魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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第10話 蠢く影

 「勝者、藤宮ミール!!」

星華の宣言と共に2階から歓声が起こる。

「それにしても、ギリギリの戦いだったわね」

と隣で紗香が呟く。確かにかなりギリギリの戦いであった。

「ああ、もう少し相手の干渉力が強かったら、十分な距離をとれず、空気の爆発に巻き込まれてただろうな」

一樹は冷静に先模擬戦を分析する。

「もし、来栖が少しでも実践経験を積んでたら、あそこまで焦らなかったんじゃない?」

「あそこまでの干渉力を持ちながら、未だ一年生のランキングにいるのは経験値の差だろう。一年生と二年生の経験値の差は大きいからな。」

ミールは演習場のまん中でぐったりとして立っている。精神的に疲れたのだろう。相手の領域干渉内で魔法を維持するのに相当の集中力を要したのだろう。そんなミールを一樹は迎えにいった。

「お疲れさま、ミル」

ミールは近づいてきた一樹の手を握り、体を預けた。

「よく頑張ったね」

一樹はミールの手を引き、紗香や星華がいるところに連れていく。

「・・・」

ミールは下を向きながら何も言わない。

何かに対して後悔してるようだ。

「自分でも自覚してるんだな。今回は感情に翻弄されすぎだ。

いいか、ミル。確かに感情は力を引き出し、その力を強くする。でも感情で魔法を使ってはいけない。感情をバネにして自分が魔法を使うんだ。そこが現代魔法にはない古式魔法の強みの一つなんだから」

コクンとミールは頷く。一樹はそれ以上のことは言わなかった。

 

「ミルちゃん!おめでとう!」

紗香はミールを祝いの言葉で迎いいれた。

「ありがとう、紗香」

紗香はミールに抱きつく。ミールは相変わらず無表情だったが、どこか嬉しそうに見える。

一樹は澪の方を見ると、恵に体を支えられ、澪は上半身を起こしていた。

「うん、澪さんの方は心配無さそうね」

星華も澪の方を見て、言う。

澪は恵の肩を借りて、立ち上がり、こちらに来る。

「お疲れさま。二人とも大変いい試合でした」

星華はにっこりと笑って言った。

「恵先輩ありがとうございました」

澪は肩を借りていた恵にお礼を言って、自分の足で歩きミールの前に立つ。

その時にはすでに紗香は離れていて、ミールは澪の方を向いている。

「私の負けよ、藤宮ミール」

そう言って、胸からプレートを取り、ミールに差し出す。

ミールも胸からプレートを取り、澪に差し出す。

お互いにプレートを受けとり、胸につける。

『双璧の女王(クイーン)』と呼ばれる二人が初めてランキング変わった瞬間だった。

澪は背を向けて演習場の外へ出ようとした。

「さっき、ミルはああ言ってたが、別に気にしなくてもいいぞ?俺の立場では挑戦を断れないしな」

一樹は澪にそう言った。

「また今度にすわ。先に倒すべき相手ができたから

藤宮ミール。今度は私が挑戦するわ、その時は私が勝つ」

「わかった。でも、その時も私が勝つけど」

澪はミールの言葉を聞き終えると、再び背を向けて、歩き始める。

───いいライバルができたな

一樹はそう心で呟く。

ミールは強すぎる魔法を持つ。それ故、他の魔法が疎かになってしまう。さまざまな制約が付いた試合だが、ミールに少なからず、いい影響を与えるはずだと一樹は考えた。

「さて、ミールちゃんはどうする?疲れてるみたいだしこのまま帰ってもいいわよ?」

ミールは首を横に振る。

「巡回まだ途中。事務作業も残ってる」

「そう?無理はしないでね?」

「今回は自分にも責任がありますし、簡単な事務作業なら自分が手伝いますよ?」

「え!いいの!?じゃあお願いしていいかしら?」

星華は嬉しそうに答える。よっぽど仕事がたまっているのだろう。

「紗香はどうするんだ?」

「うーん、どうしよっかなー?今日はもう挑戦しなくてもいいかな?とりあえず、挑戦相手と話して決める。

中止になったら暇になっちゃうから、一樹の所に行っていい?」

「俺に聞くなよ」

紗香は星華の方を見て、

「いいですか?」

と聞く。

「手伝ってくれるなら大丈夫よ?」

「手伝います!」

「じゃあお願いするわ。少しでも人手が多い方が早く終わりますし」

「ありがとうございます!」

よっぽど生徒会室に行きたかったのだろう。紗香はすごく喜んでいた。

 

