魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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最終話

ミールと紗香は次の日には退院し、西園寺もちょうど三日で退院できた。

学校も通常通り授業を開始し、いつもの日常を取り戻しつつあった。

でも、生徒会や風紀委員会はそんなことにはいかなかった。

魔法戦闘で破壊された場所や建物の修復作業に追われ、その上模擬戦の立会もいつも通りにやるもんだから、非番の人間も駆り出され、一樹とミールは忙しい日々に追われていた。

補修作業もひと段落したある日。楓が改めて話があるらしく、一樹とミールの他に紗香と西園寺まで生徒会室に誘われた。

 

生徒会室には楓と星華が待っていた。

「今回の騒動では皆さんよくやってくれました。特に一樹君。君の的確な指示がなければ、負傷者も出ていたでしょう」

「いえ、自分はやるべきことをしたまでです」

楓はいつもより丁寧な言葉づかいで言ってきた。

そんな楓の言葉に一樹は淡々と答える。

「いえ、そんなことはないわ。本当は上級生で生徒会長である私がやらなければいけないこと。あなたは本当によくやってくれました。

それで、今回の事件の事の顛末ですが、攻めてきた魔法師には全員逃げられてしまいました。アレクサンドルの事をロシアに確認しても、ロシアにずっと滞在していた、日本に訪れた記録はない。しまいには別人であったなどと言い出す始末。波佐間源の行方も分からずじまい。波佐間源はだいぶ前に

無限一刀流を破門になっているみたいでした。そのほかの魔法師や強化人間の出生も分らずじまい。事情を知っていそうな優君は拘置所で何者かに殺害されてしまいました。結局、何かしらの大きな組織が動いたであろうということしか分らない。それが今回の事件の顛末です」

「なんか、納得いかないわね」

そう言ったのは紗香だった。

「大きな組織の検討もつかないのか?これだけのことができるんだから、候補組織の名前ぐらい出てもいいのにな」

紗香に続いて言ったのは西園寺だった。

「そうね。私たちがきいた理想郷(エデン)の名前を出しても相手にされなかったわ

・・・一樹君できる限りのことでいいの。教えてもらえるかしら?」

理想郷(エデン)

この世界に魔法師を人間よりも一つ上の存在とし、魔法師だけの理想郷を作る。それが理想郷の基本理念です。

つまり、魔法師を新人類とし、世界を支配するということです。

そんな世界ができたら、魔法の使えない人間は奴隷のように扱われ、魔法師だけが裕福な生活ができるようになってしまうでしょうね」

みんな黙っている。

そんな中楓が重い口を開く。

「・・・そんな組織聞いたことないわよ」

「日本ではあまり活動しませんし、うまいこと正体を隠していますからね。今のこの世界に疑問に思った魔法師だけがその組織の存在に気づくようになっていますからね」

「疑問?」

「ええ、今の魔法師の扱われ方に対してです。多くの国では魔法師は戦力。ひどく言えば兵器とみなしています。そんな扱われ方に疑問を抱く魔法師は少なからずいるはずです。」

「確かにね。古式魔法とは違って、現代魔法は兵器として開発された節があるから。」

星華がそう呟くと楓が少し顔をしかめる。

九頭見は十師族の一つ。それは正真正銘兵器として開発された家系だった。

「でも、それはとうに昔の話よ?それなのになんで今になって」

星華は続けて言う。

「ええ、そうですね。でも、今だからこそ、自分の待遇に不満を持つ人たちが多いんです。

開発された魔法師は代を重ねるごとに自分たちが兵器として開発されたことを忘れていく。今では一般人でさえも魔法師になれる。そんな人々が魔法師になり、世界で兵器として道具として働くことに疑問を持ち始めるんですよ。」

「確かにそう考える人もいるかもしれないけど、だいぶ少数派よね?」

楓は当然の疑問をぶつける。

「そうですね、全ての魔法師が戦闘に投入されるわけではありませんが、ほとんどの魔法師は戦場で戦い、生き抜いている。しかし、全ての魔法師が疑問を抱くわけではありません。中には守りたい物があって、自分の意志で戦っている者の方が多いはずです。しかし、その中でもたった一人でも疑問を持てば、その疑問は感染していきます。そんな人々が立ち上げたのが理想郷(エデン)なんです。世界全体から見れば確かに少数派です。しかし、裏世界を牛耳るには十分な権力と戦力があります。なんせメンバーのすべてが魔法師で結成されていますし、魔法を強化する技術にはどの国でもまねできないレベルの技術を持っていますしね」

