魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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第11話 生徒会副会長

第11話 生徒会副会長

 

 一樹とミールは魔法科高校に入学して以来、本格的な魔法の修行をしていなかった。長瀬の忠告を受けてた一樹は鈍った感覚を直すべく、富士の樹海。青木ヶ原に向かうことにした。

電車とバスを乗り継げば15分程度で青木ヶ原の入り口についてしまう。現代では国立公園として大分拓けてきたが、それでも一般人が入ってしまったら遭難してしまうような所はまだまだたくさんある。その中でも富士山よりの場所。一番近い遊歩道からでも何百mも離れた場所を選び、一樹は防音、防光障壁と人払いの結界を張り巡らせた。

「これでどんな魔法を使っても大丈夫だな」

「そんな魔法でも?」

ミールは無表情で言うが、目をキラキラ輝かせていた。

「いや、『ライト・バースト』は使えないからな?いくら何でもここにクレーターを作るわけにもいかないから」

「使い方忘れちゃいそう」

「『銀の弾丸(シルバーブレット)』は使っていいよ。発動原理は一緒だから大丈夫だろ?」

「派手じゃない」

「仕方ないだろ、我慢してくれ」

「わかった」

ミールが答えた瞬間、まばたきをするよりも短い一瞬だけだが周りが真っ暗になり、明るさが戻ると同時にミールの前で白い光が弾ける。

すると、何処からか焦げた臭いがしてきた。

今の出来事が終わるまでに0.1秒もかかってなかった。

「ふむ、上出来だな

でも、なるべくだったら木に撃たないで欲しかったな。可哀想だろ?」

一樹がミールの向かい側にある木を見る。そこには向こう側が見える銃の弾丸サイズ穴が空いていた。木の直径は一m以上ある。普通の銃なら貫通は無理だろう。

「CADを使わずにこの速度と精度。じゃあ次は特化型CADを使ってやってみよう。貫通力を下げて複数同時に撃ち抜いてみようか」

「うん」

ミールが手に下げていたバックから小拳銃型の特化型CADを取り出す。

「じゃあまずは24から」

一樹が左手を振ると周りの木々からちょうど24枚の葉っぱが落ちる。その後すぐにミールはCADの引き金を引く。すると、さっきと同じように周りが真っ暗になるが、さっきよりは少し暗闇である時間が長い。それでも暗闇である時間は一瞬。すぐに明るさは戻り、ミールの周りで24の白い光が弾けた。そこでやっと木々から落ちた24枚の葉っぱが地面についた。暗くなる前はキレイな葉っぱだったのに、地面についた時には焦げたような穴が空いていた。

「うん、順調だね

でも、もう少し範囲を広げて、タメの時間を短くしたいね」

「・・・難しい」

ミールは少し眉をひそめた。

ミールが使っている魔法の固有名称は『銀の弾丸(シルバーブレット)

これはミールや一樹が付けた名称ではない。この魔法を見た人達がどんな物でも貫き、発射直前に見せる銀色にも似た白い光を発しているのを見て付けられた名称。ミールはそれが気に入り、この名称を採用したのだ。

この魔法は加重、振動、移動、収束、放出の複合魔法。特に収束の割合が強い。

周りに存在する光を一点に収束し、高出力の電磁波を形成。対象物体を決め、その方向に向かって発射するレーザー光線である。

形成された電磁波は超高温を保ち、対象物体に接触。どんなに分厚い鉱石や金属でも一瞬で焼き付くし貫通させることができる。その光は目視出来ず、空気の屈折もなく、光と同じ速度で進むことができる。実質避ける事が出来ず、光に対しての干渉力でミールを上回らない限り、この魔法は無効化できない。

「数を少し減らすから範囲を広げてみよう。同時に複数発射も重要だけど、発動までに時間が掛かってしまっては意味がないからね」

ここで言う範囲とは収束する光の範囲の事。範囲が広ければ広いほど、早く高出力の電磁波が集まり、早く発射段階に入る事ができる。

再び、一樹が左手を振るうと12枚の葉っぱが落ちる。その直後ミールがCADの引き金を引く。周りは刹那の時間だけ真っ暗になり、ミールの周りに12の白い光が弾ける。今度は葉っぱは地面に落ちなかった。灰も残さず、蒸発してしまったのだ。

