魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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第9話 神速の女王VS鉄壁の女王

マリアとの会話が弾んでしまい、一樹達は寝るのが遅くなってしまった。幸いなことに今日は土曜日、学校の授業はない。しかし、ミールは風紀委員会の仕事で昼から学校に行かなければならなく、一樹は10時頃に起きて、御飯の支度をしなければならない。一樹はパジャマのままキッチンに向かい、料理を始める。

ミールはまだ起きてない。そもそも、ミールは一樹が起こしにいかないと起きない。昨日は寝るのが遅かったので、これから仕事をしなければならないミールのためにギリギリまで寝かせておくことにする。

一樹は手慣れた手つきで朝御飯を作り上げていく。いや、時間的にいえば朝御飯とは言えないかもしれない。出来上がった料理を机の上に並べ終え、時計に目をやる。

────10時40分か、確か生徒会室に12時半までに行かなければならないはず、そろそろ起こすか。

一樹はミールを起こしに2階へと上がり、ミールの部屋へと入る。

そこには天井の付いた大きなベットがあり、その上にまるで人形のように寝ているミールの姿があった。一樹はベットの端に腰を掛け、ミールの頭を撫でる。

「ミール、起きなさい」

優しい声をかけながら、軽く肩を揺さぶる。

すると、ミールはうっすらと目を開けた。

「昼からお仕事だろ?」

「うん」

ミールは眠そうな声で返事をする。

「ご飯できてるから、着替えたら下に来なさい」

「うん」

ミールはベットの上で起き上がり、眠い目を擦りながら答える。

「俺も着替えてくるよ」

「うん」

一樹がミールの部屋を出ようとしたとき、

「一樹、おはよう」

ミールが思い出したように言う。

「おはよう

もう、昼近いけどね」

と一樹は笑ってミールの部屋を出た。

 

 

 ご飯を食べ終えた二人は12時20分には学校に着いた。

「お仕事頑張っておいで」

「うん、一樹も頑張って」

二人は学校に着いて早々に別れた。

ミールは生徒会室。

一樹は地下資料室。

それぞれのやるべきことをやりに。

一樹は地下資料室に入った瞬間に違和感を覚えた。

地下資料室は真ん中に机と椅子があり、その周りを囲むようにして本棚並べている。

ここ2ヶ月の間は一樹以外の出入りの痕跡はなかった。しかし、今日は違う。

一樹の絶対的な記憶力によって覚えられている昨日の資料室とは違った。

椅子の向き、本棚にある本の位置、そして何よりこの空気(・ ・)

魔導書を見つけた次の日に誰かが地下資料室に入ってきたのだ。

────偶然か!?必然か!?

その考えはすぐに一樹の頭をよぎる。

が、今はそんなことを考えている暇はなかった。一樹は普段通りに振る舞うように気を付けながら、机の上に鞄を起き、本を探し始める。ふらふら歩きながら、一冊一冊本を取る。魔導書のことは一切考えずに。魔導書の事を気にしすぎると、そこを避けたり、目が行ってしまったりする。だからといってわざと魔導書の近くに行くのも変に見えてしまう。こういう時は考えないようにする。他の事や素数でも数えとけばなんとかなる。

適当に選んだ本を持って席に着き、読み始める。そして、読んでいる振りをしながら別のことに意識を集中する。通常の目とは違う眼を使って資料室の隅々まで見て、盗聴機、盗撮機などの類いがないかを探しているのだ。

案の定、盗撮機があった。

ここでは電波を飛ばしても外には届かないから、録画タイプなのだろう、周りには有線の類いは見当たらない。しかも発生する電磁波がかなり低くして、感知機に反応しない盗撮機。普通では手に入らない。それはともかく、録画タイプということは、中身を確認するにはここに取りに来なければ行けない。ならば、その場面を盗撮仕返してやろう。一樹は不自然にならない程度に体で視角を作り、ポケットから呪符を取り出す。こんな時のために常にいれといてある魔法。

古式魔法『写し鏡』

これは有名な魔法(古式魔法の世界だけだが)で、本来なら鏡を使う魔法。鏡に写った映像を保存し、好きな時に鏡に写すことができる。

今回は鏡ではなく呪符を使う。

呪符を使う方法は現代魔法学により、『写し鏡』の理論が解明されてから可能になった。それまでは鏡しか使えず、一部の人間にしか使えなかった。現代魔法は少なからず古式魔法にも影響を与えていたのだ。解明されても保存する媒体がなければならないのと分かったので、現代魔法ではあまり使われることはない。

