スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION   作:拳を極めし者

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前回の後書きで書き忘れた事があったのでここで書きます。

ダルシムの読心術は公式設定ですがこれはイベントでその力を存分に発揮し、ローズがベガと刺し違えようとしていたのを読み取って力尽くで止め、バーディーからベガの本拠地を読み取り、ベガ戦にとベガを苦も無く倒せた要因の一つにもなっていました。
そして感知能力は世界全体に満ちようとしていた負のエネルギーを感知出来る程で、ストZERO3のストーリーではそれが闘いに赴く理由となっています(村を貧困と流行病から救う為にストリートファイトをやっていたのはストZERO2の話)。
あともう一つ。ダルシムは身体が細いですが、これはただ痩せている訳ではなく闘いに必要な部位の筋肉を殆ど犠牲にせず脂肪を削ぎ落とした結果です。これによって関節部分の異常な伸びを実現させたのです。


第十二話「格闘大会 -幻影と幻炎-」2

【アナザーside】

☆☆☆☆

『さあ始まりました!スバル&ティアナ組、一定距離を保ったまま一緒に動いています!』

『2対1なら本来は二手に分かれて挟み撃ちするのが定石ですが、相手は転送技で簡単に抜け出せてしかも後ろを取れるとなれば逆に危険ですからね』

『安全最優先ということですね。一方でダルシム選手は座禅を組んで両手を下向きに広げ、目を閉じてジッとしています!いったいどんな意図があるのでしょうか!』

『あれは「降ろしてる」んだろう』

『おろす?おろすって何をどこにや?』

『神様を自分に、だ』

『全然笑えへんよ?』

『ギャグじゃねえよ!』

『ではいったいどういう意味なんですか?』

『はやて、選手入場の時にダルシムの事をお前はどうやって紹介した?』

『え?うーんと…「神に捧ぐ荒行が与えしは無限のリーチと神の炎」………あ、まさか…。いや、ウソやろ?』

『嘘じゃねえ。あいつは本当に神の炎を降ろせるんだ』

『………』

『神の炎、ですか…。普通の炎とどのような違いがあるのですか?』

『口で説明してもどうせ信じねえだろ?あいつが使うまで待ってな。あ、そうだ。あいつが炎をいつ使ってもいいように温度の計測を忘れんなよ』

『はーーい。(まったく抑揚なく淡々と答えとる…。ホントなんやろか?)』

『……そうですか』

『(それにしてもなんでそれを試合前にやらなかったんだ?)』

 

『……そうこう言ってるうちにスバル&ティアナ組がどんどん接近!間も無く会敵です!』

☆☆☆☆

 

〈多分もうすぐ相手が見えるわ。まずはあんたが的を絞らせないように角から高速で飛び出して、止まらずに相手の正確な位置を確認。攻撃には充分警戒して。そうしたらあたしも角を出て先に攻撃するわ〉

〈了解!〉

 

とにかく思いっきり飛び出していいってことだ。

走るだけならあたしの得意分野!任せてよ!……なんて考えながらフラッシュアクセルで飛び出す準備。いきなり手の内を見せるのは良くないかもしれないけど、格闘家相手に出し惜しみなんかしてられないもんね。

 

☆☆☆☆

『おーっとスバル選手、速度を上げてティアナ選手から離れた!どうやら先行して飛び出し囮役になるようです!』

『あー…ありゃ悪手だな。カウンター喰らうぞ』

『あの子はあの速度から更に加速する手段があるんやで?いくら格闘家でもあの距離とあの速度に初見で合わせるのは…』

☆☆☆☆

 

角まであと10mと迫り、緊張感が高まる。フラッシュアクセルを発動しようと姿勢を低く、腕を振りかぶり、膝を折り曲げる。

 

「(行k…)」

 

そしていざ飛び出した瞬間、突然目の前に褐色の拳が現れたかと思ったら視界が歪み、意識が遠退いた。

 

☆☆☆☆

『な?』

『な…なんやあれ…』

『幻…じゃないわよね…』

『おーい、実況実況』

 

『あ…し、失礼しました!

