スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION 作:拳を極めし者
あと敵の正体は詳しく書いたんで、分かる人には分かるんじゃないかなーと思います(能力はアレンジが入ってますが)。
【スバルside】
[山岳リニアレール車輌内部]
「な…何あれ…」
春麗さんが闘っている謎の敵。
それは人間と同じ体型でとても筋肉質。だけど体毛は一切無く、耳・鼻・口も無く(口の形はあるけど穴が無い)、細く切れ長の目、楕円形に長くて先端が少し尖った後頭部、布一枚すら纏わない上に性器の類も見当たらない全身が真っ白な身体。それに加えて身体を鈍器や刃物に変形させて攻撃してる。
落ち着いて気配を探るとしっかりと気配を感じた。これはこいつが生物である証拠だ。でもそれは同時に自然には絶対に発生し得ない「造られた生物」である事を示していた。
春麗さんはそんな生物と打ち合いを続けており、あたしは加勢する為に立ち上がろうとした。ところが……
「(…あれ?)」
立ち上がれない。足に…いや、全身に力が入らない。どうして…どうして力が入らないの!?
「くっ…動け…!」
「ジッとしてなさい!『気』を消耗し過ぎて身体が悲鳴を上げてるのよ!」
「…!!」
この時再びリュウさんの言葉を思い出す。
☆☆☆☆
「『気』とは言い換えれば体内から生み出される生命力そのもの。僅かに運用するだけで莫大な力を生み出せる強力なエネルギーだ。だが強力故に危険もある。未熟なまま使えばその負荷に耐え切れず自らを傷付ける可能性があるんだ。
また個人差はあるが許容範囲を超えて消耗し過ぎると急激に身体能力が落ち、立つ事すらままならない程に消耗してしまう。限界まで使い続ければ肉体の凡ゆる機能が低下して自力の生命維持すら困難になり、最悪の場合は瞬く間に衰弱して死んでしまうんだ」
「そ、それは怖いですね…。でも消耗っていうとリュウさんの波動拳みたいに『気』を撃ち出す使い方ですよね?」
「それも一つだ。だが体内で効率良く循環させるのも一点に集めるのも体外に放出するより遥かに少ないというだけで消耗はする。それに君の技…。名前は何だったか…」
「いちおう『フラッシュアクセル』って名付けましたけど…忘れちゃいました?」
「すまんな。とにかくだ、それの使い方を思い出してみろ」
「えーと…。『気』を足に集めて、飛び出す準備をして、1・2秒くらいしか維持できないから集まったら即座に思いっきり弾け……あ、そっか」
「そう。本来は維持出来なくなったら散ってある程度体内に戻る筈の『気』を体外で弾けさせる。これで集めた『気』は全て消費される」
「そうなるとちゃんと使い所を考えて使わないと危ないですね」
「その通り。それに加えて君はまだ『気』を練る事が出来ない分、殊更気を付けなければならん。無闇に使えば『気付いたら立てない程に消耗していた』という事態にもなりかねんからな」
「ペース配分がすっごく大事ってことですね。あたしの場合は魔力も使えるからうまく交互に使えばあんまり心配なさそうですけど」
「だが敵は魔法を封じられるんだろう?その時の為にも『気』だけで闘い抜けるようになっておく必要がある。それに『気』の制御は殺意の波動を制御する為にも必要な事なんだ」
「殺意の波動…ですか…」
「今は殺意の波動の事は忘れていい。とにかく基礎。基礎を着実に、そしていち早く身に付ける事だけ考えるんだ」
「…分かりました!」
「よし、その意気だ。…そうだ、これは言っておかねばな。組手の時に『気』だけで闘って貰ってはいるが、組手と実戦では状況も緊張感も全く違う。その違いに心を乱されないよう実戦では常に心掛けてくれ」
「はい!どんな時も平常心でがんばります!」
☆☆☆☆
あたしは返事だけで本当はなんにも分かってなかった。興奮して、調子に乗って、警告を無視して、挙句の果てに動けなくなって春麗さんを見守る事しか出来なくなった。
こんなんじゃ殺意の波動の克服なんか出来ない。誰も、何も守れやしない…。
あたしのやってきた事ってなんだったの?迷惑をかける為に頑張ってきたんじゃないでしょ?なのにこの有様はなんだよ!