CADを使わずに発動。しかも、そのカメラに魔法行使をしていると分からないようにするのは大変だった。30分ゆっくり時間をかけ、完成させた。カメラがなければ5分ぐらいでできるはずの魔法だったのだが、バレないようにやるような魔法じゃないなと一樹は思った。完成させた呪符を机の下に張って完了。一樹は本を読み始める。

 

 呪符を完成させてから30分ぐらいたった頃だろうか?カメラの前で本を読むのは大変不本意だったが、すぐに出ていってしまえば逆に怪しまれると思い、しぶしぶ本を読んでいた時だった。入口付近に人の気配がする。最初はカメラを取り付けた奴かと思ったが、すぐに違うと分かった。

「かずき~どこ~?」

という紗香の声が聞こえたからだ。

「ここだよ」

「あ!いたいた!さっきミルちゃんにあってさー。一樹がここにいるって聞いて・・・それなに?」

紗香は机の上を指差した。

実際に机の裏にある呪符の事を差したのだろう。

一瞬びっくりした一樹だったが、彼女の目を知っているので不思議には思わなかった。

「本だよ」

一樹は発した言葉に別の意味(・ ・)を付けて答えた。

紗香は驚いた顔をしたが、すぐに理解し、

「ふーん、勉強熱心なのね」

と答えた。

「そうでもないさ

で、なんか用があったんだろ?」

「魔法の練習に付き合って欲しくて」

「分かった。いいよ」

一樹は席を立ち、本を片付ける。

「手伝おうか?」

「ああ、ありがとう」

一樹と紗香は本を手分けして片付けた。

 

 

 「で?さっきの何だったの?あんな回りくどい言い方して」

二人が資料室を出てしばらくしてから紗香は一樹に聞いた。しばらく時間をおいたのは周りに人がいないことを顔も動かさずに確認したからだろう。

「さすがだな、あの意味を理解できたなんて。かなりすごい目だ」

「やっぱり気づいてたんだ、薄々は気づいてたけど、言霊のことまで分かったなんて、すごいビックリしたわ」

言霊とは人が発した言葉に宿る霊子(プシオン)のこと。その量はかなり微量で魔法師はおろか、機械でも感知されていないほどの量である。それなのにその存在が現代に定義されている理由は『霊子放射光過敏症』の人が言霊を確認され、ちゃんとした実験が行われ、言霊は存在すると分かったのだ。

「『霊子放射光過敏症』は別に珍しい病気じゃないだろ?」

「それに気付くことがすごいのよ!私眼鏡掛けてないし」

霊子放射光過敏症とは、意識して霊子放射光を見えないようにすることができない知覚制御不完全症である。普通は眼鏡をかけなければ、情緒不安定になったり、失明の恐れまである。現代では視力は治療で回復するから、ファッションでもない限り、霊子放射光過敏症であることが高いのだ。

だが、紗香はしていない、この症状を操作できるようになったからだ。それは幼少期に地獄のような修行を積んでいなければ、この年齢でこの症状は治らない。

一樹は紗香が言霊が見えることが分かっていたので、「本だよ」というセリフに『後で話す』と意味を込めたのだ。普通はこんなことできるわけがないが、

「ねえ、もしかして一樹も?」

「そうだよ」

「訓練大変じゃなかった?」

「ああ、泣きながらやってたよ」

もし、自分の中の霊子(プシオン)の扱う練習をしていたら、可能なのだ。霊子(プシオン)を扱う練習こそが霊子放射光過敏症を治すただひとつの治療法。

「まー俺は紗香みたいに言霊まで感知できないけどな。分かるのはオーラによる感情の違いだ」

オーラ、現代の科学では説明できていない人がまとう霊子(プシオン)のこと、霊子放射光過敏症の人は大概分かるが、一樹の場合はそれがかなり詳しく見える。

「私は苦手、複雑でわかんないし

そうそう、そんなことよりさっきのなんだったの?」

魔法には微量の霊子(プシオン)がつきまとう。それもそうだ、魔法は道具ではなく意思によって引き出されるもの。それに人の感情のが無いわけが無い。だから霊子放射光過敏症を克服した人にどんな巧妙に隠された魔法だとしても、視角に入ってしまえば見つかってしまう。