「うん、上出来だな。早さも十分。光径もかなり太くなってる」

光径とは収束された光の太さ。さっきまでは拳銃サイズだったが、今回は広葉の葉っぱより大きいサイズになったのだ。

「やっぱり、ミルは照準を合わせるのが苦手みたいだな。

今度、牛山さんに相談してみるか。照準補助システムを改良してくれるかもしれない。

そうすればかなり多数同時に照準を合わせてもそんなにタメが要らないかもな」

「うん

一樹は練習しなくてもいいの?」

「うーんそうだな。今日はミルの訓練をメインにするつもりだから、俺もミルと同じような練習にするよ」

そう言うと一樹は左手を振る。すると周りの木々から50枚ぐらいの葉っぱが落ちてきた。

「48枚か

こればかりは上限を増やせないからな。威力とスピードアップの練習かな」

「これで十分だと思う」

確かに十分だ。現代魔法でもここまで速く発動することができないだろう。一樹は現代魔法が苦手だが、ある2つの単一系統魔法と2つの古式魔法をCADも使わずに、CADで発動するよりも早く発動する事ができる。

「そう?もう少し速く発動したいんだけどな」

「贅沢」

「そうだな、でも俺はこれしか使えないから」

「そんなことない。一樹はもっとすごい魔法を使える」

「あれは魔法じゃない、あくまでも科学技術だよ」

「・・・うん」

ミールは悲しげな表情を浮かべながら頷いた。

「よし、再開しようか?」

「うん」

一樹が葉っぱを落とし、ミールがその葉っぱを撃ち抜く。そんな魔法訓練を繰り返した後、一樹とミールは模擬戦と同じルールで試合をした。

訓練を終えた一樹がミールに「今日の夕飯は何がいい?」と聞いたら「茶碗蒸し」と答えたので、茶碗蒸しの材料を買って家に帰宅した。

 

 

  次の日、一樹達はいつもと同じように高校に行き、校舎で別れる。

しかし、いつもと違う事が一つあった。

それは一樹が様々な生徒から声を掛けられること。

そして、一樹が教室に向かう間までに

「ここに来るまでに12人から挑戦を受けた」

「そりゃあ、大変だったな」

西園寺は何処か楽しそうな顔を浮かべて答えた。

「恐れてた事が早速起きたわね」

紗香は呆れたような顔をして答えた。

「でも、あの動画を見て、よく一樹に挑戦をしようなんて思えるわね」

「あーその理由なら俺知ってるぜ

一昨日、『鉄壁の女王(クイーン)』こと来栖澪に一樹が挑戦を受けた時、お前の妹が割って入ったんだってな?そんな光景を見た生徒達がもしかしたら、一樹の模擬戦は八百長だったんじゃないかって噂し始めたんだよ」

「なるほど、それで一樹に挑戦する人が出てきたって事ね

どうするの?6人以上なら6人目以降は断れるけど?」

「全部受けるさ、自分で言っちゃ何だが二年生までに手こずるような奴はいないと思うからな」

西園寺は頷き、紗香はクスッと笑った後で答える。

「それもそうね。一樹なら、二年生とは言わず、三年生まで敵なしなんじゃない?」

「そんなことはないさ、実戦ならどんな大判狂わせがあるか分からないから、勝敗は一概に言えないが、模擬戦なら俺は負けるだろうな。特にあの二人には」

一樹が言うあの二人とは楓と星華のことである。その二人は高校生にして、すでにAランク魔法師相当の判定を受けている。実戦経験を積めば、即、A級ライセンスが取れる。

「あの二人は別格じゃねえか?今は三年生だから青の1位と2位に甘んじてるが、実際の実力は並の魔法師より上だぜ?」

「そうね、こいつの目でも分かる位の実力だものね」

「おい、今、馬鹿にしてなかったか?」

「え?していませんよ?」

紗香はわざとらしく丁寧に答えた。

「なんか、スゲームカつく!!」

「落ち着けよ、お前達だって近接戦闘では並の魔法師より強いだろ?」

一樹が笑みを浮かべて言うと紗香と西園寺も笑みを浮かべた。

 

