スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION 作:拳を極めし者
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【回想】
[10年前 地球 とある施設 敷地内]
「索敵能力:特Aクラス。認定:A級排除対象」
「チャーリー・ナッシュ…BP8600/SP8400。戦闘データ的には軽視出来るレベルです。
ウィリアム・F・ガイル…BP8200/SP8600。SP最大値は10420を記録。変化の幅が大きい為、実戦にて変化パターンの解析を実行します」
「やめるんだ!君達のような子供が何故…!」
ナッシュはガイルと共にシャドルーの保有する施設の一つに潜入していた。目的はこの施設の情報の真偽を確かめる為である。その情報とは施設が調整の完了した兵士の性能テストを行い、要地へその兵士を送る為の施設であるとの情報だ。二人は敷地内へ入るのには成功したが、施設内まであと一歩のところで兵士に発見されてしまった。
遭遇した二人の女シャドルー兵士。二人は多く見積もっても二十歳未満の年齢で、身体に貼り付くような縦縞の入った紺色の戦闘服を纏い、黒いブーツと機械の埋め込まれたオレンジ色のガントレットを身に付けている。
その目は冷たく虚ろで意思を感じられない。口から出てくる言葉も機械的で、ナッシュは人間と話している気がしなかった。
「戦闘:準備」
一人は伸びた茶髪を束ねている少女。
「モード095にて任務遂行します」
もう一人はオレンジ色の短髪の少女だ。
「くっ…やはり聞く耳持たずか!」
当然ナッシュの言葉に耳を貸す筈も無く、二人は戦闘態勢に入る。警報は無く警備員も集まって来ないので、自分達の潜入に気付いた者は目の前の少女達のみと判断したガイルは…
「ならば騒ぎが起こる前に口封じを…」
しかしナッシュは…
「ガイル、ここは私に任せて先に行け。私達の任務は戦闘ではない」
足止めを買って出た。
「しかし相手は子供だ!お前は子供を…」
「頼む…私にやらせてくれ…!」
「……失敗するなよ」
「…済まんな…」
こうしてナッシュは二人の足止めを行い、ガイルは施設内へ潜入する事となった。
「(ガイルは向かって来る敵から逃げる男ではない。そしてそんな敵に手加減が出来る程器用でもない。だが私なら殺さずに動きを止められる!)」
ナッシュはガイルが子供を殺してしまわないように自分が足止めを行い、気絶させて拘束し行動不能にしようと考えていた。しかしその目論見は目を背けたくなるような結果を以って失敗に終わり、幕を閉じる事となる。
「排除:開始」
「モード変換、戦闘開始」
二人は同時に足を踏み出した…と思った次の瞬間二人は…
「「MACH SLIDE」」
ナッシュに手が届く距離まで一瞬で間合いを詰めていた。
「(なっ…)」
その動きは子供のものではない…どころか目で追うのも困難な速さだった。想像を超えた事態に思わずバックステップで距離を取るが……
「照準:固定。SNIPING ARROW」
「時間差攻撃で連携。SPIRAL ARROW」
二人はそれを逃さず追撃する。
辛うじて回避には成功したが、ナッシュは動揺を隠せなかった。
「(速過ぎて殆ど見えん…!本当に人間ではないのか!?)」
速さの秘密…。後の調べで得た情報によるとそれは過酷なトレーニング、薬物投与や手術による肉体改造、洗脳によるリミッター解除によって肉体の限界を超えた為と判明した。
当然ながら肉体の限界を超えるには相応のリスクがある。そのリスクとは限界を超えた動きに肉体が耐える事が出来ずに徐々に回復不可能なダメージを蓄積していき、蓄積したダメージによって肉体が崩壊して最終的に訪れる「避けられない死」だ。そしてこの事実はある一つの答えを出していた。それは強化兵士が「使い捨て」であるという事だ。