 

 一樹が生徒会室に来てから20分ぐらいたった時チャイムが鳴った。

紗香が来たのだろう。星華は隣に置いてある卓上型の情報端末を覗き、紗香だと確認すると、電子ロックを解錠し、招き入れる。

これで生徒会室には星華、恵、一樹、紗香となった。

楓は所用、副会長と志帆と澪は非番らしい。

「失礼します」

紗香は最低限の礼を尽くし、生徒会室へ入った。

「へ~こんなになってるんだ」

とキョロキョロしながら一樹の近くに来る。

「結局、中止になったのか?」

一樹は紗香に尋ねる。

「うん、会ったときにはもう予定の時間が過ぎちゃってたし、後にも予約があったから、中止になった」

「なんか悪いことをしたな」

「うんん、ミルちゃんの模擬戦見れたんだし、よかったよ」

「ありがとな

これ、ホチキスで止めてくれないか?」

一樹は紙の束とホチキスを渡す。

「紙なんて珍しいね」

そう言いながら一樹の隣の席に座り、受けとる。

現代では書類などもデータ化することが多く、紙を使う事は少なくなっている。

「この学校では仮想デバイスの使用を禁止してるからな。こういう書類は紙の方が保管しやすいんだろう」

「ふーん、そうなんだ」

紗香はあまり興味無さげに答えた。

「そんなことより、ミルちゃんはどうやって消えたの?」

紗香は早速ミールの魔法について聞いてきた。星華や恵は遠慮して聞いてこなかったが実は聞きたくてウズウズしてたのだろう。

「あ!それ私も気になりました」

案の定、恵も聞いてきた。

「あれは」

「写し鏡でしょ?」

星華が一樹の言葉を遮って聞いてきた。

「さすが星華先輩。正解です。」

「有名な古式魔法だもの。私の専門よ」

「古式魔法だったの?」

恵が少し驚いた顔をする。

「ええ、古式魔法『写し鏡』

ある媒体に当たった光を保存する魔法。ミールちゃんはそれを応用して、自分の体に当たった光を保存し、反転させて再生したの。そうすると、キレイに自分の体が見えなくなるのよ。古式魔法だけど、今回はCADで発動したから、そこまで発動スピードは遅く無かったのね」

紗香と恵はへーと言いながら頷いていた。

「でも、現代魔法でも『ステルス』があるでしょう?それじゃダメだったの?」

紗香は疑問を一樹に投げ掛ける。

「ダメだな。あの魔法は光を屈折させ、物体を見えなくする魔法だ。屈折させると確かに物体は見えなくなるが、物体がある空間が歪んで見える。今回のような一対一で、隠れるような場所がない所で使っても居場所がすぐにバレる。しかも、ミールは来栖の目の前まで迫っていた。ステルスではそんな事はできないからな」

「それに、現代魔法だと魔法の発動場所が分かりやすいけど、古式魔法には色々偽装施してあるから、場所の特定がしにくいって利点もあるわね」

一樹の言葉に星華は付け足した。

「それより私はあの対抗魔法の方が気になるわ」

星華がそう言うと紗香や恵も私も私もというかのように目を輝かせている。

「あれは説明できないのかしら?」

星華は笑って一樹に尋ねる。

「いえ、そんな大した理論でもありませんし、やろうと思ってできるようなものでもありませんしね。よく知っている自分でも使う事ができない、ミールだけの魔法ですから」

紗香と星華と恵は食い入るように一樹の顔を見ている。

「その前に知っとかないといけない事がありますが、先輩方は魔法行使の際に出る、余分な干渉力と想子(サイオン)、魔法式の無駄はどこに行くかご存じですか?」

紗香は苦笑いを浮かべながら黙っている。多分分からないのだろう。

星華は一生懸命考えているみたいだが、分からないらしい。それもそうだ、魔法師にとって魔法行使の際に出る、余分な干渉力や想子(サイオン)、魔法式の無駄などは気にもならない程度のもの。実戦において全く影響がないような物を気にする必要がない。現に魔法科高校では教えておらず、専門分野に進むことで、やっと知るようなレベルだ。

