魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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第19話 葛藤

『俺は人を殺したくない』

『何を言っている?お前の力は人を殺すものばかりではないか。そんなお前が人を殺したくないとは説得力に欠けるな』

『それでもせめて、人を助けるために人を殺す。自分のため。ましてや、お前の野望のために人殺しをするのはもっての外だ』

『フフフ、そう言うなよディーン。』

『やめろ、おれの名前は一樹だ。ディーンはお前が勝手に決めた名だろう』

『いや、ちゃんとした名前さ。一樹・ディーン・フラメル・藤宮。ちぐはぐだが、これがお前の本名だ。そもそも、親がつけたのだかられっきとした名前だろう?』

『お前が親なんて俺は認めてない。』

『認める、認めないの話ではない。現にお前には俺の血が、気高き“神の血”が流れている。あの能力がお前に現れたのが唯一の証拠ではないか。』

『・・・』

『だから、親の指示には素直に従った方がいい』

『誰があんたなんかの・・・』

『勘違いするなよ?俺のためじゃない。お前の大切な人を守るためだ。お前が働かないと、またお前の母を使うことになるぞ?あれはもう限界に近付いているが、もうしばらくは使えるだろう。』

『!?貴様っ』

『さっき言っていたではないか、人を助けるために人を殺す。その時は今ではないのか?』

『くっ』

『お前の妹は使い物にならんしな。ライブラリーとして役に立っているが、はっきり言って自我は邪魔だ。ああして、自我を持たせているのはお前が働いているからだ。お前が人を殺したくないなどというくだらない理由で俺の命令を無視するなら、あいつの自我を奪うぞ?』

『ミルはあんたの娘でもあるんだぞ!?』

『あんなの娘だとも思ったことがない。あれの血を引いているせいか知らんが、無駄に現代魔法の才能をもっている。またそこが厄介だな。思い切って、精神を崩壊させ、廃人にでもするか?お前が持ってる石ならできるだろう?』

『ふざけるな!?母さんやミルに指一本でも触れてみろ!?貴様を殺すぞ!!』

『なら、殺せ。お前に自分の力の制御ができるならな。』

『!?』

『俺の演算領域を使ってやっと制御できているのだろう?お前の器はまだ小さい。そんな小さな器ではすぐに力が漏れてしまうぞ?』

『・・・』

『だから、俺の指示に従え。お前の大切な人のために。何より自分のためにな』

 

―――余計なことを思い出しちまったな。

今のは一樹過去。明智との真最中にも拘わらず、自分の過去を思い出していた。いや、明智と向き合っているからこそ思い出したのかもしれない。自分の精神を本当の意味ですり減らし、自分の理想のために命を捧げている明智を見て。

一瞬助けたいと思った。自分の父親に利用されていることも知らないで、その脆い命を自分にぶつけてきている明智を。でも、それでは自分がかつて決めた覚悟に反してしまう。今助けてしまえば、その覚悟が、決意が薄れてしまう。今まで多くの人達を殺してきた意味がなくなってしまう。

それに今ここで明智の命を取らないでおいたとしても、明智は普通に魔法は使えず、何年も牢屋に閉じ込められることになるだろう。それは本当に助けたことになるのだろうか?

これが明確な敵なら迷うことはない。しかし、あのいまいましい父親の息がかかっていると、話は別だ。あの父親はここで一樹が明智を殺しことを想定して送り込んだに違いない。なら、父親の思惑通り動くのは腹が立つ。

―――よしっ!!

一樹は決めた。自分がどうすればいいのかを。

一樹は右手を振るう。すると36発のも振動系魔法が明智に襲い掛かる。そうなれば出し惜しみはしない。たとえ正体がばれたとしても。案の定、クラスメイトの友人や先輩方は自分の戦闘に集中いて、こちらを見ている暇がなさそうだ。

36発の魔法はすべて明智の領域干渉に防がれた。

―――!?干渉力まで底上げしているのか!?俺の知らないうちに、あのCADにそこまでの性能が!?一体どうやったんだ!?

どうやらあのソーサリーブースターは演算速度、魔法発動の規模、干渉力、どうやら魔法師のランクの判断基準である三つの能力を強化または増幅が可能らしい。

―――っち、厄介な!そこまでして先輩を殺させたいのか!?

一樹の魔法は本気を出していくにつれて、魔法の危険度が上がってゆく。あそこまで強化された魔法師相手にしては命を絶つ以外にはほとんど一樹が勝つことは難しいだろう。

―――どうする?これ以上干渉力を上げたらこの魔法でも致命傷になりかない・・・

そう考えている間にも次々と魔法が飛んでくる。すべて、殺傷ランクB以上。一つでも当たれば、致命傷は免れない。中には一般公開されていない、高等魔法まであった。そんな魔法を全て解体術式(グラム・デモリッション)や領域干渉で無効化している。

―――時間はかかるが、あれにするか。

一樹はポケットから5枚の呪符を取り出した。その呪符には霊子(プシオン)の塊が取り巻いている。

精霊。それが霊子(プシオン)の正体。精霊は依代がなくても存在できるが、長期にわたって留めておきたい場合はこうして呪符などに封印するのが有効で、一樹は常に5体の精霊を連れて歩いている。一樹はその5枚の呪符を投げ飛ばすと、明智を囲むようにして静止し、そして一樹は喚起魔法で精霊を活性化させる。明智はすかさず、5枚の呪符を魔法で撃ち落とすが、すでに活性化している精霊には何の害もない。

