スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION   作:拳を極めし者

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格闘大会とは言うものの、今回は顔見せだけです。
肩透かしですみません…。


第三章 -格闘大会編-
第九話「格闘大会 -友と強敵-」


【アナザーside】

[六月某日 ミッドチルダ 首都クラナガン 特設会場]

『皆さんおはようございます!大会の司会進行及び実況を務めさせていただきます八神はやてです!

 さあ!ついにこの日がやってまいりました!今やミッドチルダ全土が注目している今大会!皆さんのご支持あって無事開催と相成りました!感謝の言葉もございません!』

 

 快晴のこの日、陽炎が見えそうな程の熱気に包まれた会場内にはやてのマイク音声が木霊する。すると観客は「待ってました」と言わんばかりに一斉に歓声を上げ、その歓声は地鳴りの如く会場全体に衝撃を走らせた。

 

 

 

[特設会場 廊下]

「ここにまで振動が…。これ程の規模の観客は俺のいた世界でも見た事が無いな」

「正直なところ私もだよ。そもそもこういう大会自体が珍しいしね」

 

ステージへ向かって歩きながら話をするリュウとなのは。他の選手は既に先を進んでいるようだ。

 

「それにしてもまさかこんな形で俺の強敵(とも)と再会出来るとは思わなかったぞ」

「まさか全員がリュウさんと面識のある人とはね。信じられない確率だよ。私も知ってる人はいるけど…」

「これも巡り合わせという奴だな。とにかく誰と当たるにしても楽しみだ。だが…」

「?どうしたの?」

「正直なところ見世物になるのはあまりいい気分じゃないな」

「まあまあ、その代わりこうして懐かしい人達と会えるんだしいいじゃない」

「…そうだな、前向きに考えるか。それにしてもはやての奴…相談も無しにいきなり『あんな事』を言い出すとはな。なんとかトーナメントと言ったか?こっちの身になって欲しいものだ」

「『エキシビショントーナメントマッチ』ね。はやてちゃんはああ見えてもちゃんとしっかり考えてるんだから文句言わないの」

「それは分かってるさ。ただ…はやては責任を果たそうとして一人で抱え込む癖があるからな。もしそうなら予め話してくれれば相談に乗る位はできると思ったんだ」

「(普段は戦いと修行の事しか考えてないように見えるけど…やっぱり私達のこと、ちゃんと見てくれてるんだね)」

「『あの話』が建前でなければいいんだが…」

 

 

 

【回想】

[一ヶ月前 機動六課隊舎 部隊長オフィス]

「格闘大会!?」

 

 任務と聞いて集まった面々は、あまりに予想外の内容を聞いて奇跡のハーモニーを奏でた。

 

「そう!我らが機動六課の誇るエース達と特別招待の格闘家の面々による『エキシビショントーナメントマッチ』や!!」

 

「こっちの世界にもそんな大会があったとはな」

「八神さん…話が見えないんだけど…」

「ふっふっふ…心配御無用や春麗さん!今から説明するんで!」

 

 今日のはやてはやけにテンションが高い。何かいい事でもあったかのような満面の笑みだ。

 

「おいなのは…。はやては普段からああだったか?」

「こんなノリノリなはやてちゃんは私も初めてだよ…」

「皆さん静聴ーーーー!」

「(このノリに付き合うのは疲れるな…)」

 

「えー。突然の事で皆さん驚かれていると思います。

 準備に手間取ってしまったためにお知らせするのが遅れてしまった事を先ずお詫びいたします。

 先程述べた通りですが、今から一ヶ月後に『エキシビショントーナメントマッチ』と称した格闘大会を開催する事になりました。

 ではここで何故このような運びとなったのかという事を説明いたします」

 

 だが、直前のノリが嘘のように再びはやては真剣な表情に戻っていった。

 

「我々機動六課は発足して間もない事もあって周囲の理解があまり得られておらず、また格闘家という存在の認識は広まっているものの、戦力の一極集中を危惧する声や、噂が一人歩きしているせいもあってその実力を疑問視する声を指摘する声も少なくありません。

 時空管理局内でも…特に地上本部からはそういった声が大きく、無用な疑念や軋轢を解消するための機会を設けられればとわたくしは考えました」

 