人間を遥かに超える戦闘力を持つ相手に手加減など出来る筈も無く、ナッシュは相手が子供である事を忘れて全力で二人を迎え撃った。
………
………
………
「わ…私は…!」
返り血を全身に浴び、血に染まった手を顔に当てて狼狽するナッシュの目の前に、夥しい出血を伴って倒れている二人の少女。
「活動:限界…」
一人は全身に切り傷及び首から血を噴き出し…
「ダメージ蓄積率…ゴフッ…。90%…突破…」
一人は腕を骨折し、身体には無数の打撲痕と腹から胸にかけて深く切り裂かれた傷により吐血している。
「ナッシュ!無事か!」
ナッシュが少女達の側に駆け寄るのと同時にガイルが合流してきた。ところが次の瞬間、ナッシュがガイルに気を取られたのを見計らい二人の少女が最後の攻撃を同時に仕掛けて来た。
『TARGETING…GOOD NIGHT…』
『SPINDRIVE…MASHER…』
「危ない!」
少女達の動きに気付いたガイルはいち早く叫んだ…が、その攻撃はナッシュへは届かなかった。ナッシュは攻撃が命中する直前に反射的に二人へソニックフィストを打ち込んだからだ。そしてそれは彼女達にとって致命傷となった。
本来の彼ならばこんな事は有り得なかった。力加減を間違える事も無ければそもそも迂闊に敵に接近する事も無かった…筈だった。しかし相手は子供。その子供に自分の手で深手を負わせてしまった。その動揺が彼の思考を止め、手元を狂わせてしまったのだ。
「任務失敗…しました…。生命維持の…限界により…データ転送…後に…生命…活動…を…停…止…」
オレンジ色の短髪の少女は最後まで人間らしさを見せる事無く最後を迎えた。
しかしもう一人の少女は様子が違った。
「最終攻撃:失敗…。機能:不ぜ…これで…人として…」
「『人として』…?まさか人格が!?」
「私は…死ねるのですね…」
少女の手を握りながらナッシュは叫ぶ。
「何を言っている!治療すれば助…」
「伝えて…下さい…」
しかしナッシュの言葉を遮り、今にも消えそうな声で少女は答える。
「『ジュリアは…神の御許へ…旅立った…。一族の…未来の為に…貴方はまだ…こちらへ来ては…いけない…』…と…」
「…その人物の…名は?」
「メキシコ…シャドルーに滅ぼされた…『サンダーフット族』の…若き勇者…。『サンダー・ホーク』…」
「必ず…伝えよう…」
「ありがとう…。どうか…私達のような存在は…私達で…終わらせて下さい…。サンダー…愛して…る…」
こうして自分を『ジュリア』と名乗った少女は、全てを伝え終えると穏やかな顔で眠るように息絶えた。
「あ…」
少女の身体は火の消えた暖炉の様に温もりが失われていき、手から力が抜けて滑り落ちていく。
「ああああああああ!!」
ナッシュは叫んだ。目を血走らせながら涙を流し、何度も何度も、声が枯れるまで叫んだ。
「ナッシュ…。お前に罪は…」
「言うな…。何も言わないでくれ…」
ナッシュはガイルへ振り向かずに肩を震わせながらそう言った。するとそこへ突然雨が降ってきた。まるで今のナッシュの心象を表すかのように…泣き疲れた彼の代わりに空が泣いているかのように…。
それから数時間後、ガイルの要請で到着した同志の軍隊が施設を制圧。少女達の亡骸はアメリカに送られ、丁重に葬られる事となった。施設は全てのデータを吸い上げた後、完全に廃棄。データはシャドルー追跡の為に使われる事が決定した。
[数日後 アメリカ フランクフォート 戦闘機格納庫]
「ガイル…お前に頼みがある」
「何年の付き合いだと思っている。改めて頼まれるまでも無い。俺はお前の正義を信じて付いて行くだけだ」
「……お前程頼りになる味方はいないな。ありがとう、ガイル」
