緋弾のアリア 強化人間物語   作:A4

12 / 12
 更新が遅くなり申し訳ありません。新しく書き始めた蒼の軌跡が思ったより書きやすくそちらの方を進めていました。
 この話から魔剣編に入るのですがほとんどが説明に近くあまり話は動きません。それでも楽しんでもらえると何よりです


11 始まり

『……未明……地区のビル内にて2人の成人男性の遺体が…………損傷が激しく身元の特定には時間が…』

 悠斗は総菜パンを齧りつつ朝のニュースを眺める。気のせいかテレビに映っている建物に見覚えがある。

 (…この前のビルじゃん)

 悠斗は先週、殺人の前科を持っていた東京武偵校の生徒二人を依頼により拉致し殺害した。しかし見つかるのが予想よりも早いのが予想外であった。

 「…ミスったかも」

 取りあえず先に退院した奴から襲ったのだが思ったよりも発見が早く、残りの二人に警戒させてしまうかもしれない。

 依頼の難易度が上がる事に眉を顰めるが取り敢えずは少し戻った味覚を堪能する。

 「……!」

 手にしていた惣菜パンがべちゃりと床に落ちる。腕がまるで踊っているかのように動き惣菜パンを取り落していた。

 (少しマシになったと思ったらこれかよ)

 悠斗は不随意的に踊り続ける右腕をじっと見た。

 

 

 

 

 

 

 昼時の学生食堂にてキンジとアリア、武藤と共に悠斗はようやく席を確保した時涼しげな声がかけられる。

 「ここ、いいかな?」

 不知火がカレーの乗ったトレイを片手に近付いてくる。不知火は武藤、キンジと共に一年の時武偵校の任務に置いて組んだ仲であった。もちろんそれを拒否するはずもなく受け入れそれぞれの食事を摂りはじめる。

 「そういえば遠山君、白雪さんと何かあったの?」

 確かにキンジの部屋でアリアと白雪のバトルが始まって以降だろうが白雪のキンジに対するストーキングが激しくなっていた。

 「俺も聞いたぞキンジィ…星伽さんと喧嘩したそうだな。事と次第によっちゃ轢くぞ」

 「…喧嘩なんてやっちゃいねぇよ。というか白雪に何かあったのか?」

 「いや、どうにも様子がおかしいだろ。アリアは気づいたか?」

 アリアを見るとひたすらももまんを頬張っている。そしてももまんを頬張ったままぶんぶんと首を振った。

 「僕は白雪さんが温室で花占いをやってるのを見かけたよ。しかも涙ぐんでいるようだ」

 「…もしかして別れたのか?ちょっと前に部屋で大乱闘やってただろ」

 悠斗がその時を思い出す。銃声と金属を捻じ曲がる音、凄まじい気勢をあげる声が隣まで聞こえてきた。

 「!」

 武藤が目を輝かせる。それを見て思い出した武藤は白雪に惚れていたのを思い出した。

 「何にせよ少しは気にかけてやれよ」

 「まぁ…そう言うんなら気にかけてみるが…」

 「遠山君がそう言うんじゃ復縁かな」

 武藤ががっくりと肩を落とした。

 「しっかしアリアに構いすぎたのが原因じゃないのか?アリアも満更じゃなさそうだし」

 最近はキンジとアリアの仲も深まったのかアリアが強襲科でキンジの事を自慢げに話しているのを聞いたことがある。

 「あー僕もそれ見たよ。射撃場で遠山君の事嬉しそうに話してたよね」

 ももまんをぱくついていたアリアの動きがぴたりと止まった。

 「…そうなのかアリア?」

 キンジが自ら地雷を踏み抜きに行った。

 「う、うっさい―エロキンジ!」

 アリアの鉄拳がキンジの顔に叩き込まれる。

 「…そういえば高津君や武藤君はアドシアードでは何かやるの?」

 「俺は今の所予定なし」

 武藤が答える。

 「俺もなしだ」

 「それじゃあ閉会式のバンド、皆でやらない?」

 不知火が白黒のチラシを差し出してくる。

 「アドシアードの閉会式のバンド?」

 武藤が怪訝な声を出す。アドシアードとは技能向上を目的とした年一回の割合で行われる国際的な武偵校の競技大会であり、今年は東京武偵校での開催であった。競技に参加する生徒はともかくとしても他の生徒にしてはちょっとした祭りのようなものであった。

 「高津君はどう?」

 「って言っても俺は…」

 不知火の問いに答えようとした時、校内放送が食堂全体に響いた。

 『あー2年A組強襲科高津悠斗、至急生徒指導室まで来るように』

 強襲科の教師の蘭豹がかったるさを隠さずに言う。

 「俺は音符とか全くわからないからパス」

 「それよりお前蘭豹に呼ばれてんぞ、何かやったか?」

 武藤が聞いてくる。

 「おい、悠斗。速く行った方がいいぞ蘭豹は気が短い」

 「少しくらい大丈夫だろ」

 そう言いカツ丼の残りに取り掛かる。

 『…2-A高津悠斗、可及的速やかに生徒指導室まで来るように。来ないと殺す』

 不知火、武藤、悠斗の間に沈黙が降りる。普通なら笑って流せるが蘭豹ならばやりかねない。そもそも武偵校自体が教育委員会の管轄下にあるのかも怪しい。

 「行ってくるわ」

 カツ丼の残りを流し込むとがらりと席を立った。

 「行ってらー」

 「気を付けてね高津君」

 二人の声援を背に歩き出す。キンジの方を見ると未だに痴話喧嘩を繰り広げている。

 

 

 

 

