緋弾のアリア 強化人間物語   作:A4

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6 バスジャック発生

アリアとの模擬戦から数日後の朝。悠斗は寝坊をかまし急いで準備をしていたがどんなに急いでも一限に間に合わない事を悟るとあきらめがついた。

 (よく考えると単位取らなくてもいいんだった)

 学校との取り決めを思い出しゆっくり朝食を摂ってから出る事を決めると上着をソファにかけると座りテレビのリモコンを付けた。座るのに邪魔なS&Wモデル28を机の上に放り出すと台所に向かった。

 「…現在……バス…警察による…………港区方面へ……」

 テレビから音声が漏れ聞こえてくるのを背にしてお湯を沸かし戸棚を漁る。湧いたお湯をカップめんに注ぎ箸を取り居間に戻る。

 「おーすげぇ……ウチの生徒乗ってないか?」

 テレビを見るとバスジャックが起きているらしく報道ヘリがそのバスを追っかけている。気のせいか見覚えのある道である。報道が中継から局に戻りコメンテーターが外国系の犯罪組織もしくは反武偵団体などではないかと述べている。

 「犯行声明はなしか」

 武偵校の近くだから武偵がわんさか集まってくるだろう。麺を啜りつつニュースを見てるとスマホが振動し始めた。見ると着信だ。

 「武藤か…授業中に何やってんだ」

 時間はとうに一限が始まったあたりだ。取りあえず電話に出る。

 「悠斗か?今どこにいる!いや、それよりテレビ着けてくれ」

 「着けてる。ウチの生徒が乗ったバスがジャックされたヤツだろ」

 スピーカーをオンにしてカップ麺の残りを一気に啜る。今日は味覚の調子が悪いのかどうも薄味に感じる。

 「今俺が乗ってる」

 「お前いつもはもう少し早いだろ」

 脇のSIGP220を確認し、上着を羽織る。

 「何とかならないか?お前こういうの得意だろ」

 「行ってみないとわかんねぇよ。取りあえずすぐ行くわ……あっ!」

 そこでふと気づいた。

 「何だ?」

 「俺の車、廃車になってた」

 武偵校から車を回してもらうしかないか。

 「尞の前で待っててくれ!妹行かせる、詳しい話はそいつから聞いてくれ」

 「わかった」

 そう答えると居間を出た。

 

 

 部屋の一つに入ると防弾ジャケットを放り出し脇と尻のホルスターを外し椅子の上に置く。クローゼットからタクティカルベストと一体化したNIJ規格Ⅱ型のボディアーマーを取り出し急いで着込む。本来ならシャツやパンツも変えたいが急いでいるので省略する。 次に鍵付きの金属製のクロークからステアーAUGを取り出し部屋の中にある作業机に持っていき、工具類を除けて置く。

 「車の中で使用だから…」

 スタンダードバレルを取り外しコマンド・パラ用の350㎜ショートバレルに換装するとフォアグリップを取り外しM203を取り付けた。

 改造を終えると別の棚を漁りビニールの包装に包まれた5.45㎜弾の紙箱とステアーの弾倉を取り出すと机の上に広げた。

 「やっぱローダー買おう。面倒くさい」

 ビニールを破き、紙箱を開け弾を弾倉に詰めていく。普段から弾を弾倉に詰めておくと弾を押し出すバネがだれてしまうので詰めて置いてそのままという事が出来るのがつらい所だ。

 弾倉5つ分を詰め終えると弾薬ボックスからM203用の催涙弾を3発、念のため通常の榴弾を3発戦術ベストに取り付ける。

 サブウェポンに買ったばかりのスフィンクスAT2000を持って行こうとは思ったが表から長いクラクション音が聞こえる。武藤の言っていた迎えが来たのだろう、9㎜拳銃を腿のホルスターに叩き込みケブラー製のヘルメットを抱えるとブーツを履き外に出た。

 

