スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION 作:拳を極めし者
いつも頭の固いリュウにはこんなリフレッシュ休暇があってもいいじゃん的な?
【リュウside】
[夜 機動六課隊舎 ホール]
フォワード部隊が全てを終えて隊舎に戻ると六課全員がホールに呼ばれた。いったい何事かと思ったら……
「それでは初任務成功を祝して!乾杯!!」
何故かパーティが開かれていた。
「帰って来たばっかりなのに随分手際がいいわね」
「任務中から準備していたんだな」
「任務中でも全員を労う事を考える気遣い…。流石ははやて君だ」
テーブルに並んだ大量の食事は自由に取り皿に取って食べる方式だ。飲み物はというと、最初に配られた一杯以外は好きなものを頼めるんだが…
「むぅ…。これは酒だったのか…」
「あら、どうしたの?リュウ」
「俺は下戸でな。よし、茶に変えて貰…」
「それはいかんな」
「何がいかんのだ?ガイル」
「祝い事で配られた最初の一杯は飲み干すのが常識であり礼儀だ」
「ぐっ…そんな礼儀があったとは…」
「そういう訳だ。さあ飲め」
「仕方ない…。これも修行だと思えば…!」
ガイルに窘められた俺を春麗とナッシュが複雑な表情で見つめる。
「「(そんな礼儀あったかな…)」」
常識を知らなかった俺が悪いのは当たり前なんだが…予め茶を頼むんだったな…。
[2分後]
「の…飲んだぞ…」
「コップ一杯飲むのに何分掛かってるんだ」
「まさかここまで弱いとはね」
苦い…。しかも飲み切った頃には身体が熱く、心拍数が上がり、我慢出来る程度ではあるが若干吐き気が…。酒は恐ろしい…!
「だがまあ、よくやったな」
「あ、ああ…。悪いが水…」
「では次だ。飲め」
「なん…だと…」
「『次ってなんだ次って!こんな毒みたいな液体なんてこれ以上飲めるか!』…とでも言いたげな顔だな」
「(こいつ俺の心を…!)」
「たった一杯でやめたら
「し、しかし…」
「…そうか。お前は
ぐぅっ…痛い所を…!
「言ってくれる…。ならば…やってやろうじゃないか…!だが…提案がある…!」
「言ってみろ」
「俺と飲み比べで勝負しろ…!」
「……いいだろう」
ガイルならば乗ると思っていた…。死なば諸共だ…。意地でも勝ってやる…!
「だが勝負というからには勝利報酬が必要だな。では…俺が勝ったら飲み屋に付き合ってもらおうか」
「なん…だと…」
また俺をこの地獄に引き摺り込むつもりか…。させんぞ!
「(ガイルの魂胆が分かったぞ。以前『日本でリュウに無理矢理ナットウを食わされた恨みは忘れない』と愚痴をこぼしていた事があったが、恐らくその復讐だな)」
「しかしこのままでは不平等過ぎるな。ハンディキャップとして俺はお前の倍の量で一杯としてやろう。どうだ?」
「!?」
屈辱!手心を加えられるとは…!しかし流石に分が悪過ぎる以上、受けざるを得ない…!
「ああ…それで受けよう…。ところで…俺の勝利報酬がまだだったな…」
「そうだったな。言ってみろ」
「俺が勝ったら…」
「勝ったら?」
「納豆を食って貰うぞ!」
「!?」
そう…。お前が酒で俺を苦しめるのなら俺は納豆だ…。日本伝統の発酵食品の素晴らしさを今一度お前の舌と胃袋に刻み込んでやる!