「録画タイプの盗撮機が設置されてた。だからどんな奴が取りに来るか確認したくてね」

「遠視の魔法?」

「まーそんなとこ」

『写し鏡』は遠視タイプではないが、説明が面倒なので省く。

「あともう一つ同じような魔法が地下資料室にあるから近づかないといてほしい」

「分かったわ」

霊子放射光過敏症は微量な霊子(プシオン)が分かるだけで、魔法の判別まで分かる物じゃない。適当に誤魔化して頼んだ。

「ってことは一樹には私の目を誤魔化せるってことか、あんなに言霊を操作できるんなら」

「そんなに頻繁に使用しないさ、疲れるしね。しかも、生徒会室での言葉だって嘘だと分かったんだろ?」

紗香が言霊が見えると薄々勘づいていたが、生徒会室でのあの態度で核心へと変わった。

「あ!そっかオーラで分かるんだ?じゃあやっぱり、トラース・シルバーの正体知ってるんでしょ!?教えて!」

紗香は目を輝かせて聞いてくる。

それに一樹は

「内緒」

と指を口に置いて答える。

「ケチー!!」

と紗香の言葉を受け流しながら、第七演習場に向かった。

 

 

 演習場は全部で10室。その内6つが模擬戦に解放されており、4つは魔法の練習に解放されている。

すでに生徒が何人か待っていた。全員一年生みたいだ。一人、もしくは一グループの所要時間は40分。40分たったら控えている生徒に代わらなければならい。

そこにいた一年生全員は一樹の右胸にあるプレートを見ている。すでに模擬戦の動画を見ていたのか、昨日みたいに偽物だと言う奴はいない。

きっと挑戦したいのだろうが、あの動画を見て挑戦する者はいなかった。

「紗香はなんで今日ここに来たんだ?練習のためだけじゃないだろ?」「うん、これから挑戦するから体をならしておきたくて」

「ランキングは?」

「15」

「もっと上でもよかったんじゃないか?」

「一樹は私を過大評価しすぎよ、買ってくれるのは嬉しいけど、今の私はそこまで強くない」

「そうか?まあお前がそういうならいいけどな

組み手ぐらいなら付き合うぞ?」

「実は頼もうと思ってたの」

紗香は笑って答えた。

二人は端末で演習場の予約をし、紗香は更衣室に着替えに行き、一樹は準備体操をして待っていた。

 

 

 「はぁー!!疲れた!!」

紗香は体操服姿でだらしなく控え室のソファーに横になった。その隣で一樹はゼーゼーいいながら座っている。

「それはこっちのセリフだ

魔法抜きであの動き、反則だろ?」

「それでも一樹、全部受け止めるか避けるかしてたじゃん」

二人の間で魔法を使わずに体術だけで組み手ということになった。一樹は幼少期の頃から武術家の達人と忍術使いの二人から体術を教わっている。そんな一樹でさえ、紗香とやるのはキツかった。その上、もし本来の力が出せる状況であれば負けていたかもしれない、と思った。

「私が一本も取れなかった相手って姉さんか父さんぐらいだよ」

「本当なら、紗香が勝ってただろう?」

「あ?分かった?」

「千里って言えば誰でも分かるだろう」

千里は槍術と魔法を合わせて使うことでで有名だった。剣術と魔法を合わせて使うので有名なのは千葉家。警察か軍に入るならどちらかに入門しろと言われている。

しかし、実際は千葉家の方が入門希望者が多い。それは剣の方が魔法に適しているからで、どっちの家が強いかなんて一概には言えない。

「一応自分専用の槍持ってるんだけど、学校って武装一体型のCAD

の使用を許可してないじゃん?だからって言ったら言い訳だけど、学校じゃ本気出せないのよね」

「体術がここまでのレベルなんてな、槍を持ったらどれだけ強くなるんだよ」

「それは違うよ一樹。

武器は己の体の一部として扱い、手足のように動かせるようになったら一人前というのが家の家訓で、体術が出来ないやつは槍を持っても強くないって考えてるから自分の槍を与えられるのと同時に体術の訓練も始められるの

