魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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第14話 脱出!!

地下には上と全く同じ構造をした会議室があった。

楓はCADを取り出すと、手慣れた手つきで防音壁を構築した。

「これで、盗聴、盗み聞きの心配はないわ

で、どういうことなの?」

「話すと長くなるのですが、ここ最近自分に監視がついていました」

そういうとミールを除く4人は少しびっくりしていた。

「自分は悪目立ちしていたので、そんなには気にしていませんでしたが、今日は1日何も感じていませんでした。監視をあきらめたのか、それとも・・・」

「監視していた本人が他にやることがあったのかってことね」

「はい、だから今日1日注意を払っていたのですが、案の定先程見つけてしまいまして」

「優君がいなくなったこと?」

「それもありますが、もっと大事です」

「大事?」

「はい・・・・・・

1時間から1時間半以内に殺傷ランクA相当の大規模な魔法が行使されます」

「なっ!?」

声を漏らしたのは恵だけだったが、みんなかろうじて声をこらえていた。

「どういうこと?」

「場所は入学式にも使われた講堂。その時に人がいるのかいないのかは不明。術者、術式ともに不明です。しかし発散系の大量な熱量を生み出す爆発魔法です」

「そうじゃない。なんであなたがそんなことがわかるの?」

「・・・会長、CADを構えて何か魔法を行使してください」

「え?」

「いくつでもいいですよ」

「・・・・・・」

楓はしばらく考えてから、携帯端末型の汎用CADを取り出し誰もいない方を向いて魔法をこうしようとした。

「収束・移動系の複合魔法『エアハンマー』、振動系単一魔法、雷撃魔法の『雷童子』最後のは少し複雑。古式魔法をベースに編んであるんですね」

楓は一つ目の魔法を強制的に終了させ、驚きの表情を見せながら一樹の方を見た。

「まさかと思ってやってみたけど・・・本当に?」

「ど、どうやってわかったんですか!?」

恵が少し大きな声で聴いてきた。

「詳しい話は難しすぎるので、やめておきますが

魔法は想いによって作られる。たとえそれが現代魔法だとしても。

想いが無ければ魔法は発動しません。自分はその想いいち早く察知できるとても言っておきましょうか」

「お、想いって

それっじゃどんな系統かはわかるかもしれないけど、術式の正式名称や起動式まで分らるなんて、おかしいわよ!!」

「自分にはそれに加えて別の力がありますから」

「もしかして『|情報≪エイドス≫の解析』?」

恵が呟くようにして言った。

「そうでしたね、恵先輩はあの論文を読んでいるんでしたね」

「あの論文って?」

と楓が首をかしげると

「『魔法発動予知に対する考察』?」

星華がそう言った。

「ええ、そうです。あそこに書いてある理論はほとんどあっていますよ。実はあれは自分の家系の身内が書き上げた代物なんです」

実を言うと一樹達の祖父、藤宮家の現当主である。しかし、そのことは伏せておいた。

「この世界に存在するものには必ずエイドスが存在する。故に魔法に対する復元力にもエイドスは存在する。復元力はいきなり振って湧いてくるくるわけではなく。元々存在していた復元力の一部が発動された魔法に当てられるもの。この次元より高次元の世界からその力はやってくる。その発現や効果の発揮のタイミングは全くわからないが、そのエイドスの解析ができればそこに発動される魔法の種類や名称がわかるだろう。

これは論文の一部を要約したものです。少し大げさに書いてありますが、全部が全部間違ってるとは言い切れません。ただ、自分は復元力ではなく因果。すなわち原因と結果を組み合わせた情報が浮上してくると考えています。ですからエイドスを解析できる能力があれば、魔法の未来予知。それどころかすべての物事の未来予知が可能だと思われます。しかし、自分ができるのは魔法の予知だけ、しかもいろいろな欠陥つきで」