「リュウ、本気か…。ならばこれ以上の手心は加えられんぞ…!」
「望むところ…!俺は今日、己の限界を超え…ガイル!お前に勝つ!」
「ならばお前に教えてやろう…。越えられぬ壁というものは確かに存在すると!」
こうして俺とガイルの互いに譲れない信念を賭けた闘いが始まった。
「さあ遂に始まるビッグマッチ!リュウさんVSガイル少佐の飲み比べ対決です!司会はわたくしアルト・クラエッタと解説のナッシュ中尉でお送りします!」
「よろしく」
いつの間にやらアルトが勝負を仕切り、観客まで集まって来た。何故だ…。何故こんなに注目を浴びる事になったんだ…というか何故ナッシュが解説なんてやってるんだ…。
「ルールは至ってシンプル!制限時間10分以内により多くのジョッキを飲み干した方の勝ち!ただしハンデとしてガイル少佐はリュウさんの倍の量のジョッキで臨みます!」
いや、今はそんな事を気にする余裕は無い。ここはただひたすら心を無にし、胃袋へこの毒の如き忌まわしき液体を放り込むのみ!
気付けば勝負の時まであと僅か。今の内に精神統一だ…と気合を入れると…
「リュウさん、ちょっといい?」
「なのはか…話かけるな。今は集中せね…」
「酔いにくくなる方法があるんだけど…」
「なに!?そんな方法があるのか!?」
「う、うん。そうだけど顔を近付けて凄むのやめてくれる?」
「む、すまん」
「じゃあこれを食べて」
「これは…チーズか?」
「うん。アルコールの吸収を抑えるには胃の中に食べ物が入ってればいいんだけど、食べ物の中でもタンパク質と脂質は消化吸収されにくくて長時間残りやすいんだ。で、その両方をたくさん含んでいるものの一つがチーズなの。お酒のおつまみによく出てくるのはそういう理由からなんだよ」
「何を言ってるのかよく分からんがとにかくこれを食うだけで酔いにくくなるんだな?」
「ま、まあそういうことだね」
「よし!ならば善は急げだ!」
「ああっ!あんまりたくさん食べたらお腹がふくれ…」
[1分後]
「これで…準備万端だ!」
「一皿分丸ごと食べちゃった…」
『時間いっぱいです!両選手は所定位置に着いてください!』
「いざ出陣!」
「が、がんばってね」
『それでは制限時間10分一本勝負!READY……』
手心を加えられた上に助言を貰ったんだ…。これで負けては恥晒しになってしまう。故に必ず勝つ!
『FIGHT!!』
[10分後]
「み、水……」
「Easy Operation.」
TIME OVER!! GUILE WIN!!
『試合終了~~~!ガイル少佐、二倍というハンデを物ともせず、余裕の勝利です!!」
「何故だ…。チーズを食って…準備は万端だったのに…何故…負けた…!」
「チーズ?それでこの俺に勝つつもりだったのか。そんなもの酒飲みの間では常識だ。まあ、俺にはそんなもの必要無いがな」
「なん…だと…」
「二倍のハンディキャップでも勝負にならんか。三倍ならいい勝負になったかもな」
「この…
「ウワバミ?…とにかく勝負は勝負だ。今度飲みに行く時には付き合って貰うぞ」
「うぷっ…」
まずい…。心臓がエンジンのように脈打ち…身体は湯上がりのように熱くなり…脳が揺さぶられたようにふらつき…頭を鈍器で殴られたような頭痛に襲われ…胃が迫り上がる感覚に襲われる…。歩く事すらままならん…。
「だ…大丈夫?」
そこへ救いの手が差し伸べられた。その正体は…
「ぐぅぅぅ…。な、なのはか…」
「もう無理しちゃダメだよ。わ、私が…部屋まで送るよ!」
それは助かる…。もうこの後どうすればいいかさえ考えられない状態だったからな…。
「た、頼む…」
「う、うん。じゃあ私の首に手を回して」
「ああ…」
なのはは膝を突いていた俺に対して屈み込んで引き上げてくれた。
一歩一歩踏み締める毎に頭に響いて度々吐き気を催すが、この程度なら我慢出来る。どうやら俺の体調に合わせてゆっくりと歩いてくれているようだ。
「うう…」
「落ち着いて。それからゆっくり深呼吸して。もう少しで部屋だよ」
「す…すまんな…」
部屋までの道中、なのはは何度も励ましてくれたり、立ち止まって俺の吐き気を落ち着かせてくれたりしてくれた。
普段なら同じ事を何度も言われると鬱陶しさを感じていたが、今だけはそう思わないどころかこれ以上無い程に救われている気がするな。今日のなのははまるで慈母のようにさえ見える程だ。
[10分後 リュウの部屋]
「顔を上げて。着いたよ」
「おお…。遂に…辿り着いた…!」
「そ、そんなに感動しなくても…」
これでゆっくり休める…。やったぞ!