スバル選手が角を飛び出した瞬間、ダルシム選手の拳が完璧なタイミングでスバル選手の無防備な顔面に直撃し、為す術も無く吹き飛んでダウン!衝突の勢いでダルシム選手の拳も弾かれましたが、スピードに乗っていた分スバル選手のダメージの方が大きいようです!』

『顔面直撃とはいえ当たった部分が額で良かったな。もし鼻か顎に喰らってたらもっとやばかっただろうぜ』

『それにしても…ダルシム選手のあの技は…』

『感知能力もすごいけど…今の技も文字通り人間業ではないですね…』

☆☆☆☆

 

「……ル!スバル!目を覚まして!」

「……ってててて……」

 

意識を取り戻すと額から血を流しながら仰向けに倒れていて、ティアが横からあたしの身体を揺すっていた。

 

「今の状況はわかる?」

「うん……ってあたし何分くらい気絶してた!?」

「倒れてから5秒も経ってないわ。額に当たったのは不幸中の幸いね。

それより返事しなくていいから呼吸を整えながら聞いて」

「………」

 

「あの人はリュウさんより気配を探る能力が遥かに高い。きっとあんたの正確な位置もあのダッシュで飛び出すタイミングも気配の変化で読み切ったのよ。でなきゃあんなに完璧にあの速度にカウンターなんて合わせられないわ」

「(まだ不慣れな技だから発動に時間がかかるとはいえ…)」

「つまり普通の奇襲は効かないと思った方がいい」

「(『気』の変化だけでそこまで完璧に動きを読むなんて…)」

「だから作戦変更するわ。二人で防御を固めながら強引に距離を詰める。いいわね?」

「……!」

 

思わず口元が釣り上がる。さすがティア!シンプルで分かり易い作戦だ!燃えてきた!

 

☆☆☆☆

『ビルの陰に止まりながら作戦会議中だったスバル&ティアナ選手が動き出しました!どうやら作戦が決まったようです!』

『でもどうやって接近する気なのかしら』

『出鼻をあんな形で挫かれたら防御固めながら飛び込むくらいしかねえんじゃねえかな』

☆☆☆☆

 

「飛び道具はあたしが撃ち落とすから壁役頼むわよ!」

「オッケー!マッハキャリバー!」

《Protection.》

 

右腕を突き出して、リボルバーナックルを通して右掌から前面を覆うバリア系防御魔法「プロテクション」を展開。

今度はティアに合わせてスピードを落としてるから攻撃を合わされやすいけど、防御に意識を集中してるし防御魔法まで展開してるんだ。絶対大丈夫!

 

「(防御を固めての接近か…来い!)」

 

そしてとうとうその時が訪れる。

 

「ハァッ!」

「「!!?」」

 

飛び出した刹那、さっきより倍以上は重い衝撃が…下手をすればヴィータ副隊長並の一撃がプロテクションに直撃。

踏ん張り切れずに吹っ飛ばされそうになったけど、ティアが後ろから支えてくれたおかげでなんとか堪える事ができた。

 

でもあたし達が受けた「衝撃」は物理的なものだけじゃなかったんだ。

 

〈ス、スバル…。あたしの見間違いかもしれないんだけど…〉

〈だ、大丈夫だと思うよ…。あたしも多分おんなじのが見えたと思うから…〉

〈じゃあ…一緒に言ってみましょうか…。せーの…〉

 

〈〈腕が伸びたーーーー!!?〉〉

 

そう、腕が伸びたんだ。それも1mや2mどころじゃない。多分20mは離れた位置からだ。しかもそれを両腕で殴ってきたから物理衝撃もあたしの顔面に直撃したパンチの2倍以上あったみたいだ。

この人ホントに人間!?ジミーさんとは別の意味で人間っぽくないよ!!

 

 

 

「ハッ!デヤッ!」

「い!?」

 

…なんて驚いてる場合じゃない!今度はプロテクションの上からパンチの連打でこっちの動きを止めに来たよ!

 

☆☆☆☆

『スバル&ティアナ選手、とうとうダルシム選手を視界に捉える事に成功!しかし攻撃の正体を目の当たりにして激しく動揺しているようです!』

『しっかしあいつもなかなかえげつねえな。そのまま一方的に殴り続けるなんてよ』

『20mは離れた位置からあの速度で殴られては接近は困難ですね。…ところでダンさん…』

『なんだ?』

『あれは本当にその……ヨガによって可能な技なんですか?失礼ながら生体改造を施したようにしか見えません』

『まあ、正直言って俺も詳しくは知らねえが…本人曰く「悟りを開けば誰にでも可能」だそうだ』

『悟り…誰でも…』

『そもそも神に身を捧げるダルシムが身体を弄るなんて罰当たりな事なんざするわけねえだろ?』

『…そうですね。大変失礼なことを言ってしまってすみませんでした』

『ああ、気にすんなよ。俺達の世界でもあいつは化け物とか宇宙人とか言われる事がある位だからな』

『『ええーーーー!?』』

☆☆☆☆

 