 時空管理局地上本部…それは本局と対を成し、次元世界の法と秩序を守る巨大機関。頂点に立つのは、役職こそ中将ではあるが実質的に全権を握っているレジアス・ゲイズである。

 

「そこで浮かんだのが先述の格闘大会です。

 企画は時空管理局本局もとい機動六課が中心ではあるものの、運営は特に声の大きかった地上本部が格闘家の実力を見られるとして非常に興味を持っていただけたため、地上本部の全面協力を受けて大々的に行われます。

これにより互いの理解を深め合い、同時に一般の方々の理解も深めていただこうという訳です」

「ふむ。確かに機動六課には単独行動の権限があるとはいえ、周囲との摩擦や市民からの非難が起これば活動に支障が出兼ねないからな。いい判断だ、八神部隊長」

「ナッシュ中尉、ありがとうございます」

「(あのレジアス中将が…。俄かには信じ難いな…)」

 

 レジアス中将はある理由から本局と対立しており、度々本局に衝突してくる程に毛嫌いしている。それは時空管理局に務める者だけでなく一般にも広く知れ渡っており、外でも本局派と地上本部派のいざこざが起こるあたりその根の深さが窺い知れる。

 そのような経緯もあり、大きな声では言えないが内外問わず皆が皆、「あのレジアス中将がよく協力してくれたものだ」と驚きを隠せずにいた。

 

「……参加選手については勝手ながらこちらで決めさせていただきました。これも先程述べた通りですが、参加選手はほとんどが我々機動六課の面々です。…ですが、残りはなんと…」

 

 参加選手がここに呼び出された者達だけでないという事は残りは本局の者だろう…誰もがそう思っていた。だが、その予想は驚くべき答えをもって否定された。

 

「『特別管理世界』から呼び寄せた特別招待の格闘家の方々なのです!」

「!?」

 

またしても予想外の展開。リュウ達格闘家の面々以外は開いた口が塞がらない。

 

「む、『特別管理世界』というと…俺達のいた世界の事だったか?」

「そうそう。リュウさんにしてはよく覚えてたね」

「一言余計だぞ」

「そういえば…」

「(無視か)」

「その世界ってなんか変なんだよね」

「変?どういう事だ?」

「ミッドチルダが定めた次元世界の分類ではいくつか分類があるんだよね。

 具体的にはミッドチルダが法や秩序を定めて維持・管理する世界を『管理世界』、何らかの理由で介入を制限している世界を『観測指定世界』、人の存在しない世界を『無人世界』って分けてるの。そして『次元を渡る術が存在…」

「長い。短く纏めてくれ」

「あなた達の世界はどの分類にも属してない扱いだから変だってこと!分かった!?」

「あ、ああ分かった」

「そこ静かに!」

「ごめんなさい…」

 

 大声を上げてはやてに注意されてシュンとなりながら謝ったなのはだったが、再び小声でリュウに不満を漏らし始めた。

 

「あなたのせいではやてちゃんに怒られちゃったじゃない」

「大声を出したのはお前だろう」

「あなたがまともに話を聞く気が無いからでしょう!」

「はいはーい!夫婦喧嘩はけっこうやけど話聞いてなー!」

「ふ、夫婦って!へ…変な事…言わないでよ…」

 

 はやてに冗談混じりの注意をされたなのはは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

 そしてリュウは…

 

「全くだ。籍を入れていなければ恋仲でもないのに夫婦は無いだろう。おかしな事を言う奴だな」

 

「………」

 

 するとなのはは一転して無表情になった。

 

「(あちゃー。これはダメージでかいなー。なのはちゃんの為にも早く切り上げよか)」

 

 本当はもう少し話す事があったが、諸事情によりはやてはここで切り上げる事を決めた。

 

「…まあ要するに皆さんには思いっきり暴れてスッキリしていただいて、同時に周囲の理解と協力をお願いしようっちゅう訳です。じゃあ以上これまで!八神はやてでした!」

 

 集まったメンバーは予想外の短さに若干の物足りなさを感じたが、一応形式的な拍手を送った。

 

