スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION   作:拳を極めし者

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めっちゃ文字数多いっすね(笑)
最初の内だからサービスサービスぅ!!


第二話「試験 -再会と覚醒-」 A

【スバルside】

[0075年4月 ミッドチルダ 第8空港近隣 廃棄都市街]

 

 準備運動もしっかりと終わった所でメンテナンスを終えたティアが時間を確認する。もうじき定刻だ。

 

 ブザーが鳴ると空中にスクリーンが映し出される。そこには軍服を着た可愛らしい人が映る。いよいよだね。

 

「おはようございます!魔導師試験の受験者さん二名!そろってますかー?」

「「はい!」」

 

「確認しますねー?時空管理局 陸士386部隊所属のスバル・ナカジマ二等陸士と…」

「はい!」

 

「同じくティアナ・ランスター二等陸士!」

「はい!」

 

「所有している魔導師ランクは…えーと、互いに陸戦魔導師『Cランク』!本日受験するのは陸戦魔導師『Bランク』への昇格試験で間違いないですねー?」

「はい!」

「間違いありません!」

 

「はい!本日の試験官を務めますのは、わたくしリインフォース2(ツヴァイ)空曹長です!よろしくですよー?」

「「よろしくお願いします!」」

 

 敬礼で挨拶してきたのであたし達も敬礼で返す。ああ、少しドキドキしてきた…。

 

 

 

☆☆☆☆

[同時刻 試験会場 スタート地点上空]

 

 一方、受験者と試験官のやり取りの一部始終を見守る一機のヘリ。

 

「お?早速始まっとるなー。リインもちゃんと試験官しとる」

「はやて。ドア、全開だと危ないよ?モニターでも見られるんだから、ね?」

「はぁーーーい」

 

 ヘリから身を乗り出していたのは時空管理局二等陸佐の「八神はやて」。現在は彼女の発案により自分が責任者である『ある部隊』を作る為に東奔西走している。

 その彼女に注意を呼び掛けたのは時空管理局本局執務官の「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」。所属は違うがはやての案に賛同し、現在はこちらの部隊に在籍している。

 今回はその人材を発掘すべく、自分達の目で試験を見届けようという訳だ。

 

 

 

 フェイトに言われたはやてはドアを閉め、モニターで監視を行う。

 

「この二人がはやての見つけた子達だね?」

「うん。二人とも中々伸び代がありそうなええ素材や」

「でも珍しいよね。あのなのはが『今回の引き抜きの判断は私に任せて欲しい』だなんて」

「試験の合否は飽くまでもリインが決めるけどな。

でも資料を見せたらえらい食い付きやったなぁ。どっちかが知り合いなんやろか?」

「今の学校に知り合いがいるなんて聞いたことないな。でもそうなると…あの人(・・・)の関係かな。会議が終わってから二人で何か話してたし」

「そうやろなあ。なのはちゃん、試験の内容も一部変更してあの人に障害役を任せたくらいやし、『その障害に対して特定の行動を取らないと引き抜きは無し』って言っとったよ」

「随分厳しいんだね、なのはらしいけど」

 

「それにしてもユーノ君も可哀想になぁ。

 あの人はなのはちゃんの言う事、何でも素直(?)に聞くしなぁ。いっつも尻に敷かれっぱなしや。もしあの二人がくっついたらいわゆる『カカア天下』ってヤツになるやろな!あはははは!」

「それ、なのはに言わないでよ?あの人の事が絡んだ冗談を言うと凄く怒るんだから…」

「あはは、わかっとるって。ほら、もうすぐ始まるで?」

「(ホントに分かってるのかなぁ…。心配だよ…)」

☆☆☆☆

 

 

 

「お二人はここからスタートして各所に設置されたポイントターゲットを破壊。勿論破壊しちゃダメなダミーターゲットもありますからねー?

 妨害に気を付けながら全てのポイントターゲットを破壊して、制限時間内にゴールを目指してくださいです!

 あ、重要な事を言い忘れてました!コースの中間に特別なポイントターゲットを設置しました!これは特定の条件で動きを止めて降参の合図を出します!止め方は自分達で探しましょう!破壊出来るなら破壊してもオッケーです!

 ちなみにこれはお二人で挑まなければなりませんから忘れちゃダメですよー?

 そしてそれを越えて最後のチェックポイントに着くと最終関門!これは一人でもいいですけど力を合わせないと大変だと思いますよー?どこから出て来るか分かりませんから気をつけてくださいです!

 説明は以上です!何か質問はー?」

 

「あ…えーと…」

 

 …思い浮かばない。困ってティアの顔を見ると…

 

「……ありません」

 

 そっか。ちょっと浮かない顔をしたように見えたけど…ティアがそう言うなら大丈夫だね!

 

「ありません!」

 

 あたしも元気よく言った。

 

「では!スタートまであと少し!ゴール地点で会いましょう!ですよ♪」

 

 空曹長はウィンクをしながら通信を終了した。すると入れ替わりでカウントダウンの画面が表示される。

 

《5》

 

「(遂に始まるんだ…。絶対合格してみせる!)」

 

 あたしは心の中で気合を入れた。後は突き進むのみ!!

 

《4》

 

「(スバルに心配させない為にあえて質問しなかったけど…『特別なポイントターゲット』って一体…)」

 

《3》

 

「(それにわざわざ関門の事を事細かに事前に説明するなんて過去の試験の記録を調べても見た事が無い。今回は二人で挑むとはいえ昇格試験だから評価は個別だし、そもそも独行した方が評価が高くなる採点システムなのに『二人で挑め』だなんて…)」

 

《2》

 

「(もしかしてあたし達…昇格試験以外の面で何かを試されてるの?だとしたら誰が何の為に?