「…面と向かって言われると恥ずかしいな」
「フッ…私とした事が柄にも無い事を言ってしまったな」
「…非道とは正にベガの為にある言葉だ。あの少女達のような存在が未来のテクノロジーなら…人類は進化の仕方を間違えている!」
「ああ、奴は何としても私達が止めなくてはならない…。これはジュリアの願いでもある…。悲しみをこれ以上広げさせはせん!」
こうして新たな決意と覚悟を胸にナッシュのシャドルーとの闘いは新たな段階へと進む。
[7年前]
ナッシュはずっとシャドルーを追い続けていた。シャドルーの戦力を削ぐべく強化兵士製造施設の潰滅を徹底して行い、この五年で幾つかの施設を潰す事に成功していた。しかし…
「(このままではいつまで経っても堂々巡りだ…。ジュリア達のような悲劇は終わらん…!)」
施設は世界中に存在し、施設の情報は隠蔽工作により入手が困難であり、攻め入った時には機能を失って蛻けの殻となっていた事もあり、新たに施設が建設される等後手に回り続けるのだった。
「(組織というものは頭の存在が大きければ大きい程に頭が潰れた時の瓦解は早い。新しい頭を用意する時間も無い程に…。ならば…!!)」
ナッシュは血涙を絞りながら施設の潰滅を断念。シャドルー総帥であるベガに狙いを絞る事を決定するのだった。
[5年前]
とうとうナッシュは「ベガが東京を壊滅させるべく戦力を集結させ、自らも出撃しようとしている」という情報を入手。先回りしてそれを迎え撃つべく情報を入手したその日に私設軍隊と格闘家の仲間に協力を要請した。
そして決戦の日、東京を防衛する為に集結したナッシュの私設軍隊と数人の格闘家VSシャドルー軍の闘いが始まった。
激戦の末に双方に多数の犠牲者と東京半壊という憂き目に逢いはしたものの、前以て避難を進めていた為に都民の犠牲者は殆ど出さずにシャドルー軍を壊滅させる事に成功。シャドルーの本拠地がある「シークレットポイント48106」へ逃走した残党とベガを、私設部隊の生き残りとナッシュを含めた格闘家達が追い掛けた。
最終決戦の末、残党はリーダーを失って散り散りに逃げ出し、ベガはリュウによって倒された後に行方不明となった。ベガは行方不明の為に生存の可能性もあったが、リュウが言うには「あの深手で生きていられるとは思えない」との事だった。
こうしてベガの行方に一抹の不安を残しながらも、長年に渡るナッシュの闘いは終結した。
シャドルー壊滅後にナッシュの私設軍隊は解散。情報が少な過ぎて長い年月が掛かってしまったが、予てより行方を捜していた「サンダー・ホーク」の居場所を突き止めた。
ナッシュは彼にジュリアと出会った証拠として彼女の顔写真を見せ、彼女の死・伝言・シャドルー潰滅の報告を行う。それを聞いた彼はナッシュに最上級の感謝の意として父の形見である赤い羽根飾りの一本を譲り、滂沱の涙を流して感謝した。
「お前はジュリアの魂を救済してくれた。そして後悔に暮れ、自ら命を絶つ事も考えていた私を思い留まらせてくれた。だから私はお前に恩を返さなければならない。
私はこれから聖地に戻り一族の復興に尽力せねばならぬ故に今はお前に付き添う事は出来ん…が、今後お前が力を求める事があれば私は全てを賭してお前に力を貸そう。その時が来たなら連絡は要らない。ただ祈るだけでいい。神の御導きが我らを引き合わせて下さる」
「ああ、その心遣い…感謝する。そんな時は来ない方が望ましいがな」
「はっはっは!確かにその通りだな!…また会おう、最愛の友よ。神の御加護があらん事を…」
「ああ。君にも、な」
こうして全てが終わり、シャドルーにより腐敗した米軍も元に戻った。
ようやく平和が訪れた…筈だった。
[3年前]
かつて共にシャドルーと闘った仲間の一人である春麗からある連絡が入った。
『シャドルーが復活した』
