緋弾のアリア 強化人間物語   作:A4

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 読み返して思ったが非常に読みにくい上にわかりにくいw
暇つぶしにでも読んでいただけると幸いです。


9 高度40000フィートでの銃撃戦(後)

 操縦席へと続く通路で機長と副機長らしき人物が転がされている。呼吸が少々粗く意識もはっきりしてない。それを確認するとコクピットに向かう。

 「何だこれ…」

 メインコンソールに見慣れぬ小型の情報端末が接続され自動操縦が設定されているのか独りでに操縦桿が動いている。

 「専門家に聞くっきゃないか」

 そう呟くと携帯のアドレス帳から武藤剛気を選び送信した。

 「…雄也か!ニュース見てみろよ、ANA600便って言う豪華旅客機がハイジャックされて…」

 まずは剛気を落ち着かせるのが先か。そんな事を考えていると遥か後ろ、先ほどのバー辺りから乾いた発砲音が何回も聞こえてきた。

 

 

 「…状況は分かった」

 武藤に機体がハイジャックされたこと、コクピットは確保したが自動操縦により操作されている事を伝えた。

 「取りあえず今からいう事を確認してくれ。まずは燃料計だ。EICASって言う2行4列に並んだ丸いメーターの下に…」

 武藤の指示のもと悠斗が中央の少し上の辺りの画面を探り始めた。

 

 

 「どうだ?」

 「飛行に問題ないが自動操縦の解除及び変更が出来ないのが気になるな」

 取りあえず墜ちる心配はなさそうだ。そう考えながらコンソールに接続されている情報端末のモニターを見ていて気づいた。航路図らしきものが表示されているのだが目標地点が大問題であった。

 (…クソッ!何でこれに気付かなかった)

自覚していなかったがこの飛行機のジャックという事態に軽くパニックに陥っているようだった。

 「…武藤、警察の発表は?」

 「無いに等しい、ハイジャックされた事を発表しただけだ」

 モニターの指し示す終着地点を何度も確認する。しかし何度確認しても変わる事はない、嫌な汗がにじみ出てくる。

 「…情報科の奴に頼んで傍受でも盗聴でも何でもいいから情報集めてくれ」

 「って言っても情報科の連中って排他的だからな。俺、殆ど知り合いいねぇよ」

 武偵校の科の中でも妙な対立があり仲が良かったり悪かったりする。

 「情報科の中空知って奴に連絡してくれ。じゃあな」

「お、おい!」

 それだけ言って電話を切った。未だ理子の確保はできないらしく銃声が絶えない。

 

 

仕事用の携帯を取り出し宗一に電話を掛ける。

 「課長、ANA600便のハイジャックをご存知で?」

 「ああ、知ってる」

 何時も通りの平坦な声で宗一が応じる。

 「今、それに乗ってるんですが…」

 「……なに?」

 ロボットの如く揺るがない宗一の返答が珍しく遅れた。

 「状況を説明しろ」

 一度揺らいだもののすぐにいつもの調子を取り戻す。

 「はい、この機体は…」

 詳しい状況を簡潔にしかし、手早く説明を始めた。

 

 

 「…それで自動操縦の最終目的地は?」

 「平壌国際空港です。間違いありません」

 モニターの軌跡が朝鮮半島の北西部を指し示している。

 「…時期が悪すぎる。今あの国では無差別撃墜命令が出ている」

 北朝鮮は数年前より完全な鎖国状態に突入しており何人も内情をうかがい知ることが出来ない状態になっている。

 「…対策を協議する。少し待っていろ」

 宗一がそう言った後爆発音とともに機体が揺れた。

 「ッとお!」

 携帯を取り落しそうになる。それと同時に先ほど武藤にチェックするよう指示された計器の幾つかが動いている。特に顕著なのがFuelと書かれた3つのうち中央のメモリの数値がぐんぐんと低下している。

 「どうした?」

 「…爆発が発生し、燃料漏れが発生しました」

 「最低でもコクピットを確保し続けろ。追って連絡する」

 切れた電話を眺めていると後方からどたどたと足音が二人分迫ってきた。

 「キンジ、アリア!何があった!」

 振り向くと理子を確保するためにバーに留まったはずの二人が駆けてきていた。

 「理子が遠隔操作で爆弾を爆発させたのよ!」

 アリアが憤慨したように言う。しかし何があったのかは知らないが着衣に乱れがある。

 「状況はどうだ、悠斗?」

 キンジからいつもの根暗さが取り払われている。ヒステリアスモードが発動してるのだろう。

 悠斗は重い口を開き説明を始めた。

 

 

 

