都市伝説とオウマガトキ   作:コハク

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やっとできました。新しいお話です。
今回の話はオリジナルとなっています。
書いた話が本当になる少女の話。
誤字、脱字などがありましたら教えてください。
それでは、どうぞ。


自作自演の犠牲者

 

あいつは、いつも自分で怖い話を作っていた。

それをみんなに話して、出来映えを確かめる。

褒めてもらうとにっこりと笑って、読んでくれてありがとう、とお礼を言う。

あんまりここが……と言われるとその場で訂正をする。

そのぐらい、怖い話を作るのに夢中な子。

あの日も、いつもと同じようにあいつは。

俺に物語を見せに来た。

 

「ね、ね、これ知ってる?」

 

「なに?」

 

「黄昏時の異世界の話。私の新作なの。」

 

「なんだそれ?また新しい怖い話か?」

 

「うん。また作ってみた。」

 

「面白そうな題名じゃん。」

 

「あ、違うの。今のは少し違うというか、内容を要約するとそうなるというか。

本当の題名は、黄昏時、まさにこのときって言うんだ。」

 

「なんというか……厨二病チックな題名だな。」

 

「まぁね。でもこのくらいインパクトがあった方がいいのかなって。」

 

「……興味はそそられるかな。」

 

「お、題名は好感蝕?

ささ、早速内容も……」

 

そう言ってあいつはいつもの小さなノートを差し出した。

受け取ってペラペラとめくる。

無数の文字の羅列。

今まで描かれた怖い話の数々。

この話は本当には起こらない。

実践しても、ただのバカな人に見られるだけ。

 

でも、一部では本当に起こるなんていわれているらしい。

その子は不思議な力を持っていて、描いた物語を本当のことにする力がある、なんて噂もある。

俺は信じてなんかいないけど。

 

ぱたん、とノートを閉じた俺はにっこりと笑ってあいつに言った。

 

「うん、だいぶいいと思うよ。ふたり一組じゃないと起こらない、どちらかが必ず犠牲にならなくちゃいけないっていうのも、いろいろな使い方ができるからな。」

 

「ほ、本当?ありがとう。今回はちょっと自信なかったから……」

 

黄昏時の教室。

必ず二人、日が教室を真っ赤に照らすとき。

その時に二人で同時にこの言葉を言う。

「黄昏時、まさにこのとき。赤き夕日の照らすここに、黄昏の支配者よ現れよ。」

すると赤い穴が開き、黄昏の支配者なるものが姿を現す。

そして黄昏の支配者に、必ず一人。二人いるどちらかの願いを叶える代わりに、願いをかなえたい方とは別の、もう一人がイケニエとなり支配者に連れ去られる。

そのイケニエは必ず必要となる。

要約するとそういう内容の話だった。

読み終わった俺に、あいつは感想を言い終わった俺が差し出すノートを受け取って、少しだけ申し訳なさそうな顔をしていった。

 

「……ね、いっつも読んでくれる君に、お願いがあるの。」

 

「お願い?」

 

「うん。あのさ、私の噂、知ってるでしょ?」

 

「あの書いた小説は本当になるっていう話?」

 

あいつはいつも怖い話を書いていた。

その話はすべてその子のオリジナルの作品なんだけれど、その話は本当に起こるのか、それとも起こらないのか。

そんな噂が、あいつには存在していた。

 

「そう。それなんだけど……」

 

「あれってでっちあげの嘘だろ?少なくとも俺はそう思ってる。」

 

「うん。そうなの。あれは本当に嘘の話なの。

私の書く小説に不思議な力が宿るとか、そんな話も全部嘘なんだけど……

みんな結構信じちゃっててさ。だから本当の話じゃないっていうのを証明するために、君と一緒にこの黄昏時の怖い話を実行してみて欲しいの。もちろん、ビデオを撮りながら、ね。」

 

「なんで俺に?」

 

「あの噂を信じてない人が少ないの。信じてないのは、君ともう一人、女の子だけなの。私の苦手な子で……」

 

「なるほど……

その女子とはやりたくないから、俺に頼んだってことでいいのか?」

 

「まぁ……うん。そういうことなんだけど……」

 

「ああ、いいよ。つきあうよ。そういうの、おもしろそうだし。

それにありもしないことを言われるのはいやだろうしな。」

 

「え、本当にいいの!!?」

 

ぱぁっと花が咲いたように明るくなったあいつの顔を見て俺も笑った。

 

「もちろん。言われたくないことは証明すればいいから。」

 

「それと、その話は嘘だと思ってる……というか、嘘なんだけどさ。嘘なんだけど、万が一のことを考えてお願いを決めておこうかと思っててさ。」

 

「なるほど?それで、決まってるの?」

 

「それがまだ決まってなくて……」

 

「うーん……絶対に一人はイケニエになんなきゃいけないんでしょ?だったらお願いを、二人とも生きて帰れますように、みたいなのじゃだめなの?」

 

「それだと一人のお願いじゃなくなっちゃうんじゃないかな。イケニエの人も助けてって言っちゃったらイケニエはいなくなっちゃうわけだし。一か八か、賭けてみるしかないんじゃないかな。」

 

「そうか……そうなるのか。

じゃあ、どっちがお願いをかなえてもらうんだ?どっちがイケニエとして行くんだ?本当に起きたら、だけどな。」

 

「もしそうなったら、私がイケニエになるよ。

巻き込んだのは私だし、それなのに君にイケニエになってもらうのは気が引けるから。

実行は明日でもいい?早めに終わらせたいしさ。」

 

「……ああ。わかったよ。明日の授業後、この教室でだな。お願いも考えておくよ。」

 

「うん。それじゃあ、また明日。」

 