「はあ…」

「あら、ハラオウンさん。溜息なんてついてどうしたの?」

「…さっきはやてが『格闘家を呼び寄せた』って言いましたよね?」

「ええ」

「その仕事…現在進行形で私がやってるんですよ…。シャーリーも一緒ではあるんですが…」

「む、お前がそこまで疲れた顔をするとは…。そんなに難航しているのか?」

「難航というか…。交渉自体は順調なんですがちょっと疲れる事がありまして…」

「あなたにしては随分と弱気ね」

「そうか…。大事な任務だから休めとは言えんがあまり無理はするなよ」

「はい…。ありがとうございます…」

【回想終了】

 

 

 

「時空管理局地上本部は本局に不満を持ってる人が多いからね。特に機動六課には……。

 まあ、建前だとしても仲良くしておくのはいい事だと思うよ。それに…こんなに大掛かりな大会なんだから絶対成功させなくちゃね!」

「そうだな。今ははやての為にも無様な姿は見せないよう務めよう。そして俺も楽しま…」

 

「リュウ!!」

 

 歩きながら話をする二人の間に突然大声が割り込むと二人は立ち止まって声の聞こえた方向に振り向く。すると…

 

「やっぱリュウじゃねえか!それにその子は…。見覚えがあるような…」

 

 そこには二人がよく知る人物が走って来ていた。

 

「ケン!ケンじゃないか!」

「お久しぶりですね」

 

 

 

「まさか…『あの時』の子か!?」

「お前は8年振りだったな。今のなのはの姿が分からないのも無理は無い」

「それ私の台詞…」

 

「ああ、名前はなのはちゃんだったか。確かに君とは『あの時』以来だなぁ。大きくなり過ぎて全然気付かなかったぜ」

「当時の私は小学生でしたからね。大きくもなりますよ」

「…『あの時』は助けてやれなくてすまなかったな。そのせいで重傷を負ったって聞いた時はマジで格闘家を続けるかどうか悩んじまったぜ」

「あなたのせいじゃありませんよ。原因は『ジュエルシード』、そしてそれを使った人物です」

「いや、原因はそんな物に惑わされた俺の弱さにもある。謝って済むもんでもねえが…本当にすまなかった」

「も、もういいですってば!私はこうして現役に復帰できたんですから!」

「…気脈の乱れは無いか。その様子だと後遺症も無さそうだな。君の元気な姿を見られて胸が空いたぜ。ありがとよ、なのはちゃん」

 

「おいお前達、思い出話もいいがそろそろ行かないと時間に間に合わんぞ」

「あ、もうこんな時間!」

「ついつい立ち話しちまったな。じゃ、行くか」

 

 

 

[特設会場 ステージ]

『おおーっと!最後は時空管理局の二大有名人、高町なのは一等空尉と格闘家のリュウ氏!そして招待選手のケン・マスターズ氏の三人が同時に入場だァァァァッ!!』

 

 はやてのアナウンスと同時に万雷の歓声が衝撃波の如く三人の身体を打ち付けた。

 

「うおっ!なんだこの衝撃は!しかもこのギャラリーの数…10万や20万人なんてもんじゃねえな…。格闘大会で大人数のギャラリーに慣れてる筈の俺でもちょっと緊張してきたぜ…」

「たしか立ち見も加えると数十万人らしいですよ」

「ま、街一つの人が丸ごと観客になったようなものか…。これは流石に圧巻だな…」

 

 リュウ達がステージに上がると再びはやての声が響き渡る。

 

『それでは全員揃ったので出場選手の紹介に入ります!呼ばれた方は前へ出て下さい!』

「(はやてちゃん…。なんでこんなにテンション高いんだろう…)」

 

『おっと、その前に「特別編成」についてご説明致します!特別編成とは機動六課の新人が二人一組で挑む選手の事です!若いながらもその実力は確か!是非ともその目でお確かめ下さい!

 …では先ずは機動六課の誇る魔導師及び騎士のご紹介です!』

 

 

 

『特別編成その1!

 母親から受け継いだ格闘技法「シューティングアーツ」の使い手と!家族譲りの射撃魔法を磨き上げ、幻術魔法と組み合わせる事で多彩な戦術を可能にしたテクニシャン!