「・・・一樹君はなぜその組織の事をそんなに詳しく知っているの?あなたも世界に疑問を持ったの?」

「確かに疑問はありますね。でも自分が人間ではないなんて思ったことはありませんよ。自分たちは紛れもなく人間です。

自分が組織のことを知っているのは、前にも言ったでしょう?魔法界の闇に少し詳しいだけですよ」

「そう・・・」

「これで、全てです。他には何も知りません」

一樹は慎重に嘘をついた。誰にもばれないように。

「ええ、いいわ、ありがとう。さすがにここまで大きい話だと私たちじゃどうしようもないものね」

「ええそうですね。現段階では何もできません

それと、九頭見と弥生の当主には言わない方がいいかと思います。あなた方ほどの家系が、特に十師族が日本での活動が少ないといっても組織の実態をつかんで無いとは思えません。訳があってお二人には話していないのでしょう。現在の御当主がお話になるまで控えたほうがいいかと思います」

「そうね。そうしとくわ

ありがとう、話してくれて」

「いえ、大した情報が無くてすみません」

「ううん、全くないよりマシよ。

では、みなさんお疲れ様でした。今日のところはもういいわよ。明日からのバトルロワイヤル頑張ってくださいね。みなさんには期待してるんですよ?」

「はい」

そう言って、四人は生徒会室を後にした。

 

そして、生徒会室に残された二人は

理想郷(エデン)か……

とんでもない組織が絡んでたのね」

楓はそう言っても、そこまでの動揺を見せていない。さすがは師補十八家と言ったところか。

「ええ、一樹君の話を聞くと、今回の事件も納得がいくわ。ここまで大規模な魔法師によるテロ行為は歴史的に見てもそれほど無いでしょうね。」

「実質的な首謀者と場所が場所だけにあまり大事にはならないでしょうけど、確かにそうね。

実は事件のすぐ後にお父様に理想郷(エデン)のことを聞いたのよ」

「どうだった?」

「知ってはいたわ。でもあまりにも小規模な組織で大した驚異にもならないそうよ。

今回の事件も組織総動員したものだそうよ」

「十師族はそういう見解なのね。でも、本当にそうかしら?とても今回の事件の戦力が全てだとは思えないえわ」

「そうね、認識を改める必要が在りそうだけど、十師族は相手にしないみたい。」

「そう……それにしても、とんでもない組織を相手にしてるみたいね、一樹君は。相当な実戦経験を積まないとああはならないわね。それも戦争の最前線を潜り抜けないかぎりね。

そう言えば、会議室から脱出したとき何かいいかけてたわよね?なんだったの?」

「ああ、それね。

藤宮家のことを調べても何も無かったって言ったわよね?

でも、藤宮ではヒットしたわ」

「苗字だけってこと?」

「そうよ」

「でも、一樹君の家系は当主が変わるごとに苗字が変わるんじゃなかったのかしら?」

「ええ、でも一応調べてみたの。

名前は『藤宮 源吾』

第1研究所から第10研究所の設置者よ」

「!?それって……」

星華の顔が歪む。

「そう。十師族プロジェクトの発案者にして、日本の現代魔法の技術を確立した人物よ

魔法師の開発の事自体があまり公にはされてないから、特に魔法歴とかでは習わないけど」

「その人が一樹君の一族の一人だと考えているの?」

「いいえ、別にそう考えるのは話が飛躍しすぎてるし、一樹君の話を信じるなら苗字が同じなのも可笑しいわ。でも、苗字が同じことは単なる偶然じゃ無いとも思ってる。もし、何かしらの関係があるなら、藤宮の情報操作のレベルも頷けるわ。」

「……一体彼は何者なのかしら」

「彼が何者でも構わない。私は一樹君のこと信頼できると思ってるわ」

「ずいぶんの入れ込みようじゃない。もしかして恋でもしちゃった?」

「冗談。そんなんじゃないわ。ただ、そんな気がするだけ

星華だって一樹君のことお気に入りじゃない?」

「ええ、そうね。まるっきり素性の分からない子じゃないし」

「と言うと?」

「私と共通の知り合いがいたの。

月影月夜。あの月影の娘よ。」

「それまた、ずいぶん大物と知り合いなのね」

「ただの知り合いじゃないわ。幼馴染みだそうよ」

「え!?じゃあ一樹君、二高に通うはずじゃないの?」

「そうだけど、事情があってこっちに来たみたいよ」

「どうせ彼の事だから、複雑な事情なんでしょうけど。

でも、良かったわ。全く素性不明じゃなくて。なんせあの月影が付き合ってるんですから。

じゃあ、これ以上詮索するのはやめしょうか。あんまりつついて、蛇が出てきたら困るし」

「もう、これ以上ないって位つつき回したと思うんだけど?」

と星華は笑って言った。

 