耳を疑った。信じたくなかった。自分の知らない間にシャドルーが再び姿を現し、悪の限りを尽くそうとしているなんて考えたくもなかった。またジュリア達のような存在を生み出しているのかと思うと胸が張り裂けそうな程に苦しくなった。
その胸の苦しみがナッシュを新たな闘いへと駆り立てる事となった。
☆☆☆☆
「…そして今も時空管理局の協力を得てその犯罪組織を追い掛けているという訳さ。倒したと思っていたら倒し損ねてしまっていたという情けない話だがな」
「「「「………」」」」
「ん?」
ナッシュが話を終えて視線を上げると四人は瞳を潤ませて身体を震わせていた。
「お、おい君達…。どうし…」
「「「「ナッシュさああああん!!」」」」
「なっ!?」
「ごめんなさい…。あたしナッシュさんの事を何も知らなかったのに生意気な事ばっかり言ってごめんなさい!」
「さっきのヴァリアブルシュートの事もあたしの事を思って言ってくれたんですよね…。なのにあたし泣いてナッシュさんを困らせちゃって…。なんて謝ったらいいか…」
「出会って間もない僕達のことを大事に思って下さったのにはそんな深い理由が…。感謝の言葉も有りません…」
「わたし…ナッシュさんのことをただのこわい人だと思ってビクビクしちゃって…。ほんとうに…ごめんなさい……」
「そ、そんなに気に病まないでくれ!私は寧ろ君達に感謝しているくらいなんだ!」
「「「「…感謝?」」」」
「そう、私は君達のおかげで目が覚めたんだ。ありがとう」
「「「「………」」」」
「…私の過去がどうであれ、君達の身体と心を傷付けてしまった罪は消えないし許してくれとは言わない。この罪は背負って行くつもりだ。ただ…君達には知って欲しかった。君達が闘いを…戦場に臨み続ける限り私やジュリア達のような立場になる可能性が有るという事を。自分が命を落とし、逆に相手の命を絶つ可能性も有るという事を。だからこそ君達をそんな目に合わせたくなくて戦場から遠ざけようとしたんだ」
「(あたし達はその可能性を考えたことすら無かった…。だからナッシュさんはそんな甘いあたし達を心配して…)」
「しかし私は君達の意志や決意を甘く見ていた。これは模擬戦の後で感じた事だが…君達はそれぞれが苦境に屈せず並ならぬ思いで自ら前に進んでいると知って頭が下がる思いだった。そして失礼な言い方になるかも知れんが…四人掛かりとはいえ、一人一人では私に及ばない子供にあれ程強く打ちのめされるとは思っていなかったからな。それで君達の思いは充分伝わったよ」
「(僕は結局何もできなかったのに…この人は…)」
「モンディアル君、君の攻撃が無ければ私は無理をしてソニックブレイクで左腕を壊す事は無かった。君がいなければ私は左腕が無事で、スバル君との殴り合いに負ける事も無かった。君がいたからこそ君達は勝てたんだ」
「ナッシュ中尉…!!」
「(そういえば…。今思えばナッシュさんってあの時のパンチは全く音速が出てなかった…。やっぱりこの人にはあたし達全員じゃなきゃ勝てなかったんだ…!)」
「だからこれからは出来る限り君達に力を貸そう。訓練に付き合うのも構わない。そして先程言ったような事態を起こさない為にも私が必ず君達を守る。この命に変えてもな」
「(フェイトさん以外にもわたしを心配してくれる人がいたんだ…)」
「すいませんけどそれはお断りします。あたしは守られたいんじゃない、守りたいんです。そのための強さが欲しいんです」
「…そうだったな。これは失礼した。守る為の強さ…一緒に身に付けていこう」
「はい!」
「さて、辛気臭い話はここまでだ。もう空腹もピークだろう。遠慮無く注文してくれ」
「やったー!それじゃあまず…」
[数分後]
「スバル君…私達の分まで注文する必要は無かったんだが…」
「え?これ、あたし一人分ですけど?」