「(くっ…。ボディリミッターで身体能力が落ちてるはずなのになんて威力…!)」

 

パンチを受け過ぎてプロテクションが保ちそうにないので解除して回避に集中。

左右交互に腕を伸ばした直線的なパンチは速いには速いけど、集中すれば回避出来ない程じゃない…けれど、問題は次のパンチまでの時間と相手との距離だ。

フラッシュアクセルを使うには時間が足りないし、使えたとしても一気に飛び込むには厳しい距離だ。

でも嬉しい誤算が一つだけあった。

 

〈スバル!そのまま引きつけててよ!〉

〈了解!〉

 

どんな誤算かと言うと、なんでか分かんないけどダルシムさんはあたしを集中的に攻撃してて、ティアがフリーになった事だ。

あたしはこの隙に一気に接近するのは諦めて、回避しながら一歩ずつ近付く事にした。

 

「(慣れてきたか………むう、この気勢は…来るか!)」

 

〈ティア!〉

〈わかってる!〉

 

あたしに攻撃が集中してから、予めあたしの斜め後ろにいたティアは横に飛び出してシュートバレットを撃ち込もうとクロスミラージュを構えた。

 

「喰らい…」

「フンッ!!」

 

でもティアはシュートバレットを撃てなかった…いや、撃たせてもらえなかったんだ。

 

「…!!」

「ティア!?」

 

「…甘いわ、銃の娘」

 

あたしの横を通り過ぎていったそれ(・・)はティアを二回三回とバウンドさせながら吹き飛ばしていった。

 

☆☆☆☆

『おおっと!スバル選手に攻撃を集中していたダルシム選手、ティアナ選手が攻撃態勢に入るのを見切り、即座に手を止め先手を取って合掌しながらの強烈なキックで吹っ飛ばしたぁぁぁぁ!!』

『の、伸びるのは腕だけじゃなかったんですね…』

『その通り。あいつは足も伸びる。つまり今のはその油断が招いた結果だ』

『でもボディリミッターが作動してるのにどうしてあんな威力が出るんですか?』

『ダルシムは荒行で身体を鍛えてるっつっても元々格闘家じゃねえから身体能力は他の格闘家に比べて高い方じゃねえ。だからあいつはそれを「気」で補ってるんだ』

『…ってことはまさか…!』

『あいつのフィジカルは「気」の補助が大部分を占めててな、元々高くねえ身体能力が下がっても大した影響は受けねえって事さ。身体能力に「気」を足し算するって言えば分かるか?』

『は、はい…。ボディリミッターのハンデは無いも同然ということですか…。子供達にはとても厳しい試練ですね…』

『ティアナは打たれ強い方やない…。こらあかんやつや…』

『いや、そうでもないみたいだぜ?』

『え?……あ!ティアナがダウンせずに立ち上がった!?』

『派手に吹き飛んで転がっていきましたけど、見た目ほどのダメージは無いようですね』

『ああ、見事な「流し」だな』

『ながし?』

『俺達の世界の格闘技に於ける防御技術の一つでな、出来ると出来ないじゃあ受けるダメージに桁違いの差が出る。まあこれは威力の高え攻撃専用だがな。

しっかしあいつのあれはかなり完成度が高いな。一朝一夕で身に付けられるレベルじゃねえ』

『そうですか。射撃型にしては珍しい技術ですね』

『(そう…センターガードであるティアナには本来不要なスキルや。だからこれは明らかになのはちゃんの仕込みやない。一体誰が…)』

☆☆☆☆

 

〈ティア!大丈夫!?〉

〈ぜ、全然平気よ!まだまだやれるわ!〉

 

あんなに派手に吹っ飛んだのに大したダメージは受けてないみたいだ。すごいじゃんティア!いつの間にそんなディフェンステクニック覚えたの!?

 

「ふぅぅぅぅぅ……(すっごく痛かったけど…声も表情もガマンできるならガマン!

