スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION   作:拳を極めし者

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リュウにまたしても試練の時です。
前にも言いましたが、リュウは基本的に苦戦しながら成長するので無双は殆どありません。


第八話「出動 -新人と客人-」A-2

【リュウside】

 俺が戦闘態勢に入ると敵も構えを維持ながら移動を開始。敵は一歩、また一歩とゆっくり足場を踏み締めて歩いて来る。目的の物を手に入れよう急襲してきたというのに何を悠長にしているのかと思う者もいるかもしれんが、それは当然の事だ。

 闘いの場は電車の上。その速度故に常時猛烈な強風が吹き、時折急に曲がる。そのせいでふとした拍子に風で煽られたり足を滑らせたりして体勢を崩しやすい。この場は足腰の弱い者であれば立つ事さえままならないだろう。そして最悪の場合、落車してそのまま落命する危険性すらある。故に俺も敵も迂闊に走る訳にも跳ぶ訳にもいかんのだ。

 

 では条件は五分だろうか?答えは否。当然ながら通常ではほぼ起こり得ない状況なので、俺はこの状況を経験した事が無い。ではこれは敵に有利なのか?

 

 これも答えは否。このような特殊な場でも…いや、だからこそ「地の利」は存在する。ではこの場に於ける地の利とは何か?答えは…

 

「(風上は俺…。俺に地の利がある!)」

「………」

 

 そう。至極当然・単純明快な答え。「風上」だ。

 地上では嵐でも来ない限り闘いに大きく影響するような風はほぼ吹かないので大した意味は無いが、常時強風が吹き付ける電車の上では話が違う。

 風上にいればたった一歩の踏み込みでもその距離は天翔るが如く、その速さは疾風の如く強化され、そこから繰り出される一撃は通常とは比べ物にならん程高い威力となるのだ。

 

 一方風下の敵には逆の力が働く。向かい風が常に身体を押し返す為に歩くだけでも体力の消耗が大きく、攻撃は速度・威力が低下、走るにしても風で身体を揺さぶられて真っ直ぐ走るのも一苦労だ。

 

「(だが飽くまでも飛び込みは最後の手段…)」

 

 そう。俺が有利ではあるが、それは風上にいる場合だ。接近戦になれば利は殆ど無くなり、もし仮に飛び込みを回避されて風上を取られれば文字通り立場は逆転する。

 

「(今はただ確実にこいつを排除するのみ!)」

「………」

 

 先程も言ったがここは行動を大きく制限され、大きく動けばそれだけ危険性も増す場。それ故、相手を強制的に動かせる足元への攻撃は当たらなくとも極めて有効だ。それが飛び道具なら更に効果的となる。

 

「波動拳!」

「………」

「くっ!」

 

 だが牽制の波動拳は、僅かに沈み込んで滑るような素早い摺り足であっさりと躱されてしまう。

 

「(焦るな…。ここは慎重に…確実に…!)」

 

 この闘いがストリートファイトならば俺は喜んで敵の懐に飛び込んで行っただろう。だがこれは法も規則も無い実戦。極端な言い方をすれば「殺し合い」だ。俺はともかく敵は隙あらば俺の息の根を止めに来るだろう。必殺の技を繰り出される隙は極力減らさねばならん。

 それに加えて今は俺一人ではなく後ろに仲間がいる。もし俺がここで敗れれば仲間の命が危機に晒されてしまう。故にそれだけは絶対に避けねばならん。それに後部車両の方でも戦闘が激しくなっているようで、天井がスバルの時のように吹き飛んでいる。一時的にこの場を離れる事になるが、援護に向かう必要があるかも知れん。そうなった時の為にも一刻も早くこの敵を倒さねば!

 

「はあぁぁぁぁ…!」

 

 敵は俺の波動拳を見てからは更に慎重にゆっくりと接近するようになっていった。この様子だと飛び道具は使えないようだ。ならばこの距離で勝負!