 近接戦闘主体と射撃主体という相性抜群のコンビ!スバル・ナカジマ選手&ティアナ・ランスター選手だァァァァッ!!』

 

「ティア…。なんかあたし達…すっごく場違いな気がしない?」

「(思わぬ形だったけどアピールするには絶好の舞台ね。ここで勝てばきっと兄さんの汚名を濯げる!)」

「…ティア?」

「(見てて兄さん…。兄さんは無能なんかじゃない…。兄さんの魔法は役立たずじゃないって…あたしが証明してみせる…!!)」

「(ティア…。もしかしてお兄さんのことで…)」

「…スバル。この大会、優勝狙うわよ」

「……うん!絶対優勝しようね!」

 

 

 

『特別編成その2!

 弱冠10歳で陸戦Bランクを獲得した若き天才少年槍騎士と!弱冠9歳にして数少ない召喚魔法の使い手でありながらブースト系魔法の名手でもある女の子!

 若さ溢れるフレッシュコンビ!エリオ・モンディアル選手&キャロ・ル・ルシエ選手だァァァァッ!!』

 

「僕達、勝てるかな…というか生き残れるかな…」

「こ…こわい人たちがいっぱいいるよエリオくん…」

 

 

『どんどん参りましょう!

 立ちはだかる障害は全てハンマーで打ち砕く!小柄ながらも機動六課最強のパワーファイター!

 意外にも教官職が板に付いてると評判の彼女!しかも仕事の時とプライベートの時とのギャップの可愛さから根強いファン多数!

 人呼んで「鉄槌の騎士」!「紅の鉄騎」!ヴィータ選手だァァァァッ!!』

 

「なんで知らない奴らがあたしのプライベート知ってんだよ!てゆーかはやてはなんでそんな情報知ってんだよ!」

 

 

 

『その一刀は紫電の如し!時空管理局随一の剣の達人!

 その武人然とした性格から男女問わず「姐さん」と呼んで慕う人も多いとか!

 そしてオマケに抜群のプロポーション!その魅惑のボディーに魅了された男性諸君も多いことでしょう!

 人呼んで「剣の騎士」!「烈火の将」!シグナム選手だァァァァッ!!』

 

「主はやて…。何故そのような辱めを私に…」

 

 

 

 

『機動六課の守りの要!死を阻む壁!実は喋れて人型にもなれると知らない人多数!そして彼はミッドチルダは疎か次元世界全体でも非常に珍しい、デバイスを用いずに戦う格闘家気質!

 今こそ守りという名の戒めを解き、その牙と爪で獲物を貪り喰らうのか!

 人呼んで「盾の守護獣」!「蒼き狼」!ザフィーラ選手だァァァァッ!!」

 

「主よ…。私はそのように野蛮ではありません…」

 

〈…みんな。ザフィーラが喋れて人型になれるって知ってた?〉

〈し、知らなかったわ…〉

〈僕も知りませんでした…〉

〈わたしもです…〉

 

 

 

『移動魔法を駆使した高機動戦闘によるヒット&アウェイで敵を薙ぎ払うその姿は雷の如し!それでいて遠距離の射撃魔法や広域型魔法も備えたバランス型!

 高町なのは選手とは付き合いが非常に長い親友の間柄で、あまりに仲が良過ぎて一時期は「デキてんじゃないか?」と噂されたほど!

 人呼んで「雷光」!「最速のオールレンジアタッカー」!フェイト・テスタロッサ・ハラオウン選手だァァァァッ!!』

 

「はやて…。言っていいことと悪いことがあると思うんだ…」

 

 

 

『最後はやはりこの人!

 その武勇、その実力は最早説明不要!

「誰もが認める無敵のエース」!「エース・オブ・エース」は伊達じゃないッ!高町なのは選手だァァァァッ!!!!』

 

「(他のみんなみたいに余計な説明が無くてよかった…)」

 

 なのはの紹介が終わると他のメンバーの時より大きな歓声が鳴り響く。

「(む、他のメンバーよりなのはの時の歓声が大きいな。やはり世間への露出が多いだけに人気も大したものだ)」

 

 

 

『機動六課からは以上の特別編成2組と5名の出場となります!