いきなりあの訓練が役に立ったわ…!)」

 

「(ほう、これを受けて平然と立ち上がるか)」

 

 

 

[回想 一ヶ月前 ティアナの秘密訓練]

「先日の試しの組手で見せた信念の込もった一撃…見事だったぞ」

 

約束した日から間が空いてしまったが、ティアナはリュウのテストに見事合格し、この日が2人の秘密訓練の初日となった。

 

「あ、あれは必死だっただけで…。正直自分でも信じられないです…」

「心の強さは時として限界を超える力を与えてくれる」

「限界を…超える…」

「あの一瞬だけとはいえ、お前は俺の予測を超えていた。それは事実であり誇るべきお前自身の力だ」

「…!」

 

リュウの言葉に感極まったティアナは涙腺が若干緩みそうになったが…

 

「だがそれもその時だけで終わっては単なる偶然となってしまう。

なので今はその力を任意に引き出す為の修行……と言いたいところだが、潜在能力を引き出すのは片手間で出来る程簡単なものではない」

「…はい、そうですよね…」

 

あれは本当にただの偶然。ちょっと訓練しただけで出来るようになるとは思っていない。自分自身それは分かってはいたが、面と向かって言われるとやはり辛いものがある。

 

「だから今は比較的早く修得でき、尚且つお前の欠点を補える技を教える」

「…はい!よろしくお願いします!」

 

しかしいつまでも落ち込んではいられない。立ち止まる時間があるなら一歩でも進みたいから。

 

 

 

「ではティアナ、自分の欠点は挙げられるか?」

「はい。

あたしの一番の欠点は近接戦闘用の魔法や技術に乏しいところです。いくらチームで動くから接近戦になる可能性が低いとはいえ、いずれ必ずその事態は起こります。だからなるべく早く身に付けておきたいところですね」

「うむ、では他には?」

「あたしのポジションは基本的にあまり動かずに足を止めての射砲撃支援なので、撃ち落とせない攻撃が来たら回避せざるを得なくなって支援が止まってしまうことです。

その攻撃が回避しきれない場合なんて最悪ですね。あたしは防御魔法が使えないし打たれ強くもないですし。他には…」

「いや、もういい。流石に自己分析は完璧だな」

「(自分の欠点を挙げて完璧とか言われても全然嬉しくない…)」

 

「分かっているとは思うが、俺は射撃の対策なら知っているが射撃技術に関しては無知だ。

故に俺が今から教えるのはお前が回避しきれない攻撃を受けてしまった場合の対処法だ。いいな?」

「はい!」

 

「先ずは俺が手本を見せる」

「はい!お願いします!」

「ではティアナ、ヴァリアブルシュートで俺を撃ってみろ」

「え”!?ヴァリアブルシュートを!?」

「お前は痛くない。気にせず来い」

「あたしの心が痛いんですけど!?」

 

嫌々ながらも結局ヴァリアブルシュートを撃つ事になったティアナ。仕方なくリュウから離れようと歩き始めた…が、しかし…

 

「ティアナ、何処へ行く」

「どこってヴァリアブルシュートを撃つために離れよ…」

「そこでいい」

「は!?」

「そこから撃てと言っているんだ」

「じょ…冗談ですよね?」

「本気だ」

「ウ、ウソ…」

 

リュウの言う「そこ」とは目測でさえ10mも離れていないとハッキリ分かる程の至近距離。

以前に模擬戦でナッシュに撃ち込んだ時より遥かに近いが、リュウはこんな距離でも反応出来るというのかとティアナは耳を疑った。

 

「避けられる距離でやっても参考にならんだろう」

「そうじゃなくて!もし失敗してひどいケガを負ったらどうするんですか!?」

「その時は俺が自分の未熟さを反省するだけだ。だからお前は気にするな」

「リュウさんって格闘バカって言われたことありますよね?絶対ありますよね?」

 

結局その距離で撃つ羽目になったティアナは覚悟を決めて弾体を形成した。

 

「……本当にいいんですね?」

「無論だ」

「……わかりました。では…」

「おお、そうだ。攻撃は一回ではなく何回でも好きな回数撃ち込んでくれ」

「ああ~~~~~!どうなっても知りませんからね!!」

「応!!」

 

呆れるのにも疲れたティアナは深呼吸で心を落ち着け…

 

「はあぁぁぁぁ……」

 

