スーパーストリートファイターCROSS:StrikerS EDITION 作:拳を極めし者
【リュウside】
[新暦75年4月 昇格試験より数時間後 ミッドチルダ 時空管理局支局 面接室前の廊下]
「じゃあ私は二人に試験の結果を報告しに行くから30分後に面接室の前に来てね。それまでは自由にしてていいから」
「ああ、分かった」
試験の後、俺はなのはと共に支局に来ていた。なのははリインと試験結果を協議してから仕事でいなくなり、俺は急遽時間ができたんだが…
「…とは言ったものの…。突然暇を言い渡されても何をすればいいか分からんな」
出来れば修行に時間を充てたいが、時間が短い上にそもそも場所が無いのでどうしようもない。
「そういえばここには中庭があったな。そこで座禅でもするか」
中庭へ行ってみるとそこには一本の大きな木があった。
「都会にこういう場所があると心が落ち着くな。では始めるか」
[二十分後]
「まだ時間には少し早いが戻るとするか。…む、あの二人は…」
中に戻ろうとするとスバルとティアナがこちらへやって来た。
二人に気付かれる前に植え込みの陰に隠れ、気配を消しながら二人の様子見をする事にした。
「あーなんか色々緊張したー」
「まあね」
「(特にわだかまりも無さそうだな。ティアナはスバルに『気にするな』と言っていたとはいえ、あんな事があって二人の関係がどうなるのかと気になっていたが…)」
少しよそ見をしているとスバルが怪しげな笑みを浮かべながら何か冗談を言ったらしく、ティアナが怒ってスバルの尻をつねり出した。
「なーによそれは!言って欲しくないわ!」
「あー!痛い痛いギブギブギブー!」
二人は冗談を言いながらじゃれ合っていた。
「(どうやら心配なさそうだな)」
もう少し様子を見ていると、落ち込み気味のティアナにスバルが真剣な顔で話し出した。
「やろうよ、ティア!」
「(あの目は…決意した目だな。入隊を決めたか)」
「あたしはなのはさんとリュウさんにいろんなことを教わって、もっともっと強くなりたい。もっと沢山の人を助ける為に…もう二度とあんなことにならないように…心も体も!ティアは新部隊で経験積んで最短距離で夢を追い掛ける!」
「(あんな事があったと言うのに前向きな子だ。…って待て待て!俺がスバルの担当だと!?なのはめ…)」
特に理由も無しに何故かなのはの仕業だと直感した。この直感は当たっている気がする…!
「(…まあ、これ以上の長居は無用だな。行くか)」
[同場所 面接室のある階 中庭の見える廊下]
「そういえば…新規のフォワード候補はあと二人だっけ?そっちはどうなったの?」
「二人とも別の世界。今はシグナムが迎えに行っとるよ」
廊下を歩いているとなのはとはやてが中庭を見ながら話をしている姿が見えた。
「お、いたか。なのは、話があるんだが…」
ちょうど話が終わったようなので声を掛けた。
「話ってなに?」
「スバルの事なんだが…」
「ああ、その様子だと話は聞いたんだ。よろしくね」
なのはは笑顔で話を切り上げようとした。いやいやいやいやそれは無いだろう。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺が言いたいのはそういう事ではなくてだな…」
「(なのはちゃん…リュウさんに話してなかったんか…)」
「なのは、はやて、お待たせ!」
「お待たせですー!」
なのはとの話の最中、フェイトとリインが合流した。どうやらここで待ち合わせしていたようだ。
「あ、フェイトちゃん、リイン。ちょっと待っててね」
「うん」
「はいです」
「で、何の話だっけ?」
「スバルの担当の事だ。別に拒否しようという訳じゃないが一言言ってくれれば…」
「拒否しないならいいじゃない。それに『壊さない』って約束した道具を壊しちゃったのは誰?」
「いや…あれは不可抗力で…」
「不可抗力でも何でも『壊さない』って言って壊しちゃったら責任は取らないとダメだよね?大人なんだし」
「それは…」
「その責任はどうやって取るの?ごまかそうとしてた訳じゃないよね?」
「………」
「そういう訳だからお願いね♪」
「(反論できん…。理由付けが強引な気もするが…)」
「(なのはちゃん…鬼や…!)」
「(一方的にスバルの担当を決めたのは強引だったけど…先に話したら何かしら理由を付けて断るのは目に見えてたからこれでいいんだ。
それに試験の時のスバルを見る目…。スバルと一緒にいればリュウさんも何かが変わるかもしれない。望まない大きな力を、同じ禍々しい力を持つ者として…互いに助け合っていい方向に向かってくれれば…)」
「「「「「………」」」」」
俺となのはの会話が終わると全員が一斉に沈黙した。 気まずい…気まずいぞ…!