 「それで用は何なんですか?」

 盗聴対策が施された一室において金属製の机を隔て悠斗と蘭豹は向かい合っていた。

 「…まずはこれを見てみ」

 蘭豹が封を切り長封筒から3,4枚の書類を差し出す。顔写真と簡単な経歴が載せられた東京武偵校の生徒の経歴書だ。性別は男3人女1人。

 (……よく見たら全員卒業生か)

 卒業した年を見ると全員7,8年以上前の卒業生であった。彼らの詳しい経歴を呼んでいるとある共通点に気付いた。

 「…全員、諜報科の特殊組織潜入コースじゃないですか。この4人がどうかしたんですか」

 諜報科の中で「もぐら」と呼ばれる仕事がある。その内容は暴力団やフロント企業、宗教団体、果てはテロ組織にまで潜入捜査を行うというものである。警察が出来ない仕事をやる武偵の面目躍如である。

 「そうや、こいつらはウチを卒業した『もぐら』達や。全員ここ半年以内に殉職した」

 生徒指導室内の空気が張りつめた物になる。『もぐら』の任に着くのは諜報科の中でもエリートに値する生徒であり、身元がばれたら即、死が約束されることから情報は徹底的に秘匿される。

 「OBのもぐらが短期間の内に相次いで殉死ですか」

 「せや、それにこいつは強襲科でAランクを取ったもぐらや」

 蘭豹が一人の経歴書を引っ張り出し、示す。もぐらは例外的に他の学科からも任命される。強襲科から任命されたという事はそれだけ優秀という事であり、並大抵のことは乗り切れるはずだ。

 (……よっぽど準備万端で行ったのか)

「こいつは1か月前、埼玉の難民居住地区の空団地の一室で見つかった」

 そう言い数枚の写真を差し出した。パイプ椅子に男が有刺鉄線で縛り付けられ、腿の辺りに何十本もの釘を打ち込まれているのが見える。

 (…それにしても難民居住区か)

 現在の日本において難民居住区と名がつく場所は有数の危険地帯である。この国は十数年前より前政権がユーゴズラビア、アフリカ、中東、南米より難民の受け入れを始め、その結果難民が人口の3%を占めるとも言われている。

 最も悠斗が日本に来る前の話なのでよくは知らないのだが。だが難民の急激な受け入れにより住民との軋轢が生じ、結果的に治安の悪化へと突き進んでいった。

 (まぁ、それで飯が食えているから何も言う事はないが)

 「……つまりは情報が洩れてるって事ですよね」

 「そら間違いない、しかしどいつが漏らしてんのかわからん」

 蘭豹がぎしりとパイプ椅子に体重を預けた。

 「それで俺は何をやればいいので?」

 「もぐらの殺害に関与している奴が西流会の2次団体に所属しているのがわかった。こいつを直に吐かせて来い」

 「どんな手段でもよろしいので?」

 「情報が手に入れば何でもええで、詳細は後で送る」

 悠斗はそれを聞くと席を立ち戸口の所で一礼すると外に出た。

 (…今日は帰るか)

 悠斗はスポーツバックをぶら下げると昇降口向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 部屋に帰るとアリアとその他、通信科の生徒が部屋の中を動き回っている。

 「何やってんの?」

 「あ、悠斗さん。お邪魔してます」

 モニターを抱えた中空知が朗らかに言う。

 「そういえば前の事件、大丈夫でしたか?」

 「大丈夫も何も傷一つ負ってないから大丈夫だよ」

 取りあえず邪魔にならないよう部屋の端に中空知を誘導する。

 「…それでこれは何をやってるんだ?」

 「監視機材の設置よ、見てわからない?」

 何やら情報科の生徒を指揮していたアリアが口を挟んでくる。

 「それよりも悠斗は中空知と知り合いなの?」

 「去年、個人的に付き合いのある先生から中空知の指導を頼まれたんだよ」

 「指導?」

 アリアが怪訝な声を出す。

 「…そ、その強襲科の授業の成績が悪かったので」

 中空知がぼそぼそと言う。

 強襲科でなくとも一応は武偵という事なのでどんな科も一年の時は一定数の強襲科の科目を取る必要がある。しかし極端なことを言ってしまうとただ出れば単位がもらえると言われるほど甘い物である。それゆえ基本的に補修などは行われない。何より蘭豹が面倒臭がる。

 悠斗に指導を頼んだ教師、諜報科の和泉と言うのだがこの人は中空知と親戚に近い関係であると同時に昔、悠斗に超加速を教授した人物であった。和泉教諭は中空知の実技の成績に危機を覚え、悠斗に指導を頼んできたのであった。自分でやればいいのでは、と言ったのだがそれはできないと返された。

 「最初美咲の体力測定やって驚かされたよ。スクワット5回でダウンするとは思わなかった」

 「5回!?アンタよく武偵になれたわね」

 「俺はその時『よく今まで生きてこれたな』って言ったよ」

 長距離走は2㎞も行かないでバテ、腕立て伏せは3回にも届かなかった。

 「その節は大変お世話になりました」

 中空知がぺこりと頭を下げる。腰まである黒髪がばさりと広がる。

 「持つよ」

 悠斗が中空知の手からモニターをもぎ取った。中空知の筋力では中型のモニターを持つのも辛いらしく腕がぷるぷると震えていた。

 「あ、ありがとうございます」

 中空知がにへらと笑った。

 「それで何のための監視機材設置なんだよ?というか俺の部屋でやる気か?」

 「魔剣を捕まえるためよ!」

 アリアが自慢げに言い放った。悠斗と中空知は揃って首を傾げた。

 




 メタルギア要素を出すとタグに入れていたのですがだいぶ先になってしまいそうです。そちらの要素を楽しみにしている方がいたらすいません
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:10文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。