それを考えたら体術より槍術の方が強いっていうのは未熟な証拠だよ」

「いいんじゃないのか?捕虜にならない限り、武器なくして戦闘を行うことないしな」

「そうね、得物をなくしたら一目散に逃げるわ」

と笑って答えた。

「これから挑戦するのに体は大丈夫か?」

「まーこれぐらいなら。

後、一時間休めるから」

「そうか

飲み物でも買って来てやろうか?」

「おごり!?」

「ああ、その代わり模擬戦頑張れよ?」

「ありがとー!!めちゃめちゃ頑張っちゃうよ!!」

一樹がソファーから立ち、外の自動販売機に行こうとしたとき

「ちょっと待ってくれる?」

と声ををかけられた。

そこには一年生の女子が険しい目つきで立っていた。

胸には赤プレート1番がついている。

「『鉄壁の女王(クイーン)』・・・」

紗香がそう呟く。

彼女の名前は来栖 澪。

ミールと共に『双璧の女王(クイーン)』と呼ばれる片割れ。

『鉄壁の女王(クイーン)』それは強い干渉力による領域干渉により相手に魔法を発動させないことからつけられた異名だった。

「なんでしょうか?」

「あなたに挑戦するわ」

少女は即答する。

「今は疲れているから、後でもいいか?」

「いいわよ、いくらでも待ってあげる」

「そうか、それはありがたいな

じゃあ、紗香と同じ3時半からでどうだ?」

「いいわ、その時間にしましょう」

一樹は何かに気付いたように後ろを向き、演習場の出入口に目をやる。

それと同時に辺りが暗くなった。

そこにはミールが立っている。そして、この現象もミールが起こしているのだろう。さすがに目の前でここまでのはっきりとした魔法を行使されたら気が付かない者はいなかった。

ミールは一歩一歩澪に近づき、一樹の盾となるように立ちはだかる。

「私が、あなたに挑戦する。私が勝ったら兄に挑戦するな」

それは提案というより命令。

「いままで1度も挑戦してこなかったあなたが挑戦してくるなんて、どういう風の吹きまわしかしら?それともそんなに私とあなたのお兄さんが戦うのが嫌なの?やっぱりあの先輩との試合はイカサマだったのね。それに、」

「いいかげんにしなさい」

ミールが澪の言葉を遮る。

そして、その言葉と同時にミールを中心に空間が歪む。

陽炎のようにゆらゆらと揺らめき、まるで異次元に放り込まれたような錯覚を起こす。これはミールがかなりの激怒を感じた時に起きる現象で、周りの光の屈折率と振動数を不規則的に変化させることにより起きる。CADなしでこれほどの現象を起こすにはかなりの干渉力を要求される。ミールの場合は光波・光学魔法に対してのみかなりの干渉力を有するが、今この場においてそんなことは関係ない。目の前でここまでの干渉力を見せつけられては恐怖を感じない者なんて誰一人といなかった。

特に目の前で立っている澪はなおさらだった。

「あなた・・・」

澪はうめき声にも似た声で呟く。

「ミル、落ち着きなさい」

後ろに立っている一樹がミールを宥める。すると、空間の歪みは消えてゆき、元の状態に戻った。

「あなた程度の人間が一樹に、兄に挑戦することがおこがましい。

あなた程度ならば、兄でなくとも私で十分だ。

そして何より、あなたは私の兄を侮辱した。それだけであなたを叩きのめすには十分の理由だ」

ミールがこんなに喋るのも珍しいが、ここまで怒ることも珍しいだろう。現に隣にいる紗香は驚きで目を丸くしている。

「挑戦だ、来栖。あなたのその態度を叩きなをしてやる」

ミールの目には明らかな殺気。このままやってしまったら殺してまうんじゃないかと、周りにいる生徒は思っただろう。澪もまた同じ風に感じたはずだ。しかし、自分よりランキングの低い人間にここまで言われては引き下がることもできないだろう。

「いいわ、やりましょう」

澪もありったけの殺気を込めて答える。

そして、30分後に『双璧の女王《クイーン》』と呼ばれている二人の試合が始まった。

 

 

 場所は第二演習場。

先に予約が入っていたようだが、『双璧の女王(クイーン)』の対決だと聞いて予約が取り消されたらしい。

「ルールは以上です。

立会人は私、生徒会会計、山中恵と」

「風紀委員長、弥生星華です」

本当は楓が立ち会いたいと言っていたが、どうしても外せない用事があったらしく恵になった。風紀委員からは一樹の時と同じ星華が立会人となった。

他には一樹と紗香が一緒にいる。他の観戦者は2階の控え室からガラス越しで見ている。

「さて、どうのるのかな?やっぱりミルちゃん?」

紗香はこの状況を楽しんでるかのように一樹に聞いた。

「どうだろうね、ミルがもう少し落ち着いてれば難しい試合じゃないと思う。あいつはまだ自分の感情制御ができていない。紙一重の戦闘において、勝敗を分けるのは心だからな」