しかし、偶然しっている人がいた。

「余分な干渉力や魔法式の無駄は空間を震わせ、光子が反応し光波のノイズとなるんですよね?」

恵が自信無さげに答えた。

「よく知ってましたね。マイナーな論文でも読まないと知り得ませんよね?」

一樹はあまり知られていない事を知っている恵に驚いた。

「ええ、たまたま、この前呼んだ『魔法発動予知に対する考察』に載っていまして」

「それはまたマイナー過ぎますね」

「一樹くんは読んだことあるんですか?」

星華は知ってそうな口ぶりをした一樹に対して問いかけた。

「はい、この前地下資料室で読みまして」

「そうなんだ、ミールちゃんから聞いてたけど、本当にあの秘境に通ってるのね」

地下資料室は誰も見ないような物が集められている場所であり、生徒の出入りはほとんどないことで有名であった。

「話を戻しますが、恵先輩の言う通り余分な干渉力や魔法式の無駄は光波のノイズとなります。

ミルはそんな光波のノイズを増大させる魔法を使って魔法を無効しているんです」

「ちょっと待って。それだけだと説明にならないわよ?」

「ええ、そうですね。しかし、ミルが行っているのはそれだけですよ。ただ、その現象に使っているのが自分の干渉力でないだけです。」

星華と恵は驚いた顔をする。紗香は何を言っているのか今一理解できていないみたいだが、二人は理解できたようだ。

「ミールは光に対する振動系魔法の干渉力が強いんじゃなくて、光に対する干渉力が強いんです。ですからミールはその光波のノイズに吸収系の魔法を使い、その隣にある干渉力や想子(サイオン)を吸いとって光波のノイズを増大させているのです。干渉力と想子(サイオン)を失った魔法式は効力がなくなり、ミールの領域干渉によって無効化されます。ミールの領域干渉はただ干渉力を乗せた魔法式ではありません。吸収系仮想領域魔法『マジック・ウィザー』に干渉力を乗せた魔法を展開しているのです。」

ここで紗香も分かったようで目を丸くしている。

「って事は無敵じゃん!!干渉力とか関係なしに無効化しちゃうんでしょう!?」

紗香はそう言って興奮し始めた。

「待て、無敵じゃないよ

もし相手の魔法式に一切の無駄がなく、余分な干渉力や想子(サイオン)がなかったら光波のノイズも発生しない。あの仮想領域魔法の対象は魔法式にくっついている光波のノイズが対象なんだ、もしそんな魔法が使われたら意味がないよ。

といっても、古式魔法の自分の想子《サイオン》を完全に掌握する修行を積んだ超一流魔法師がトラース・シルバーレベルの超一流魔工師の作った起動式を使わない限りありえないけどね」

一樹は笑って紗香に言った。

「そんな状況めったに、というか、ほとんどあり得ないじゃない」

紗香はそう呟いた。すると星華が聞いてきた。

「これもあなたの家の技術なのかしら?」

「いえ、これはミルの能力があっての技術ですから。体系化するのは無理ですね」

「なんで?なんで無理なの?」

紗香が不思議そうな顔をして聞いてくる。

「光に対する絶対的な干渉力が必要だし、光波のノイズを知覚する能力が必要だからね。光波のノイズを知覚できない限り、魔法の対象に取ることができないから」

紗香は納得したようでそれ以上は聞いてこなかった。

 

 一樹の話が一段落すると、全員の止めていた作業の手を再び動かし始めた。多少の雑談はあったものの、目立った話題は特になかった。

しばらくするとミールが巡回から戻ってきた。

「ただいま」

「おかえりなさい、ミールちゃん。お疲れさまでした」

星華はミールに労いの言葉を送った。ミールは一樹のもとに来てもう一度

「ただいま」

と言う。

「お疲れさま、ミル」

「お疲れーミルちゃん!