 一階に降りるとランドクルーザーが待機している。ドアには東京武偵校のエンブレムが描かれているので間違いないだろう。

 「遅い!早く乗らないと轢くッ……え?」

 ドアを開けるなり苛立った声が運転席から聞こえるが尻すぼみになる。

 「いいからやってくれ。あと状況の説明よろしく」

 乗り込みドアを閉める。

 「……」

 「発進!」

 車を発進させず状況の説明もしようとしない運転手のシートを後ろから蹴っ飛ばす。兄貴がヤバいの何やってんだ。

 「人数は?」

 「は、はい。バス内に犯人はいないとの事です。一定速度を下回ると爆弾が爆発する…だそうです」

 取ってつけたように敬語に直す。悠斗はステアーをスリングで固定し拳銃の槓桿を操作し初弾を装填し安全装置を掛けるとまたホルスターに戻した。

 「爆弾は専門外なのによぉ。人間専門だってのに」

 ふとフロントミラー越しに運転手を見ると目があった、見覚えのある顔であった。というより始業式の日、体育館の裏で助けた女子生徒である。

 「…あー大丈夫だった?」

 確か着衣の乱れなどはそこまでひどくなかたし、高橋先生も暴行を受けた形跡はないと言っていた。

 「ひゃ、ひゃい!おかげさまでッ!」

 モデル然とした顔が真っ赤に染まっている。凛とした顔とのギャップに思わず見惚れる。

 「それは何より。それにしても武藤の妹がこんな美人って初めて知ったよ。アイツこんな重要な事を話さんとは実にけしからんな」

 「び、美人ですか…」

 後ろを向きつつ答える。それにも関わらず運転に乱れが見えない。

 「あの、先輩は…」

 そう武藤妹が言いかけた時仕事用の衛星携帯が鳴った。

 「はい、高津です」

 「私だ」

 アルス・セキュリティー3課課長の高津宗一だった。急な仕事が入ったのだろうか。

 「今の場所…いや現在の状況を説明しろ」

 「現在、武偵校バスジャック事件鎮圧の為に移動中です」

 電話の向こうで紙の擦れる音がする。

 「20数分前、芝浦埠頭周辺の道路で所轄が不審車両を確保した」

 「…不審車両とは?」

 「無人の車両だ。オートパイロットシステムにより動いていた」

 それを聞き疑問が浮かぶ。数年前から導入されたオートパイロットシステムは誰か人が乗っていなければ使えなかったはずだ。

 「オートパイロットの安全装置は無効化されていた。問題は後部座席に軽機関銃が搭載されている」

 「…制御はどうやって」

 「助手席に置かれているPCと連動している。熱源に反応して自動射撃を行う」

 移動式砲塔が出てくるんならもっと大口径の奴を持ってくるんだった。

 「PCの制御プログラムによると射撃はジャックされたバスの半径1㎞以内に侵入すると作動するとの事だ」

 「防弾は?」

 「その車両には施されてはいなかった。以上の情報を生かせ、幸運を祈る」

 「…気を付けます」

 仕事用の衛星電話を懐にしまう。

 (心配してくれてるのかね)

 心中で呟く。課長に引き取られる、もとい拾われてから9年程になるが未だに距離感というものを測りかねている。

 「バスとの距離はどれくらい?」

 携帯をしまうと武藤妹に聞く。

 「はい……およそ1.5㎞です」

 カーナビで彼我の距離を確認してるのか返事が少し遅れる。

 「それじゃ少し聞いてくれ」

 今宗一から聞いた情報を手短に伝えた。

 

 

 「だから俺は3列目で不審車の警戒をやる。運転は任せる」

 「わかりました。あ、あと武偵校の救出チームから無線の周波数が伝えられました」

 それを聞きながら3列目の座席に向かう。3列目の座席は後ろ向きに設置されており死角の後部を効率よく警戒することが出来た。

 「ああ、来た」

 座席に着くなり不審車が来るのを確認しリアウインドを四分の一まで下げる。1,5倍の低倍率オプティカルスコープ越しに運転席を狙うが誰も見当たらず、運転もオートパイロット特有の動きが見える。車種は日産のセレナ。

 「先輩!バスとの距離が1㎞を切りました!」

 あの車が情報の通りなら撃ってくるはずだ。そう思った時銃声が響くと同時にセレナのフロントガラスが割れる。それと同時にステアーのトリガーを半分まで押し込むセミオートで応戦する。ステアーの特徴としては射撃モードを切り替えるセレクタースィッチが存在しておらずトリガーを途中まで引くとセミオート、最後まで引くとフルオートと切り替わる。

 今回の目的は不審車の射撃システムもしくは車そのものを止める事だ。警察の封鎖が順調だったおかげか幸いにも一般車は見当たらない。

 武藤妹の巧みな運転で射角に入らない絶妙なポイントを取る事ができ、悠斗は3,4発区切りにエンジンタンク部分に5.56㎜弾を叩き込み不審車を炎上させた。

 (今のAAM52か?軽機なんてどこから持ってきたんだよ!)