雑念を捨てると右手のクロスミラージュを銃口を目の前のターゲット…その中心部に寸分の狂いも無く合わせ、固定した。

 

一流の狙撃手は感情を一時的に消し、「標的を撃ち抜く」以外の思考の一切を排除する事で極限まで集中力を高め維持する事が出来ると言う。

今のティアナには微塵の躊躇(ちゅうちょ)も手加減も感じられず、リュウもティアナの豹変に思わず息を飲んだ。

 

「(この緊張感と圧迫感…。集中したティアナがこれ程とはな…。一度でも失敗すれば間違い無く骨折…。それも一箇所では済まんだろう)」

 

今のティアナは正に狩人。リュウは負けじと呼吸を整えて集中力を高め、ティアナに対抗しようとしている。

 

「(形成完了…)」

 

今回はクロスミラージュの補助により3秒で弾体を形成。何時でも発射可能な態勢が整った。

 

「ヴァリアブル……!」

 

「来る」と分かっていても回避は困難な距離。下手をすれば小さい怪我では済まない。だが今のティアナには微塵の迷いも無い。

 

「(着弾は一瞬…。来い!)」

 

故に手加減も油断も無い。精神状態は極めて実戦に近い状況だ。

 

「シューーーーート!!!」

 

遂に10mにも満たない至近距離でオレンジ色の巨弾が唸りを上げた。

 

 

 

「……!!」

 

傍目ではリュウが反応すら出来ずに一瞬で喰らって吹き飛んだように見えただろう。

事実喰らったリュウは防御すら行わずに縦回転しながら吹き飛んでいったのだから。

 

「リュウさん!」

 

撃ったティアナですらも「だから言ったのに!」などと思いながらリュウを助ける為に追い掛けようと手を伸ばしていたくらいだ。

ちなみにヴァリアブルシュートはというと、リュウを吹き飛ばした際に斜め上へ飛び出していったようだ。

ところが肝心のリュウは………

 

「ふっ!!」

「えっ」

 

身体が数m後方に飛んだ時点で宙返りしながら着地してしまったのだ。

リュウは口から多少の出血はしているが、体力がごっそり減っただとか、骨を折っただとかいうようなダメージを受けたようには見えない。

ティアナはその様子に驚愕し、時が止まったかのように動きを止めてしまった。

 

「次!」

「!?は、はい!」

 

リュウの大声で我に帰ったティアナは弾体を操作してもう一度リュウへ飛ばす。すると今度は………

 

「ぐぅっ…」

 

側頭部に撃ち込まれると小さな呻き声を上げて吹き飛んだ……が、これも倒れる事無く側転しながら着地。

今度は流石に効いたのか、頭を押さえながら若干足元をフラつかせている。しかし、やはり明らかに直撃したダメージではない軽さだ。

 

「次!」

「…もういいです」

 

ティアナは肩を落として溜息を吐くと、ヴァリアブルシュートを消滅させてリュウの元へ戻って行く。

 

 

 

「…という訳で、今のが回避不能な攻撃への咄嗟の対処法だ。見た限りでいいから分かった事を教えてくれ」

「ただガマンして攻撃を受けたようにしか見えませんでしたけど…」

 

ティアナの感想は皮肉がこもっているのものの、そう見えたのは事実である。

そしてそう見えたにも関わらず、リュウは2発も直撃したとは思えない程に軽いダメージで済んでいるのもまた事実。

ティアナはこの矛盾に頭を悩ませているが一向に答えは出ず、本人にその答えを聞かざるを得なかった。

 

「実はそれが半分正解だ」

「……は?」

「回避不能な攻撃だ。確実に喰らってしまうと分かっているならば覚悟を決めて受けるしか無いだろう?」

「ウソでしょ……」

 

冗談で言った事が半分正解…。こんな馬鹿馬鹿しい話があるだろうか。そう思いながらティアナは呆れ返った。

 

「じゃあ残りの半分はなんなんですか!」

「何故怒っている?」

「怒ってませんよ!」

 

いや怒ってるよな?と言いたくなったが、どうせ余計に怒らせるだけだと思ってリュウは言葉を飲み込んだ。

 

「身体を使ったんだ」

「ザックリしすぎですよ!」

「ま、まあ落ち着け。順を追って説明する。合間に質問も挟むので答えてくれよ」

「は~い…」

 

若干膨れっ面になりながらもティアナは返事をした。

 

