魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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第21話 その後

一樹達が大規模な魔法を無効化した後。

無事、撤退したチームは魔法警察に連絡し、魔法警察によってテログループの魔法師は全員捕まった。

明智、波佐間、アレクサンドルと強化人間三人は全員重症だったが、命を落としたものは一人もいなかった。

ミール、紗香、西園寺の三人は怪我がひどく、すぐに病院に搬送され、それ以外はその場の応急処置で済むような軽傷で病院送りになる生徒はいなかった。ここまで犠牲者を出さずに、生徒を解放できたのは一樹の作戦のおかげといっていいだろう。

警察の事情聴取は後日やることになり、その日はそのまま下校となった。

 

一樹は家に帰らず、ミール達が搬送された病院に向かった。

「大丈夫か?ミル」

「うん、全然平気」

ミール、紗香、西園寺は検査のため入院していた。

「そうか、紗香たちの様子も見てくるよ」

「私も行く」

ミール、紗香、西園寺は個室の部屋に入院していた。隣の部屋というあたりは色々気をまわしてくれたみたいだ。

最初は紗香

一樹はコンコンと扉をノックする。

「はーい。入っていいよー」

名乗ってもいないのに入室を許可した。誰が扉の前に立っているか分っているみたいだった。

「失礼するよ」

と言って一樹は扉を開ける。

「お見舞いに来てくれたの?」

と目を輝かせて見てくる。

「残念ながら、お見舞いの品はないよ」

紗香はえーーーと頬を膨らましながら答えた。

「怪我の具合はどうだ?」

「大したことないよ、ここの医者が大げさすぎなぐらい。こんな傷しょっちゅうしてるって」

「女の子なのにそれもどうかと思うけどな」

「ミルちゃんの方は?」

「大丈夫。紗香よりはひどくないから」

「そう?よかった~

ミルちゃんの顔に傷でも残ってたらミルちゃんの相手ぶっ殺してやるところだったよ」

と笑いながら言った。

―――紗香、ミルのことえらく気に入ってるよな。ミルも紗香のこと気に入ってるみたいだし。

「サイのところにもいこうと思ってるんだが、紗香も行くか?」

「いいよ、あいつの馬鹿面を拝みにいこうじゃない」

一樹は西園寺の病室の前に立ち、扉をノックする。

「ほーい、だれー?」

「俺だ、一樹」

「おー、一樹か、入ってくれ」

一樹達は扉を開け、中に入る。

「・・・なんか重症そうだな」

「ああ、結構あっちこち折れてるみたいでよ。三日は入院しろってさ」

「あーあーあんな雑魚にそこまでやられるなんて、よわっ!!よわっ!!」

と紗香は指をさしながら笑う。

「うるせえな!結構強かったんだよ!殴っても殴っても平気な顔をしてやがるし。足の骨を折っても立ってきやがったんだぜ?」

「強化人間だからな。骨を折れるだけでもすごいさ」

「そうか?」

「それでも、九頭見会長や弥生先輩は傷一つなかったけどね」

と紗香はくっくっくっくっと笑いながら付け足した。

「あの二人は規格外さ、なんて言ったってあの九頭見と弥生の次期当主と言われてるんだから」

「それでも悔しいよなー

お前らは俺が戦った相手より全然強いのにケロってしてるんだから」

「そう言うな。お前だって鍛え方次第ではもっと強くなるはずさ。何なら俺とちょっと訓練してみるか?」

「お?それいいじゃん!!

腕に毛ぐらいは生えるかもよ?」

「うっさいわ!

でも、それもいいかもな。退院したら頼むわ」

「ああ、いいぜ」

「一樹きびしいよ」

とミール呟くように言う。

「・・・お手柔らかに頼むぜ」

「それはどうかな」

と一樹は笑って答えた。

 

その後、ミール達との談笑を楽しみ、一樹は一人で家へと帰った。

「お帰りなさいませ

留守中の来客はいませんでした。

留守中の電話は一件

○一○回線です。」

もう、情報が回ったか。早いな。

一樹は地下に降り、長瀬に電話をした。

「うむ、やはり理想郷(エデン)が絡んでいたか」

「ええ、絡むどころか、本腰を入れていたように思えます。」

「目的はなんだか分るか?」

「ええ、恐らく、俺の実力を誇示させるためでしょう。それが自分を四校に入学させた一番の理由ですから」

「・・・九頭見と弥生にか?」

「ええ、本来なら七草家や十文字家がいる一高の方が良かったのかもしれませんが、四校で調べものもありましたし、それに・・・」

「それに?」

「恐らくですが、司波兄妹の正体に気づいていたんだと思います。まだ、今は四葉に喧嘩を売りたくはないそうですから」

「そうか、それなら納得がいくな。魔法界にお前の実力を知らしめるには適した人材だ」

「しかし、甘い考えですね。知った本人が他言するか分らないのに」

「それでも、少なからず、今回の事件でお前に興味を持った人間は何人かいるのではないか?