 「北朝鮮!?あんな所に行ったら撃墜されるじゃない!」

 「…本格的にマズイな」

 アリアとキンジがそれぞれの反応を示し計器や操縦桿に取り付く。この場は二人に任せた方がいいだろう、ヒステリアスモードに入ったキンジはスーパーマンも真っ青である。

 騒がしくなったコクピットを尻目にふらりとその場を去った。

 

 

 所々に弾痕が残る機内を歩き空き部屋の一つに入る。

 「こんな所で殉職か」

 思えばろくでもない人生だった。学校に行くことを許されたのは武偵高校から、本来なら中学こうに行ってるときは既に今の殺し屋紛いの仕事をやっていた。幸いにも老け顔と170を超えている背丈で疑われることはなかった。

本来なら小学校に行ってるときは児童養護施設の皮を被った工作員養成施設に収容され長野の山中でしごき同然の訓練を受けていた。

「……?」

今までの人生の回想が止まった10歳より前の事が思い出せない。出生地、産みの親、そういった事が何一つとして。

「痛ッ!」

 頭の中に針を突っ込まれたような鋭い痛みが悠斗を襲った。これ以上は思い出してはいけない、そんな気がする。

 (しかし前にもこんな事があったような気がする)

 既視感と言うのであろうか。

 そんな事を考えていると仕事用の衛星携帯が鳴った。

 「中空知です。すみません、遅れました」

 「いや、こちらこそ急な事を頼んですまない」

 頼んでいた警察、自衛隊の無線の傍受に成功したのだろう。時間を考えると十分に早いと言える。

 「ちょうど今キンジさん達が外の自衛隊機と交信しているのでそれを流します」

 気のせいか中空知の声が硬い。

『……ちらANA6000便、聞こえている』

 キンジの声だ。

『こちらは防衛省航空管理局だ。ANA6000便に告ぐ、12分後に到着する誘導機に従い千葉方面に向かえ、安全地帯まで誘導する』

 自衛隊側の人間が尊大さを匂わせながら言う、将校特有の傲慢さを感じさせるような話し方である。心の中で「大佐」とあだ名をつける。

『ンな事は無理だ!』

武藤の声が割り込む。

『…誰だね?』

 「大佐」が訝しげに言う。

『俺は東京武偵高の武藤剛気だ、今現在機体はトラブルにより燃料が漏れており羽田に戻る以外の道はない!』

 『これは防衛大臣の命令であり私にどうこうする権限はない。命令に従え、さもなくばそれ相応の処置が取られる』

 処置という単語に含みを持たせ「大佐」が言う。

 『それは俺たちに墜ちろ、と言いたいわけか?』

 キンジが挑発的に言った。

 『…指示に従うようならば後に来る自衛隊機の指示に従いたまえ。それに従わないならば処置が行われることをゆめゆめ忘れるな』

 「大佐」のその発言を最後に通信が途絶した。

 「…やばそうだな」

 通信の内容の不穏さに思わず言葉が漏れる。

 「悠斗さん、私が今まで傍受した内容を伝えます」

 中空知の通信科のAランクというのは伊達ではなく何時も動揺を見せず、的確に状況を伝えてきた。それにも関わらず中空知の声に動揺が聞き取れる。

 

 

 

 「…撃墜命令だと!?間違いないのか?」

 「間違いありません。土屋防衛大臣の命令で洋上のある地点に誘導後、撃墜せよとの事です」

 中空知の話によると4分前に百里基地にスクランブルが発令されF15Jが二機こちらに向けて飛び立ったらしい。

 (誘導に従おうと従わまいと撃墜する気かよ!)

 「…ンな事までアメリカの真似しなくてもいいだろッ!」

 アメリカのポチだとかよく言われるがこんな所まで追従しなくてもいいとは思う。

 「あ、あの…」

 中空知が戸惑いを聞きすぐに正気に戻る。

 「…それにしてもお前電話越しだと本当にキャラ変わるな」

 直に会うと目はまともに合わさない話すと声が小さく、不明瞭な事がよくある。恐ろしいのはそれでも随分とマシになったという事実であった。

 「は、はい」

 「初めて会ったのは昨年の夏か。あの時は本当にひどかったな」

 「…あの時は本当にご迷惑をおかけしました」

 初めて会った時は鳥のような奇声を発していて当初、馬鹿にされてるのかと思ったほどである。

 「…!」

 思わず現実逃避からの過去の回想に浸っていると足音が聞こえた。カーペットが敷かれているので僅かにしか聞こえなかったが間違いない。

 「…用が出来た。切る」

 それだけ言い。通話を終わらせようとする。

 「あ、あの!」

 中空知がそれを遮るように珍しく大きな声を出す。

 「ん?」

 「…帰ってきてくださいね。待ってます」

 「あいよ」

 電話を切り銃把に手を掛ける。足音から何の警戒もしてないという事が窺える。

 (乗客というわけではないよな?)