「よし、では質問だ」

「(合間じゃなくて冒頭!?)」

「俺が攻撃に当たった時、俺がどうなったように見えた?出来るだけ具体的に答えてくれ」

「えーーと…まず間違いなく防御はしてなかったですね。腕で防ぐどころかまるで胸で受け止めたように見えましたし。

あたしは避けられにくいように身体の中心…みぞおちあたりを狙って撃って、それが狙い通りみぞおちに直撃したと思ってました。

でも見た限り、リュウさんは直撃したとは思えない軽傷でした」

「ああ。人間が最も避けにくい位置への高速巨弾…。あれは来るのが分かっていても避けられない攻撃という意味での理想形だった。見事だったぞ」

「あ、ありがとうございます…」

 

ティアナは照れくささで頬をほんのり紅く染めた。…が、リュウは気付く事無く話を続ける。

 

「ではその攻撃が直撃して何故俺はこうして平然と立っていられるのか…。俺があの時、何をしていたかよく考えろ」

「……今思い出しました。なんて言ったらいいか…リュウさんの吹き飛び方に違和感がありました。大げさというか…派手すぎるというか…。もしかしてその辺に秘密が?」

「よく気付いたな、その通りだ」

「ホントですか!?」

「ああ、本当だ。では詳しく説明しよう」

「はい!お願いします!」

 

やっとまともに考えた答えが合っていた事に気分が高揚するティアナである。

 

「あの時俺は攻撃を避け切れないと悟って自分から受けに行った」

「自分から?どういうことですか?」

「躱せないのに下手に避けようとして事態を悪化させぬよう、最小限の被害で済むように身体を動かしたという事だ」

「はあ、なるほど…」

「そこで俺は上体を反らせ、弾を斜めに受けたんだ」

「あ、そっか!斜めに受ければ弾を逸らしてダメージを軽減できる!リュウさんに当たった弾がまっすぐ飛ばずに斜め上に飛んで行ったのは上体を使って弾を逸らしたからなんですね!」

「確かにそうだ……が、それだけではない」

「…それってさっきあたしが言った…」

「そう、この技術に於いて最も重要なのはそこだ。真髄は『止める』事では無く『流す』事にある」

「流す…。具体的にはどうするんですか?」

「そうだな…。例えば……」

 

リュウは言葉を途中で止めると手近にあった「石」を片手で持ち上げ……

 

「この『石』を避けずに取ってみろ」

「え”!?」

 

…と言い放ちながらティアナにその「石」を放り投げた。

 

「…っとっとっとっと!」

 

ティアナは勢いに振り回されてふらつきながらも何とか両手でキャッチに成功する。

 

「こういう事だ。分かったか?」

「わかりませんよ!てゆーか直径50cmくらいはあるじゃないですか!こんなの石じゃなくて岩ですよ!」

「お前の力なら問題無いだろう」

「そういう問題じゃありません!もしキャッチできな……」

「そんな事より『流す』の意味は分かったのか?」

 

リュウのあまりの無頓着振りに「ダメだこりゃ」と諦めるティアナであった。

 

「…さっきも言いましたけどサッパリわかりません。もったいぶらずに教えてくださいよ…」

「確かに答えを聞けば話は早い。だが、実戦では誰も答えを教えてはくれない」

「…!!」

「だからこそ普段から何事も自分で考え、自分で答えを出す修行が必要なんだ」

「………」

 

自分で考えて自分で答えを出す…。今まで自分は当然の如くそうしてきた筈だった。

幻術魔法を独学で憶え、兄の射撃魔法も四苦八苦しながら必死に身に付けた。

昇格試験の時も、ナッシュ中尉との模擬戦の時も、初任務の時も、何時だって必死に自分で考えて自分で答えを考えて戦った。

 

でも今は違う。環境の良さに甘えて、専門外だからと考えるのを放棄して安直に答えを求めてしまっている。

この人はそれを分かって是正する為に自分に言ってくれたんだ、とティアナは気付いた。

 

「ではティアナ、あの石を受け取った時の自分の動作をよく思い出すんだ」

「…はい!」

 

自分の甘さを認識したティアナは、今度は不満の欠片も考えずに全力で修行に取り組む事を決意したのだった。

 