今回の事件の概要にさっそくお前の名前が出てきているからな。」

「そうですか。そうなるとあいつの思惑通りですね」

「それと、もう聞いたか?捕まった奴らの話を」

「いえ、そう言った類の情報はまだ」

「アレクサンドル・アシモス、波佐間 源を含む魔法師達が脱走した。」

「!?拘置所からですか?そこまで警備は甘くないと思いますが」

「いや、警備は完璧だったさ

しかし、30を超えるプロの魔法師が襲撃してきたのだ」

理想郷(エデン)が本気を出せば、そのぐらいの数は余裕で出せるでしょうね」

「四校の生徒は無視したみたいだが、一人は殺された」

「なっ!!もしかして!?」

「そうだ、お前が戦った生徒。明智 優だ。」

「くそっ!!」

一樹は思いっきり机を叩いた。

「恐らく理想郷(エデン)に深入りしすぎたのだろう。かといって引き込むほどの人材じゃない」

「・・・」

一樹は何も答えず、とても思いつめた顔をしていた。

「お前のせいではない。どうしようもなかったさ」

「いえ、あいつは、親父は俺に明智優を殺させるつもりでした。俺が殺さなければ別の手で口止するのは容易に想像できたはず。なのに、俺は考えるのを忘れていた」

「例え分ったところでどうにもならない。どっち道殺されていたさ。」

「でも・・・」

「まー思いつめるのはお前の自由さ。でも、あんまり気負いすぎるな」

「はい」

「今回のことはなるべくお前の名前が目立たないようにしておくさ、理想郷(エデン)の思い通りにならないためにな」

「ありがとうございます」

「それでも、気を抜くな。お前の力を見て、お前の正体に気付く者も出てくるかもしれないからな」

「はい」

「でわこれで失礼する。

・・・今日は早く寝るといい」

「はい。ありがとうございます」

画面が消え、静寂が訪れる。

一樹は後悔と怒りが混ざった顔をしていた。

すると、電話が鳴る。

ディスプレイを見るとそこには今回の黒幕の名前があった。

「やあ、ディーン。調子はどうかな」

薄気味悪い笑みを浮かべているのは前にも連絡してきた組織の者だった。

「最悪さ、親父」

「ふふふ、親父と呼ばれるのはどれだけ振りだろうね。まーいいさ。今は組織の上司と部下ではなく、父親と息子として話してやろう」

「今回は色々やってくれたな」

「楽しめただろう?お前の任務の手伝いをしてやったのさ」

「魔導書は破壊したぞ?」

「いいさ、あんな物。手に入れようと思えばいくらでも手に入る。それよりお前の存在が表に出るのが重要だ。」

「そうか、でも九頭見と弥生の当主の耳には入らないかもしれないぞ?」

「別にそんなことは期待していないさ。ただ、次期当主と言われているあの二人に知ってもらえればいい。」

「・・・何がしたい?」

「これは今すぐに何かをしたくてやったわけではない。十年越しの計画だよ

魔法師の世界を作るためのな」

「十年先まであんたの言うことを聞くと思うか?」

「いいや、そんなことは思ってない。しかし、後戻りはできなくなってるだろうな」

「何をするつもりだ。何をさせるつもりだ。」

「ふふふふ、一つだけ教えてやろう

最強の魔法を持つ、戦略級魔法師を残さず表舞台に立たせるためだよ」

「残さず?非公式の戦略級魔法師もってことか?」

「そうだ。すでに公開されている戦略級魔法の起動式はライブラリーに保存してある。だから、非公式の戦略級魔法の起動式をライブラリーに保存する」

「そんなことさせるか!?」

「いいや、阻止するのは無理だな。見ただけで起動式は保存されてしまう。あれはそういう風にできている」

「貴様!?」

「あれが覚えれば、一般人でも使えるように改良できる。そうすれば世界のパワーバランスは関係なくなるだろう?」

「そんなことをしてなんになる」

「なんにでもなるさ。強い魔法師は国から押し付けられた重荷を下ろすことができる。そうすれば魔法師の理想郷に近付く」

「・・・」

「お前も時期に分るときがくるさ」

「いいや、分るとは思えないな。母さんをミールを利用しようとする奴の考えることなんてな」

「まあ、今はいいさ、言うことを聞いてさえいれば」

「っく」

「そうそう、もう知ってるとは思うが、お前が殺さなかった魔法師のなりぞこないは殺しておいたぞ。お前が殺さないから、余計な手間がかかったよ」

「貴様、どこまで外道なんだ」

「ふふふ、これで分っただろう。お前には人を助けることなんて無理だ。お前が助けられるのは、そうだな、母親と妹で精一杯なんじゃないか?だから、これからはもう他人を助けようとは思わないことだな

じゃあな」

ディスプレイは消え、再び静寂が訪れた。

一樹は悔しさで今日は眠れそうになかった。

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