 全ての授業が終わり、一樹は放課後を迎えた。

結局、一樹に挑戦してきたのは全部で15人。普通なら何人か断るところだが、あえて一樹はそれをしなかった。一樹にはやらなければならないことが数多くあり、毎日挑戦を受けている暇はない。ならば、1日かけて全て倒し、二度と挑戦できなくなるまで叩き潰す(精神的に)方が得策と考えたからだ。最初は負けまくって、『ラストナンバー』に戻ろうと考えたが、戦う限りは負けたくない。一樹にもそのぐらいの意地はある。だから一樹は15人連続模擬戦などという無謀に挑戦するのであった。

「さすがに心配になってきたぜ?大丈夫なのか?」

「ああ、心配するな怪我はさせない」

「そっちじゃねーよ!!」

西園寺は思わず大きな声でツッコミをいれてしまう。

「冗談だ」

「一樹も冗談言うんだ」

「紗香は俺のことをなんだと思ってるんだよ」

演習場で待っていると立会人となる生徒会の人間と風紀委員の人間が来た。

「また、星華先輩でしたか」

「あら?役不足でしたか?」

「まさか、その逆ですよ

そちらの方は?」

「僕は生徒会副会長を勤めさせてもらっている、明智優(あけちすぐる)。よろしくね」

明智は言い終えると握手を求めてきた。

「自分は藤宮一樹です。よろしくお願いします」

一樹はその手を握り、自己紹介した。

「笹森との模擬戦の動画見させてもらったよ。すごい試合だったね」

「いえ、それほどではありません。明智先輩の方が強いかと」

「・・・面白いな君は」

「先輩も十分面白いですよ」

二人は笑いあっている。しかし周りは何故だかよく分からないみたいだった。

 

 

 一樹達が自己紹介を終えた頃対戦相手がやって来た。ルールの説明も終え、一樹と対戦相手は所定の位置につき、開始も合図を待つ。

相手は二年生の十番今回挑戦してきた中で一番ランキングの高い相手だ。名前は分からない。自己紹介もしてこなかったし、一樹も覚える気がなかった。何故トップバッターを彼にしたかと言うと、一樹の余力があるうちにランキングの高い相手とやるというのも理由の一つだが、一番の理由は自分より強い人が負ければ、その下のランキングの人間が挑戦取り消しをしてくるかと思ったからである。

「開始!!」

星華の声と共に相手はブレスレット型のCADをタッチし、起動式を展開する。一樹はただ立っているだけ。

相手が発動した魔法は自己加速術式。前の一樹の模擬戦を見て、中、遠距離の魔法は効かないと判断したのだろう。一応研究し、対策を講じてきているようだ。お互いの距離はおよそ5m。自己加速術式は助走もなしで車と大差ない速度で向かってくる。

一樹は自己加速術式が発動されたと分かると同時に横に飛ぶ。魔法を発動していないので、たった一歩分程度。自己加速術式がいかに急な方向転換ができないとはいえ、曲線を描いたり、斜めに進むことは可能である。たった一歩横にずれたところで避けたりする事はできない。

相手は起動を修正し、再び一樹へと向かう。

相手が一樹のすぐ目の前まで来ると、近距離の魔法を発動しようとする。

そんなとき、一樹が踏み込み、相手の視界を自分で埋める。かなりの速度で向かってきている相手にだ。予想もしない行動を取られた相手に動揺が走る。その瞬間一樹は再び横へ飛んだ。今度は十数m。加重系マイナスの魔法を使い、一時的に重力を打ち消したのだ。

一樹に発動するはずだった何らかの近距離の魔法は対象を捉えられず、霧散する。相手はすぐに周りを見回すが、一樹を視界に捉えた時にはすでに遅い。十の圧縮された想子(サイオン)の砲弾が360度全方向体から飛んでくる。突然の大量な他人の想子(サイオン)を体が吸収し、拒絶反応を示す。相手は突然意識がなくなり、その場に倒れた。