「(あの時、無意識ではあったけど…)」

「………」

「(普通に正面から受けたんじゃあたしが潰れちゃうからって、差し出した両手で岩を優しく掴んだら勢いに逆らわずに後ろに投げ出すように両手を引くことで、少し振り回されはしたけど勢いを削ぐのに成功してやっと止まることができた…)」

「………」

 

そしてティアナは一つの答えを出す。

 

「力に逆らわない…です」

「その心は?」

「さっき岩をキャッチした時、無意識に勢いを削ぐための動きを自分でやっていたのに気付きました。

その動きが正に『力に逆らわない』動きだったんです」

「正解だ。人は危険を感じると無意識にそれを回避・軽減しようとする。それが今の行動だ。

極端な話、お前は頭で分かっていなかっただけで身体は分かっていたという事だ」

「さっきヴァリアブルシュートを受けて派手に吹き飛んだのは『流した』結果だったんですね」

「ああ。基本は脱力からの緊張、そして重要なのはそのタイミングの見極めだ。ただ受ければいいというものではなく今の様に緩から急への力の調整が鍵であり、お前はそれが出来ているという事だ」

「でも今のはゆっくりだったし危険が無いからこそできただけです。いくら練習してもあたしなんかが実戦でどこまで通用…」

「ティアナ」

「は、はい!」

 

突如リュウはティアナの言葉を遮り、真剣な表情でティアナに話し掛ける。

 

「昇格試験でスバルが暴走した時、スバルがお前の弾幕を掻い潜った事は憶えているか?」

「…はい」

「あの時お前はスバルの攻撃を躱し切れなくて硬直してしまったな」

「…そうです。あんな命のかかった場面で情けないですよね…」

「いや、違う」

「え?」

 

自分の失態を自虐したのをリュウが否定。ティアナは驚きながら思わずリュウの顔を見る。

 

「あの時のお前はスバルの動きが見えていた。だからこそそれを躱そうと意識し過ぎて咄嗟に無理な動きをした結果、躱し切れないと無意識に悟った事で身体がそれ以上の動きを拒否してしまったのだ」

「…!!」

「その時は対処法を知らなかっただけだ。だが今は違う。あの動きが見えているなら後は技術が身に付けば確実に物に出来る。

もっと自信を持て。お前は自分を過小評価する癖がある」

「もっと…自信を…」

 

この後ティアナは懸命に「受け流し」を特訓し、数日後には見事にリュウから「完璧だ」と太鼓判を押されて合格を貰う事となる。

 

 

 

「あとこれはちょっとしたアドバイスなんだが…」

「?」

「大きいダメージを受けた時に人は自然と苦悶の表情や苦痛の声、弱音を晒してしまう。だが、これは出来るだけ見せないよう意識した方がいい」

「うーんと…………それは相手に弱みを見せないためですか?」

「そうだ。具体的には我慢そのものが相手に『効いていない』『効果が薄い』と動揺・警戒させたり、次の手を使わせる切っ掛けにもなるという事だ。必ずしもそうなる訳ではないがな」

「ガマンか…。そうですね、今日から意識してやってみます」

「ああそうだ、それの事でもう一つ言い忘れていた」

「なんですか?」

「チームワークだ」

「……それはさすがに関連性が見えないんですけど……」

「簡単な事だ。お前でなくとも仲間の誰かが大きいダメージを受けて苦しめばお前も他の仲間も心配するだろう?」

「はい」

「その手負いの仲間の為に他の仲間が無茶をしたり隊列を乱したりすれば被害拡大の可能性が高くなる」

「あ…」

「逆に言えば実際のダメージよりも軽傷に見せかける事でそれを防げるかも知れんのだ」

「じゃあヴァリアブルシュートを受けて平気な顔をしてたのは…」

「あんな攻撃を喰らって痛くない訳が無いだろう。お前に余計な心配をさせない為に我慢していたんだ」

「でもそんなガマンなんてリュウさんくらいしかできませんよ!」

「だが我慢出来ればお前のように味方にあっては心配させず、敵にあっては動揺させる事が可能だという証明になっただろう?」

「…!」

「直ぐにここまで出来るようになれとは言わん。だが痛みに対する忍耐もまた強さの一つだという事を覚えておいてくれ」

「…肝に命じておきます!」

[回想終了]

 

〈スバル!クロスシフトA!〉

〈うん!任せて!〉

 

「(気勢は変わらず…。やはり銃使いの娘が来るか…)」

 

あたしが相手を引きつけて、ティアがその隙に誘導弾の一斉射撃で相手を一網打尽!これがクロスシフトA!相手は一人だけどね!

