魔法科高校の錬金術師   作:藤宮一樹

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第5話 藤宮家

藤宮家

 

今は古式魔法を継承する一族。

しかし、古式魔法の世界では全くと言っていいほど、その一族は有名ではなかった。

むしろほとんど聞いたことがないというレベルだろう。

それにはれっきとした理由がある。

それは当主が変わるごとに苗字が変わるという特異性にあった。

苗字を変えるということは富や名声、地位などをすべて捨て去るということ。

普通、名前と言うのは一族の看板であり、象徴である。

本来なら守っていくことが重要なのだ。

しかし、そんなことよりその一族には重要なことあった。

一つ目が魔法技術の伝承。

一子相伝の魔法を決して途絶えさせないこと。

それがこの一族の存在意義であり、全てであった。

そして二つ目、決して魔法術式を他者に知られてはいけないこと。

これは他の家系でもそうかもしれないが、この一族の場合術式の機密度が違う。

その魔法の構築過程や魔法の発現結果、魔法の名称などそのすべてが機密扱いなのだ。

しかし、いくら秘匿にしていたとしても秘密というのは外部に漏れてしまうもの。

そこで苗字の変更という特異性の高い制度を行っているのだ。

 

「自分はそんな家系の末永であり、正統後継者なのです」

みんな愕然としていた。

楓と星華は目を見開いて、一樹を見ている。

恵は空いた口が塞がらないという感じで、志帆は冷静さを保っているようでいて内心動揺しているのが丸分かりだ。

「な、なんでそんなことを私たちに?」

楓は信じられないという顔で一樹に言う。

「言いましたよね?全て話すと」

「それにしても・・・

私達に話しても大丈夫なの!?」

「ええ、すでに現当主の苗字と自分の苗字は違いますし、この話自体完全に知られていないわけではありませんから

それでも他言無用でお願いしますが」

「え、ええそれはわかっているわ」

楓は少し怯えた顔で答える。

「まさかこんな事情があったなんて・・・」

星華は小さく呟いた。

「確かに術式の伝承を重視する古式魔法師の家系はあるわ

でも、そもそもそういうところはあまり魔法科高校に入学しないんじゃないかしら?」

星華はの家、弥生は古式魔法の名門で知られている。

故に古式魔法の世界の事情もそれなりに把握していた。

「自分には確固たる目的を持って四高に入学しました」

「目的?」

目的を持たずに魔法科高校に入学してくる方が少ないが、一樹からは何か特殊な目的を持っていそうだと感じた楓は思わず聞いてしまった。

「自分の家系は技術の伝承をすると同時に、当主は技術を発展させなければならない義務が課せられます

現当主はすでに他の流派から技術を取り込みその義務を果たしています

しかし、魔法が発見された時代の混乱に乗じて技術を取り込むことは容易でしたが、今は他流からの技術を取り込むことははほぼ不可能です。

故に自分は現代魔法から技術を取り込みその術式の発展を行いたいと思っています」

一樹の目からは強い信念を感じられる。

そんな目を前にして皆、口を開くことができなかった。

「しかし、自分はミルと違い現代魔法の才能が乏しい

自分はどちらかというとペーパーテストの成績で受かったようなものですから」

四高は多くの魔工師を世に送り出している。

技術を疎かにしているわけではないが、魔法理論がぶっちぎりの一位だった一樹は多少実技が劣っていても優遇された節がある。

「自分は古式魔法でしか実戦レベルで扱う事が出来ません

一対一の、しかも隠れるような場所がない中、現代魔法師とやりあっても結果は目に見えています

しかも自分の術式は秘匿扱いのものばかり、あんな監視が付いた模擬戦なんてもっての他です」

模擬戦を行われる時は不正行動監視のためカメラが取り付けられている。

通常カメラが2台。

想子(サイオン)の可視化処理が施されたカメラが2台。

共に録画がされており、一年間そのデータは保存されることになっていて、四高の生徒ならばいつでも視聴することがでる。

「別に見られていてもいい術もありますが、あくまでも見られていいレベルなのであって、見せびらかすようなマネはしてくはありません」

生徒会室にいる面子全員黙り込んでしまった。

ミールも既に泣き止み、一樹の右腕にしがみついている。

そんな中、沈黙を破るようにして楓が立ち上がり、一樹に向かって頭を下げた。

「ごめんなさい

そんな事情があるとは知らず、あなたを責めるようなこと言ってしまって」

一樹は楓のそんな行動を見て思わず驚いてしまった。

すかさず、一樹も立ち上がり

「いえ、謝られるような事はされていません

むしろ会長達の立場なら当然のことをしたまでです

こちらこそ先輩方にご迷惑をおかけしてしまって申し訳ありません」

一樹も頭を下げる。

「いえ、それでももう少し考えるべきだったわ」

頭を上げ、本当に申し訳なさそうに楓は答えた。

「いえ、今回は全面的に自分のせいです

代わりにといってはなんですが、今週中には模擬戦を行い、ランキングを変更しましょう」

「え!?」

「明日、明後日とは言えません

こちらにも準備が必要ですので」

「そ、そうじゃなくて

大丈夫なの!?」

さっきの話を聞いて皆、100位に甘んじている理由が分かったのにいきなり模擬戦を行うと宣言した一樹を唖然として見ていた。

その上ランキング変更の宣言、つまりその模擬戦に勝つと宣言したのだ。

「さっきも言った通り、見られていい術もありますから

魔法科高校に入学した以上一定のリスクを負う覚悟はできていますよ」

「事情を知った以上あなたがリスクを負う必要はありません!」

「ありますよ」

「へぇ?」

楓は一樹の意味の分からない断言に思わず変な声が漏れてしまった。

「先輩方に迷惑をかけてしまったのもそうですが、

ミルが自分のために怒ってくれた。

ミルが自分のせいで泣いてしまった。

それだけで十分です

少しミルには我慢してもらおうと思いましたが、仕方ありませんね」

昼休みの終わりのチャイムが鳴り響く。

「すみません、昼食が途中になってしまいましたね

では自分は教室に戻ります。ミル」

一樹は食べかけの弁当を片付け、席を立つ

ミールもすっと立ち、一樹のあとに続く。

一樹が生徒会室の出入り口に差し掛かったとき

「よっぽど妹思いなのね」

「妹のためにがんばる兄は普通だと思いますが?」

「ミールちゃんもブラコンだと思ったけど

一樹君もかなりのシスコンね」

「変ですか?」

「いいえ、全然。私は好きよ?」

「ありがとうございます」

「ふふ、面白い人ね」

一樹はドアを開け、生徒会室を後にする。

チラッと楓の方を見る。

その時には最初に見えた嫌悪感は見えなかった。

 

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