「欠陥?」

「ええ、無敵だと思われがちですがそんなことはないんです。まー弱点を公表なんてしませんが」

一樹の言う弱点とは離れた場所での魔法予知はある程度規模が大きい魔法でないとわからないのが一つ。もう一つは魔法予知に割かれる魔法演算のキャパはかなり大きく、その他の魔法が使えなかったり、魔法予知を使用している間はただでさえ行使できる魔法が少ないのにその中でももっと限られた魔法しか使えなくなってしまう。だから、あまり実戦では多用できなく、ここぞというときはあまり役に立たない

「自分がこの能力が使えるのはどうかご内密に。なるべくなら古式魔法の名家である弥生と師補十八家である九頭見を敵に回したくはないので」

佐々木と恵は息をのんだ。あの二つの名家出身である二人に対してかなりの大胆発言。特になるべくという言い回しから必要であれば敵に回すと喧嘩を売っているのだ。

そして、二人の反応は

「ふー大丈夫よ

私口が堅いし、親にも言わないわ」

「言ったら月夜にも怒られそうだし」

と二人は笑って見せた。佐々木と恵はこの二人は器がかなりでかいと感じたに違いない。

「っとこれからどうするかよね」

「ええ、多分生徒の主力の大半がそろっているこの時間にここに閉じ込めることにより学校の制圧をスムーズに行うつもりなんだと思います。生徒会と風紀委員以外はCADを持っていません。あっという間に制圧が完了するでしょう。そしてその首謀者が」

「生徒会副会長の明智優君ってわけね」

星華がそう付け足した。

「そう考えてもよさそうね・・・

なんでこんなことを」

「なんとなく予想はついていますが

今はそんなことより一刻も早くここから脱出して大規模な爆発魔法を阻止しないと大惨事になってしまいます」

「そうね、いったん上に戻りましょう」

楓がそう言って階段を上りはじめ、みんなも後に続いた。

 

楓が今の状況をうまく説明し(大規模な魔法と一樹の能力の事は伏せて)、脱出の方法を考え始めた。

「ねー一樹君なんか方法ない?」

「何故自分に?」

「だってびっくりするようなことやってくれるじゃない?今みたいな状況だと期待しちゃうよ」

―――なにかね・・・

あると言えばある。ミールの『|銀の弾丸≪シルバーブレット≫』出力を最大にし、口径を最大にたら人一人くらいは余裕で通れる。しかし、あまり他人に見せるのは好まない。それ以外にミールは高出力の魔法を持ってはいない。となると・・・

「やってやれないことはありませんが、やはり時間はかかります。」

「繰り返して加重系の魔法を掛けるのとどっちが早い?」

「分りませんが、とにかくこのデカい会議机をどうにかしないと」

「そんなこと?それなら簡単よ」

そういうと楓は机についた端末を操作し始めた。

「みんなさん、机からはなれてください」

楓がそういうとみんな机から離れていった。

すると下からモーター音が聞こえ、机が沈み始めた。

「すげー」

「こんな仕掛けがあったんだ」

などの声が周りから聞こえてきた。

机の上にあったマイクも中にしまわれ、完全の床となった。

「はい!」

「予想より早く出来そうです」

一樹はそう言って笑った。

 

楓や星華、ほかの生徒達も一方の壁際に移動していた。そして一樹とミールだけがみんながいる反対側の壁を向いて部屋の真ん中に立っていた。一樹は一分ほど意識を集中させていた。周りからは

―――無理だろ?

―――強がってるだけだって

―――調子に乗ってんだろ?

など非難の声が聞こえた。

しかし、一樹には関係ない。ただやるべきことに集中するだけ。

「ミル」

準備ができたのか、一樹はミールの声を掛ける。まだ、この段階では魔法が発動された気配はない。

ミールがCADを取り出し、起動させた。すると、床が光始めた。

「・・・魔法陣」

星華がそう呟く

床には会議室の床を覆いつくほど大きい光の魔法人が現れた。ミールの光学魔法によって再現されたのだ。これなら魔法陣を一から書く必要がない。

一樹は右手に意識を集中し、右手を振った。バンッっという音をたて、壁から煙が出ていた。誰もがもう穴を空けたのかと思ったが、違った。その壁には模様が刻まれていた。振動系の魔法を使って壁に模様を刻んだのだ。一応右手首に汎用型CADをつけといてあった。実際は使っていないが、ほかの人からは使っているように見せていた。