「その考えについては異論はないよ。でも、この年で感情の制御なんて言われてもね。今の私たちの年頃なんて感情が具現化したよな感じだし」

「確かにそうだな」

口にはしなかったが、一樹の見立ては通常ならば7:3の割合でミールが勝つと踏んでいる。しかし、今は一樹のことで頭に血がのぼっていて、そんな状況だと今回の模擬戦は五分五分だろうと思っている。

決定的な問題は干渉力の強さ。

ミールは光波・光学魔法に対してのみ絶対的な干渉力を持つが、それ以外の魔法の干渉力はそれほど強くない。光波・光学魔法以外は全て澪の干渉力が上回っている。いくら神速ともいえるスピードで魔法を発動したとしても、発動できなければ意味がない。光波・光学魔法に攻撃的な魔法は少なく、あったとしても、殺傷能力が強すぎて使えないものばかり。今回は状況が悪すぎる。一樹がアドバイスを与えれば、勝てるかも知れないが、今回は何もアドバイスはしなかった。この模擬戦は勝っても負けてもミールにいい影響を与えると思ったからだ。

 

 ミールと澪が所定の位置につき、合図を待つ。

「開始!!」

星華の合図と共にミールが腕輪形態の汎用型CADを起動し、キーを入力する。あっという間に魔法式を構築し、飛ばす。魔法は振動系魔法。衝撃波で澪を吹き飛ばすつもりだろう。

光波・光学魔法は振動系魔法に分類される。故にこの魔法はミールにとって得意な方な魔法だが、やはり空気に対する干渉力は低かった。合図と同時に澪が展開した領域干渉によって無効化される。

ミールは無効化されると分かると、すぐさま次の魔法を構築する。

しかし、その前に澪の魔法が飛んでくる。

ミールには魔法式を砕く想子(サイオン)量も、全ての魔法を無効化できるよな干渉力も持ち合わせてない。ミールは魔法を防ぐ方法を一切持っていないのだ。

通常のやり方であればの話だが。

ミールにはミールだけしか使えない対抗魔法を持つ。

ミールが領域干渉を展開すると、その領域内の空間が歪む。

別に魔法を使ったわけではなく、ただの干渉力だけで光の屈折が起きているのだ。

その中に魔法式が飛び込んでくる。普通なら光に対して以外の魔法はこの領域で無効化できないはずだが、澪の魔法式は萎むようにして消えた。

澪はありえない物を見たような顔をしたが、すぐに飛んできたミールの魔法を無効化する。その後すぐに、澪は魔法を構築し、ミールに飛ばす。

ミールもまた、魔法式を萎ませ、無効化し、魔法を飛ばす。

そんな攻防がしばらく続く。

5分はそんな攻防が続いたが、ミールが先に状況を変える。

ミールが魔法式を構築し始める。澪はさっきと同じように身構えるが、構築された魔法は飛んでこず、ミールの元で発動する。

すると、ミールの周りの空間の歪みが消え、ミールも消えた。

澪は焦って周りを見回す。

「面白い使い方ね」

星華はこの魔法の正体がすぐに分かったらしく、そう呟く。

しかし、この魔法の正体が分からない澪は焦ってしまい、領域干渉の干渉力が緩くなってしまった。

その時、ミールが姿を表した。

澪の目の前に。

澪は小さな悲鳴をあげる。

ミールはすでに魔法式の構築は完了し、手で作った球体の中で魔法が発動している。

魔法は単純な収束系魔法。空気を圧縮し、ボール状の物にしている。

澪は慌てて領域干渉を構築するが、魔法は無効化されなかった。

魔法は物理的な距離に左右されないが、やはり近い方が意識が強くなり、魔法に対する干渉力は強くなる。しかも今のように手で魔法式を囲んでいたらなおさらだ。この状況ならミールの干渉力が弱くても、ほぼ互角の状態になる。

ミールは手を放し、すぐ後ろに飛ぶ。ミールとの距離が遠くなった魔法式は干渉力下がり、澪の領域干渉により無効化される。しかし、集められた空気はなくなるわけじゃない。物理法則に従い、圧縮された空気は解放される。その空気の爆発により、澪は吹き飛ばされ、意識を失った。




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