 

「勝者!藤宮一樹!!」

星華が宣言する。しかし、この前のミールの試合のように声援は起こらなかった。

「おい、今の本当に二年生かよ」

西園寺が呆れたように呟く。

「そうね、相手の動きの意味を理解してないところから見て、今まで魔法技能だけで勝ち抜いて来たんだろうね。それじゃあ一樹には勝てないわ」

紗香も西園寺の言葉を聞くと、そう言った。

「それにしたって、一樹が横に一歩ずれたのは自分の遅い演算速度の時間稼ぎって分かるだろ」

まさに、一樹が一歩横にずれた理由であった。相手が先に発動した自己加速に対抗する魔法を行使するには遅すぎる。一歩横にずれることによって、相手が軌道修正するためにもう一度魔法式を再構築し、一樹の元へ来るまでの時間があれば一樹でも魔法を構築するには十分だ。

「相手は先輩だぞ、そう悪く言ってやるなよ」

戻ってきた一樹が紗香達に言う。

「だって~」

と紗香は駄々をこねるように言った。

「そんなことよりさ、一樹。さっきのどうなってんだ?高濃度のサイオンの砲弾を何発か撃ったのは分かったが」

西園寺は最後の相手を気絶させた技が気になるらしい。

「十発ね、しかも全方向からの狙撃」

「そうだ。解体術式(グラムデモリッション)を十発打ち出した」

「それだと気絶した理由にはなりませんよね?」

星華が一樹達の会話に入ってきた。

「例えば他人が展開した起動式を体に取り込んだ場合、どうなるか知っていますか?」

「ええ、軽くて吐き気や目眩。多くの場合は拒絶反応が起きて、意識を失ったり、脳障害を引き起こしたり・・・まさか!」

「ええ、そうです。起動式は想子そのもの。それが信号化され、体に取り込みやすくなっています。普通の想子は他人の体には吸収されにくいですが、解体術式(グラムデモリッション)レベルの想子(サイオン)の砲弾を十発同時に浴びれば気も失います」

「でも、魔法師はある程度の想子(サイオン)で身を守られているはず。いくら解体術式(グラムデモリッション)想子(サイオン)を浴びても目眩を起こす程度で、意識を完全に刈り取るなんて無理じゃない?」

「収束系魔法だね」

そう言ったのは副会長の明智だった。明智は意識を失った対戦相手の様子を見ていたらしい。

「収束系?」

星華は明智の顔を見て聞いた。

「ええ、さっきの解体術式は全方向から撃たれたように見えたが、実際には収束系魔法によって一点への集中砲火になっていたんだね?」

明智は一樹にあっているかの確認をとった。しかし、その表情には絶対的の自信があったかのように見えた。

「正解です」

一樹は短く答えた。

「収束系・・・なるほど、そういうことだったのね」

星華は理解したらしく、頷きながら呟いた。

「どういうことだ?」

しかし、西園寺と紗香はまだわかってないらしい。

「収束系魔法の理屈は分かるか?例えば空間Aに対象Aがあり、その周りには対象Bがあるとする。対象Bを空間Aに収束させた場合どうなるか分かるか?」

「ああ、そのぐらいなら。空間Aにある対象Aが外に出て、対象Bが入ってくるんだろ?」

「その通りだ、じゃあその対象Aは収束系魔法の対象になっているか?いないか?」

「なってるんじゃねーの?対象Aも動いてるんだから」

西園寺は躊躇いもなく答えた。その隣で紗香はまだ悩んでいた。

「・・・ならないんじゃないのかな?私あんまり収束系使わないし、授業でもまだそんなに触れてないけど」

「その通りだ。対象Aが押し出されるのはあくまで結果であって、魔法の過程ではない。対象Bが空間Aに収束し、対象Aが外に押し出される。それが収束系魔法の定義だ。さっきの解体術式(グラムデモリッション)はその理屈に乗っ取り、相手の想子(サイオン)を押し出し、俺の想子(サイオン)を流し込んだんだ。守る物が何もない状態でだ。