「10011 10100 10010 01111 01110 00111 11011」
「その気持ち悪い音をやめなさい!」
「(春麗さん…)」
あたしが自分を責めている間も春麗さんと白い奴の攻防は続いていた。白い奴が足を巨大な鎌のように変形させたり、手を剣のように長く鋭く伸ばして攻撃するけど春麗さんはそれを手で受け流したり足で弾いたりして全て防いでいる。
当然春麗さんも受けてばかりじゃなく、隙を見ては顎・鳩尾・股間等急所を的確に蹴り込む。だけど白い奴は多少ぐらつく程度であまりダメージを受けた様子が無い。
「(私達はまだ貨物室の扉を開けてないのに殺す気で攻撃…。私達のどちらか一人が残っていれば大丈夫って判断したようね)」
「(あの白い奴、頑丈すぎる!春麗さんの蹴りをあれだけ喰らって倒れないなんて…!)」
すると白い奴はこのままじゃ勝負が着かないと思ったのか、両腕を細く伸ばして先端を小さい斧状に変形させると……
「キューー!!」
「(これは…!)」
甲高い不気味な声と共にそれを物凄い速さで振り回し始めた。
「(さっきのガジェットを切り刻んだのはこの技ね…!)」
右手の斧を鞭のようにしならせて打ち込み、右手を戻した反動で左手の斧を打ち込む。左手を戻した反動で更に右…とそれを正面でひたすら小さい動きで繰り返すだけのとても単純な技。
リーチはそんなに長くないけどそれは速さがさっきまでの攻撃とは段違いだ。春麗さんも防ぎ切れないと見るや即座にバックステップで距離を取る。
「キュー…」
「(あの技は厄介ね…。さて…)」
「キューー!!」
「!?」
白い奴が両腕を地面に突き刺したかと思ったら、それが細長い槍となっていきなり春麗さんの目の前の足元から飛び出した。
「春麗さん!」
「…やってくれるわね」
「キュ…」
「(す、凄い…。初見であんな速い奇襲を回避するなんて…」
春麗さんの足に刺さったように見えた2本の槍はギリギリで外れており、靴が裂ける程度で済んでいた。その槍は地面に引っ込んだと思ったら一瞬で手元に戻った。
「(この硬い床を1秒も掛からずに数m先の私の場所まで届かせた…。これを地面じゃなく直接打ち込んできたらもっと速いわね。
今のは様子見で出方を伺ってたから躱せたけど、動きを読まれたり技の最中を狙われたら絶対に躱せない。こうなったら速攻で片を付けるしかなさそうね!)」
「!!」
意を決したような目付きになった春麗さんはいきなり正面に飛び出した。足が地面に着かないで真横に跳ぶ程のスピードだ。白い奴もそれに反応して両腕を前に突き出し、さっきの槍を打ち込んだ。
「(甘い!)」
「!?」
…けど春麗さんはそれを読んでおり、地面を蹴って斜めに跳び上がり、まるで映像の早回しのように一瞬で白い奴の頭上にまで迫った。でも敵の反応も速く、春麗さんを輪切りにしようと鎌の足で回し蹴りを繰り出すと…
「(かかった!)」
「!?」
その反撃すら読んでいた春麗さんは空中を蹴って地面が凹む程の速度で着地。
「はああ…!」
その着地で屈む動作で「溜め」を作り、白い奴が体勢を立て直す前に……
「千裂脚!!!」
目にも止まらない蹴りの乱舞を繰り出した。
「!!!!!?」
「やあっ!!!」
左右連続回し蹴り→右足だけでひたすら何十発(ほぼ残像しか見えないので数は大雑把)もの蹴り→左上段蹴りで吹き飛ばすという蹴りの嵐にはタフな白い奴も耐えられず、身体中が凹んで車輌の壁に叩き付けられ膝から崩れ落ちた。
「はあーーーーあ!」
でも春麗さんはそれでも素振りをして構えを崩さない。これってリュウさんの言ってた残心ってやつだっけ?でもそんな事を考えていたのも束の間…
「キュ……!!」
「…呆れるくらい打たれ強いわね」
信じられない事に白い奴が起き上がったんだ。身体中ベコベコなのにどうして…と思っていたら……
「キュー!」
「…はあ、なるほどね…」
「ウ、ウソ…」
ベコベコだった身体が見る見るうちに元の体型に戻っていった。多分、身体を変形させる能力の応用だろう。しかもさっきはフラフラだったのにダメージなんて無かったかのようにケロッとしてるように見える。
「(打たれ強さの秘密はこれだったのね。変形能力で衝撃を吸収しやすい状態に変形したから私の蹴りをあれだけ喰らって起き上がれたって訳か。
しかもいきなり元気になったところを見るともしかしたら変形能力の応用で体内を操作して体力を回復も出来るのかもしれない。これじゃあ耐久力に差があり過ぎて分が悪いわ)」
春麗さんでも倒し切れないなんて…。だったら…大した力になれないかもだけど…あたしも加勢しなきゃ…!