「ほ、ほんなら次に会うんは六課の隊舎やね!」
「さ、三人の部屋、しっかり作ってあるですよー!!」
「た、楽しみにしてる!」
「うん!ありがとうリイン!」
「……ああ、すまんなリイン」
場の空気に耐え切れなくなったのか、はやて・リイン・フェイトは慌てて沈黙を破った。
その直後、はやてとリイン、なのはとフェイトは一旦それぞれの仕事に戻る事となり、俺はなのはに付いて行く事になった。
「さて、それじゃあ隊に帰ろうかなー」
「私、車で来てるから中央まで送ってくよ。もちろんリュウさんもね」
「ほんと?ありがとう!」
「ああ…」
俺はフェイトの話を聞き流し、考え事をしていた。
「そうだ。なの…」
「なのは、最近顔色が優れん事が多いようだが体調は大丈夫か?」
「…突然どうしたの?私は…」
「仕事熱心なのはいい事だが…疲れているなら少しは休め。お前は仲間に迷惑を掛けまいと無理をする癖があるからな。その無理が時に余計な迷惑や心配を与えてしまう事もある。
「「……」」
「俺はお前の仕事を手伝う事は出来ん。だからこんな事しか言えないが…お前には世話になってばかりなのにすまんな」
「心配性だなーリュウさん!私の頑丈さ、知ってるでしょ?」
「それは知っているが…。しかしだな、時々気脈にも若干の淀みが…」
「平気平気!全然問題無し!」
「…本当に大丈夫か?」
「ホントに平気だから…心配しないで!それに…」
「それに?」
「…何でもない!心配してくれてありがとね、リュウさん!」
「ああ、お前が問題無いなら俺も気が楽になる」
なのはの表情が一気に明るくなった。これなら心配なさそうだな。
「(……私の言いたいこと、全部言われちゃったな。リュウさんって意外となのはのこと、ちゃんと見てるんだ)」
そしてフェイトは何故か俺の顔をジッと見ている。
「む?俺の顔に何か付いてるか?」
「ふふ、なんでもないですよ」
「さて、じゃあ行こうか。二人とも着いてきて」
「ん?中央まで行くのか?俺は走って行くから気にしなくていいぞ」
「「!?」」
俺の発言に驚いたらしく、二人は仰天した顔になった。
「…とは言っても走れない場所は飛んで行くがな」
「…道、分かってます?てゆーか飛行許可が下りないと飛べませんよ?」
俺の発言に驚きながらもフェイトが質問する。
「ああ、そうだったな。じゃあ遠回りするか。道はおおよその方角が分かっているから真っ直ぐ進めばいい。そして近くになればなのはの気配を探すから問題無い。建物の外観は覚えているから大丈夫だ」
「(あー…。今は何を言ってもダメだね)」
「…どうして突然そんな訳のわからないことを言い出すの?」
「やるべき事が少しだけ見えてきたからな。そして心配事も一つ減った。そう思ったら体を動かしたくなったんだ。…まあ要するに思い付きだ。深い理由は無い」
「も、もう!私が心配ばかりかけてる人みたいに言わないでよ!行こうフェイトちゃん!」
「(格闘家って…みんなこうなのかな…)」
「はっはっは!いい顔だ!やっぱりお前に疲れた顔は似合わんな!…後で追い付くから向こうで待っててくれ」
俺は一方的に会話を切り上げてそのまま走り出した。
「あの人…ここから中央までは次元航行しないと行けない知ってて行ったのかな…」
「(リュウさん…本当にありがとう…。それだけで私、元気が…)」
「じゃあ私達も早く行かないとね、なのは」
「………」
「…なのは?」
「うん?ああ、行こうか」
[移動中 ハイウェイ フェイトのマイカー内]
「♪♪♪♪♪」
「ご機嫌だね、なのは」
「そ、そんなことないって!」
「(…ホントに分かりやすいなぁ。完全に乙女の顔だよ)」
【リュウside…END】
リュウがまさかの仕事を(強制的に)任されました。
果たしてリュウに指導者の任務は務まるのでしょうか(笑)