一樹の隣に座る?」

「紗香の隣でいい」

ミールはそう言って、紗香の隣に座る。よっぽどミールは紗香の事が気に入っているらしい。

「紗香、手伝う?」

「大丈夫よ、もうすぐ終わるし」

ミールは紗香の答えが返ってくると、次は一樹の顔を見る。

「俺も大丈夫だ。

・・・よし、終わりましたよ、星華先輩」

「あら?早かったわね。

助かったわ、ありがとう」

星華はにっこりと笑って答える。

「一樹くんが風紀委員になってくれればもっと助かるのだけれど」

そう言って星華は一樹の顔を見る。

「すみませんが、風紀委員になるつもりはありませんよ」

「そうですか、残念です」

星華はわざとらしく残念そうな顔をする。

「なりたくなったら言ってくださいね?すぐ採用しますから♪」

「そんなことはないと思いますが、覚えておきます」

一樹はそう言うと、星華は思わせ振りな笑みを浮かべた。

一樹と紗香は自分の仕事を終えると星華が「もう大丈夫よ」と言ったので生徒会室を後にした。その時、生徒会室を監視している存在に気づいたのは一樹だけだった。

 

 一樹とミールが家に帰宅すると

「お帰りなさいませ

留守中の来客はいませんでした。

留守中の電話は一件

○一○回線です。」

留守中に電話があったらしい。

一樹はそれを聞くとミールをリビングに残し、地下室へ入った。

「セキュリティレベルを最高に、『瞬間移動(テレポーテーション)』発動後○一○回線に繋げてくれ」

一樹はそう言ってから卓上型のCADを起動し、魔法を発動する。

発動してからしばらく待つ。

「セキュリティレベルをレベルファイブに移行しました。

魔法名『瞬間移動』の発動確認。○一○回線に接続します。」

しばらくのコール音の後、長瀬が仮想ディスプレイに映った。

「こんばんは、一樹」

そう言った男に一樹は一礼をする。

「そう気負わないでくれ、今回は命令とかではなく、単なる世間話のために電話をかけたんだから」

「いえ、そういうわけにはいきませんので」

「うむ、まあいいが

そんなことより、一樹は一高での事の顛末を知っているか?」

「内容の真偽はともかく、多少の情報なら入ってきています。一高に反魔法国際政治団体『ブランシュ』が侵入し、魔法技術を盗み出そうとするも未遂で防がれ、十文字家によって本拠地を壊滅。実質『ブランシュ』は日本から手を引くことになった。という程度でしょうか。今頃その話をするということは何か分かったのですか?」

「まあな、一樹はこの公開された内容を疑っているのか?」

「ええ、十師族が絡んでいる時点で何らかの虚偽が含まれているとは思いましたよ」

「ふっ、随分と疑り深いんだな」

「身内に元十師族がいますからね。色々と話を聞かされています。」

「双葉か

君の家系はなんだか複雑過ぎる事情を抱えすぎではないか?」

双葉。元の名を二葉。あまりにも非人道的な技術を持ってしまったが故に数字落ち(エクストラ)となってしまった憐れな一族。

「自分も思いますよ。うちの家系は技術の取り込みに固執し過ぎて、色んな他の一族の問題を引き受け過ぎている」

「組織の事もそうだったな」

「はい」

一樹は気付かれないほどに顔の表情が暗くなる。

「話を戻すが、一高の事件の本当の内容は全く違う。これは大分前に分かっていたが、『ブランシュ』はたった二人の生徒によって壊滅させられている」

一樹の顔が驚きの表情を見せる。

「過激派の団体相手に二人ですか、十師族の直系ですか?」

「いや、全く有名ではない家系の一年生の兄妹さ

君らと同じ兄と妹らしいが双子ではなく、年子。兄は『司波達也』妹は『司波深雪』というらしい」

「数字付きでもない、一年生二人

では数字落ち(エクストラ)ですか?」

「いや、どんなに調べてもあの二人の兄妹のことは全く分からない。パーソナルデータの情報操作をされている。数字落ち(エクストラ)にこんな影響力はない。」

「情報操作をされている時点でただの天才兄妹ではないみたいですね

では、数字擬装(ナンバーフェイク)ですか?双葉には昔、そんなしきたりがあったと聞いています。大尉もご存じでしょう?」

「ああ、その報告は受けている。そうなると・・・」

長瀬は黙ってしまった。

「しばのしは四のことでしょうね

となると、唯一四をもつ一族。四葉ってことになりますね」

「リーフシリーズか」

リーフシリーズ

一葉(ひとつば)二葉(ふたば)三葉(みつば)四葉(よつば)五葉(いつつば)六葉(むつば)七葉(ななつば)八葉(やつば)九葉(くつば)十葉(とうば)