……ううん、今はこんな事を考えても意味が無いわね。先ずは目の前の試験に集中!)」

 

 

《1》

 

「READY……」

 

 ティアがタイミングを計る。

 

《START》

 

「GO!!」

 

 こうして試験は開始された。

 

 

 

 最初のポイントターゲットは廃ビルの中層。ティアは自作のストレージデバイス「アンカーガン」からアンカーを射出して壁に突き刺し、魔力で固定するとあたしを片腕で抱えながらアンカーを巻き取って移動。ティアは細身に見えるけど実は凄く筋力があるんだ! あたし程じゃないけどね!

 

「中のターゲットはあたしが潰してくる!」

「手早くね」

「オッケー!」

 

 ティアはあたしを振り子運動で内部に投げ込む。

 

 ガラスを割って飛び込んだ場所の奥の通路にオートスフィアが三機。侵入者を感知したためバリアを展開してレーザーを撃ってきた幸い通路が広めだったのであたし自作の簡易デバイス「ローラーブーツ」の性能を問題なく発揮でき、摩擦力を調整することで壁面も走れるようになる機能「アブソーブグリップ」で壁も使って立体的な動きで弾幕を回避しながら接近する。

 

 飛び込みざまに左の拳を振り下ろして一機。着地しても止まらずに旋回し、右後ろ回し蹴りで二機目をそれぞれ一撃で撃破。

 

「(残り一機!)」

 

 残りの一機は後退しながら撃ってきていたのでかなり遠くにいる。

 

「(逃げる敵に時間をかけてられない!なら!)」

 

 格闘戦が得意なあたしに対する時間稼ぎをしているのは明白だ。

 

「ロード・カートリッジ!」

 

 掛け声に反応して右腕の拳装着型アームドデバイス「リボルバーナックル」に、カートリッジに込められていた魔力が装填される。

 

「リボルバァァァァ……!」

 

 右拳を握ると歯車状のローター「ナックルスピナー」が回転して風を帯びていく。そして拳を前に突き出すと…

 

「シューーーート!!」

 

 拳から空色の閃光が飛び出し、その後を竜巻のような衝撃波が追い掛けた。その拳はまるで拳銃の如く反動で上を向き、硝煙のような煙を上げる。するとオートスフィアは閃光に貫かれ、後を追い掛けてきた衝撃波で壁に叩き付けられて木っ端微塵に砕け散った。

 

「よし!残りも早く叩こう!」

 

 

 

☆☆☆☆

「落ち着いて…冷静に…」

 

 一方、別行動を取っていたティアナは先のビルに向かい、窓側に配置されていたオートスフィアを向かいのビルの屋上から破壊しようとしていた。

 ポイントターゲットに悟られないようまとめて殲滅するべくアンカーガンにカートリッジ一個を装填し、魔力を弾丸状に形成し加速させて撃ち出すミッドチルダ式魔法の基本中の基本である直射型射撃魔法「シュートバレット」による連射を開始した。

 中にダミーターゲットがあったため危うく撃ちそうになってしまったが冷静に狙いを外し、ほんの数秒で窓側は全滅した。その直後、奥から増援が出て来たため落ち着いて破壊。

 中を調べたら他にはいなかったので、屋上から飛び降りてアンカーガンを使ったショートカットで次のポイントターゲットのいる場所へ向かった。

☆☆☆☆

 

 

 

「(これで…ラスト!)」

 

 あたしはビル内のポイントターゲットを全て破壊したのを確認してから全速力で次の場所へ向かったところ、信じられない事に交差点でティアと合流した。

 

「(先行してたとはいえローラーブーツがある分あたしの方がかなり速い筈なのに…。ティアはあたしより早く片付いたの!?)」

 

 あたしはティアのあまりの合流の早さに驚いて…

 

「いいタイム!」

 

 嬉しくて思わずティアに話し掛ける。

 

「当然!」

 

 ティアは調子が良くてテンションが上がってるみたいだ。これなら絶対イケる!

 

 次の障害は進路上に大量に配置されていた。でも今のあたしとティアならこんなの楽勝だ!

 

「行っくぞぉぉぉぉ!!」

「スバルうっさい!!」

 

 

 

 それからしばらくは自分達でも驚くようなペースで進み、「特別なポイントターゲット」がある中間地点の大きな廃ビルへ到達。そこには通常より大きいオートスフィアが鎮座していた。

 

「(今までのオートスフィアよりかなり大きい…。でもそれだけなら特別とは言わないわよね。先ずはあたしが射撃で探りを…)」

「こんなデカくて鈍そうなのなんて楽勝だよ!」

 

 あたしは何も考えずに全速力で突撃していった。

 

「避けなさい!」

 

 走り出すのと同時にティアが叫んだ。 そしてティアの声に気付くのとほぼ同時にオートスフィアが攻撃を開始した。

 

「うわっと!」

 

 何とかギリギリのところをスウェイで回避しながら急ブレーキを掛けた。

 今までのオートスフィアはレーザーだったのに、これは青白い何かのエネルギーを塊にして飛ばしてきた。弾速はレーザーより遅いとはいえかなり速く、弾がとても大きい。しかもあたしの動きを予測して撃っているようで、僅かでも反応が遅れていたら直撃するところだった。

 

「(危なかった…。ありがと、ティア。でも今の…どこかで…)」

 

 ふと浮かんだ疑問はとりあえず後回しにして、一旦ティアの場所まで後退した。オートスフィアはその場に留まってあたし達が動き出すのを待っているようだ。これを利用しない手は無い。