 

「連波動拳!!」

 

 今度は体勢を崩す足元狙いではなく手数による命中狙いだ。連波動拳は連射速度を調整して手の向きを変えれば多方向に撃て、ある程度方向修正が可能なので例え一発目が回避されても後に続く波動拳を当てやすい。

 だが…俺はやはり未熟だった。

 

「この状況で飛び道具を持たない敵が取れる行動は防御か回避のみ」という思い込みが前提で無警戒に技を使ってしまった。それを知ってか知らずか敵は……

 

“JUSTICE FIST“

「!?」

 

 防御や回避どころかこの距離で反撃に出たのだ。

 

「………」

「しまっ…」

 

 俺は今まで多くの強敵(とも)と闘ってきたが、その中には波動拳を様々な手段で攻略する者達がいた。

 最小限の力で反らし無効化する者、最小限の動作によって産毛を掠める精度で回避する者、力尽くで弾き飛ばす者、鍛え抜かれた肉体を以って直撃を物ともせず正面から迫る者など十人十色。他にも似た手段や使い手による微妙な違いも含めれば千差万別だ。だがこの敵はそのどれとも違った。

 敵は大きく踏み込んだ順突きの正拳突きで一発目の波動拳を跳ね返したのだ。

 

「………」

「(速…)」

 

 跳ね返した波動拳で二発目の波動拳を相殺すると、弾けた波動拳を目隠しにしてダッキングで後の波動拳を回避しつつ急接近。視界を遮るものが消えて急ぎ敵の姿を確認したが時既に遅く…

 

”SHOOT UPPER”

「…っ!」

 

 俺の下に潜り込んだ敵は全身のバネを駆使した伸び上がるようなアッパーカットで急襲。咄嗟に頭部を後ろに反らしながら後方に跳ねたことでダメージを抑えて意識を失わずに済んだが、脳が揺さぶられ身体が痺れている為仰け反ったまま浮いている。

 当然敵がそれを見逃す筈も無く、風圧で敵の方向に押し戻される俺に……

 

”GARYU MESSYU”

「ぐふっ…」

 

 高く跳び上がって腹部への急降下蹴り。向かい風にも関わらず信じられない程に高速の飛び蹴りだ。俺はそれを喰らって車体に叩き落とされた反動で再び浮き上がり、無防備な上体を晒す。

 腹部への蹴りが気付けになったものの、体勢を立て直せるほど脳へのダメージは抜け切っていない。そこへこれ以上頭部へダメージを受ければ確実に意識を失う。この場に於いてそれは即ち「死」を意味している。

 

「(ま…ずい…)」

 

 同時に着地した敵は更に跳び上がり、俺の顔面目掛けて飛び膝蹴りで追撃に入った。喰らえば死を招く一撃が俺を襲った瞬間……

 

「シューーート!!」

 

 オレンジ色の光が俺の上を通過して敵へ命中。顔面への射撃は腕で防がれてしまったが、勢いを削がれた敵は向かい風で大きく吹き飛び、宙返りしながら後方に着地した。

 

「リュウさん!無事ですか!?」

「ティアナ…。何故…ここへ…」

「制御室のガジェットを破壊してから急いで上がってきたんですよ。危ないところでしたね」

「………」

 

 情けない。俺は未熟なだけでなく惨めだ。仲間を守ろうとして逆に助けられてしまった。この体たらくで仲間を守るなどと吐かした自分を殴り倒してやりたい気分だ…。

 

「助かった…。もう…大丈夫だ…」

「それはよかったです。それにしても…」

「………」

「あのロボット、ヴァリアブルバレットを何発も喰らってちょっと傷が付く程度なんて…。これならあたしはアシストに回ってリュウさんが本命の攻撃を当てたほうがいいですね」

「(やはりあれはロボットか。機械だというのになんという強さだ…!)」

「あ、あの…聞こえてますか?」

「…ああ。頼むぞティアナ」

「はい!」

 

 ……とはいえまだ敵は健在。ここは恥を偲び、ティアナの力を借りて確実に敵を倒そう。

 

「気を付けろ。あの敵は飛び道具を跳ね返す」

「跳ね返す!?それじゃあ射撃型のあたしはなんの役にも…」

「いや、跳ね返せるのは恐らく拳のみだ。だからお前はあいつの下半身を狙ってくれ」

「体勢を崩すように狙うんですね。任せてください」

「よし、同時にいくぞ!」

 