「(こうなったら一か八か『あれ』を…)」
「くっ…。春麗さん…あたしも…!」
春麗さんに若干焦りの色が浮かび始めた頃、あたしは力が入らず小刻みに震える全身を無理矢理動かして立ち上がり、必死に構えを取った。
「スバルは下がってなさい!」
「こいつは…力を合わせなきゃ…!」
「『気』を消耗し過ぎてるのにこれ以上無理したら命に関わるわ!」
「で、でも…!」
「それに下手をすれば殺意の波動が目覚めてしまうのよ!」
「!?」
ああ…やっぱりあたしは……
「00011 10011 00011 00001 10000 00011……」
春麗さんとの遣り取りの最中に白い奴がまた気持ち悪い音を発すると、目の前で信じられない事が起こった。
「き……」
「消えた!?」
白い奴は指をピンと伸ばして片手を上げた奇妙なポーズを取ると、目の前にいた筈なのに体色がどんどん薄くなっていったかと思ったら完全に消えてしまったんだ。慌てて辺りを見回してもやっぱり姿は見えない。
あたし達があたふたしていると端に積まれていた箱が突然こっちに飛んで来たけど、春麗さんがそれを蹴りで打ち払う。視線を箱の方向に戻すと箱のあった場所の床には穴が空いていた。
「あいつ、あそこから入って来たのね…!」
………
………
………
穴が見えてからから5秒経過。思い出したようにあたし達は白い奴の気配を探ったけど、もうこの車輌にいないみたいだ。
「逃げた…みたいね…」
「はい…」
「っていうかこの場合は見逃してもらえたってところかしら…」
「………」
春麗さんが自虐的な事を言いながらもあたし達はようやく一息吐く事ができた。
「あ…あの、春麗…」
「さて、じゃあ重要貨物室に入るわよ」
「え…」
あたしはまたバカな事をしようとした。忠告を無視した無謀極まりない行動。しかもそれは殺意の波動の覚醒という最悪の事態に繋がりかねないという愚行でもあった。
だから殺意の波動を覚醒させない為には春麗さんが一人で闘うのを黙って見ているしか無かった。でもそのせいで春麗さんには負担を掛けるどころか下手をすれば命すら危ない状態にまで陥らせてしまった。
こんな自分が恥ずかしくて、情けなくて、春麗さんに申し訳ない。このまま消えてしまいたい。でもそれはただ現実から逃げてるだけだ。どんな事だろうと逃げる選択なんて選びたくない。じゃあどうすればいい?頭の中がグチャグチャでわかんない。
だからさっきもそうだった。他に償いようがないからこそ咄嗟に取った行動だった。ただ謝罪したかった。あたしの事を心配して闘ってくれた人に少しでも償いたかった。なのにこの人はなんで……
「なんで………すか…」
「?」
「なんで何も…言わないんですか…」
「何って…何を?」
「それは…あたしのことで…」
「あなたは叱ってほしいの?」
「とぼけないで下さい!自分がどれだけ身勝手で危険なことをしたのかくらいわかってます!」
「………」
「謝ったって許されないのもわかってます!だけど心の底から謝りたかった!謝った上でどんな罰も受けるつもりでした!なのになんで何も言わないんですか!?」
「(罰…か)」
「どうせなら罵ってほしかった!叱ってほしかった!そうししてくれれば戒めとして心に刻めたのに!こんな思いするくらいならいっそ殴られた方がずっとマシですよ!」
「………」
あたしが発する言葉が響いては消えていく度に訪れる静寂。それはどんな辛辣な言葉よりも心に深く突き刺さっていく。それをごまかす為にまた叫ぶ。
「どうして何も言ってくれないんですか!?」
「………」
「あたしにはそんな価値も無いんですか!?」
「………」
「あたしをそんなに…軽蔑したんですか…」
「………」
ああ…やっちゃった…。ただ謝りたかっただけなのに…これじゃただの愚痴だ…。もうやだ…。自分で自分が嫌いになりそうだよ…。
「………」
それでも春麗さんは何も言わない。ホントに軽蔑されちゃったのかな…。そう思ったら気付いたらあたしは下を向きながら泣いていた。なんで泣いたのか…いろんな感情がごちゃ混ぜになって何が何だか分からない。こんなのただ春麗さんを困らせるだけなのに止める事も出来ない。どうすればいいかも分からない。もう立つ気力さえ無くなりかけた時…
「…ごめんね」
「え…」