 

「どうやらバリアは張ってないみたいね。それだけ装甲が硬いのか、誘い込む為のフェイクか…。戦いが始まってからも浮いてないところを見ると飛行能力は無し。それとスバル。今の攻撃、見た目以外に何か気付いたことは?」

 

 ティアが敵の分析を開始した。 こういう時のティアは頭の回転が早くて凄く頼りになるんだ。こういうのを見る度に思うけど、やっぱりティアは隊長とか指揮官に向いてると思うんだ。

 

「動きを予測して撃ってきてるみたい。レーザーに比べたら遅いけどけっこう速いしすごく避けにくいよ。それに…」

「それに?」

「上手く言えないけど…なんか攻撃に違和感を感じたんだよね。(感じる筈の無いものを感じた)って言った方が正しいかな。しかも以前にも似たようなものを感じたような気も……ごめん、やっぱ上手く言えないや」

「漠然とし過ぎね。まあ一応頭には入れておくわ。…動きを予測して撃ってくるなら予測を上回るフェイントを入れればいいだけよ。さっきの攻撃を避けられたのはあんたが何も考えずに突っ込んだのがフェイントになったからみたいだしね」

「あはは…返す言葉もございません…」

「…先ずはあたしが牽制で探りを入れてみるからスバルは囮になって。攻撃する振りだけでいいから反撃は考えなくていいわ。でも必要な時は指示するから頼むわよ」

「うん、任せて!」

 

 作戦は決まった。行こう!

 

「(『特定の条件で動きを止める』って言ってたけど、そんなものヒントも無しにわかるはずもない。ここはやっぱり破壊するのが一番手っ取り早いわね。スバルにはああ言ったけど…やっぱり速攻で決める!)」

 

 あたしはさっきと同じように正面から突撃。当然敵は攻撃を再開するけど、今度は回避に専念しているのでさっきより楽に回避出来た。

 

「!!(…また感じた…変な感覚…。でも今は目の前の敵に集中!)」

 

 どうやって引きつけようか考えた結果、とりあえず挑発する事にした。相手は機械だけど何故かそうした方がいいと思ったんだ。

 

「そんな遅い弾じゃ当たんないよ!」

 

 すると不思議な事に攻撃があたしに集中。時折突撃する振りをしながら一定距離を保ってもあたしに攻撃が飛んでくる。挑発が効いたのかは分からないけど囮役は大成功!

 

「(後はお願いね、ティア!)」

「(的が大きいなら好都合!喰らいなさい!)」

 

 カートリッジの魔力をアンカーガンに込めたティアは敵に向かって今までに無い程の速度で高速連射を始めた。でも敵はステップを踏むように左右に動いて次々と弾丸を避けていく。

 

「くっ!逃がさない!」

 

 ティアも逃げる敵に銃口を合わせながら胴体を狙い撃ちしつつピンポイントで足元にも攻撃。

 

「(いくら回避能力が高くても浮いてないなら姿勢を崩される攻撃に弱い筈!)」

 

 それでも射撃は当たらない。こんな回避能力の高いオートスフィアがあるなんてビックリだよ。…とにかくティア一人で攻撃しててももうこれ以上の展開は望めなさそうだ。

 

「(ならあたしも逃げてばかりじゃダメだよね!)」

 

 ティアの指示はまだ無いけどこれ以上は待ってられない。動きを変えて先回りし、ティアの邪魔にならないように敵の行く手を塞ぐ。

 

「(スバル…まだ指示してないのに…。でも助かったわ!)」

「(これなら逃げ道は少ないから予測しやすい!そこを一気に叩く!)」

 

 あたしは狙いを絞って敵の出方を窺った。

 

「(え!?)」

 

 ところが敵は御構い無しにあたしのいる方向に向かって来た。

 

「(なんでこっちに来るの!?)」

 

 慌てつつ反射的に右腕で殴りかかったけど、全く予測していなかった行動に驚いたせいで一瞬反応が遅れた。

 

「(!?…今のは!!)」

 

 敵はその隙を突いてさっきの攻撃と同じようなエネルギーであたしの右腕を弾いて軌道を逸らした上に、あたしの体勢を崩しつつ突進の勢いを止めずに走り抜けた。

 その直後、あたしはあまりの驚きに動きが止まってしまった。攻撃があっさりと躱されてしまった事もあるけど、驚いた理由はそれだけじゃなかった。

 

「(直接受けてやっと分かった…。やっぱり間違いない!4年前のあの日に会った…!)」

 

 思い出したんだ。「あの男の人」だって。

 

「(こんな場所で再会できるとは思ってなかったけど…今のあたしを見てもらういい機会だ!)」

 

 思いがけない出会いにテンションが上がりに上がって興奮が抑え切れない!!

 

「だぁぁぁぁ!!」

 

 気合を入れ直して「あの人」に突っ込んで反撃の隙を与えないように連続で攻撃を仕掛ける。

 

「(くう〜!やっぱり強いなぁ!)」

 

 だけど攻撃は全く当たらず、ティアの射撃もあたしを盾にするように回り込んで撃ちにくくしている。

 

「(くっ、撃ちにくいわね!こうなったら…)」

「ティア!このままじゃ駄目だよ!連携で行こう!」

「珍しく気が合ったわね!じゃああたしに合わせて!」

「了解!」

 

 至近距離で格闘戦を挑みながらティアに提案するとあっさりと了承。打ち合わせも無しに行動に移る。敵は距離を取ろうとするけど、あたしは逃がさず纏わり付く。

 

「あなたの相手はあたしですよ!」

 

 ピッタリと張り付いてそう言った直後、「あの人」は一瞬だけ動きが鈍くなったのでその隙を逃さず更に距離を詰める。

 

 

 

「(動きを予測した射撃、ステップを踏むような動き、攻撃対象に飛び込む思考、格闘攻撃を的確に回避する能力、スバルを盾として利用した回り込み…。どう考えてもオートスフィアのものとは思えない。恐らくあれは…人間!