「よいしょっと。具合はどう?まだ吐き気はする?」
「まだ…目が回って…力が入らんが…吐き気はほぼ無い…。礼を言う…」
なのはに運ばれてベッドに腰を下ろすと一息入れて礼を言う。
「こ、これくらい…気にしなくても…いいよ…」
するとなのはは俯きながら呟いた。
「では悪いが…このまま…寝させて貰うぞ…」
「え?あ…」
着替えもせずにベッドに横たわろうとすると、なのはが何か言いたそうに言葉を詰まらせる。どうしたというのだろう。
「…どうした…?」
「……ううん、なんでもない。気にしないで」
「そうか…。ではお前は…会場に戻れ…。これ以上遅くなっては…みんなに心配を掛けてしまうだろう…」
「わ、私のことは考えなくていいの。あなたの体調がいきなり悪くなったら困るからあなたが眠るまではここにいるよ」
「何から何まで…世話になるな…」
「ふふっ…どういたしまして」
「では…寝る…」
「おやすみなさい、リュウさん…」
こうして俺はなのはが見守る中で静かに眠りに着いた。完全に眠りに落ちる直前、俺の身体に暖かく柔らかい何かが覆いかぶさってきたような気がしたが、その正体が何なのかは俺には分からなかった。
[翌朝 リュウの部屋]
「ぐぉぉぉ……!」
頭が痛い…。まるで春麗の蹴りを直接脳内に打ち込まれたかのようだ…。だが修行を疎かにする訳にはいかん…!
[トレーニングルーム]
「つ、着いた…」
普通に歩けば3分も掛からん距離に10分以上掛かってしまった…。
「おはようリュウ…ってやっぱり酷い顔ね」
「ハンディキャップがあったとはいえ、酒の苦手な者がガイルとあれだけ張り合えば当然そうなる」
やはり誰が見てもそう思うんだな…。酒とは次の日までこんな副作用が続くのか…。
「そんなに辛いなら休めばいいだろう」
「だ…誰のせいだと思っている…!」
ガイルめ…。この後に及んで白々しい…!
「俺は修行と称してお前にある程度飲ませようとしただけだ。原因はわざわざしなくていい勝負を持ち掛けてきたお前のせいに決まっているだろう」
「勝…負…!?」
なん…だと…。全く覚えていないぞ…。
「ちゅ、春麗…。本当なのか…?」
「ええ、そうよ」
「ぐはっ!」
「あ、倒れた」
駄目だ…。今日はもう立ち上がる気力も湧かん…。
「仕方ないわねぇ。リュウ、手伝ってあげるから部屋に戻りなさい」
「………」
俺は無言で頷くと春麗に連れられて部屋へ戻って行った。
それから午前中は頭痛にうなされながらベッドに横たわった。それから午後になのはが俺を見舞いに部屋を訪れ、食堂から持ってきてくれたんだ。
「格闘家は身体が資本なんでしょ?だったら一日三食はしっかり摂らなくちゃダメだよ」
「ああ…そうだな…。恩に着る…」
それからなのはは夜まで俺を介抱してくれた。昨日から世話になり過ぎてなんだか申し訳無い気分になってしまうな。
[夜 リュウの部屋]
「それじゃあ私は行くね」
「ああ、おかげで体調もすっかり元通りだ。お前は多忙なのに迷惑を掛けてしまったな」
「た、たまたま午後から暇だったから付き合っただけだよ」
「いや、それでも世話になった事実は変わらん。ここまで世話になっては何か礼をせねばならんな」
「お、お礼なんてしてもらう程のことはしてないよ」
「それでは俺の気が済まん。何かして欲しい事は無いか?俺に出来る範囲内ならば何でもやろう」
「じゃあ…そこまで言うなら…」
俺が力みながらそう言うと、なのはがモジモジしながら何か呟く。
「か……」
「か?」
「買い物に付き合って!」
「!?」
てっきり仕事を手伝えとでも言われるかと思っていたら…買い物?