「なん…だと…」
スバルの目の前には反対側のナッシュが見えなくなる程大量に盛られたスパゲティの山。通常ならばこの場の全員でも食べ切れそうにない…筈だったが…
「んー♪おいしー♪」
「なん…だと…」
スバルは砂山を崩すような勢いでスパゲティを口へ吸い込んでいった。
更にスバルを見ていたエリオが…
「おいしそうですね、スバルさん。僕も同じ物をお願いしようかな」
[数分後]
「んー、確かにおいしいですね」
「なん…だと…」
エリオの目の前にもスバルのものと変わらない量のスパゲティが運ばれてきた。しかもスバルに負けない速さで山を崩している。
「ランスター君…。こちらの世界の成長期の子供は誰でもこうなのか?まさか…君も?」
「あの体力バカ達と一緒にしてもらったら困るんですけど…。まあ、前衛組はカロリー消費が凄いそうなので…」
「(そういう問題か!?)」
「ところでナッシュさ…中尉」
「『さん』付けで構わないよ、ランスター君。私としてもいつまでも他人行儀でいたくはないからな」
「はい、ありがとうございます。じゃああたしもティアって呼んでください」
「いきなり略称で呼ぶのは失礼じゃないか?」
「いえ、呼んでほしいんです。呼ぶならそれでお願いします」
「ああ、分かった。次からはそう呼ぼう」
「では質問します。聞いたところによるとナッシュさんはスカウトされてミッドチルダに来たそうですけど、それはどういう経緯だったんですか?そちらの世界では魔法や次元世界は空想のような扱いだと聞いていたのでどのように納得されたのか気になりまして」
「あ、あたしもそれ興味あります!」
「聞いても面白みのある話ではないと思うんだが…まあいいだろう」
「ランスター君の言う通り私のいた世界では魔法等は創作の産物として扱われていた。しかし犯罪組織の復活をきっかけに信じざるを得なくなったんだ」
☆☆☆☆
[春麗の連絡から数日後 中国 ICPO支局]
ナッシュはガイルと共に中国にいる春麗の元へ出向き、情報提供を受ける事にした。そして春麗からシャドルーの情報だけでなく何ともメルヘンチックな真実を聞かされる。
「『魔導師』、『多次元世界』、『時空管理局』、『ロストロギア』…。そんなカートゥーンの世界にシャドルーが絡んでいると?……春麗、君は正気か?」
「……まあ、信じられる訳ないわよね。『あんな事件』が起こらなかったら私だって信じてなかったわ」
「…わざわざこうして恥を覚悟で話してくれたからには嘘偽りでないと信じたいが…。これからそれらに関わると言うのなら証拠は見せられるんだろう?」
「…やっぱりそうなるわよね。ハラオウンさん、お願い」
春麗が声を掛けるとと部屋の奥から金髪ストレートの少女が出て来た。
☆☆☆☆
「『あんな事件』?」
「…私はその事件の当事者ではないがね。詳しくは当事者である春麗に聞いてくれ」
「はい。ところで『金髪ストレートの少女』って…」
「ああ、察しの通りだ」
☆☆☆☆
「はじめまして、チャーリー・ナッシュ中尉。私は時空管理局執務官のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです」
「執務…官…?君は何歳だ?見たところかなり若いようだが…」
「(まずいな…)。ハラオウン執務官、でいいかな?俺はウィリアム・F・ガイル少佐だ。一つ質問がある」
「おい、ガイル。まだ私の質問が…」
「今はそんな事より春麗の話の事実確認が先だ。…話を戻そう。先程の話が本当なら魔法を使えるんだろう?それを見せてくれないか?」
「そうですね。言葉よりその方が早そうです。では外へ行きましょう」
「…言うと思ったわ。案内するから車に乗って」
「外?案内?どういう事だ?」
「いいから黙って付いて来なさい」
「………」