 スコープ越しに見えた棒のようなフォルムからそんな事を思う。1952年にフランスの制式採用のオートマチック小火器52型として採用され今でも現役で運用されている。古いとは言えど7.5×55弾を発射する軽機関銃であり簡単に手にはいるようなものではない。

 (増援が欲しい…)

 今ので弾倉を一個使い切った。残りの弾倉は4個、少々心もとない。そんな事を考えていると後ろから規定の速度を超えた車が複数台やってくる。

 (ラフェスタ、スペイド……4台か。タイヤ、エンジン狙いだ)

 彼我の距離は約200メートル、オートパイロットシステムを利用しているならエンジン異常、パンクといった事態に対し停止といったアクションを取るはずだ。3台の車が放った銃弾が辺りに着弾する中低倍率スコープを覗き込みバースト射撃を放った。

 

 

 「…まだ来るかよ」

 タイヤを撃ち抜かれた最後の車が制御を崩し電柱に衝突した。視線の先には新手の二両が見えた。スポーツカーがワゴンの陰に隠れながら来ている。

 (さっさとこいよノロマ!)

 今だ来ない武偵校の増援に毒づきながらもワゴン車に向けて弾丸を叩き込む。

 「防弾?」

 撃てど撃てども速度が緩まない、タイヤも防弾なのか効果が見当たらない。そして奇妙なのが撃ってこないという事と右の後部座席ドアが開きっぱなしである。弾倉を換えている間にワゴン車が一気に速度を上げランドクルーザーに横付けしてくる。

 「…掴まってくださいッ!」

 運転席から悲鳴のような声が聞こえると同時に急ブレーキがかかりランドクルーザーが急後退する。それと同時に先ほどまでいた所に猛射撃が加えられる。

 (マジかよッ!)

 一瞬だけであったが座席が取り払われた中に鎮座していたのはFNハースタモデルMAGヘリ搭載型。

 「もうちょい横出ろ!」

 ランドクルーザーは巧みに射撃を躱しワゴン車の後ろに着いていた。

 「でも撃たれます!」

 確かに危険ではあるがワゴン車の陰にいたスポーツカーが先に行ったのが気になる。

 (あの動きは事前にプログラムされたものじゃない、リモート操作のヤツだ)

 「任せろ」

 通常の武偵の装備ならば前の装甲車と化したワゴン車を破壊することはできないが虎の子の40㎜榴弾がある。

 「行きますよ!」

 それと同時にランドクルーザーがワゴン車の左後方に出る。2列目の座席に移動しドアを開け放しステアー下部のM203を構えていた悠斗がランチャーのトリガーの引き金を引いた。FNMAGがこちらに反応し銃口を向けるがその前に後部ドアから榴弾が飛び込み炸裂した。一拍置いて弾薬やガソリンに誘爆したのか理想的な爆発が発生した。

 「飛ばしてくれ!」

 ドアを閉めるなり車が急加速しスポーツカーを追った。

 

 

 着いた時には既にスポーツカーに搭載されている短機関銃がバスに向けて銃撃を始めていた。手すりにつかまり身を乗り出し榴弾を発射した。

 「よっしゃ!」

 スポーツカーの座席部分が吹っ飛ぶのを見たのを確認した時無線機の電源がオフになっている事に気付いた。

 (道理で静かだったわけだ)

 『アリア!おい、アリア!』

 電源を入れた瞬間キンジの大音声が聞こえる。

 『―私は一発の銃弾―』

 狙撃科Sランクのレキの声だ。銃声が一発響きバスの下から何かが飛び出し東京湾に落下する。

 「スゲェな」

 東京湾から轟音と共に大きな水柱が上がる。それでレキが何をやってのかが分かった。上空のヘリからの跳弾でバスの下の爆弾を撃ち飛ばした。

 

 車が停車したバスの前に回る。バスの運転席に見覚えのある顔がのぞいていた。

 ケブラー製のヘルメットを脱ぎ捨て運転席の武藤に向かい軽く手を上げて挨拶する。

 「…そういえば名前は」

 車内の武藤妹に問いかける。そういえば名前を知らなかった。

 「…貴希。武藤貴希です、先輩」

 

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