のんべんだらり狩猟紀行 作:手巻きおにぎり
リスタート
道中、モンスターの襲撃に会うこと十数回。たった二日三日の出来事だ。その全てが狂竜化モンスターによるものなのだから、ウィルス感染の凄まじさが
そして以外とやり手だったピンクバケツブラザーズと仲良くなった。もうタメ語でも話せるレベルだ。うっかり
現在昼前。そんなこんなで、俺たちはドンドルマに到着したわけ、だが。
「賑わってるなぁ。半年前はハンターなんか全然見かけなかったのに」
「どうも俺らみたいなのが他からも集まってきてるみたいだぞ。なぁ兄弟」
ドンドルマは想像以上に賑わっていた。ギルドの通りだからだろうか、どこを見ても忙しなく動くハンターや商人だらけ。ここでも悲壮感は全く見られないが、それもそうだ。ここには危険を求める者か、危険を冒しても儲けを求めに来た者しか居ないのだから。
「そりゃそうだろブラザー。ドンドルマは大元老がいるハンターズギルドの総本山なんだ。そこが危機といわれちゃ、人が集まるのも無理はねぇ。活気を見越して商人達も集まってるみたいだしな。トウマボーイはこれからどうする?」
「どうしよっかなぁ。とりあえずこっちのギルドに登録してから、仮住まいの確保。その後はそん時考えることにするわ」
「そうかそうか。んじゃあ俺らもそうしようか?」
「いや、その前に母ちゃんに挨拶しときてぇ。親父も居ねぇ独り暮らしだから心配でな、トウマ少年とは別行動をさせてくれ」
「オッケーオッケー。まぁここで過ごしてりゃまた会うこともあるだろうし、今度一緒に狩りにでも行こうや」
「応よ。たがその前にバケツヘルムを被らねばな!なぁブラザー!」
「勿論だ!バケツヘルムこそ我らのアイデンティティー!ピンクは恐らく無いのが少々残念だが致し方があるまい。早速鉱石発掘に向かおうぞ!」
「あぁその事だけど。たぶんこっちにバケツヘルム無いぜ?」
「「な、なにィィィィ!?」」
こいつらといると笑い話には事欠かんな、と大笑いをした。
なんのかんの、今日も平和である。
相変わらず長い階段を登り、やって来たのは今も変わらぬ『大衆酒場』。賑やかになってもなお廃れた様子は変わりなく・・・、いやむしろより廃れたんじゃないか?外観はさほど変わりないが、中を覗いてみると床に埃が溜まっていた。ついに手入れをする人すら居なくなってしまったのだろうか。あのギルド員は?
「この様子だと他当たった方が良さげだなぁ。さて、何処に向かえば登録できるだろうか・・・」
「今はその酒場は使われてませんよ。担当者も緊急事態故他の部に配属され、建て替え計画まで建てられてる始末です」
聞き覚えのある声を聞いて後ろを振り向けば、半年前と然程変わりのない姿のギルド員が。
「久しぶりに見た顔を見かけたので、追いかけてしまいました。お変わりなく元気なようで何よりです」
「悪いな、半年たって変わりのない外見で。持ち物は向こうに全部投げてきたんだ。・・・お前も変わらんようで何より。いや、若干老けたか?」
「カッチーン!!貴方ねぇ!花の乙女に向かってなんてことを言うんですか!冗談でも言っていいことと悪いことがあるんですよ!」
「ブフッ!花の乙女ってお前・・・っ!い、幾つの分際でそんなこと言ってんだよ!アッハハハハ!」
「まだ今年で17ですが何か?」
「申し訳ございませんでした」
まさかの一つ上。もう少し、具体的にはもう五歳ぐらい歳をとってると思ってたぜ。
「まぁいいですよそんなこと。それより、なんでこんなとこに来たんですか。また泊まるところが無いんですか?」
「いや確かにまだ決まってないけどよ。ここにくりゃこっちのハンター登録ができるかなーって思ってさ。どうも外れみたいだけど」
「今のドンドルマはある意味最盛期よりも賑わってますからねぇ。メゼポルタみたいに屋外集会所型に移行したんですよ。そっちでできますので。案内しますから、私についてきてくださいね」