魔法師開発を行っていた当時でさえも非人道的と言われていた技術を使い開発されていた一族の総称。今は『リーフシリーズ』の中で十師族に残っているのは四葉だけで、他の一族は全て数字落ち(エクストラ)となっている。

「しかも、リーフシリーズは特に『兵器として開発された魔法師』としての伝統を色濃く残していますからね。数字擬装(ナンバーフェイク)を施し、自分の一族を守り抜いているのでしょう」

「そうなると、説明がつくな。ためになったぞ

本当なら一樹に聞く前に気付くべきだったがな」

「いえ、十師族。特にリーフシリーズは特殊ですから大尉が気付かないのも当然ですよ

それより、話したい事はこれではないのでしょう?」

「おお、忘れてたよ!この話はついでだ

本題はその後、『ブランシュ』が日本から手を引いた後他の団体の活動が活発化し始めたことだ」

「他の団体言うと、他の反魔法団体ということでしょうか?」

「いや、逆だ。魔法師の団体だよ」

「!?」

一樹は再び驚きの表情を見せる。しかし、さっきより分かりやすく。

「そう、あの組織の末端だよ

魔法師の完全独立を目指す組織『理想郷(エデン)

魔法師を人間の一つ上の種族とし、魔法師のための国を作る事を目標に掲げている」

「馬鹿げた組織です。が、魔法師が他の人間に酷い仕打ちをされているのも事実。一概にどっちが悪いかとは言いませんが、自分は自分の事を人間ではないと思った事はありませんよ」

「確かにそうだな。我々は魔法を発動する道具でも、魔法を使う新人類でもない。魔法を使う人間にすぎん。それなのに甘い言葉によってそそのかされ、その組織に入ってしまう魔法師は後を絶たない

そして、今回は『理想郷(エデン)』に入りたがっている団体、一種の宗教団体と言ってもいいような団体が動きを見せている。」

「と言うと?」

「裏で何らかの計画が立てられ、その下準備をしているということしか分かっていないが、とにかく今は組織の末端が魔法を使ったテロを各地で起こしている」

「そんなこと一度も聞いていませんが?」

「悪いな、お前への報告は上から禁止されているからしていなかった

状況が落ち着き、隙ができるのを待っていたんだ」

「そうでしたか、ありがとございます。そして、ご迷惑をお掛けしてすみません」

「いや、大した事ではない

今回はその事を報告するのと同時に忠告するために連絡したんだ」

「忠告ですか?」

「ああ、ごく数人ではあるが魔法科高校の生徒もその団体にいた」

「・・・そういうことですか

もしかすると四高にも団体の一員がいるかも知れないと」

「そうだ、一高と四高以外の魔法科高校では何人か捕まえたが、その二校だけはまだ逮捕者は出ていない」

「なるほど、ここまでくれば確実に四高にも団体の一員がいるということになりますね」

「何か最近変わった事はないか?」

「ええ、あります。最近、何者かから常に監視されているようです」

「一樹の正体を気付かれたのか?」

「いえ、違うと思います。その何者かは地下資料室で探し物をしていたようですが、自分が地下資料室に通うようになり、やむ無く中断。そして自分が何を探しているのか監視しているのでしょう。何故最近、突然監視が付いたのかは分かりませんが、その線が濃厚ですね」

「そうか、くれぐれも気を付けろよ、一樹」

「はい、ご忠告ありがとうございます」

一樹は頭を下げる。

「では、また連絡する。一樹も何かあったらすぐに連絡しろ」

「はい」

通信は切れ、仮想ディスプレイが閉じられた。

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