 作戦が決まるとティアナは左に寄り、俺は右に寄って構える。

 

「頼むわよ、クロスミラージュ!」

 

 ティアナのティアナはシュートバレットで下半身狙い。ヴァリアブルバレットより手数が多い分、回避は困難だ。

 

「波動拳!波動拳!」

 

 俺は波動拳で逃げ道を塞ぐように予測射撃。一撃の威力は俺の方が大きいのでこちらが本命だ。

 

「………」

「くっ、このっ!」

 

 ……が、敵は先程と同じく滑るような摺り足と受け流すかのようなスウェーで次々と回避。認めたくはないが洗練された淀みの無い見事な所作だ。

 

「(下半身だけを狙ってるから分かりやすいとはいえ、この風と不安定な足場でなんて動きしてんのよこいつ…!)」

「(だがこれならば…!)」

 

 しかしティアナはその役目を十全に果たしている。何故ならば敵は射撃で足止めを受けて接近に時間がかかっているからだ。そしてこの技ならば見切るのは難しく、仮に見切られても跳ね返される心配は無い!

 

「爆波動拳!!」

 

 ティアナに気を取られた隙に撃った爆波動拳が敵に直撃し、敵は爆炎に包まれた。

 

「やった!」

「…いや、まだだ」

 

 強風であっという間に爆炎が流されると、そこには両腕を交差させて後ろ足で踏ん張る防御の構えを取った敵の姿があった。敵は全身が煤けているが身体が傷付いたようには見えず、ニュートラルポーズに戻ると先程と何ら変わりなく自然な構えを取っている。

 

「(さっき飛んでいるガジェットを撃墜した時に見切っていたのか。それにしても腕の防御力が高いな…。飛び道具では勝負がつかんかも知れん)」

「回避も防御も完璧すぎる…!」

「……ならば格闘戦で片を付ける。腕の防御力は高いが他の部分は脆いようだ。その証拠に威力が低いお前のシュートバレットでさえ一発も喰らわぬよう回避に徹している上に防御は全て腕で行っている。だから一撃でも腕以外に直撃すればそこから突き崩せる筈だ」

「でもそれじゃあたしは援護できなくなります!いくらリュウさんでもあんなの相手に一人じゃ…!」

「策はある」

「策?」

 

………

………

………

 

「……分かりました。それで行きましょう」

「ではお前は敵が体勢を崩した時に撃てるよう準備していてくれ」

「…はい。気をつけてください」

 

 作戦は決まった…が、これから戦闘を再開しようという時に後部の車両の天井から平らな触手のような物に捉えられたエリオが投げ出されて来た。得物を握り締めてはいるが身動き一つせずに頭から落下していると言うことは…!

 

「あの子、気絶してる!」

「まずい!崖に落ちるぞ!」

 

 この距離では俺は間に合わず、車輌の上にいるナッシュの手も届かん。このままではエリオが!…と思われた時、落下するエリオと同時に小さい人影が飛び降りた。その正体は…

 

「キャロ!?」

「馬鹿な…!フリードリヒが支えられる重量ではないぞ!」

 

 キャロはなんとかエリオを抱きかかえる事に成功するが落下は止まらない。最早これまでかと思われた瞬間……

 

「あれは…」

「キャロの魔法か…」

 

 二人と一匹を覆って余りある大きな桃色の膜に包まれ、落下速度が急激に緩やかとなり舞い落ちる木の葉の如くゆっくりと落下している。飛び上がらないところを見るに飛行魔法ではないようだ。

 

「一先ず助かったか…。だがこれであちらは…」

 

 しかし電車はもう最後尾まで二人を追い越し、戦線復帰の見込みは無くなってしまった。つまりここからはナッシュとガイルがそれぞれ一人で闘う事になるのだ。

 

「急ぎ救援に向かわねば!」

「はい!そのためにもこんな鉄クズくらいさっさと…」

 

