都市伝説とオウマガトキ   作:コハク

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さて、今回は包丁さんです。
認知度はかなり低いと思います。

この小説で少しでも興味を持ってもらえるとうれしいですね。
それでは、どうぞ。



ほうちょうさん、切ってください。

「ったく、あのヤロー。また殴りやがって……。」

 

「大丈夫なの、いつもいつも。」

 

「お前、またなんかやらかしたんじゃねぇのか?ほら、だって前も駅前で……」

 

「あれはあっちからちょっかいかけてきたんだよ。俺はただそれに乗っただけで……!」

 

「お、落ち着いてください……。」

 

……いつもと、同じこの四人。

りか、いつき、みゆう。

そして俺の、四人。

 

俺らはオカルトやファンタジーと言った類の好きな奴らの集まりだ。

りかはスポーツ女子って感じのさばさばしたやつ。いつきは俺の幼なじみ。みゆうは背の低い男子で、よく男に絡まれているのをりかが助けているらしい。

 

「あ、そうだ。お前この間さ、親なんて死んじまえばいいのに、とかって言ってたよな。」

 

「あぁ、言ったな。それがどうした。」

 

「いいのを見つけたんだよ、やってみる価値はあると思う。」

 

「なっ……!?なんだよ、どうやるんだ!?」

 

「まぁ、落ち着けよ。それはな、包丁さんって言って……」

 

 

 

 

自室の机の上には、俺の父さんと母さんの名前が書かれた紙。

そしてその名前の下には命と、小さく書いてあった。

窓の外の空は赤く染まっていて、赤が照らす俺の手には包丁が握られていた。

 

 

 

 

 

「こ、こえぇ……。」

 

「あんた、どこでそんな情報仕入れてくるわけ?」

 

「ん、あぁ、まぁ、いろいろ。とにかく、試してみる価値はあると思うんだよな。」

 

「だな……今日、試してみるさ。」

 

「あぁ。結果を楽しみにしてるぜ。でもまぁ、気ぃつけろよ?いくら都市伝説とは言え、危険なのには代わりねぇからな。」

 

「おうよ。ほんじゃ、またあとで。」

 

「うん。あとでね。」

 

「じゃぁ、ね。」

 

そう言って俺たちはそれぞれの帰路についた。

このあと、俺の身にあんなことが起こるなど全く知らず。

 

 

 

 

俺はその紙の上に持っていた包丁を置いてから、呟くように言った。

 

「……包丁さん、切ってください。」

 

 

 

 

「包丁さんってのは、大昔に生け贄にされた少女らしいよ。」

 

「ほう、それはそれは。なんか良い感じのやつ!」

 

「良い感じのって……。」

 

「うーん……やるかなぁ……包丁さん。」

 

「やるんであればやり方とか教えるぜ?その辺も全部調べてきた。」

 

「そこまでくるとやらせるつもりだとしか思えねぇな。」

 

「まぁな。所詮は都市伝説だ。」

 

「あ、もうすぐチャイムなるよ。戻んないと……。」

 

しっかり者のみゆうが言った。

その言葉でみんなが席へと退散していく。

俺たちも自分たちの席へと戻る。

 

「またあとで。帰りに話聞かせてよね。」

 

「あぁ。もちろんだ。」

 

いつきはニヤリと笑って言った。

俺はいそいそと席に座り、授業の用意をしてぼぅっと窓の外を眺めていた。

これから行う、包丁さんのことを考えながら。

 

 

 

 

なんの音もなく現れた少女は、真っ黒なワンピースに赤いリボンのカチューシャをつけていた。

背丈的に、小学生ぐらいだろうか。

その少女は、驚くほど冷たく、虚ろな目で言った。

 

「二名のターゲットと一名の指名者。まずは、ターゲットの命を切ります。」

 

そう言って右手に包丁を持ったまま俺の部屋から出ていったあと。

甲高い叫び声と野太い叫び声。

俺の父さんと母さんが"切られた"

 

「すげぇ……すげぇよ!!」

 

俺はそうつぶやき、部屋から出た。

 

「……お兄さん?」

 

ふと後ろから声が聞こえた気がした。

振り向くと、背が高めの女子がいた。

 

「あ、気づきました?」

 

「声かけてきたら気づくだろ。普通。」

 

「そうですか。気づいてもらえてうれしいです。」

 

そいつはにこりと笑ってそう言った。

 

「……で、お前は誰だよ。」

 

「私、ですか?……そうですねぇ、言っちゃえば幽霊みたいなもんですかね。」

 

「幽霊……。」

 

はじめて幽霊なんかをみた。

まさかこんな形で出会うなんて思ってもいなかった。それに以外と姿形がはっきりしているし、足だってちゃんとある。

 

「で、なんのようだよ。」

 

「んーと、ちょっとした忠告をしようと思いまして。」

 

「忠告……?」

 

そう言うと幽霊はいきなり真面目な顔になって話し始めた。

 

「包丁さんは、名前を呼んでも帰らないことがある。」

 

「は?それってつまり……」

 

学校で教えてもらった包丁さんの帰し方。それは包丁さんの名前を呼ぶこと。今回の場合、ふつうの包丁を使っているから万能包丁さんとなる。 

その名前を呼べば帰るはずなのだが……

 

「包丁さんが帰るのは気分次第。名前を呼んでも帰らないことがある。そういうこと。」

 

「な、なんだよそれ……そんなの、聞いてねぇよ……。」

 

ギィ、ギィ……

階段のきしむ音がする。

包丁さんが、上に上がってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

「まじかよ……。俺は、ここで終わるのか……?」

 

「そうみたいだね。試しに名前だけ呼んでみたら?たぶん無理だろうけど。」

 

「二名のターゲットを切りました。続いて、一名の指名者を切ります。」

 

「待てよ、万能包丁さん。」

 

包丁さんはピクリと少しだけ動揺したように動きを止める。そのまま帰ってくれる……訳でもなく。

 

「指名者の"命"を、切ります。」

 

と、静かにいって、包丁をこちらに向けてきた。

 

「おいっ!?お前、そこに立ってねぇで助けろよ!」

 

「残念だったね、お兄さん。」

 

幽霊はそう言って、くるりと背を向けた。

 

「あ、おいっ、待てよ!……ぐぁっ!?」

 

背中に、鋭い痛みが走る。

そしてそのまま、床に倒れる。

薄れゆく視界の中、背中に包丁さんが乗ってきた。

幽霊の少女は俺に背を向けたまま、ぎりぎり聞こえるくらいの小さな声でこう言った。

 

「お兄さんに、最高の死があらんことを。」

 

そう言う幽霊の横顔は、なんだか楽しそうに見えた。

 

そう思った時、俺の意識は闇の中へと吸い込まれていった。

 

 

~~~~

 

 

続いてのニュースです。

○○市○○町に住む、××家が、一家揃って死亡しているのが発見されました。

第一発見者は××家の長男、×× ××君の同級生で、連絡しても返事がこない、と言う理由から家を尋ねたところ、死亡しているのを発見したそうです。

警察は、死体の状況から凶悪な殺人鬼の犯行だとみて、捜査を続けています。

次のニュースです……






『俺に、最高の死があらんことを。』



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