「あれも魔法陣?」

楓が隣にいる星華に聞いた。

「ええ、でもあの真ん中の文字見たことがないわ」

「あ、あれは多分ルーンだと思います。昔論文で読んだことがありますから」

後ろから恵が二人にそう言った。

「恵ちゃんって変わった論文ばっかり読んでいるのね」

「ええ、まだ曖昧な魔法理論は空想の物語に出てくるような魔法ばかりなので・・・

でも、ルーンを使った魔法の行使はまだ一度も観測されていないって聞きましたけど・・・」

「じゃあ、黙っておいといた方がいいわね」

星華はそうやって釘を刺した。

後ろでの会話は一樹にはおろか、その三人以外には聞こえていなかっただろうが、一樹にはなんとなく分った。

―――恵先輩は変わった人だな・・・

ルーンの存在がバレるのが怖くて言いださなかったが、緊急事態だし、ルーンを見てわかる人間はいないと思ったが、その考えは甘かったようだ。案の定分ったのは恵だけ。しかも、星華が釘を刺しておいてくれたからおそらく心配はないだろう。一樹は術に集中し始めた。

『世界の根源からもたらされる力よ

その文字の音はソーン

その文字の意味は門

行く手を阻む門よ世界の根源に従い我らの茨の道から姿を消せ』

一樹はこの呪文をルーン文字で話した。きっと意味を理解できたものは誰一人いない。

壁に刻まれた文字が光りだす。ミールの力ではない。大量の|想子≪サイオン≫があふれ出し、|想子≪サイオン≫が可視化され、光に見えているのだ。次の瞬間、大きな爆音と共に会議室の壁は崩れ去った。

 

無事壁に穴をあけることができた一樹に対し、すごかった、見直したぜ、さすがは古式魔法!!など知らない人間にまで声を掛けられた。みんな古式魔法は威力が強力だと知っている。だからあんな芸当ができたのだと思っているらしい。実際もっと高度な現代魔法の中にはさっきの魔法よりもっと強力な威力を持った魔法も存在する。だから、みんなそんなに驚きはしていないが、実際はそんなことはない。みんな現代魔法に慣れているから、あの速度を遅いと感じているが、古式魔法の中でもあの威力であの速度は相当早い。ミールの手伝いもあったが、あんな複雑な魔法陣を読み取るだけでも、かなりの時間がかかる。しかも、一樹はあれでもかなり威力を抑えていた。|想子≪サイオン≫の保有量が多い一樹はもっと大量な|想子≪サイオン≫を注ぐことができた。古式魔法の大半は送り込む|想子≪サイオン≫量によって威力が決まる。今回の魔法もそうだ。それをみんな気づいてはいなかった。たった二人を除いて。

「今の分った?」

星華は楓にそう言った。疑問形だが楓にはわかると思って聞いたのだろう。

「ええ、元々うちの家は古式魔法を研究して作られた魔法師の一族。古式魔法の知識もある程度あるわ。だから恐ろしいほど分るわ、あの古式魔法早すぎる。構築される前からほとんど完成していたみたいに」

「そうね、もしかするともっと早く発動できたのかもしれないわね。魔法式が霧散しない程度まで引き延ばしてたんじゃないかしら?しかも、威力も大分押さえてた。あんなの実戦で使われたらひとたまりもないわ」

「・・・私たちを敵に回したくないか

それはこっちのセリフよ

いけないことだとは思ったけど、藤宮家の事を少し、調べてみたわ」

「どうだったの?」

「情報が全くなかったわ。無さ過ぎて怖いくらい

国レベルでの情報操作が行われているわ」

「!?

そんな!十師族や|数字付き≪ナンバース≫でもないのに!?」

「ええ、かなりの影響力を持ってるみたいね。

・・・・・・・」

「どうしたの?一樹君が怖くなった?」

「ううん。彼自身はいい人のような気がする。そんなことより・・・

いや、後で話すわ

今は今の事に集中しましょう」

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