「ついてくも何も、ここから見えるだろうがよ。あっちのハンターが集まってる辺りだろ?」
俺が指差すのは坂を下りたところ。ここから見ると、竜車発着場から少し右に見えるな。あそこにハンターが大量に集まっている、地面を埋め尽くさんとばかりに。その周りを囲んでいるのは、恐らく飯屋か商人だろうな。
「ええ。それじゃ行きましょうか。そうだ、メゼポルタでのお土産話聞かせてくださいよ!」
「その前に俺が知らなきゃいかん事があるだろ。具体的に今、ドンドルマはどういう状況なんだ?出来る限り詳しく頼む」
「そうもいきません。話せば長くなるのでかいつまんでお話ししましょう。そうですねぇ・・・」
階段を下りながら十分ほど話を聞いた。
事の発端は、ドンドルマを謎のモンスターが襲撃した事にあるらしい。そのモンスターは無事撃退できたものの、それを皮切りに狂竜化モンスターが増え始め、今また別の古龍の襲撃が予測されているのだ。
なお噂では最初の襲撃も古龍の仕業だとされているが、厳密ではそうではないのだとか。ドンドルマの誰もが知らないモンスターであった点、既存のどの属性にも分類されないブレスを吐いてきた点からして古龍だろうとは予想されているがそうとも限らないらしい。
「謎のモンスターはその風貌から『白骸魔』と呼ばれています。半身だけが白く骸骨のような甲殻に覆われていること、撃退に関わったハンターから体調不良者が続出したことから、『白い骸骨の病魔』と称されるようになったわけですね。しかしこれも、逆に身体の調子が良くなったと言うハンターもいるのですよね。おかしな話です」
「なるほどな。お前のうんちくから大分状況は理解できた。そら、着いたぜ」
「あらあら、もう終わりですか。なら、次はこちらのうんちくを語らせてもらいましょう。そもそもなぜこうして屋外型に移行したのかと言いますと──」
そこから受付に向かうまで、さらに十分ほど時間を食わされた。
白骸魔に襲われたドンドルマは疲弊していた。正体不明のモンスターに襲われ街を破壊され、周辺各地からかき集め迎撃に向かわせたハンターは半数以上が体調を崩し、迎撃都市としての役割すら満足に果たせない状況であったとか。
しかし狂竜化モンスターの対処をするためにもやることが沢山ある。なので街のトップは各ギルドに通達を行うのと同時にある強力な助っ人をドンドルマに呼んだそうな。それが二週間ほど前の話。
「その強力な助っ人とは、『我らの団』という行商人集団です。『天廻龍』を打ち倒したハンターを有しギルドとも太いパイプがあるかの団が、バルバレから沢山のハンターと商人を引き連れてやってきたのです。そして街の機能がほぼ復旧した今でも、彼ら彼女らはこのドンドルマの中心で働いてくれているのですよ」
「『我らの団』に『天廻龍』ねぇ。それで?真ん中辺りまで来たがそいつらはいるのか?」
天廻龍とはいったいなんなのだろうか。討伐が功績として残ってるぐらいだ、相当強いモンスター、恐らくは古龍なのだろう。
「それは勿論。いつもはこの辺に・・・、いたいた。あそこです、見えますか?オレンジのハットを被った白髭おっさんと歴戦の風格漂うおっさん、ついでに緑色の片眼鏡淫乱です」
「最後辛辣!なんだよあいつに恨みでもあんのかよ!?」
「いえいえ恨みだなんて。故郷を救ってくれたんですから、感謝すれど恨んだりしませんよ。ただあの自己主張の激しい山脈はむしりとりたくなりますが」
「山脈って・・・。ああ、なるほど」
向こうの緑色の女性は大変よろしい大きなブツを持っているが、こちらのはお世辞にも見事とは言えない。平原とまではいかないが、さしずめなだらかな丘陵といったところか。
なんの話かって?そりゃむ──
「セクハラ根絶ッ!!」
「グボァッ」
鳩尾に鋭いフックが飛んできた。見事だ、これなら世界を狙える・・・!