そんな会話が生徒会室でされてることも知らない一樹、ミール、西園寺、紗香の四人は生徒会室から教室へ戻るところだった。

「何かしっくりこねーよな」

「今回の事件のこと?」

「ああ、納得いかねー」

「まあ、私達にはどうしようも出来ないような組織みたいだし、もう考えない方が良いんじゃない?てか、考えるだけ無駄でしょ。」

「そう言うもんか?」

「それよりもっと考えることがあるでしょ?」

「ん?<バトルロワイアル>か?」

「そう!明日から気合い入れるわよ~」

「紗香は九校戦選抜チームに入るつもりか?」

組織の話をしていた時は黙っていた一樹が話題が変わると、話に入ってきた。

「うん、バトル・ボード狙ってるんだ」

「え!?お前もか!?」

紗香の言葉に西園寺が反応した。

「あんたも?」

「ああ、バトル・ボードは移動系魔法と相性良いからな。」

「……無理じゃない?」

「な!?そんなことねーよ!!

そう言うお前こそ出来るのかよ!?」

「波乗りは加重系との相性も良いのよ」

「え?そうなのか?」

「一樹の方が詳しいんじゃない?」

と紗香は一樹に聞く。

「そうだな。古式魔法にも板に乗って水面を移動する魔法がある。そう言う魔法は加重系魔法の方が多いぞ?技術は必要だが」

「ほらね?」

「そうだったのか。知らなかったぜ。」

「はぁ~バカね」

なに!?といつものように西園寺は怒っていたが、紗香は無視してミールに話しかけた。

「ミルちゃんはもう選抜チームに入ってるんでしょ?」

「うん、クラウド・ボールに決まってる」

「あれ?スピード・シューティングの方が向いてるんじゃない?ほら、魔法発動するの早いし。」

「うん、でも制御が苦手。大雑把ならできるけど、クレーンだけを狙うのは無理かも。特に対戦方式になったら、自分のだけを狙うのは難しい。」

「そっか~

勿体ない気がするけどね」

と言って紗香はそれ以上言うのを止めた。紗香には何となく分かったみたいだが、ミールの銀の弾丸《シルバー・ブレット》を使えば、余裕で勝てるだろう。ミールはこの魔法だけは正確無比で一瞬よりも早く魔法を発動できる。しかし、ミールは使わない。いや、公共の場では使えないのだ。

「一樹は何か出るのか?」

「特にそう言う予定はないが」

「なくたってほっとかないわよ、モノリスとかに抜擢されるって」

「そうか?俺はあまり魔法技能が高いわけじゃないぞ?」

「それを余りある対人スキルがあるでしょ?」

「だとしても、モノリスはないな。あれは戦闘能力より、チームワークが大事だからな。俺にチームワークはない。」

「言い切ったよ……」

「個人競技なら出てもいいかな。ミールと同じクラウド・ボールとか」

「一樹なら身体能力だけで全部返しちゃいそうだね」

「いやいや、無理だろ。最後は九個のボールを返さないといけないんだから」

「そうかなー?意外といけそうだけど。

それより、どうやらこの面子で九校戦に行けそうだね。」

「そうだな、そうなるように頑張るか。」

と一樹が言うと、

「頑張る」

とミールも言った。

「いや、藤宮兄妹はもう頑張らなくてもいいだろう」

と西園寺が突っ込んだ。

 

 

明日からは<バトルロワイアル>。

二人の波乱に満ちた学園生活はまだまだ続きそうだ。




『魔法科高校の錬金術師』をここまで読んでいただき、ありがとうございます!!
これで『魔法科高校の錬金術師』の第一章は終了です。
サブタイトルは~四高襲撃編~と言ったところでしょうか?
第二章は~バトルロワイヤル編~ですね。
<バトルロワイヤル>は作中にも出てきた通り、九校戦出場をかけた大イベントです。
選抜された者は力を誇示し、選抜されたい者は力を強調する。そんなイベントです。
はたして、四人は無事、九校戦に抜擢されるのか!?
他の登場人物は九校戦でどのような試合を見せるのか!?
乞うご期待です!!

これで物語は一つの節目を迎えました。
ここまで読んでくれた人には本当に感謝しています。
自己満足で書いている二次創作ですが、これからもよろしくお願いします。

一言メッセージや感想などいただけたら嬉しいです。

これからしばらくは誤字脱字の修正に入るので、第二章は少し間が空いてしまうかもしれません。
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