 なんで人間が相手なのか、誰がどういう目的で相手をしているのかは気になるけど…それを考えるのは後回し!人間が相手ならこっちの手の内がばれないうちに何とかしないと手遅れになる!

 これは数が多いと命中率は落ちるけど…最悪当たらなくてもいい。逃げ道を塞げればスバルが決めてくれる!)」

 

「スバル!」

 

 ティアをチラリと見ると、3個の魔力弾を自分の周りに停滞させていた。

 

「(ティアの準備が出来た!今だ!)」

 

 あたしは追い掛けるのをやめると震脚で床を踏み砕き……

 

「はッ!」

 

 積み上がったコンクリートの瓦礫を右拳で殴り飛ばしてコンクリートの散弾を撃ち出した。

 

「(多分ダメージにはならないけどこれなら目隠しになるしいくら速くても避けられないはず!)」

 

 同時にリボルバーナックルにカートリッジの魔力を装填。

 

「(もう一発!)」

 

 続けざまに左拳で再び散弾を飛ばしながら発射準備。

 そしてタイミングを合わせて叫ぶ。

 

「クロスファイアー……!」

「リボルバァァァァ……!」

 

 

 

「「シューーーーーーーート!!!」」

 

 空色の閃光とオレンジ色の魔力弾が同時に敵の元へ飛んで行き、その後ろを竜巻状の衝撃波が追い掛けていった。

 

「「(よし、タイミングは完璧!)」」

 

 攻撃が敵に当たる直前、一瞬だけ敵が光ったような気がしたけど攻撃は見事に命中し、爆風が巻き起こる。

 

「「(やった!)」」

 

「イエーイ!ナイスだよティア!クロスシフト、一発で決まったね!」

「まあ、あんたが時間を稼いでくれたからね」

 

 煙が立ち込める中、戦闘体勢を解いて勝利の余韻を楽しむ。

 

「普段はマルチショットの命中率、あんまり高くないのに…。ティアはやっぱり本番に強いなー」

「うっさいわよ。さっさと次の場所に………!?」

 

 ティアの言葉が突然止まった。

 

「ん?」

 

 あたしは何故ティアの言葉が止まったのか理解出来なかった。

 

「スバル回避!」

「え?」

 

 突然ティアが走って来てあたしの体を押してきた。 いきなり何をするのかと思ったら、一瞬前まで立っていた場所にエネルギーの塊が飛んで来た。しかも攻撃は一発じゃなく連続で飛んでくる。

 

「(しまった…まだ…!)」

 

 ようやく事態を理解したあたしは二手に分かれて走り出した。あたしは円を描くように敵の周囲を回りながら近付き、ティアは走りながら横向きで牽制の射撃を行っている。

 

「(くっ、確認もせずに浮かれるなんて迂闊だったわ…。こうなったらもう一度…)」

 

 その時だった。

 

「うあっ!」

 

 ティアが叫び声を上げて倒れこんだ。

 

「ティア!(足を挫いたんだ!ティアが倒れてる場所…あれって…あたしがさっき壊した床だ…)」

 

 転んだティアにも容赦無く攻撃は襲い掛かってきたけど、ティアはそのまま転がって近くの瓦礫の山に身を隠す事に成功。山から身を乗り出して射撃を試みるけど全て回避されてしまう。

 

 

 

☆☆☆☆

[試験会場上空 ヘリ内部]

 ティアナの射撃が回避されてしまった時、流れ弾の一発が偶然にもサーチャー(撮影対象を自動追跡するカメラ)に命中して壊れてしまった。

 

「ん?なんや?」

「サーチャーに流れ弾が当たったみたいだったけど…」

 

 はやてとフェイトはサーチャーを通して見ていた為、それが壊れたせいで二人の動向が分からなくなってしまったのだ。

 

[試験会場から離れた廃墟ビル]

 

「…トラブルかなぁ」

 

 はやて達と同じサーチャーから送られる映像を見ていたなのは同様だ。

 

「リイン、一応様子を見にいくね」

「はいです。よろしくお願いします」

 

《私もセットアップしますか?》

「そうだね。念のため、お願い」

《All right. BarrierJacket standing up.》

 

 直後、なのははピンクの光に包まれた。

☆☆☆☆

 

 

 

「ティア!」

 

 隙を見てティアのいる場所へ辿り着いた。

 

「騒がないで。何ともないから」

「ウソだ!グキッていったよ!捻挫したんでしょ!?」

 

「だから何でもないって……くっ…ああ!」

 

 立ち上がろうとしたティアはやっぱり足首を押さえて顔を歪ませた。

 

「ティア…ごめん…油断してた…。それにあたしが壊した床に足を取られて…」

「…あたしの不注意よ。あんたに謝られるとかえってムカつくわ……」

 

「「………」」

 

 掛ける言葉が見つからず、あたし達の間に僅かながらの沈黙が訪れる。

 

「……走るのは無理そうね。仮にここを突破できたとしても最終関門は抜けられない」

「ティア…」

「あたしが残りの魔力を全部使ってサポートするわ。そうしたらあんたはとにかく全力であれを倒しなさい。カートリッジの予備は大丈…」

「ティア!!」

 

 あたしは何て言ったらいいか分からなくてつい叫んでしまった。

 