 ではここからは皆さんお待ちかね!噂の真相は真実か否か!彼らの一挙手一投足をその目で確と見届けましょう!

 機動六課所属の格闘家と、特別招待選手である格闘家の方々のご紹介です!!』

 

 格闘家の登場と聞くや否やなのはと同等かそれを超える程のの歓声が響き渡る。

 

 

 

『先ずはこの方!

 手足から生み出されるは天然の刃物!音を置き去りにする拳と足に死角無し!鋼を切り裂くその一撃は戦慄の一言!

 母国で所属する軍隊に於いて最強の名を欲しいままにする屈強の戦士!

 人呼んで「真空の刃」!「連合の英雄」!ウィリアム・F・ガイル選手だァァァァッ!!』

 

「少し誇張が入っているが…。まあ、大体正解だからいいか」

 

 

 

『彼には未来が見えるのか!いいやこれは「先読み」と言うのだ!技の切れも然る事ながら最も切れるのはその頭脳!

 洞察力・分析力・判断力に於いて右に出る者無し!彼の「観察」が終わった時、相手はまな板の上の鯉と化す!

 頑として譲らない硬い意志で「正義を貫くクールガイ」!

 チャーリー・ナッシュ選手だァァァァッ!!』

 

「ふむ、割と的を射ているじゃないか」

 

〈模擬戦の時は事情が事情だから特別なんだと思ってたけど…。ナッシュさんって普段から涼しい顔でああいう自信満々なこと言うんだね〉

〈あの人の場合は実力の明確な裏付けあっての自信だからね。上から目線で言われても何とも思わないわ〉

 

 

 

『その足技は嵐の如き激しさの中に見る者を虜にする美しさも兼ね備えている!魅惑の脚線美に見惚れたが最後!二度と次の日の朝日を拝む事は無いであろう!

人呼んで「渦巻く嵐脚」!「神脚美技」!春麗選手だァァァァッ!!」

 

「脚線美?そんなに私の足って気になるのかしら」

 

「(春麗さん…。そんな足を強調する服を着ておいて自覚なかったんだね…)」

 

 

 

『母国の国技の強さと魅力を世界に!その為だけに競技を離れ日々戦いを繰り返す、男気溢れる熱血漢が参上!

 母国では強者を表す象徴的な言葉「力士」とも言われている格闘術の真価を見るがいい!

 人呼んで「角界一の風雲児」!「怒涛の力士」!エドモンド本田選手だァァァァッ!!」

 

「こっちの世界でも相撲を『わぁるどわいど』にする絶好の機会じゃのう!ガハハハハ!!」

 

 

 

『神に捧ぐ荒行が与えしは、無限のリーチと神の炎!一見すると細く見えるが他の格闘家の身体が逞し過ぎるだけで充分逞しいぞ!

 僧侶故に本来は無益な戦いは御法度ですが、今回は特別に参加を承諾していただきました!

 人呼んで「ヨガの奇跡」!「懐深き行者」!ダルシム選手だァァァァッ!!』

 

「神よ…。炎を今一度お借りする愚をお許し下さい…」

 

 

 

『大自然が育てた密林の戦士!

 放電体質に野獣のような容姿!これでも一応人げ…』

『ちょっと待てー!その紹介の仕方はねえだろ!』

『ちょっ…ダンさん!あんたの出番はまだやろ!』

『マブダチの「ジミー」がコケにされて黙ってられるかってんだ!』

『ジミー?本名はブランカじゃないんか?』

『驚かせちまってすまねえな会場のみんな!俺は解説の火引(ひびき)(だん)だ!ヨロシクな!』

『無視か』

 

 

 

「ダン?たしかあいつは…」

「む?ケン、このダンという男を知っているのか?」

「前に一度だけ全米格闘選手権で闘った事があってな。忘れたくても忘れられない奴だったぜ」

「忘れられない?どうしてだ?」

「俺達の流派に似た技ばかり使っててな」

「似た技……。それで思い出した。師匠が俺達を弟子に取る前に一人だけ弟子を取っていたという話は覚えているか?」

「そういやそんな事言ってたな。…って事はダンが俺達の兄弟子って事か!?でも似てるっつってもアレンジが入り過ぎててとても師匠の教えを受けたようには見えなかったぞ?もしそうだとしても大方修行がキツくて途中で逃げ出したって口じゃねえかな」