「なのは、確認なんだが…今、聞き間違いでなければ『買い物に付き合え』と言ったように聞こえたんだが…」
「……うん」
「そうか。買い物程度なら断る理由も無いが…本当にそんなものでいいのか?」
「いいの」
「分かった。ではそれはいつにするんだ?」
「うーん…。じゃあ…今度の休暇にしようかな」
「では日が決まったら教えてくれ。その日は一日中でもお前の買い物に付き合おう」
「い、一日中…!」
なのはが「一日中」という単語に妙な反応を示して顔を赤くした。一体どうしたんだ?
「き、気持ちはありがたいけど多分そんなに時間は取れないと思うし…かかりもしないと思うよ」
「そうか。まあ、とにかくその日はお前の為に空けるとしよう」
「私の…ため…」
すると今度は「なのはの為」という単語に反応して呆然としている。いちいちよく分からん奴だ。
「ではこの話はここまでだ。お前もずっと俺に付き添って疲れただろう。部屋に戻って休んでくれ」
「う、うん!そうだね!」
俺の言葉に意識を取り戻したかと思うと満面の笑みで返事をするなのは。やはり相変わらず感情表現が豊かだな。
「じゃあおやすみなさい!」
「ああ、お休み」
なのはが部屋を出て行ってから直ぐに布団に潜り、ふと考える。「やはり買い物に付き合うだけでは礼としては軽過ぎる。何か他に出来る事は無いだろうか?」と。
しかし俺の人生は格闘技ばかりで常識からは掛け離れた人生だ。こういう場合の返礼には何が相応しいかさっぱり分からんので、こうなったら誰かに聞くしかないな。明日にでも誰かに手当たり次第聞いてみるとするか。
微睡む意識の中で珍しくなのはの事ばかり考えながら、俺は眠りに着いた。
[翌々日 機動六課 部隊長オフィス]
今日は朝からはやての呼び出しで、俺達格闘家とフォワード隊の面々、そしてヴィータ達ヴォルケンリッターが部隊長オフィスに集合している。これ程の面子が一同に会するのは機動六課が発足してから初めての事だ。
「なのは、はやてから何か聞いているか?」
「ううん、『任務の関係でみんなに話すことがある』って聞いただけで私もなにがなんだかさっぱりだよ」
「この面子を揃える程の事態だ。何か重要な任務でも始まるのかも知れんな」
「…そうだね」
口には出さないが、他の者も同じ事を思ってか神妙な面持ちで押し黙りながらはやてを待ち続けている。だがフェイトだけは何故か全く違う空気を漂わせている…と言うより心なしか若干やつれ気味にさえ見える。
「皆さん、お待たせしました」
来たか…。やはりはやての雰囲気が重苦しい。となるとこれは…
「えー、本日はこんな早朝から集まっていただいてありがとうございます。皆さんに集まっていただいたのは全員で挑まなければならない重要な任務をお知らせする為です」
あの真剣な目…。まさかとうとう大規模な戦闘が!?……と思いきや、はやての口から出て来た言葉は誰もが自分の耳を疑ってしまうような信じられないものだった。
【リュウside…END】
…という訳でリュウに下戸設定装備です。
これがきっかけででリュウとなのはの距離がちょっと縮まった気分にならなくもないかも知れないと思えたらいいなー的な?
どちらかと言うとなのはから近付いていってる感じですが。