☆☆☆☆
「…ガイルは昔から時々私の話を遮る事があってな。もう少し私に気を遣って発言して欲しいものだ」
「「「「(ガイル少佐、ナイス気遣い!)」」」」
☆☆☆☆
[一時間後 郊外 無人地帯]
「さあどうぞ」
春麗は人気が無く鬱蒼とした土地で車を止め、二人を連れて歩き出した。
「…春麗、君に一つ質も…」
「ここなら思いっ切り暴れても大丈夫だからよ」
「…『暴れても』?どういう意味だ?」
「言葉のままよ。貴方達の事だから変身や飛行を見た程度じゃ納得なんてしないだろうしね」
「………」
ナッシュと春麗が話をしている最中にフェイトが準備を始めた。ナッシュが黄色い輝きに気付いてフェイトに振り向くと、いつの間にかフェイトはツーサイドアップの髪型、黒を基調としたジャケットに白いマントを羽織った姿に変わっていた。
「さあ、始めましょうか。どちらでもどうぞ」
「…何?」
「『闘え』って事よ」
☆☆☆☆
「最初は耳を疑ったよ。何せ二十歳にも届いていなさそうな華奢な子供が私とガイルに『かかって来い』と言ったんだからな」
「フェイト執務官って…けっこう好戦的なんですね…」
「(そういえばリュウさんが『格闘家には100の言葉より1の拳の方が気持ちは伝わりやすい』とか『拳は言葉より雄弁だ』って言ってたなぁ。フェイト執務官もそういう事なのかも)」
「私はその時考え事をしていたせいで少々不機嫌になっていてな、その姿が私の目には尊大に見えたんだ。そこで私は本来の目的を忘れて彼女に『大人に対する礼儀を教えてやろう』と試し合いを買って出た訳だ。勿論手加減はするつもりだったがな」
「「「「(……怒らせないようにしよ)」」」」
☆☆☆☆
「(空を飛んで…というか浮いている。格闘家のような飛行の代替手段ではなく純粋な飛行能力だな。飛行能力を持った相手と闘った事はあるが…情報が足りん。『観察』するか)」
「…では行きます!」
《Haken Form.》
「!?」
「はああ!」
☆☆☆☆
「…あの先制攻撃は見事だった。魔法を使う者は接近戦が得意ではないという先入観があったので飛び道具による牽制が中心になると思っていた事もあり、反応が遅れて掠ってしまったんだ。
それに加えて戦闘機にも匹敵するスピードと僅か10数mの距離で一瞬にしてそれに達する加速力…。武k…デバイスがいきなり鎌のような形状に変化したのでもしやとは思ったが、それが無ければ更に反応が遅れてまともに喰らっていただろう」
「(予備動作を見ていたとは言え、初見であの速さに反応出来るなんて…。やっぱり化け物ね、この人)」
「…主旨から外れてしまったな。要するに彼女の実力を見た事で一応の納得をした訳だ。まあ、こちらに来る事を決意したのはフィニーノ君の話を聞いてからだがね」
「フィニーノ…。シャーリーさんの事ですね」
「ところで勝負は!?どっちが勝ったんですか!?」
「いや、あれは勝負じゃ…。まあ、彼女のスピードには舌を巻いたよ。あれが最高速度かは分からないが、音速を見切れる私の目でも服装を変えた彼女の姿を追い切れない程に達したからな。
だが私も『観察』の甲斐あって彼女の動きを予測出来るようになったので何とかなっていた。それから数分間互いに決定打を打ち込めず、互いに熱くなり過ぎて本気になりそうになったところをガイルと春麗に止められしまったんだ」
「「(じ…次元が違う…)」」
「ところで…」
「は、はい!なんでしょう!?」
「そんなにかしこまらないでくれ。…ハラオウン執務官はかなりの実力者と見受けたが、時空管理局の魔導師の中で彼女より強い者はどれ位いるんだ? 私の見立てでは高町教導官は彼女並の実力はありそうだったが…」
「あ、それならあたしはなのはさんの方が強いと思います!」