「それは違うぞ、ケン。お前が技の練度についてでなく見た印象だけを喋ったという事は、練度については実戦で通用する程度であったという事。

 似ても似つかないのは…恐らく中途半端に学んでから独自に技を磨いた結果なんだろう。

 中途半端はいい事とは言えないが、それを独自の技として磨き上げたという事は『強くなりたい』という気持ちが本物だったという事だ。何故中途半端になってしまったかは分からんが、そうならざるを得ない事情があったんだろう。

 強くなる事を諦めなかった結果そうなった。それがどんな形であれ諦めない姿勢には見習うべきものがある。流石は兄弟子と言ったところか」

 

「………」

「む、どうした?黙り込んで」

「…リュウ。お前、他の事にはとことん鈍い癖に闘いの事になると途端に頭が回るよな。その思考回路が羨ましいぜ」

「…それは褒めてるのか?」

「好きに取ってくれ」

 

「(リュウさん、楽しそうに話してるなぁ)」

 

 

 

『…だからあんたの仕事は試合の時だけやって言うとるやろ!』

『ああ焦れってえ!俺に喋らせろ!俺がマブダチジミーの素晴らしさを教えてやるぜ!』

「あっ、マイク!」

『聞くも涙、語るも涙よ……』

 興奮したダンははやてからマイクを強引に分捕ると、独り舞台で拳を握りつつ涙ながらに語り始めた。

 

『ジミーはなあ…小せえ頃に飛行機事故で母親と生き別れてな、その時に一部の記憶を失って自分の名前も忘れちまったんだ。ブランカって名前を名乗っていた理由は、現地の人達がジミーの事をそう呼んだからだそうだ。

 で、ある時母親の事を意識するようになってな。母親に会う為に世界一世間から注目されているストリートファイトに参加してメディアに取り上げてもらう事で自分を見つけてもらおうとしたんだよ。

 そしてその甲斐あって身に付けていたアンクレットが決め手になってな、数年後にやっと母親のサマンサさんと再会した。

 それからは二人一緒に仲良く暮らしてたんだ』

 

 ダンがブランカ…否、ジミーの半生を語り始めるといつの間にか会場全体が無人と化したかのように静まり返っていった。

 

『でもよ…俺もあまり言いたかねえが…。ジミーは見た目がちょっとおっかねえだろ?どっかの学者によれば小せえ頃からジャングルで育ったせいでそこに適応する為にそうなっちまったって事らしい。普通じゃ絶対有り得ねえ変化だが、ジミーにはそういう才能が有ったって事だな。

 で、見た目の事はジミー自身も自覚はあったんだ。

 案の定近所の人が白い目で見てくるようになってきてな、心無い奴らが「化け物の母親」とか言いやがってよ…。それがジミーの耳に入って来た時にはすげえ悩んでたよ。「自分の事で母親が悲しむ姿は見たくない。だけどどうすればいいか分からない」ってな。

 ハッキリ言ってジミーは野生育ちだから頭はいい方じゃねえ。出来る事は限られてる。

 それからジミーは散々悩んだ結果、「偉くなれば文句を言われなくなる筈だ」って結論に達したのさ』

 

いつの間にかはやてもその話に聞き入っており、マイクを取り返す事もすっかりと忘れてしまっていた。

 

「幸いジミーは腕っ節が強い。そこで俺はもう一度ストリートファイトを勧めたんだ。ジミーも少し悩みはしたが、『ストリートファイトで勝ち進めば世間に自慢出来る息子になれる』と考えて再び参戦を決意したんだ。

 ジミーはな!自分を二の次にしてひたすらサマンサさんの為に頑張ってる親孝行な奴なんだよ!本当はサマンサさんとずっと一緒に暮らしたいのに涙を呑んで異国へ飛んでは闘い、更にはこうして異世界まで来て闘う道を選んだすげえ根性のある奴なんだ!