 俺とティアナは敵に向き直り身構えようとしたが、最後尾の更に奥の崖下の裏側で桃色の光が眩い輝きを放った。場所は先程キャロがエリオを救出した場所だ。何が起こったのかとそちらへ目を遣ると……

 

「ば、化け物…!」

「いえ、多分あれは…!」

 

 光が収まりそこから現れたのはこの世のものとは思えぬ…創作物にでも出て来るような見た事も無い生物だった。

 

「…そうか、見た目に驚いて失念していた。以前とは比較にならん程に大きくなっているがこの『気』は…!」

 

 白く巨大な体躯、恐竜の様な骨格の足、腕に当たる部分に一対の翼、兜の様に頭部を覆っており多数の突起が伸びる水色の甲殻、細く尖った耳、ピアスで飾っている鼻先の角。更には手綱と鞍を身に付けているという見た目は全くの別物だが、その生物の「気」が俺の知る生物である事を如実に物語っている。これは紛れも無く…

 

「フリードリヒ!!」

「あれが…チビ竜の本当の姿…!」

 

 キャロとエリオをその背に乗せたフリードリヒは羽ばたきを一つ行うと巨体に似合わぬ剛速で瞬く間に電車へ追い付いた。

 

 今のフリードリヒは「気」の大きさだけなら「気」を練り上げた俺達格闘家すらも遥かに凌駕している。少なくとも身体能力は俺達格闘家を大きく上回っているという事だ。

 実際に闘ってみないと強くは言えんが、身体能力の制限された状態では全力を尽くしても苦戦は免れないだろう。だがそれ故にあちらは安心して任せられるというものだ。

 

「あのフリードリヒならばもう心配はいらんな」

「はい。もうこっちに集中しても大丈夫ですね!」

「(キャロがこれ程の切り札を持っていたとはな。やはり子供達は皆、只者ではなかったという事か…)」

 

 俺達は気を取り直して目の前の敵に向き直り身構え、それと同時に二人である事実に気付く。

 

「(あれ?そういえば…)」

「(ずっとキャロを見ていた俺達は完全に無防備だった…。何故攻撃して来なかった?)」

 

 今思えば敵は飛び降りて来てから身構えても直ぐには攻撃せず、俺が構えてから漸く動き出した。まるで俺が戦闘態勢に入るのを待っていたかの様に…。

 

「(まさか…あたし達の戦闘データを集めてるの?)」

 

 だが今はそんな事を気にしている場合ではない。俺は今、仲間の命を背負っている。勝たねばならんのだ。

 

「…いざ!!」

 

 銃を構えるティアナを背に俺は走り、敵に飛び込んだ。

 

 

 

「はあっ!」

「………」

 

 風で加速した俺の飛び足刀は、上半身を軽く揺らすだけで回避されてしまった。だが最初からこれが当たるとは思っていない。これで少しでもティアナと敵の距離を稼げればそれで充分!

 

「おおおお!」

「………」

 

 着地すると間髪入れずにそのまま攻め立てるが、拳も足も虚しく空を切る。

 

「(近距離でのあんな凄いラッシュでもクリーンヒットしないなんて…!本当に大丈夫なの!?)」

 

☆☆☆☆

[リュウの「策」の説明中]

「俺が何とかして隙を作る。お前はその隙にあの敵の注意を引き付けるか動きを止めてくれ。そうすれば俺の必殺技で勝てる」

「それって隙を作れる前提の話じゃないですか!そんなの策とは言わないですよ!」

「その為に試したい技がある。本来は俺の流儀ではないが…この状況なら恐らくは効く」

「技?それはどんな技なんですか?」

「『蹴り』だ」

「蹴り!?足払いみたいなしゃがむ蹴りなら安全だけどそれは敵も警戒してるはずだし、それ以外だとバランスを崩しやすくて危険です!」

「だからこそだ。だからこそ意識の外からの攻撃が効くんだ。…まあ、機械に意識と言うのもおかしい話だが」

 