「っっさい!次の受験の時はあたし一人で受けるっつってんのよ!!」

 

 ティアも反応して声を荒げる。

 

「次って…半年後だよ?」

「迷惑な足手まといがいなくなれば、あたしはその方が気楽なのよ!分かったらさっさと……っ!」

 

 足の痛みを堪えて立ち上がるティア。

 

「ほら早く!」

 

 

 

 これじゃ…昔と同じだ…。

 昔、誓ったはずなのに…。弱い自分と決別するって…。誰かを、何かを守れるくらい強くなるって誓った筈なのに…。

 

「…弱くて…情けなくて…誰かに助けてもらいっぱなしな自分が嫌だった…」

「…!それは前にあんたが言ってた…」

「…嫌なんだ…もう!!」

 

 その瞬間、体の中か真っ黒で熱い「何か」が溢れ出した気がした。

 

「(ティアがどんな夢を見てるか…魔導師ランクのアップと昇進にどれくらい一生懸命かもよく知ってる…)」

 

「スバル、なんで泣いてるの?…スバル?ねえスバル!聞こえてないの!?」

 

「(だから!こんなところで!あたしの目の前で!あたしのせいで!ティアの夢をちょっとでも躓かせるのなんて絶対にやだ!)」

 

「(様子が明らかにおかしい…。しかも身体から魔力とは違う『何か』を出している気がする…!それに…怖い…)」

 

「(負ける訳にはいかない!あの頃のあたしには戻らない!!あたしのせいでティアの夢を邪魔したりしない!!!その為にこの人を倒…)」

 

 

 

 

『殺セ…。死合エ…』

 

 

 

 

 その時4年前に聞いた「あの声」が再び聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ…殺せばいい…簡単なことじゃない…」

 

「!?…あんた何言って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………

 ………

 ………

 

「……ティア?」

 

 気付くとあたしはティアに抱きかかえられていた。

 

「心配…させるんじゃないわよ…!このバカスバル!!」

 

 ティアは涙で顔をグシャグシャにしながらあたしを叱咤する。あたしのせいで…ティアを悲しませちゃったんだ…。

 

「ごめんね…ティア…」

 

「一か八かの賭けだったが…上手くいって良かった」

 

 そして目の前には見覚えのある白い道着の人が立っている。

 

「ありがとうございます。えーと…」

 

「リュウだ。名乗るのを忘れていたな、すまん」

 

「いえ、こちらこそこのバカを助けていただいて…」

 

 ティアと言い争っていた時から今までの記憶がハッキリしない。でもあたしが二人を…手に掛けようとしていた事は覚えている。

 

「あたし…なんて事を…」

 

 自分のした事を悔いて胸が苦しくなる。

 

「泣くのは後だ。今は前へ進む事だけ考えろ」

 

「あんたは何も悪いことはしてない。気にする必要はないわ」

 

「でも…」

「いつまでもウジウジすんな!」

「!?」

 

 自分の事を責めようとした時、ティアの怒号が耳に響いた。

 

「あんたが暴走するのはいつものこと!今回はちょっとその度が過ぎただけ!悔やむ時間があるならさっさと立ちなさい!」

「は、はい!」

 

 迫力に圧されて思わず立ち上がる。

 

「…じゃあ行くわよ。あたしはあんたをサポートしながら行けるところまで行ってあげる」

「…あたしは…一人で行くのなんて絶対やだ…」

「あんたまだそんなこと…!」

 

 ティアには迷惑をかけっぱなしだけどこれだけは譲れない。

 

「…裏技…。反則取られちゃうかもしれないし…ちゃんと出来るかも分からないけど…上手く行けば二人でゴール出来る!」

「…本当?」

 

 ティアが目の色を変えて問い掛けて来た。

 

「…ちょっと難しいし…ティアにもちょっと無理してもらう事になるし…よく考えるとちょっと無茶っぽくもあるし…」

 

 声をくぐもらせているとまたしてもティアの怒号が響いてきた。

 

「あーーーーイライラする!!」

 

 あたしの胸倉を掴みながらティアは叫ぶ。

 

「グチグチ言ってもどうせあんたは自分のワガママを通すんでしょ!?どうせあたしはあんたのワガママに付き合わされるんでしょ!?だったら…ハッキリ言いなさいよ!!」

 

 …覚悟は決まった。

 

「二人でやればきっと出来る。信じて、ティア」

「……で、プランは?」

「うん!まずね…」

 

 

 

 ………

 ………

 ………

 

「……あんたにしては上出来ね。少しは見直してあげる」

「へへ…ありがと」

「君の名前は確か…スバル、だったな。君に話しておきたい事がある」

 

 裏技の説明が終わると突然リュウさんが話しかけてきた。一体何だろう。

 

 

 

☆☆☆☆

 [数分後 試験会場 最終関門付近上空 ヘリ内部]

 

「二人とも遅いなぁ…お?出てきた!」

「うん。…あれ?」

 

 高架下から出て来たのはティアナ一人だけだった。ティアナは脇目も振らず走っている。

 

 そこへ突然ビルの一角の窓が割れてレーザーが飛んで来た。レーザーは最初在らぬ方向に飛んでいたが、突如軌道を曲げてティアナに向かう。一瞬の出来事だった為かティアナは回避する間も無く直撃したかに見えた。

 

「直撃!?」

 

 はやては思わず顔に手を当てる。

 

「……違う」

 

 フェイトは見極めていた。

 

 爆煙の中から再びティアナが飛び出すとレーザー攻撃は再開された。

 