「おう。また明日。」

 

このとき感じた違和感を、俺はあいつに話せばよかったのかもしれない。

信じていない人を連れていくより、信じている人を連れていって目の前で事を起こせばいいんじゃないか。

この時、俺が話していればあんなことにはならなかったのかもしれない。

赤く染まった教室の中で、あんな悲劇が起こることはなかったのかもしれない。

 

 

 

 

~~

 

 

 

 

 

「……いよいよだな。」

 

「……そうだね。ビデオの準備しとくね。」

 

「……ああ。」

 

黄昏の支配者は本当に教室が真っ赤にならないとやってこないとあいつは言った。

曇りだったり、雨だったりしたとき、教室が赤くならないからそういうときはいくら呼んでも来てくれない。

そういう設定なのだそうだ。

俺は昨日から今まで違和感を抱えて過ごしていた。

何かが引っかかる。でも、それがなんなのかはいまだにわからない。

そんな、何となくの感情が渦巻いていた。

そんなことはつゆ知らず、あいつはビデオの準備をすませてつんつんと俺の背中をつついた。

 

「もうすぐ、だよ。準備しよ。」

 

「そう……だな。準備しようか。」

 

教室の真ん中。黒板の正面。

そこに立って、赤くなっていく教室を、どこかうつろな目のまま、二人で眺めていた。

 

「……いくよ。」

 

「ああ。」

 

「……せーの」

 

『黄昏時、まさにこのとき。赤き夕日の照らすここに、黄昏の支配者よ現れよ。』

 

「………」

 

「………」

 

静寂が、二人だけの教室を包み込む。

先に口を開いたのは、隣にいたあいつだった。

 

「……ほらね。やっぱりなにも起こらない。

ごめんね、変なことにつきあわせちゃって。これで本当にはならないって証明されたからさ。ありがとね。」

 

「……いや、大丈夫だよ。これで変な噂が消えたらいいけどな。」

 

「うん。本当にありがと……

……えっ……?」

 

「どうしたの?」

 

「あ……あれって……まさか……」

 

あいつがじっと見つめていた、俺の後ろ。

あいつの反応に戸惑いつつも、俺は振り返った。

そこには、あってはならないものがあった。

 

赤い穴。

 

本来、あってはならないもの。

 

「はぁ……。またあなたなの?」

 

はっきりと、女の子の声が聞こえた。

とてもだるそうな、気の抜ける声。

でも鋭くて、意志を持った声。

そんな声が、あきれたようにその言葉をつぶやいていた。

どこからともなく聞こえてきたその声の元を探ると俺の頭上に半透明の、同い年ぐらいの女の子がいた。

俺はその子と面識がない。というか、あった記憶がない。

つまりその子が言っている"あなた"は……

 

「ありゃ。それはこっちのセリフなんだけどな。」

 

必然的にあいつになる。先ほどカタカタとふるえていたあいつはどこへいったのか。平然とした顔で薄く笑っている。どういうことなのだろうか。

 

「……お前、そいつと面識あるのか?」

 

「……まぁ、ね。たびたび邪魔されそうになってるね。」

 

「……邪魔?」

 

「そう。邪魔。

実はね、あの噂。本当のことなんだ。」

 

「……は?」

 

あの噂って、あいつが書いた話は本当になるっていう、あれか?

 

「私が誰かを犠牲にしてお願いを叶え続けてるの。今日みたいにね。本当は君のことをイケニエにしようとしてたんだ。まぁ、今も変わらないけどね。」

 

そう、あいつが言ったときだった。

後ろの赤い穴から巨大な何かが出てきた。

 

『……ノゾミと、イケニエの、ナを。』

 

「望みは……」

 

「罪深きものに、正義の鉄槌を。」

 

「は……?」

 

そう望みをつぶやいたのは。

半透明の状態で宙に浮く、その少女だった。

 

「な……なにをいってるの、あなたは……」

 

「イケニエの名は……××××。」

 

言ったのは、あいつの、名前だった。

 

『……ショウダクした。』

 

その瞬間。この教室から音が消えた。

動くことができない。金縛りにあっているような状態。

そんな中で赤い穴からでてきたそいつはするすると滑るようにあいつの目の前まで行き、ぬいぐるみでも抱えるかのようにあいつを抱えた。

 

「いやっ……嫌だっ!あなたを生み出したのは私なのよ!?離しなさい、離しなさいよ!!」

 

叫び声がむなしく響く。あいつはまるで小さな子供のように暴れるが、巨大なそいつはがっしりとつかんで離さない。

 

「いやっ……いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そんな叫びを最後に、あいつは赤い穴へと消えていった。

その瞬間、教室に音が戻った。

赤い穴があった場所には、あいつが持っていたビデオカメラがぽつんと落ちていた。

 

「……あの子は、自分の力を悪いことに利用しすぎた。いずれ、どうやってもあの子は必ずこういうことになっていた。」

 

突然まだ宙に浮いていた少女が言った。

 

「じゃあ、何で今こういうことをしたんだ?」

 

「……これ以上、犠牲を出させないために。」

 

「……そうか。」

 

「私、帰るから。今日のことを忘れて、あなたも帰ったら?」

 

「……あぁ。そうさせてもらうよ。」

 

そう言って天井を見上げたときには少女はもういなかった。

俺はビデオカメラを自分の荷物の中に入れて帰路に就いた。

 

 

~~~~

 

 

……続いてのニュースです。××学校の二年生、××××さんが行方不明になっています。

最後に××さんをみたという生徒は教室で話をしており、その後帰路についたとのことです。

警察は誘拐などの可能性も視野に入れて捜査しています。

続いてのニュースは……

 

 

 








『私たちに、最高の死があらんことを』





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