『神から生まれし五体の下部。我との盟約に従い、我の分身となれ』

すると五体の精霊が先程一樹が使っていた振動系魔法を連射し始めた。

これは日本では『分身』、他の国では『シャドー』や『ドッペルゲンガー』などと呼ばれている。よく使われる魔法では、分身は自分の姿を複数作ることにとどまるが、実はそうではない。本来は姿だけではなく、精霊を併用して能力さえも分身させるのが本来の魔法。しかし、今一樹が発動した精霊は一樹の姿をしていない。それどころかコピーしている能力もほんの一部。姿形、能力の完全コピーは時間がかかる上に、数も量産できない。ゆえに今回は能力の範囲を限定し、数も五体と少な目にしたのだ。それでも存在できるのは40秒から1分程度。ただの時間稼ぎにしかならない。明智が防御に夢中になっている間に次の魔法の準備をする。一樹は右手を振るい、明智が展開している干渉領域に被らないように床に魔法陣を刻み込んだ。講堂で見せた魔法陣と似ているが、真ん中に書かれた文字が違っていた。

ルーンの発動は3段階に分かれている。

1段階目、ただルーンだけを書き、発動する方法。

2段階目、ルーンを中心に魔法陣を描き、呪文を唱える方法。

3段階目、2段階目と同様にルーンを中心に魔法陣を描き、それを補助する大規模な魔法陣を描き、呪文を唱える方法。

講堂で見せたのが3段階目の方法。それにはミールの力が必要で、一樹の振動系魔法だけではあれだけのサイズの魔法陣を作ることはできない。もちろん、手で書くことができるが、時間が掛かってしょうがない。今回は2段階目。威力は落ちるが、これから発動する技には十分だ。

『世界の根源からもたらされる力よ

その文字の音はニイド

その文字の意味は束縛

我が行く手を阻むものよ世界の根源に従い我らの必要な道を譲れ』

一樹が呪文を唱え終えると、一樹が描いた魔法陣から真黒な植物のツタのようなものが伸びる。そのツタは目にも留まらぬ速さで明智の体に巻きついた。

「なんだこれは!?」

と、明智が叫ぶ。

3段階目の方法で発動していたら、力加減では捻りつぶすこともできるし、絡みつくのは体だけではない。魔法式にも絡みつくことができるのだ。原理は想子《サイオン》でできた見えないツタが魔法式に絡みつく。意味することは魔法式の停止。本来その魔法に使われるはずだった魔法力の流れを阻害するのだ。だから情報強化や領域干渉も消滅する。

しかし、今回は2段階目。そこまでの効果はない。しかも、体に絡みついている時間もほんのわずかだ。一樹は自己加速を使わずに、一瞬ともいえる速度で明智との間合いを詰める。強化された情報強化や領域干渉の中では魔法を使うのは難しい。だから、直接魔法を使う。使う魔法は掌底。笹森との模擬戦で見せた技だ。しかし、今回は内部に力を生み出すのではなく、体に触れ、直接力を流し込む。これなら情報強化と領域干渉の影響は受けにくい。一樹は構えて、掌底を放つ。内部の力が無いので、今回は寸止めではない。一樹の渾身の掌底が明智の鳩尾に入り、倒れた。

これで一樹の戦闘は終わった。

 

「・・・負けたよ。色々ズルをした僕が・・・」

「残念です。先輩とはこうして戦いたくなかった。正々堂々と戦いたかったです。」

「よく言うよ。それじゃあ勝ち目がなかったろうに。」

「そんなことありませんよ。明智先輩の本来の魔法はもっと強いはずです。その人本来の魔法には強い想いが込められていますから」

「そうか。そう言ってくれるとうれしいよ。

君はやはり……」

「はい、先輩の言った通りです。さっきは騙してすみません。まだ、みんなにはバレたくありませんから」

「そうか。それが分っただけでも、いい。僕の理想は果たされた。もちろんこのことは墓場まで持っていこう」

「大げさですよ。それに先輩はまだ死にません。」

「ありがと・・・う」

明智は目をつぶった。死んではいない。どうやら気絶したらしい。さっきの一撃で気絶してもおかしくはなかったが、根気で起きていたのだろう。

 

一樹は周りを見回す。まだ、みんなの戦闘は終わっていなかった。

一樹は助太刀しようかと思ったが、後から文句を言われたらかなわない。本当に危ない状況になるまで見守ることにした。




今回の戦闘では6人とも戦っていますが、取り上げるのはミール、紗香、一樹の3人だけにします。
6人全員の戦闘を描写すると、早くストーリーを進めろ!!と思う人もいるだろうし、自分自身結構大変なので(-_-;)←こっちが本音。

今回でてきたソーサリー・ブースター改(エデン製)の補足説明をしたいと思います。
1つ目
原作でも出てきている通り、効果は魔法師が持っている本来のキャパを超える規模の魔法を発動できる。
2つ目
これはオリジナルで、ある石を用いることによって効果を発揮します。皆さんはもう、なの石かお分かりになると思いますが、ここでは“ある石”としておきます。
魔法演算領域。魔法式を構築する精神領域にある石で強制的に接続し、擬似的に魔法演算領域を大きくします。これにより大幅に魔法の演算速度を上げることができる。ということにしてください。オリジナルなので文句は言わないであげて!?意見は聞くけど(笑)
ある石と精神がどのように関係するかはおいおい作中で説明します。
3つ目
これもオリジナルで、干渉力を底上げします。
・・・これはまだ内緒です。とりあえずこれも“ある石”が影響していると言っておきましょう。

こんな適当に考えてしまったものを登場させてしまう作者ですが、これからもよろしくお願いします(#^.^#)

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