「一対一という条件なら近接最強の古代ベルカ式の使い手であるヴィータ副隊長とシグナム副隊長も強いかと…」
「ふむ、まさか機動六課の中でそれだけいるとはな」
「あたし達が知らないだけで他にもいると思いますけどね。それに現役を退いた方でも現役の魔導師より強い方はたくさんいるって聞きます。でも大事なのはなによりチームワークだと思います」
「確かにその通りだ。強くて困る事は無いが、チーム戦が基本である以上は個人の戦闘力だけで評価する訳にはいかんからな。だが機動六課はよくそれだけの人材を揃えられたものだ」
「(そう…。本当に信じられないくらい優秀な人達が集まりすぎてるのよね…)」
それから五人は軽い雑談を交わし、笑い合い、夜が更けていった。そして食事会がお開きになり…
「ナッシュさん!今日はありがとうございました!楽しかったです!」
「あたしの戦い方だけでなく、あたしの将来の事も気遣って下さったことは忘れません」
「ナッシュさんのような方がいてくださるからこそ僕のような若輩者も戦う事が出来るんだと痛感しました。これからも御指導・御鞭撻の程をよろしくお願いします」
「わたし、ナッシュさんの言ったことを忘れないで毎日がんばります!」
「「「「ありがとうございました!!」」」」
「………」
挨拶は聞こえている筈だがナッシュは後ろに振り返って黙り込んでいる。
〈…あれ?もしかして…〉
〈…そうみたいね〉
「ああ…。こちらこそ…ありがとう…」
「はい!それじゃあお休みなさい!」
四人を代表してスバルが最後の挨拶をすると、四人はナッシュの顔を見る事無く帰っていった。
「(いかんな。今日は涙腺が緩み過ぎだ…)」
ナッシュは紅潮した顔を隠すように下を向きながら急ぎ足で店を後にした。
[午前1時 機動六課隊舎 病室]
「ナッシュさん?私が何を言いたいかお分かりですよね?」
「…アメリカンは…この姿勢になると…足が悲鳴を上げるんだが…!」
「少しくらいガマンしなさい!」
ナッシュはシャマルにベッドの上で正座をさせられていた。正座とは足を折り畳み、股を閉じ、足首を伸ばして脛と足の甲で座るという日本独特の姿勢で、他国の人の足はそのような姿勢を取れる構造になっていないのだ。
「か…考え事をしながら…歩いていたら…道に迷っ…」
「言い訳は結構です!私は日付が変わる前に帰って来るように言いましたよね!?それになんでギプスが無くなってるんですか!」
「………」
「どうせ『もう治った!』ってアピールの為に壊したんでしょ!」
「(す、鋭い…)」
「まったくもう!あなたはやっぱり大きい子供ですね!」
「シャマル…。そういう君は…口煩い…母親のようだな…」
ナッシュが聞こえるかどうかも怪しい細い声で呟くと…
「……今、なんて?」
突然シャマルが目を丸くしてきた。
「(地雷を踏んだか!?)」
「なんて言ったんですか…?」
「…く、口煩い母お…」
「その前です!」
「?…君の名前だが…」
「じゃあもう一回呼んでみて下さい!」
「シャ…。言えと言われると…恥ずかしくなってくるんだが…」
「いいからもう一回!」
「……シャマル」
ナッシュが言われた通りに名前を呼ぶとシャマルは…
「………」
魂が抜けたかのように呆然とした表情で黙り込んでしまった。
「…おい、これで…いいのか?」
「!?は、はい!もう…いいです…。(呼び捨て…呼び捨て!)」
自分を取り戻したシャマルはやけに顔を赤くしている。
「(よく分からんが助かった…)」
「ところで…」
「(やはり助からなかったか…!)」
「子供達はどうでしたか?」
「……ああ、もう大丈夫さ。君のおかげだ。君には心から感謝している。ありがとう、シャマル」
謝意を述べるナッシュは足の痛みも忘れて満面の笑みを浮かべていた。
「ふふ…あなたもそういう笑顔が作れるんですね。安心しました」