だからあたしはダルシムさんを引き付ける為にちょっとムチャして反撃も試みる事にしよう!

 

「はあっ!!」

 

リボルバーナックルで圧縮した魔力を身体の一部又は全身に纏って攻撃力・防御力を強化する魔法「ナックルダスター」を発動。

これなら簡単に当たり負けはしない!

 

「ハァッ!」

 

でもダルシムさんがその隙を逃す筈も無く、ナックルダスターを発動した隙に、さっきティアを吹き飛ばしたキックを繰り出す。

 

「ぐっ!」

「むぅ!」

 

☆☆☆☆

『スバル選手、ナックルダスターで上半身を強化しダルシム選手のキックを防御!後ずさりしましたが両腕での防御で防ぎ切りました!』

『しかもただ防御しただけである程度衝撃を跳ね返してカウンターダメージを与えられるみてえだな。攻防一体の技…魔法だ』

『ベルカ式魔法の基本は魔力付与による性能強化ですからね。その応用・発展系は数限りないんですよ』

『へえ、俺達の世界の格闘技に於ける『気』の運用の基本そのまんまだな』

『そうなんですか…。

もしかしてベルカ式ってそちらの世界の格闘技と何か関連性があるんでしょうか?』

『流石にそこまでは分かんねえなぁ』

『それもそうですね』

『でもまあ、俺達の世界の格闘史とそのベルカ式ってヤツの歴史を調べるのも面白そうだな』

『それは意外な発見がありそうですね!私、調べてみようかしら!』

『…なんて言ってるうちにスバル選手がダルシム選手のパンチをかわしたり弾いたりしながらジリジリと距離を詰めています!』

☆☆☆☆

 

〈スバル行くわよ!〉

〈うん!〉

 

「ヴァリアブル…!」

 

「(来るか…!)」

 

「シューーーーート!!!」

 

あたしの背後から放たれたヴァリアブルシュートはあたしの頭部を越えてダルシムさんに向かって行った。

 

「ホッ!」

 

…けど、それは一瞬で片足を上へ何mも伸ばした事で的を外されてあっさりと回避されてしまう。

そして片足を伸ばしたまま攻撃を再開しようとするダルシムさん。でもヴァリアブルシュートはこれで終わりじゃない。むしろここからだ!

 

「(もう一回!)」

「!?」

 

流石に予想してなかったのか、折り返して飛んで来たヴァリアブルシュートにとても驚きながら慌てて着地して再び回避。ヴァリアブルシュートはダルシムさんの頭上を通過した。

 

「(そういう事か…)」

 

二度目で慣れたのか、今度は落ち着いてヴァリアブルシュートを目で追っている。

 

〈そろそろ来るかもしれないわ!警戒して!〉

〈…それって…!〉

 

ティアの警告を聞いてあたしは急いでティアの元へ走った。

 

一度目標を見失ってしまえば意味を成さなくなる遠隔誘導射撃。しかもティアは誘導中は動けないから格好の的だ。

だから今はダルシムさんにとって絶好のチャンスの筈だ。チャンスっていうのは勿論……

 

「(転送技…!)」

 

予め警戒してれば全く反応出来ないって事は無い筈。頑張って一回で見極めよう!

 

「………」

「(もう一発!)」

 

あたしが転送技の癖を目に焼き付けようと走りながらダルシムさんを注意深く見つめていると、ティアが三回目のヴァリアブルシュートをダルシムさんに向けて飛ばしていった。

すると……

 

「「!!?」」

 

ダルシムさんは、消えた。

 

【スバルside…TO BE CONTINUED】

 




ダルシムはキックを放つ際に必ず合掌しますが、これは「いかなる時も慈悲の心を忘れない」という彼の信念の現れです。

久々にリリカルなのはStrikerSの設定資料集を見てみたら意外な事実を発見して驚愕!
名有りキャラの身長対比表を見てみたらなんと「レジアスが2番目の高身長」という事実が発覚しましたw
まあ、顔が他のキャラの1.3倍くらい長いのが要因でしょうねw
ちなみに最も高いのはゼストです(これは言うまでもないとは思いましたが一応…)。
あとヴァイス・ゲンヤ・スカリエッティがほぼ同じというのにも驚きました。
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