耳元で響く春麗さんの声。優しく身体を包む暖かさ。顔を圧迫する柔らかさ。あたしは予想外の出来事に驚いて呆然と立ち尽くす。
「私はね、怒っていたわけじゃないの。あなたの為を思ってあえて何も言わないって決めてたんだけど…逆効果だったみたいね」
「あたしの…ため?」
「もしあなたが自分のやった事を反省してないなら一言言ってやろうと思ったわ。でもあなたはそうじゃなかった。だから何も言わない事にしたのよ。あなたならその反省を糧に自分のやるべき事を見つけて成長出来る、そう思ったの」
「………」
「でも私のその見通しは甘かった。今のあなたを見てやっとそれが分かったの」
「…そうですよね。あたしなんかそんな立派な人間じゃ…」
「逆よ」
「…逆?」
「あなたは優し過ぎて責任感も強過ぎるせいで必要以上に自分を責める嫌いがあるわ。だから私のやった事は逆効果だった…」
「(そこまあたしのことを考えて…)」
「だから謝るのは私の方で、あなたが謝る必要はないの」
「!!」
「あなたの事を分かってあげられなくて本当にごめんね」
「春麗…さん…!」
よく覚えてないけど、母さんに抱かれた時の気持ちってこんな感じだったのかな。とっても心が安らぐ感じだ。こんなに安らいだら緊張も何もかも吹っ飛んで…泣きたく……
「うあああああああああ…!」
あたしは強く強く春麗さんを抱き締めた。本当は甘えちゃいけない年齢だって分かってる。だけど今は…今だけはこの温もりを離したくなかったから。
「………」
「…落ち着いたかしら?」
春麗さんはあたしが泣き続ける間、ずっと抱き締めながら頭を撫でてくれていた。すっかり甘えちゃったよ。
「…はい。こんな情けない姿見せちゃって…すいません…」
「気にしなくていいわよ、私達は仲間なんだから。仲間が悩んでたらそれを何とかしてあげたくなるもんでしょ?」
「仲間…」
春麗さんはあたしなんかを兵士や駒としてでなく、仲間として見てくれてるんだ…。
「…って言ってもさっきは小さい子供をあやしてるみたいだったけどね」
「ゔぇ!?」
「アハハッ!変な声ね!」
「う…!」
思いもよらない春麗さんの発言に思わず素っ頓狂な声出しちゃった…恥ずかしい…。でも…
「あ…ありがとうございます!」
「!?」
今度は謝るんじゃない。感謝の気持ちを精一杯伝えるんだ。
「こんな自分勝手で生意気なあたしをこんなに大事にしてくれるなんて感激でいっぱいです!」
「そ、そう…」
「あたしはその恩に報いたい!だからもう心配かけないように心身共に成長してみせます!」
「………」
「まだあたしを仲間として見てくれるなら一緒に戦っていきたいんです!どうかお願いします!」
「………」
言いたい事は全部言った。後はどんな結果も受け入れる!
「まったく…堅苦しい事言うわねぇ」
「…ごめんなさい…。こんなことしか言えなくて…。やっぱり…」
「違うわよ。さっきも言ったけどそんなに真剣にならなくてもいいのよ。あなたを仲間とは思わないなんて一言も言ってないじゃない」
「それじゃあ…!」
「そういうこと。じゃあこの話はこれでおしまい!さっさとレリックを確保しに行くわよ!」
「はい!!」
すっかり元気を取り戻したあたしのところへタイミング良くティアが合流。ティアが「せっかく急いで来たのにやることが無い」って嘆いてたのを見てちょっと微笑ましくなって笑っちゃったら、いつぞやみたいにお尻をつねられちゃった。
その後三人で重要貨物室に入ると真ん中にレリックが鎮座しており、セキュリティを解除してケースに入れて無事確保。
それから直ぐに車輌の上に出てみるとなのはさん達と大きくなったフリードに乗ったキャロとエリオが合流しており、間も無くナッシュさんとガイル少佐が上がって来た。リュウさんとリイン曹長はまだ制御室にいるらしい。
全員が揃うとライトニングとナッシュさん達はリニアレールを送り届ける為に指定場所までの護衛として現場に残り、あたし達も含めた他全員はレリックを届ける為に先に機動六課のヘリで帰還する事になった。
【スバルside…TO BE CONTINUED】
春麗が指導者というか母親役みたいになってしまいましたね。
漫画作品では春麗は色々と世話を焼く描写が見られる事があったし、スト3では武術道場を開いていた事もあったのでそれらをミックスしたイメージを膨らませてこんな感じに仕上げました。