攻撃者の正体は最終関門である大型オートスフィア。遠距離から標的を捕捉して変幻自在のレーザーで狙撃する自動砲台だ。

 その能力により入り組んだ建造物の奥からでも狙撃出来る為、初撃を回避するのも初見で位置を特定するのも非常に困難となっている。また低ランクの魔導師では破るのが困難なバリアを展開出来るので、仮に発見されても破壊は至難の技である。

 

 

 

ティアナは慣れたのか左右にステップを踏んで狙いを外しながら走っていた。

 

「高速回避?…いや、ちゃうな。動きが単調過ぎる」

「あの子は…囮」

「…ちゅう事は…」

 

 二人が話をしているうちに一本のレーザーがティアナを直撃。その瞬間、ティアナは弾けて光の粒となって消え失せた。同時に瓦礫の影から二人のティアナが飛び出す。

 

「フェイクシルエット…」

 

 本物のティアナは瓦礫の影から動かずに幻術魔法を使っていたのだ。

☆☆☆☆

 

 

 

〈これ…メチャクチャ魔力喰うのよ…。あんまり長く…保たないんだから…一撃で決めなさいよ!でないと…二人で落第なんだから!〉

〈うん!〉

 

 念話で会話をしながらあたしは魔法陣を展開しつつ敵を探す。

 

「(あたしは空も飛べないし、ティアみたいに器用じゃない。遠くまで届く攻撃も無い。出来るのは…全力で走ることと、クロスレンジの一発だけ…!)」

 

 全身から出た魔力が服をはためかせ、ナックルスピナーが回転して風を帯びていく。

 

「(だけど決めたんだ…。あの人達みたいに…強くなるって!誰かを…何かを…守れる自分になるって!)」

 

 空色の光が全身を覆うとリボルバーナックルを空に掲げ、振り下ろしながら叫ぶ。

 

「ウイング……ローーーード!!」

 

 拳を地面に叩き付けると前方に空色の輝きを帯びた光の道が伸びていった。

 

 

 

 道は高速で伸びていき、敵のいるビルの壁に激突した。

 道が繋がったのを確認するとクラウチングスタートの姿勢になってローラーブーツに魔力を送り、同時にリボルバーナックルに魔力を込める。

 ティアはあたしが向かっているのがばれないようにフェイクシルエットで大型の注意を引きつけている。

 

〈行って!スバル!〉

「行ぃぃぃぃくぞぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 あたしは気合を入れると弾かれるように飛び出した。

 

 

 

「でやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 加速の勢いを止める事無くウイングロードの突き刺さった壁をパンチで砕きながら内部に突入。するとそれに気付いた大型が防衛の為にバリアを展開。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 バリアを破るべく右拳を打ち込むとバリアとぶつかり合って激しい火花が飛び散る。

 

「うりゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 力を緩めずにカートリッジ二個の魔力を装填して、その魔力を全部指先に集めてバリアに刺し込む。

 

「でやッ!!」

 

 その手を横に振り抜くとバリアは粉々に砕け散った。

 

 バリアを破ると大型は危機を察知したのか、レーザーを連射してきた。レーザーは直撃して吹き飛んでしまったけど大型は爆煙であたしの姿を見失い、吹き飛ばされた事で時間を稼げたあたしは勝負に出る。

 

「(今だ!)」

 

 

 

☆☆☆☆

[試験会場中間地点 スバルが「裏技」の説明をした直後]

 

「……君に話しておきたい事がある。時間が無いのは分かっているが聞いてほしい」

「は、はい…なんでしょう?」

「君のさっき見せたその力…魔法とは違う力だ。その力は途轍も無く大きく、自分自身でさえも操るのが難しい危険な力でもある。だからそれを操る為に必要な事を教えたい。…とはいえ心構えというかちょっとしたコツのようなものだが…」

「はい、お願いします」

「まず大事なのは意識だ…」

☆☆☆☆

 

 

 

 魔法陣を展開してリボルバーナックルにカートリッジ二個分の魔力を装填する。

 

「(溢れ出すその力を無理矢理押さえ込もうとすると反発するように強く噴出してしまう…。だからあえて抑え込まずに外に出す!出したらそれをボールにするイメージ…!)」 )」

 

胸に感じる微かな違和感。だけど気になる程じゃない。

 

「一撃…!必倒ぉぉぉぉ!!(くっ!…外に出したら…自分の魔力を拳として…ボールを握り込むイメージ…!)」

 

 両腕を交差させるように構えて魔力を集めると、体の中から湧き上がる「あの力」が丸められて魔力に包まれ環状魔法陣が出現する。

 

「ぐうぅ…ッ!」

 

 少し胸が苦しくなってきたけど今は気にしてられない。

 左手のリングで魔力の塊を押さえて右拳を引くと、ナックルスピナーが火花を散らす程の高速回転を始める。

 

「ディバイィィィィン……!(そしてそれでパンチを打つイメージ!最後に…螺旋!)」

 

 

 

☆☆☆☆

「……以上だ」

「はい!親切にありがとうございました!」

「だがこれは即席で成功させられるものではない。最初はその力の出力を最小限にしつつ君の全力で挑むんだ。でなければ君は再びその力に呑まれてしまうだろう」

「はい。覚えておきます」

 

「それとこれはその力の事とは関係無いんだが…」

「(まだあるんだ…)」

「君の技は螺旋を意識した方がいいな。必要な時に腕を捻じり込みながら拳撃を打つんだ。銃弾のようにな。

 俺のいた世界では強過ぎて威力や軌道の安定しない銃は、銃身と弾丸を加工して螺旋状に回転させて撃ち出す事によってその軌道と威力を安定させつつ貫通力や飛距離を高めるという技術があった。