 ジミーは俺の恩人だがそれは大した理由じゃねえ…。俺はジミーの心意気に男として惚れたんだ。そんなジミーを俺は応援してえんだよ!!』

 

 ダンが語り終わり、周りを見てみると観客席のあちこちですすり泣く声が聞こえる。

 

「あ、ヤバい。ウチも泣けてきた」

 

 はやてもその一人だ。それから数秒後…

 

「頑張れジミー!」

「負けるなジミー!」

「応援してるぞジミー!」

「母親の為にも優勝してくれジミー!」

 

 などなど声援の嵐となった。更に数秒後にはジミーコールの大合唱。ジミー本人も満更では無さそうだ。

 

「みんなアリガトウな!オレ、ママのタメにガンバるぞ!!」

 

 数分後にようやく会場は落ち着きを取り戻し、はやても司会を続行した。

 

 

 

『大変失礼しました!わたくしも人目を憚らず泣いてしまいました!こんなにも美しい親子愛はそうそう御目にかかれませんね!

 とにかく!立場上肩入れするわけにはいきませんが、ブラ…ジミー選手には頑張っていただきたいです!では気を取り直して次へ行きましょう!』

 

 

 

『デカぁぁぁぁい!!

 大地を揺るがす鋼の肉体!全てを巻き込み粉砕するというその肉体は極寒の祖国とはち切れんばかりの愛国心が作り上げた!

 操る格闘技は二つの格闘術をミックスした独自のもの!格闘への探究心も彼の武器だ!その圧倒的な強さは国民から『英雄』として畏敬の念を抱かれ、祖国の指導者とも懇意になっている程だ!

 人呼んで「怪力無双の業師」!「レッドサイクロン」!ザンギエフ選手だァァァァッ!!』

 

「フッフッフ…。祖国を敬愛する心が有れば人の身体は無敵となるのだ!この私のようにな!

 このマントの下の肉体美は試合の時にお見せしよう!!」

 

 

 

『さあ残す所はあと二人!張り切っていきましょう!』

 

 

 

『「熱さ」とはこの漢の為にある言葉!彼と戦う者も彼らの戦いを見る者も熱くならざるを得ない!

 端整な顔立ちと爽やかな笑顔に似合わず戦いは怒涛にして苛烈!考える暇があるなら手を出せと言わんばかりの圧倒的な手数!

 出身世界の母国では過去に格闘大会で優勝を飾り、未だ不敗のディフェンディングチャンピオン!

 実はあのリュウ選手とは同じ師の下で修行時代を過ごした旧知の仲だそうです!

 人呼んで「緋炎の昇龍」!「紅蓮の格闘王」!ケン・マスターズ選手だァァァァッ!!』

 

「せっかくの異世界の大舞台だ。明るく、楽しく、熱くキメてやるぜ!!」

 

 

 

『そして皆さんお待ちかね!取りを務めるのは勿論この人です!』

 

 

 

『我々が最初に出会った「始まりの格闘家」!

 とても人とは思えない身体能力に驚かされ、魔法ではない摩訶不思議な「気」という力に驚かされ続けた格闘家という存在!

 格闘家という存在が浸透している今でさえも彼の真の実力を見た者は殆どいません!それ故に噂ばかりが先走りしており、格闘家の力に疑問を持つ方も多いと言われています!

 しかし!神秘のベールに包まれていたその実力がとうとう我々の目に映る時がやって来ました!

 果たして彼は道化となってしまうのか!はたまた伝説を打ち立てるのか!期待と不安で胸がいっぱいです!

 物心付いた時から格闘家としての道を歩み続け、今もなお拳に「真の格闘家とは何か」と続けている一心不乱・一意専心な漢!!

 人呼んで「永遠の挑戦者」!「不断の探求者」!