これは『遠当て』と言う古式魔法の応用なんだ。『遠当て』単体では意識を刈り取るまでは行かないが、これなら気を失わせる事ができるからな。まー実践では使える物じゃないよ。敵が多数いる場合は隙を見せる事になるからね」

「それで拒絶反応が大きかったのね」

紗香は納得したように答える。

「本当に一樹君にはびっくりさせられるわね」

星華はため息じみた声で言う。

「まー今さらだけどな」

「そーねー」

西園寺と紗香が笑いながら言った。

 

 それから14人連続で模擬戦を行い、当然のごとく全て勝利した。

近距離の魔法を使う相手にはさっきと同じように解体術式と収束魔法で、長距離の魔法を使う相手には笹森の時と同じように魔法を無効化したあとに発勁で気絶させる。その二パターンだけで勝利。

「結局、全部勝っちゃいましたね」

星華が呆れたように言う。

「大した事ではありませんが、さすがに大分疲れましたが」

「当然ね、自業自得よ」

そう言って、笑う。一樹も釣られて笑ってしまった。

西園寺と紗香は一試合目の後自分達に挑戦してきた生徒を相手にしに行った。一樹と星華が話していると、周りに何人かいる生徒の中から、一人の女子生徒が近づいてきた。

プレートは緑の7番。一番最初に模擬戦を行った相手よりランキングが上だ。

「私と模擬戦をしませんか?」

「・・・今ですか?」

「今です。まだ演習場の閉場時間まではまだまだ時間がありますし」

「ちょっと!!一樹君は今15人連続で模擬戦をしたばかりよ!!」

「そんなことは知りません。それとも勝つ自信がないんですか?」

「・・・いいでしょう。やしましょうか」

ここで断ってしまったら、また余計な噂が広がり、面倒な事になる。そう考え一樹は挑戦を受ける事にした。

「一樹君!?何言ってるのよ!?あなただって疲れたと言ってたでしょう!?」

「仕方ありませんよ。ここで引き下がったら、また明日も挑戦してきそうですし、自分にはそんな暇ありませんので」

一樹は立ち上がりながら言う。一樹は西園寺や紗香の挑戦者の数を知っている。そして、やらなければならない事が山ほどあるのに、毎日そんなに挑戦してこられたらはっきり言って迷惑だ。

「でも・・・」

「大丈夫ですよ。何とかなります」

「そんな無茶な・・・」

星華はそう呟き、

「それじゃあ行きましょうか?」

挑戦してきた二年生は不敵に笑いながら言う。すると、

「ちょっと待ちなさい!!」

離れた所から声が聞こえた。その声の主は生徒会長、九頭見楓だった。

「一樹君はそれ以上模擬戦は出来ないわ」

楓は来るなりそう言った。後ろには生徒会副会長、明智優もいる。

「理由を聞いてもいいですか?」

一樹も何を言っているか分からず、思わず聞いてしまう。

「この前生徒会枠から選ばれた二年生の風紀委員が退学になりましたので、その後任を探していたのですが、先ほど生徒会の会議で決定しました。藤宮一樹君。あなたを笹森君の後任に任命します!風紀委員に所属した場合、一日に挑戦を受けられるのは三回まで。それ以上は本人の承諾があったとしても、模擬戦管理委員会から許可が出されません。すでに三回を越えてしまい、一日に十五回の模擬戦を行ってしまった段階で任命されたという特殊な事例を考慮した結果。一樹君、あなたは五日間模擬戦を行うことを禁止します。」

突然の任命に少し戸惑いを見せたが、一樹はすぐに反論をした。

「模擬戦を行ってはいけない理由は分かりました。しかし、何故一年生の自分が風紀委員の後任になったのでしょうか?」

「時に実力主義な一面を見せる風紀委員はその学年の上位者を選び出すのですが、すでに上位者のほとんどが生徒会、風紀委員、部活連、その他委員会に所属していて、後任を決めることが出来ませんでした。そこで特別に一年生から選ぶ事になり、実質一年生のトップである、一樹君が選出されたのです」