 君の拳法は銃を模したもののようだからそれをよりハッキリと思い描くんだ。君の技は螺旋を帯びてはいるが君自身の意識がまだ足りない。

 武器を頼るのは悪くはないが、武器に頼り切っていては武器より強くはなれない。武器を身体の一部と思うんだ。

 武器と己が一体となって思い描いた通りに技を繰り出せた時、君の技は自ずと強力になるだろう」

☆☆☆☆

 

 

 

「バスァァァァァァァァ!!!」

 

 魔力の塊を拳で叩くと光線が撃ち出され、光線は放射状に広がっていたけど命中した瞬間に細く束ねられ螺旋を描いた一筋の光になる。その光は大型を一瞬で貫いて背後の壁を突き破り、爆発して砕け散った。

 

「はあ…はあ…はあ…。これが…あたしの力?ディバインバスターにあの力をちょっと無理して組み込んだだけでまだ完全にイメージ通りに出来た訳でもないのに…。信じられない…」

 

 今までに無い程の威力に自分でも驚いてしまった。

 

「(ちょっとコツを教えて貰っただけなのに…。リュウさん、ありがとうございます!)」

〈やったの!?〉

 

 爆発音を確認したティアが念話で即座に連絡を取ってきた。

 

〈うん、なんとか…〉

〈残り…あと一分ちょい!スバル!〉

〈うん!〉

 

 

 

☆☆☆☆

[試験会場ゴール地点]

「お?来たですねー?」

 

 リインが煙を巻き上げながら爆走する一つの影を確認。それはティアナを背負って走るスバルだった。

☆☆☆☆

 

 

 

「あと何秒!?」

「16秒!まだ間に合う!」

 

 あたしはティアに時間を確認しながら走り、ティアは眼前のポイントターゲットを銃で破壊。

 

「はーい!ターゲット、オールクリアです!」

「魔力…!全開ぃぃぃぃ!!」

「うわっ!」

 

 ローラーブーツに限界まで魔力を注ぎ込むとローラーから火花が飛び散った。ティアは風圧で体が仰け反るけど、振り落とされないようにしっかりと腕に力を入れてしがみ付く。

 

「ちょっ…スバル!止まる時の事、考えてるんでしょうね!?」

「え!?」

 

 …全く考えてなかった。でも加減してたらタイムオーバーになるかもしれないし…何よりも…勢いが付き過ぎて止まれない!!

 

「あ…なんかチョイやばです…」

「「ああああああああーーーーッ!!」」

 

 

[GOAL!!]

 

 

 ゴールバーを通過してもまだ止まらない。目の前には瓦礫の山!このままじゃぶつかる!

 

「「うわああああああああーーーー!!」」

 

 

 

☆☆☆☆

「んー…アクティブガード、ホールディングネットもかな」

 

 空に浮かぶ一人の女性はそう呟きながら手をかざした。 すると…

 

《Active Guard with Holding Net.》

 

 女性の機械音声の後に続いてピンク色の光が辺りを包んだ。

☆☆☆☆

 

 

 

「……ああ……(助かった……)」

 

 あたしは無様に逆さになってピンク色のネットに引っかかり…

 

「……はあ……(助かった……)」

 

 ティアは太い枝の伸びた白くて柔らかい物体にお腹が引っかかった。

 

 安堵の溜め息を吐いているとそこへ仏頂面の空曹長が飛んで来た。デバイスらしきものを持ってて、かなり怒ってるみたいだ。

 

「んむーー!二人とも!危険行為で減点です!がんばるのはいいですがケガをしては元も子もないですよー!?そんなんじゃ魔導師としてはダメダメです!!」

「…あー…」

 

 あたしはリインフォース2空曹長のあまりの小ささに言葉を失ってしまった。

 

「…小っさ…」

 

 ティアはそのまま口に出しちゃったみたい。

 

「全くもう!」

 

 やばい…完全に御冠だ…。どうしよう…。

 

「はっはっは!まあいいじゃないか!」

「「え?」」

 

 唐突な第三者の声にティアと声を揃えて反応し、その方向を向く。

 

「そうそう。ちょっとびっくりしちゃったけど…無事でよかった」

 

 声の正体はリュウさんと……女性……。

 

「とりあえず試験は終了ね。二人共お疲れ様」

「あの状態でよく二人共時間内にここまで来られたな。大したものだ」

「リインもお疲れ様。ちゃんと試験官出来てたよ」

「わーい!ありがとうございます!なのはさん!」

「久しぶりだな、リイン。相変わらず小さいままか」

「んむーー!これでもちゃんと成長してるんですよー!それに大きくなる事も出来るって言ったじゃないですかー!」

 

 リュウさんと一緒にいた女性はバリアジャケットを解除して制服姿になり、あたし達に話しかけてきた。

 

「まあ、細かい事は後にして…ランスター二等陸士」

「は、はい!」

「足の怪我を治療するから靴を脱いでね」

「あー!治療なら私がやるですよー!」

 

「じゃあお願いね、リイン。それとスバル…」

 

 周囲の声が耳に入らず、ただひたすらに一人の女性を見つめる。

 この人は…目の前にいるこの女性は…。

 

 

 

 

 

 

 

「なのは…さん…」

 

 

 

 

 

 

 

「うん?」

 

 無意識に口に出た言葉になのはさんが反応する。これ以上何を喋ればいいか分からなくなり、すっかり混乱してしまった。

 

「た…高町教導官…一等空尉!」

「『なのはさん』でいいよ。みんなそう呼ぶから」

 なのはさんは笑顔であたしの顔をじっと見つめる。

「4年振りかな。背が伸びたね、スバル」

「あの時は力加減を考えてなくてすまなかったな。それにしても顔はあまり変わっていないが、見違える程強くなっていたのには驚いたぞ。

修行の賜物だな。もう少し修行すればいい勝負が出来そうだ!」

「やめてよリュウさん。何でも戦いに絡めないでよ」

 

 ……4年前にたった一度…しかもとっても短い時間しか会わなかったあたしを…この人達は覚えていてくれたの?