「はっ!……わ、私は人前で表情を緩めるのが恥ずかしくてな…。なるべく人に見せないようにしているんだ。記憶の限りではガイルにすら見せた事は無いというのに不覚だ…。この事は…秘密にしてくれないか…?」
ナッシュは眼鏡を上げつつ顔を赤くしながら消え入りそうな声でシャマルに頼み込む。
「そうですか?あなたの笑顔は素て…ゴホンゴホン!」
「??」
「い、いいですよ。私達だけの秘密ですね。(私しか知らない笑顔…二人の秘密♪)」
「ありがとう。……君には感謝してばかりだな。私は運がいい。君のような甲斐甲斐しく素晴らしい女性の世話になっているんだからな。君は結婚したら良妻賢母になるだろう」
「い、いきなり何を言い出すんですか!?」
「いや、君の心を射止める男は幸せ者になるだろうと思っただけさ」
「……もう……ますよ……」
「ん?何か言ったか?」
「な、何でもありません!気にしないで下さい!」
「そ、そうか…」
「それはそれとしてギプスを付け直しますよ!ついでに今後の日程の筋道を立てましょう!」
「それは名案だ。その方が私も動きやすい」
それから二人は軽い雑談を交えながら今後の治療やリハビリの予定を話し合った。ちなみにシャマルの準備中、シャマルに気付かれないようにそっと正座を崩して椅子に座ったのは内緒である。
「あっ、もうこんな時間!いつの間に…」
「君と話し込んでいると時間を忘れてしまうな」
「それじゃあお休みなさい、ナッシュさん♪」
「ああ。お休み、シャマル」
こうしてナッシュとシャマルの二人きりの夜は幕を閉じていった。
[翌日 早朝 機動六課隊舎 トレーニングルーム]
「おはよう」
「む、ナッシュ。もう自由に動いていいのか?」
「ああ、シャマル先生から許可はとってある…と言ってもトレーニングは禁止だし、今日は君達の顔を見に来ただけだがな」
「あら、意外にも殊勝な心掛けね。あれから面会すら拒否してたって聞いて少し心配したわ」
「俺は全く気にしなかったがな」
「あら?私との組手の最中にボーッとして蹴られて気絶したのは誰だったかしら?ガイル」
「余計な事を…」
「…皆には迷惑をかけてしまったな。本当にすまなかった」
「む、ナッシュが素直に謝ると違和感があるな」
「リュウ…君が私をどう思っているのか少しわかった気がするよ」
「それは良かった」
「(褒めてないんだが…)」
「それはそれとして子供達との話し合いはどうなった?」
「まあ、その顔を見れば聞かなくても分かるけどね」「……そういう事だ。私もようやく吹っ切れたよ」
「(お前ならきっと乗り越えられると信じていたぞ)」
「では私はここで失礼する」
「……足早に行ってしまったな」
「ホントに顔を見に来ただけなのね。キッチリしてるわねぇ」
「(…やっとお前らしさが戻って来たな。これならもう何の心配も無いというものだ)」
トレーニングルームを出たナッシュの足取りは軽く、見る人の顔が思わず綻ぶ程の微笑みを湛えていたという。
【アナザーside…END】
第五話「正義 -贖罪と信念-」…END
【次回予告】
フェイト「出動に備えて訓練の日々を続けるフォワードメンバーと、宿敵を倒すために捜査と修行をこなす格闘家達…」
なのは「フォワードメンバーが出会うのは共に戦うパートナー…それぞれのための新デバイス。格闘家達は義務を果たすために出頭する…」
次回 スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION
第七話「日常 -成長と相棒-」
TAKE OFF.
以上、ナッシュの凄絶哀絶なる過去とデレるシャマル先生でした。
個人的にスト4でよく使う好きなキャラの一人がサンダー・ホークです。
ホークは今後再登場させる予定があります(いつになるかは秘密ですが)。