《意識の有無に関係無く高度な人工知能ならば初見であろうとも戦闘中に蓄積したデータを利用して予測・対処出来る可能性はあります》

「む…クロスミラージュと言ったか。お前達の類いには失礼だったな。すまん」

《見解を述べただけです。しかしながら貴方の戦闘技術は他の次元世界でも類を見ない珍しいもの故に、初見で対処される可能性は極めて低いと推測されます》

「ならばやはりやってみる価値はあるな」

「(そういう問題じゃないわよ!あんなディフェンステクニックを持つ敵にギャンブルじみた作戦なんて無謀もいいとこじゃない!でも…この人なら何とかしてくれそうな気がする…)」

「判断はお前に任せる。駄目ならこのまま牽制しながら作戦を練ろう」

「……分かりました。それで行きましょう」

☆☆☆☆

 

「!!」

「ぐおっ!」

 

 当然敵も反撃してくる。だが敵は俺と違い、手技を一切使わず足技のみで攻め立てる。俺には出来ん芸当だ。これもロボット故の安定性なのだろうか?

 一方で俺は足場のせいで回避も受け流しもままならない。それに加えやはり足技だけあって一撃一撃が重く、気を抜けば一気に押し切られそうだ。

 

 幾度と無く拳を交わしていく内に俺の手数は減っていき、徐々に押され始める。

 

「(まだよ…信じて待つ!)」

「(ならば基本にして王道!)」

 

 人間の体型ならば来るのが分かっていても回避は困難な箇所がある。その箇所とは正中線!その中でも鳩尾の少し上…つまり胴体の中心!そしてそこへの…

 

「(右正拳中段突き!)」

「………」

 

 狙いが完璧ならばどの方向に動こうと回避が困難となる。つまり敵は防御するしかない!

目論見通り敵は足を止めて右手で受け止め、止まった敵に対しここから更に連携で左上段蹴りを繰り出す。敵の顔面へ伸びる蹴りは首を右に曲げるだけで回避されてしまった…ように見えたが…

 

「(…と見せかけての『掛け蹴り』!!)」

 

 掛け蹴りで敵の頭を地面に落とすように下へ向けて蹴り、敵を前のめりに崩す事に成功。後はティアナが頼りだ。

 

「シューーート!!」

「………」

 

 敵の顔面へヴァリアブルバレットが打ち込まれ、敵は顔を上げながら慌てるように両腕で防御しようと身構える。だが勝負はこの瞬間に結末が決まった。

 

「真空…!」

 

 敵が腕を上げて防御したのと同時に俺は上半身を深く捻転させ……

 

「竜巻旋風脚!!!」

 

 必殺の蹴りを繰り出した。

 

 

「おおおおおお!!」

 

 敵は最初の数発は両腕で防いでいたが、終わり無き回し蹴りで防御を抉じ開けて直接叩き込むと蹴りの勢いで次第に身体が浮き上がり、ダメージで表面の装甲が割れて機械の中身が僅かに露出する。

 

「(あんな勢いで蹴ってるのに敵が吹き飛ばない!?)」

「はあっ!!」

 

 敵は最後の一撃で独楽が弾き出されるかのように吹き飛び、崖の下へ落ちて行った。

 

「ふうぅぅぅ…!」

「(まるで周りの物を巻き上げて砕く竜巻のように捕らえて離さず蹴り続けた…。なんて恐ろしい技…!)」

 

 技の余力で回りながら着地し、立ち上がりながら力む為に止めていた息を深く吐き出しつつ辺りを見回して状況を確認した。

 

「どうやらあちらも撃退したようだ。これでもう安全だな。後は飛んで来る敵を落とすだけだ」

「あ、あの…」

「む、なんだ?」

 

 ティアナが何か聞きたそうに此方を見てきた。何の用だろうか?