 乗客は先ほどの銃撃戦を避けるために個室に籠っているとの事であった。ソファの陰に身を隠し拳銃の安全装置を外した。

 

 

 

 「ゆーゆー、理子だよ。撃たないで―」

 気の抜けた声と共に理子が室内に入ってくる。

(逃げたんじゃなかったのか?)

そんな疑問を覚えるが拳銃を保持していた腕をだらりと垂らす。理子は一切の武装をしておらず何の害意も抱いて無いのを伺える。何より理子のやる気のない声を聞いてこちらも戦意が失せてしまった。

 舌打ちして拳銃をホルスターに突っ込むとソファに腰掛ける。

 「…理子、あれは何の冗談だ」

 「なんのことー?理子わかんない」

 理子がふざけた調子で返す。

 「自動操縦の行先の事だ!いや、そこそも何故こんな事をしでかした!」

 語調が自然と荒くなる。

 「…以前、悠斗にあたしの願いを話した事あったよね」

 理子も向かいのソファに座り肉付きのいい足を組む。ふと気が付いたがトレードマークのツインテールの左右のテール部分が途中から断ち切られている。

 「ああ、曾爺さんを超えるとかいうやつか」

 以前ふとした拍子に曾祖父であるアルセーヌ・ルパン1世を超えるというような事を言っていたような気がする。そこまで考えてある考えに辿り着いた。

 「まさか初代ルパンの宿敵のシャーロックホームズの子孫を倒せば。曾爺さんを超えられるって話じゃないよな?」

 思わず含み笑いが漏れる。それは何か違わなくないだろうか。

 「何かおかしいことでもあるのか?」

 理子が急に男口調に変えこちらを睨みつける。

 「いや、何も。……まさか俺を撃とうとしたのもアリアを殺すのを邪魔されないようにするためかよ?」

 理子はそれに対し満面の笑みで頷いた。

 「ゆーゆーは弾の5,6発喰らっても死にそうにないし」

 「ゆーゆー言うのやめろ。だけど殺すにしてもせめて正々堂々やれよ…自動操縦の行先が北朝鮮っていうのは本格的に笑えん」

 理子はそれに対し何も答えずにそっぽを向いた。よく見れば冷や汗らしきものが流れている、大方ノリとテンションに任せてやったのだろう。

 「だが航空自衛隊なんてどうやって動かしたんだ?まさかお仲間が命令を偽造したなんてちゃちな物でスクランブル発令できるほど甘くはないはずだ」

 「…………理子、自衛隊なんて知らないよ?」

 思わず理子の顔を見るときょとんとした顔をしている。本当に何も知らなさそうだ。

「確かに自動操縦の行先はふざけて決めたのは認めるけど自衛隊なんて全く知らないよ」

「馬鹿を言え!この機の撃墜命令を受けたF15が2機こちらに向かってきてるんだぞ!」

 「そんな事言われても理子知らないよーだ」

理子がすっ、と立ち上がった。その様子を見てため息をつく。こいつがこう言うのならそうなのだろう。

 「ねぇ、前言ったこと覚えてる?理子と組むんだったらここから逃がしてあげてもいいよ」

 「…仲間になれだっけか?有り得ねぇよ」

 歴代のルパンはチームを組んで活動するらしくそれに誘われたことがあった。

 「相変わらずつれないなぁゆーゆーは」

 つれないなぁと理子はぼやくとふっと部屋を出た。それをやる気なく見送ってふとある考えが浮かんだ。

 (…あいつどうやって逃げるつもりだ?)

 一応ここに来るまでにパラシュートなどを探してみたのだが見当たらなかった。理子はどこかに隠しているのだろうか。

 そう考えるやいなや立ち上がり理子を追った。

 

 

 

 「理子!」

 理子がタラップを降りた所で足を止めた。見た所パラシュートらしきものは身に着けていない。

「じゃあねゆーゆー。A bientot(またね)」

 機外へと続くドアの周囲が綺麗に爆破され理子の身体が外に放り出される。それと同時に周囲からシリコン製のシートが飛んできてトリモチの如く絡み合い穴を塞いでいく。

 (これでひとまずは安心か)

 この最新の機体に備え付けられた機能の一つなのだろう。窓から外を伺うと趣味の悪い金色の下着だけになった理子が改造制服を変形させたものと思しきパラシュートに吊られゆっくりと空をたゆたっている。

 「あーあ」

 それを名残惜しげに眺めると撃墜か墜落の選択肢しかない旅客機へと戻った。

 

 

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