それは反論すら出来ない内容だった。さっきまで楓が話していたが、今度は明智が口を開いた。

「もちろん、本人の承諾が必要ですが、出来れば入っていただきたい。もし断られてしまったら、もう一度再検討し、別の生徒を説得しに行かなければいけないので」

一樹はしばらく考えた後、

「分かりました。生徒会の決定に従います」

と告げた。折角、自分のために用意された助け船だ素直に乗ることにしよう。と考えたのだ。楓は顔には出さないようにしていたようだが、安堵の表情を見せた。

「と、いうことなので、今回は一樹君への挑戦を認められません。また、次の機会に」

二年生の女子はしばらく一樹を睨みつけた後

「分かりました」

と言って、その場を立ち去った。

「一樹君、まだお話があるので生徒会室に来ていただけますか?」

「はい」

そして、一樹と星華、楓、明智の4人は生徒会室に向かった。

 

 「はぁ~ギリギリだったわね」

楓は生徒会室に着いて早々ため息をついた。

「すみません。ご迷惑をお掛けしてしまって」

「ふふっ、なんのことかしら?逆に悪かったわね、風紀委員の役職を押し付けてしまって」

「いえ、自分のためにやってくれたことだと分かっていますから」

「最初は何事かと思ったわよ。明智君が一樹君を笹森君の後任にしようと言ってきた時は」

「明智先輩の提案でしたか。ありがとうございます」

「いや、君の意図は理解しているつもりだったが、あんなに模擬戦をやって、君ほどの魔法師を学生の内にダメにされてしまったらもったいないからな」

明智はかなり一樹のことをかっているようだ。

「そうね、しかも一樹君ぐらいの戦力が風紀委員にあったら、頼もしいしね。でも一樹君忙がしいんじゃないかしら?」

星華は少し心配そうに一樹に言った。

「そこまで切羽詰まっているわけではありませんので、大丈夫だと思います。それに、風紀委員の仕事は毎日あるわけではありませんよね?」

「ええ、見回りは曜日ごとに振り分けられ、1人当たり週2日。そして、風紀委員会室待機が週1日。計週3日出席してもらう事になります。仕事がある日は挑戦を受付ることが出来ません。仕事がない日に三回まで挑戦を受付ることが可能です」

「それなら大分いい条件ですよ。残りの3日は好きに使えるわけですよね?」

「そうよ。呼び出しがあった場合はすぐに来てもらいますが」

「では、地下資料室にはいてはいけませんか?通信が出来ませんけど」

「それなら心配ないわ。室内放送がついていますから、それで呼ぶことができます」

「分かりました。後は詳しい業務内容なんですが」

それからしばらく一樹は風紀委員の業務、規則等を星華から教えてもらい。教えてもらっている途中にミールが巡回から戻ってきて、一樹が生徒会室にいる事にビックリしていた。事情を説明すると、かなり喜んでいた(一樹が見る限り)。それから星華の説明も終わり、ミールと帰った。

 

 

 

 一樹とミールは家に帰るなりすぐに地下室へと入って行った。そして、帰り際に地下資料室から回収してきた呪符を取り出して、鏡に張り、ミールに再生してもらった(『写し鏡』の保存と再生は別の魔法である)。

「・・・うそ」

ミールはその映像に写っていた人物を見て愕然としていた。

「やっぱりな」

一樹には予想通りだったらしい。

「気づいてたの?」

「ああ、会ったときから違和感はあった」

二人はその映像を見ながら言葉を交わした。

その映像には隠された盗撮機のデータカードを入れ換えている人物の姿が写っていた。

その人物の正体は

 

生徒会副会長、明智優であった。

 




感想などありましたら聞かせてください!

魔法理論の矛盾などありましたらじゃんじゃん言ってください!

よろしくお願いします

注)本文で出てきた、『遠当て』の応用の魔法ですが、相手の想子を押し出すだけの圧力が必要であり、解体術式を何発も同時に放てる人間でないと使うことができません。
それを書くのを忘れてたのでここに書いておきます(笑)
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