「全く、こんな程度で痛がっていて何がハンターですか。シャキッとしてください」
「お前ハンターをバケモノかなんかと勘違いしてねぇか!?」
「武装した程度で化け物を殺せるんです。充分人外のバケモノでしょう」
「ぐうぅ」
正論過ぎて反論できない。悔しいのでぐうの音だけ出しておいた。
「まあそんなことどうでもいいです。さっさとギルド登録済ましてきてください」
「お、おう。お前は行かんでいいのか?」
「別に仲が悪いとかいうわけではないのですが。あれ見てるとぶん殴りたくなってくるので遠慮しておきます。そゆことで、私は失礼しますね」
そのままこちらを一瞥することなくスッタカと歩いていく彼女。人混みに紛れて見えなくなるものかと思っていたが、ふとこちらを向いた。
「最後に一つ。私の名前は『フリィラ』ですよ、『トウマ』さん!どうせ覚えていなかったのでしょう?」
「・・・悪ぃ!完全に忘れてた!」
「ホントに忘れてたんですか・・・。しっかり覚えといてくださいよ!人の名前を忘れることは失礼です!」
「分かってるよ、もう覚えた。またな、『フリィラ』!」
そういうと彼女は満足げな顔をして、今度こそ人混みのなかに消えていってしまった。
さて、日も頂点を通りすぎてしまった。今日中に泊まるところだけでも見つけておかないと。あの埃だらけの酒場に泊まるのは嫌だしな。
「先代よ、どうやらまたセルレギオスが出たらしいな」
「どうやらそのようだな。今回はどこで確認されたんだったか、お嬢?」
「えっとですね、今回は氷海だそうです。狂竜化フルフルの討伐時に乱入、同クエスト内での討伐に成功したようです」
「うむうむ、やはり狩りの本場はレベルが高いなぁ。一時はあんなにも危険視されていた奴さんを、こうもあっさり」
「そうは言うがな団長。もう目撃情報は数えきれん程、討伐件数すら二桁を越えている。いくら未確認のモンスターとはいえ、もう戦闘法は確立されているだろうよ。それよりも、今だ続く狂竜ウィルス騒動についてだな──」
どうもお取り込み中のようだが、これって話しかけてもいいもんなんだよな?
「すみません、ちょっといいですか?ギルドの登録をしたいのですが」
「はいはい、登録ですね。ではこちらの記入用紙に必要事項の記入をお願いします」
渡された記入用紙に名前とハンター経歴、主な使用武器を書いて渡す。こんな簡単なものでいいのかと思うが、ここに移動してきたハンターの総数を考えると、わりと大丈夫なんじゃないかという結論にいたる。面倒なものは簡略化すべきだろう。
「はい、トウマさんですね。クエスト受注はあちらのカウンターで受けられますので」
そういって指差された場所はここより少し戻ったところ、最もハンターが集まっているところだ。ハンターを有するとか言っていたし、こちらは身内専用カウンターなのだろうな。
「わかりました、ありがとうございます。それでは」
「いえいえ、良い狩りを~」
さて、ハンター登録も終わったし、次は宿と住みか探しだな。日が落ちるまでに見つかればいいんだが・・・。
「ありがとうございます、変わってもらって。今戻りました」
「なに、気にすることはないさ。それでなんだい?あの男は、もしかして彼氏かい?」
「違いますよ。ちょっと前お世話したハンター志望さんです。メゼポルタの方に送ったのですが戻ってきてしまったみたいで、それでここまで案内してあげたのです」
「なるほどね、まぁそういうことにしておこう。で?どうだったんだい、少しは強くなっていたのか?」
「そうですねぇ、よく鍛えられていましたよ。具体的にどれくらいかはわかりませんが、まぁ生半可なものではないでしょう」
「そうか、君が言うならそうなんだろうね。っと、そろそろ仕事に戻ろうか。私は持ち場に戻るから、後は頼んだよ」
「えぇ、お任せくださいな」
「先程のハンター、確か『トウマ』とか名乗っていたよな?」
「先代様も気づきましたか。団長は?」
「うん?トウマといやぁ確か──・・・。ふむ、なるほど。そういうことか」
「そういうことです。どうしましょう?伝えるべきでしょうか」
「無理に知らせんでもよいのではないか?あいつも混乱するだろうし、何より今はセルレギオス討伐に全神経を向けておいてほしい」
「そうさなぁ・・・。しかし知らせんにしても、ここで活動していれば顔を会わせてしまうのも時間の問題だぞ?知らぬ存ぜぬでは突き通せないだろうに」
「なんとでも言い様はある。世界は広い、同名の別人だと思っていたと、伝えれば良かろうて」
「・・・あまり気持ちの良いものではないが、一理あるな。お前さんがそれでいいと言うのなら、そうするとしよう」
「では、聞かれない限り答えないという方針で。おや?噂をすれば、我らがハンターさんのお帰りですよ」
「む?・・・おお!お疲れさんだ、ハンター殿──」