 

「えと…あの…」

 

 目に涙が浮かび、様々な思いが込み上げてきて言葉が出なくなる。

 

「また会えて嬉しいよ」

「また君に会えて良かった」

 

 なのはさんはあたしの頭に、リュウさんは肩に優しく手を置いてそう言った。

 

「なのはさん…リュウさん…」

 

 涙が溢れて前が見えなくなる。そんなあたしをなのはさんがそっと抱きしめてくれた。

 

「私のこと、覚えててくれたんだ。ありがとう」

「君は記憶力がいいな」

「(リュウさん…空気読めない人だなぁ…)」

「覚えてるっていうか…あたし…ずっと…なのはさんに憧れてて…」

 

 まだ涙は止まらず言葉が詰まる。

 

「嬉しいな。あなたのバスター見てちょっとびっくりしたよ」

「えっ!?」

「そう言えばお前のあの砲撃もディバインバスターという名前だったな。名前以外は全く似てないが…」

「リュウさん、黙っててくれる?」

「………」

「す、すみません勝手に!!」

 

 勝手に名前を使ったのはまずかったと思って反射的に頭を下げて謝った。

 

「……フフフフ。いいよ、そんなの!」

 

 でもなのはさんはあっさりと許してくれた。よかった…。

 

 

 

☆☆☆☆

 リインは治療の最中にスバルと達の会話を眺めながらティアナに話し掛ける。

 

「ランスター二等陸士はなのはさんのことはごぞんじです?」

「はい、知ってます。本局武装隊の『エース・オブ・エース』。航空戦技教導隊の若手No.1、高町なのは一等空尉…」

 

 なのはは時空管理局内どころか一般にもその武勇が広まっており、この次元世界「ミッドチルダ」では知らない者などいないと言っても過言ではない程の有名人。それをティアナが答えられない訳が無い。

 

「はいです!その通りです!では隣にいるリュウさんはー?」

「(…この様子だとスバルの暴走のことを知らされていないのかしら。なら言う必要は無いか)。…すみません、情報不足です」

「そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよー!時空管理局でも顔と名前両方知っている人が少ないような人ですからー!」

「は、はい…(若干棘のある言い方ね。さっきのこと気にしてるのかしら)。…それではどんな方なんですか?」

「『格闘家』って言葉に覚えはー?」

「!!…噂程度には。たしか…肉体に内在する生命エネルギー…『気』という魔力とは違う力を操り、魔導師や騎士と互角以上に戦える能力を持った人間のことと聞いています。あの人がそうだったんですね」

「よくごぞんじですね!そしてリュウさんこそが最初に発見された格闘家なんですよー。ちょっと堅物で空気が読めないのが困り者ですけどねー。

 …はっ!グチってしまいました!こんなの試験官らしくないです!ほ、他にも格闘家は数名在籍してますけどその方々の紹介はまた後ほど!では!」

 

 話している最中に既に治療を終えていたリインは慌ててその場を離れた。

 

「(あの時は必死に戦ってたから他の事を考えてる暇は無かったけど…。よく思い返してみるとあの人は魔力を全く感じなかったのにとんでもない身体能力と攻撃力だったわね。格闘家なら納得の強さだわ。

 …って『後ほど』?普通はたしか試験が終了したら直ぐに帰投して、数日以内に合否通知が届いて、合格したらようやく本局へ行って説明と手続きがあるはず…。ということは昇格試験は合格!?)」

 

[同刻 試験会場 ゴール地点上空 ヘリ内部]

「知り合い…みたいだね」

「4年前ゆうたら…あれやよ、ホラ。なのはちゃんとフェイトちゃんがウチの演習先に遊びに来てくれた時に起こった空港火災」

「ああ、私となのはが災害救助の手伝いをした時?」

「多分その時になのはちゃんとリュウさんが助けた要救助者の一人だったんやろ」

「なるほどね。そう言えば私が助けた要救助者の中に姉妹で火災に巻き込まれた子達がいたなぁ」

 

「そうなんかー。あ、それで思い出したわ!救助活動を始める前に空港内の要救助者のデータ送ってもらったやろ?」

「うん」

「助け出した要救助者の中にデータに無かった救助者がおったんよ。救助の後は事後処理やら任務やらで忙殺されてすっかり忘れとったわ」

「…怪しいね。後で空港火災のこと、調べてみよっか」

「せやな。出来るだけ早く調べよ」

☆☆☆☆

 

 

 

「なのは、そろそろあの話をした方がいいんじゃないか?」

「(『あの話』?試験の話じゃないってこと?)」

「それは試験の事後処理が終わってから!…スバル、それにティアナも『大事な話』があるんだけど…この後いいかな?」

 

 なのはさんは突如真剣な表情で「大事な話」を持ちかけてきた。

 その話があたしの運命を大きな戦いの渦に巻き込む事となり、更にはそれによって「存在を許してはいけない存在」「力を持つ者の宿命」「信念を貫く強さ」の意味を、辛く悲しい体験を通して知る事になるとはこの時には夢にも思わなかった。

 

 

 

【スバルside…END】




ミッドチルダにおいて「格闘家」とは超人とほぼイコールの扱いです。
ちなみにこの作品では人間なら誰でも気功を修得できる事になっています。
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