできた…と思ったら…

 

「なまいぎなごど…いっで…ずいまぜんでじだ…」

 

 俯きながら大粒の涙を流し、嗚咽しながら謝り……

 

「(しまった…つい熱くなり過ぎてしまった…!)」

「スバルぅぅぅぅ……」

 

 泣きながらスバルに縋り付いた。

 

「おーよしよし、いい子だから泣かないでー?(ちょっと失礼かもだけど…かわいい♪こんなティア見るの初めてだ♪)」

「「(ティアさん…かわいいかも…)」」

 

「ま、まあ要はそれだけでも克服すれば実戦で使えるという事だ。悲観しないで頑張ってくれ」

 

「グスッ…。はい…がんばります…」

「それに…」

「まだ…何か…?」

「恐らく君には私と同じ素質がある。他の三人には無い、君だけにしか出来ない事がな」

「グスッ…同じ…?それは…何ですか?」

「話すと長くなる。それは別の機会に話そう」

「はい…」

 

 一区切りついたナッシュがコーヒーを飲んで一息入れるとエリオが次の質問をしてきた。

 

「あの…ナッシュ中尉の技について聞きたいんですけどよろしいでしょうか?」

「技か…いいだろう。ではどの技について話そうか?」

「どの技というか概要的なことなんですけど…中尉の技って『気』を使っていないんですか?」

「…ほう、よく気付いたな。その通りだ。リュウに師事しているだけあって『気』を探る事くらいは出来るようだな」

「僕はなのはさんから『気』の探り方を軽く教えてもらった程度のものです。練度はまだ低いですが…」

 

「…って事は…あの飛び道具はどんな力を使ってるんですか?」

 

「あたしからも聞きたい事が…。キャロの鎖を切り裂いたあの技もどのような力を使ってるのかお聞きしたいです」

 

「ティアさんの魔力弾を払った技も気になります!」

 

 エリオに続いてスバル、気を取り直したティアナ、そしてキャロと立て続けに質問が飛ぶ。

 

「結論から言えばそのどれも『気』や魔力等の特別な力は使っていない。もっと言えば私の全ての技は自己の肉体のみで繰り出している」

 

「「「「………」」」」

「………」

「「「「は!?」」」」

 

 四人はあまりにも予想外の答えを聞いたせいか、沈黙の後に計ったかのように同時に素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「………」

「「「「…す、すみません!失礼しました!」」」」

「…まあ、こちらの世界では生身で戦闘を行う人間は珍しく映るかもな。私のいた世界では自己の肉体を駆使して君達の魔法のように強力な技を使える者は然程珍しくないが、格闘術を修める者の多くは『気』など操れん。リュウが言うには無意識に使っている者もいるそうだが…」

 

「(その世界はこんなに強い人がゴロゴロしてるっていうの!?

あたしの知ってる限りでは生身でこんなデタラメな強さを持つ人間がいる世界なんて他に一つも無い…。『気』を使おうが使うまいが生身にも関わらず異常過ぎる強さ…。明らかにこれまでに発見された次元世界と違い過ぎるわ。その世界には『何か』あるとしか思えない。考えれば考える程気になってくるわね…)」

 

「話を戻そう。厳密に言えばどちらの技も肉体を使って衝撃波や真空波を生み出すものだ」

「具体的にはどうやって生み出すんですか?」

 

自身が格闘タイプである為、「参考になるかもしれない」と思ってコツを聞き出そうとしたスバルだったが……

 

「簡単な事だ。手足の振り方や拳・脚の作り方、角度等細かい話もあるが…要は手足の速度が音速を超えればいいんだ」

「(全然簡単じゃないよ!何言ってんのこの人!)」

「概要はこんなところだが…深く聞きたい部分はあるか?」

「いえ!もう大丈夫です!(これ以上聞いても全然参考にならないよ…)」

 

「次はわたしからもいいですか?」

「今度はルシエ君か。何だね?」

「ナッシュ少尉はガイル少佐と同じ組織の出身だって聞いたんですけど、どんなきっかけでお友達になったんですか?」

「きっかけ、か。私とガイルの場合は聞いて参考になるとは思えんが…本当にいいのか?」

「はい!」

「よし、では簡潔に話そう。…昔、私の所属していた部隊はある捕虜を極秘裏に救出する作戦に参加した事があった」

「もしかしてその捕虜っていうのが…」

「そう、それがガイルだ。本来ならばたかが一軍人の為に救出作戦を行うなど有り得ん事だがガイルは当時から空軍どころか国内でも英雄として名の通った男でな、味方としても敵としても手元に置いておく価値のある存在だったんだ」

 

「ガイル少佐ってそちらの世界ではなのはさんみたいな有名人だったんですね」

「そのようなところだ。普通なら捕虜は人道的に扱われるのだが、その時の相手はそうも行かなかったんだ。…で、いざ救出という時にガイルを連れ出そうとしたらガイルが突然愚かな事を言い出したんだ」

「おろかな…こと…」

「『たかが一人の為に命を危険に晒すな』『俺は国の為に力を尽くして闘った』 『国の為に死ねるなら本望だった』とな」

「………」

「私はその言葉に激昂してその場でガイルを殴り倒したんだ」

「(や、やっぱりこわいかも…)」

 

「同時にこう言ってやった。『お前の命はお前だけのものではない』『死を選ぶのは逃げでしかない』『国の為に闘って来たなら生き延びてこれからも国の為に闘え』とな」

「(この人がやさしいのは子供だけじゃないんだ…)」

「その後私は脱出の際にガイルを庇って負傷してしまい、作戦が終わってからしばらく入院してしまったんだ」

「………」

「それから入院中にガイルが何度も見舞いに来てしきりに謝罪と感謝を繰り返してきてな、退院後もしつこく付き纏われていつの間にか現在に至る…という訳だ。そのおかげて助かっている部分も多々あるがな」

「(ガイル少佐の気持ち…わかる気がする。こういう人だからこそこの人のために自分の力を貸してあげたいって思ったんだろうなぁ)」

 

「……ルシエ君、つまらん話ですまなかったな。参考にはなったかな?」

「は、はい!とっても参考になりました!ありがとうございます!」

 

 

 

「…気付けばかなり話し込んでしまったな。次の質問で最後にしよう。誰か最後に聞きたい事は?」

「…みんな、あたしが質問してもいい?」

「あんたのことだからダメって言ってもどうせ食い下がるんでしょ?好きにしなさい」

「僕も大丈夫です」

「わたしもです」

「ありがとう、みんな」

「…ではスバル君、質問を聞こう」

 

「ナッシュ中尉があたし達の事をすごく心配してくれてるのは分かったんですけど、鬼気迫るっていうか…怖いくらいに必死なように見えました。過去に何があったんですか?模擬戦の時にあたしに『必要な覚悟』を語ってくれた事が中尉自身の事を言っているように思えてずっと気になってたんですよ」

「…私は口下手でな。長くなってしまうと思うが…それでもいいか?」

「はい、どうしても聞きたいんです。お願いします」

「そうか。ならば先ずは私が今の闘いを始めた理由から話そう」

 

ナッシュは目を閉じて数回深呼吸すると、薄目を開けながら静かに語り始めた。

 

【アナザーside…TO BE CONTINUED】




ナッシュの話だけやたら長くなってしまってすみませんm(_ _)m
散々引っ張ってしまいましたが、次でやっとナッシュの過去の詳細が語られます。

ちなみにナッシュとガイルの出会いの話はオリジナルです。
しかもこれはナッシュの記憶であって、二人の実際の出会いはもっと前ということになっています。
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