 

「さっき言ってた『自分の流儀じゃない』ってどういう意味なんですか?」

「ああ、それは簡単に言えば俺の戒め…と言うかこだわりだ」

「(戒め…こだわり…)」

「だから褒められるものでも特筆すべきものでもない。気にするな」

「……よろしければ詳しく教えてください。どうしても聞きたいんです」

 

 先程とはまるで目付きが違う。どうやらティアナにとっては重要な話のようだ。これは真剣に答えてやらねばなるまい。

 

「……俺は幼い頃からある人物に師事しててな、ある理由で師匠の元を立ってからは師匠の教えを思い出しながら独自に修行していたんだ」

「(幼い頃から…。どうりでただ強いだけじゃなくて戦いに関する柔軟な思考や対応力があると思ったらそういうことだったのね。でも師の元を立った理由って…)」

「師匠はとても実直で真っ直ぐな方でな、小手先の技術や小細工に頼らず相手に正面から挑んで正面から打ち砕く…そんな剛気な闘いを好んでいたんだ。…とは言っても師匠は俺が弟子入りしてからは他流と闘う事が殆ど無かったんだがな」

「(正面から打ち砕く…なんかスバルみたいね)」

 

「そんな師匠を長年見ていた影響か、それとも俺が元々そういう性格だったのか…自然と俺は虚の拳より実の拳で押し通す闘い方になっていったんだ」

「虚…フェイントのことですよね。……あれ?じゃあなんであんなフェイントを絡めたキックを使えたんですか?」

「いくらそれを好きでなくとも使ってくる相手は必ずいる以上、知っておく必要がある。知りたい事を知るには実際にやってみるのが最適だ。

 だからその一つである『掛け蹴り』を密かに修行していたんだ。本来はフェイントを絡めるものではなくそれ自体で攻撃する奇襲専用の蹴り技なんだがな。…とは言っても実際に使うつもりは無かったんだが…『備えあれば憂い無し』とはよく言ったものだ」

 

「(使うつもりが無い技を実戦で使えるレベルまで仕上げたの!?なんて無駄なことを…。でも…それが今、無駄じゃなくなった…。

 一見遠回りや無駄足に見えても…その一歩が確実に目標に近付いている…。この人はそれを無意識に理解してるんだ。

 あたしは兄さんのためにこの射撃魔法と幻術魔法で強くなろうって決めたけど…きっとそれだけじゃダメなんだ。だからあたしは知らなくちゃいけない。あたしに足りないもの・必要なものを…。この人を見ていればそれが見つかるような気がする…!)」

 

「…という訳だ。長くなってしまって済まんが…参考になったか?」

「はい、とても参考になりました。それで…話は変わるんですが…お願いがあります」

「俺にか?なんだ?」

 

 俺の話が終わると今度は俺にお願いがあると言う。今日のティアナはやけに攻めてくるな。

 

「で……」

「?」

「弟子にしてください!!」

「な、何ぃ!?」

 

 耳を疑う一言…!ティアナが俺の弟子になりたいだと!?

 

「あなたが人に教えるのが好きでないのは知ってます!でもあたしにはあなたが必要なんです!」

「し、しかし俺はスバルの担当が…」

「手取り足取りまでは望みません!空いた時間に少しだけでいいんです!」

「俺は格闘技に関する事しか教えら…」

「格闘技の基礎だけでも精神面の訓練だけでも何でもいいんです!どうか…!」

「(この食い下がり…昔、俺が師匠に弟子入りを懇願した時と似ている…。それ程必死なのか…)」

 

「お願いします!!」

「……分かった、いいだろう」

「ほ、本当ですか!?」

「だが俺はスバルを見なければならんし俺個人の修行もあるので一日にお前に割ける時間は大分限られる。それでもいいか?」

「はい!もちろんです!」

「そうか…。ではそれにあたって条件がある」

「その条件は!?」

「この任務が終わった後、お前と一対一の組手を行う。その組手でどんな方法でもいい、俺に一撃でも直撃させてみろ」

「…分かりました。それが条件ならやってみせます!」

「よし、では任務が終わったら改めて話し合おう」

「ありがとうございます!」

 

「ではここからは任務に集中だ。この場は俺に任せてスバル達に加勢してくれ」

「はい!では行ってきます!」

 

 話が一通り終わると気持ちを切り替え任務に戻る。ティアナは威勢良く返事をすると満面の笑みで電車の中へ飛び降りて行った。

 

【リュウside…TO BE CONTINUED】




ティアナが何故か弟子入り志願(笑)
さてさて、ティアナは無事弟子入り出来るのでしょうか(棒)
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