 リュウ選手だァァァァァァァァッ!!!!』

 

 

 ………

 ………

 ………

 

 はやてがリュウの紹介を終えるとジミーの時のように会場が一気に静まり返った。

 

『あれ?ウチ…なんか変なこと言っ…』

 

 

 

「リュウーーーーーーーー!!!!」

 

 

 

 その時、会場は何かが爆発したかのような衝撃に包まれた。

 

 

 

 

 リュウは衝撃に驚いて身体が仰け反ったが、姿勢を戻すと若干疲れた顔で溜め息を吐く。

「(やはり…人混みは苦手だ)」

 

「………」

 

 ケンは辺りを一瞥すると、さり気なく横目でリュウを見ながら考え込む。

 

「(すげえな…。これだけの人数なのにリュウに対する負の感情を含んだ『気』を全く感じねえ…。全米格闘チャンプの俺でもここまでの支持は無かったぜ。

 それに大勢の前に出るのを極端に嫌がってたこいつが黙ってこんな場所に立ってるとはねぇ…。変われば変わるもんだな。これもなのはちゃんの影響か)」

 

 

 

『格闘家からは以上9名の出場となります!以上をもちまして全選手の紹介及び、開会式を終了いたします!選手退場!!』

 

 会場から拍手が巻き起こり、選手達は歩き出す。選手はある者は手を振ったり笑顔で声援に応え、ある者は見向きもせずに考えに耽り、ある者は長居は無用と早足で戻って行った。

 

 

 

『なお、対戦カードは試合の都度発表しますので出場選手を予想して楽しみながらお待ちください!

 試合開始時刻までしばしの間が空きます。その間に諸々の用事を済ませておく事をお勧めします!』

 

 開会式が終わると各選手は控室へ戻っていった。

 そしてこれより一時間後、魔の者と格闘家による未曾有の激闘が幕を開ける事となる。

 

【アナザーside…END】

 

 

 

【エネミーside】

[同日 とある世界 シャドルー秘密基地]

 

ベガは待っていた。玉座で寛ぎながらも今か今かと待ち構えていた。

 

「ベガ様、『彼』からの通信が入っています。如何なさいますか?」

「よし、繋げ」

 

待っていたのはこの通信。当然一も二もなく即答する。

 

モニターに映像は映らずに音声だけが流れており、声からは通信主が男だと分かる。

 

『間も無く試合が始まる。回線を開いておけ』

 

その男は挨拶も無く唐突に話を切り出した。

 

「準備はこちらも既に出来ている。問題は無い。…これで用件は済んだな。下がって良いぞ」

『………』

「…聞こえなかったか?二度は言わんぞ」

『……忘れるなよ。映像を送る為だけに極秘回線を使うのだ。勘付かれるリスクを背負ってな。これは「貸し」だぞ、ベガ』

「……口の聞き方がなっとらんな。自分の立場を忘れたのか?」

『………』

「フン、まあ良い。見返りは用意してある。心配は無用だ」

『……失礼する』

 

通信主の男は怒気混じりの言葉で締め括り、通信を終了した。

 

「…ドクターと違って利用しやすい男よ。少し餌をやれば思いのままに操れる。奴の『信念』とは何とも愚かなものよ!ムハハハハ!!」

「ですがそれだけに餌が無くなれば簡単に手の平を返す危険性が高いと考えられます」

「フン、ならば無くなる前に毒を混ぜるだけよ。夢中でかぶりつく犬に気付く事は出来まい」

 

部下と話している間に極秘回線が開通。映し出された映像は、なんと格闘大会の会場であった。

 

「さて、じっくりと鑑賞するか」

 

こうしてベガの数少ない趣味である「強者の発掘」が始まった。

 

【エネミーside…END】

 

【第九話「格闘大会 -友と強敵-」…END】

 

 

 

【次回予告】

リュウ「ついに始まったトーナメントマッチ。俺の出番はまだ来ないらしい」

 

スバル「一回戦第一試合は火花散る刃のぶつかり合い!怒涛の斬撃が全てを切り刻む!」

 

ティアナ「刃の頂点は二つも要らず。折れない刃が頂きを制す…!」

 

 

 

 

次回 スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION

第十話「格闘大会 -剣刃と拳刃-」

TAKE OFF!!




以上、選手紹介でした。
見て分かる通り、ストリートファイター側はスト2キャラ8人+ナッシュです。はい、人数が半端ですね。
StrikerS側も7人と半端ですが、これにはちょっと理由が…。まあ大した理由ではないのですがw
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