のんべんだらり狩猟紀行   作:手巻きおにぎり

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見つけるモノと見つけられない者

「──せやもんでな?トウマんには悪意はこれっぽっちもなかったんや。そこんとこ、よぉく考えてもらえると、うち嬉しいなぁ」

「は、はぁ・・・」

 

 

まさかの拝み倒しである。いや、いいんだけどさ。

 

あの後アン子の帰りの飛行船に乗せてもらってドンドルマに戻ってきた。

ネームバリューがどうのとか言ってたから、てっきり名声にものを言わせてごり押すのだと思っていた。現実は夢がない。

 

 

「トウマさんの一件については、これは完全に私の手落ちだと処理しておいたので大丈夫です。『手違いで別のクエストを渡してしまい、そのまま契約金を払わずに出立。受付嬢はその後問題に気がついた』と、そう上に伝えておきました」

「さよか、そら安心したわ。ほんじゃ、うちはこれで」

「えぇ、お疲れ様です。あと、トウマさんはこのあと時間取れますか?いえ、少しお話をしたいだけですので・・・」

「うぇ?お、おう。別に問題ないが・・・?」

 

 

なんだろう、今フリィラから怒気というか殺気というか、そんなものがあふれでた気がした。

というかアン子も睨むな。怖えよ、本物の殺気が駄々漏れだよ。

 

 

 

「へぇ?トウマん、へぇ・・・?ほぉ、トウマんなぁ・・・」

「なんだよ」

「いや?何でもないで・・・。へぇー・・・、トウマんなぁ・・・」

「そっちも報告しなきゃいかんだろ、こんなところで油売ってて良いのか?さっと行ってさっと帰ってこい、話ならそん時聴いてやっから」

「ふぅん、ほぉ、へぇ・・・。分かったわ、また後でなぁ・・・」

 

 

適当な理由で追い出した。こういうやつはさっさとどっかに向かわせるのが吉だ。ずっと居られると話が進まん。

アン子が充分遠くに言ったのを確認したからか、フリィラがカウンターからずいと体を乗り出して話しかけてきた。

 

 

「誰ですか今の可愛い人!誰ですか今の可愛い人は!?」

「なんでお前そんな目輝かせてるんだよ!っつか近いわ!あいつらが居たらどうすんだよ!」

 

 

幸い今は影も形も無いが。あいつらもずっと引っ付いてる訳じゃないのか、安心である。

 

 

「ああぁ、あのゴミ虫(害虫)共のことならお気になさらず。ちゃんと私が操作していますので」

「余計心配になったわ。やっぱり腹黒キャラか、俺の目に狂いはなかった」

「どういう意味ですかー?」

 

 

さて、どういう意味だろうな。すっと目線を反らす。

ついでに話も反らしておこうかね。

 

 

「そういえばお前、さっき『誰だ今の』みたいなこと言ってたが、ありゃどういう意味だ?『我らの団』ハンターってのは有名所って話だったが」

「露骨な話題転換ですね、いいですよ乗ってあげましょう。正確にはあんなに可愛い彼女を見たことが無かったんですよ。あの人、いっつもつまらなさそうな顔してましたから」

「アン子が、つまらなさそうな顔をねぇ・・・」

 

 

想像もつかんな。あいつはいつも元気溌剌というか、騒がしいような行動しかしてこなかった。

もしかしてこっちのテンションを上げようと無理矢理はっちゃけてるとか・・・、いや

 

 

「それはありえんわな・・・」

「何がありえないんですか?」

「いや、どっちが本当のあいつなんだろうかと思ってな。まさか無理に騒いでるなんてことはないと思うんだが」

「ははぁなるほど。それはないでしょうね、恐らく今の彼女が素だと思いますよ。」

「だよなぁ・・・」

 

 

と、なると・・・。やっぱりあれか。理由は俺か?

 

俺は枯れてるしチキンだが決して鈍いわけではない。ってかあの反応を見てれば誰だって分かる。

しかし、あのアン子がねぇ。考えたことも・・・、そういや昔一回あったかもしれんな。うん。

 

 

「ふむ、そうなるとこんなところで道草食ってるわけにはいきませんよね。さ、トウマさんは彼女の元へ行ってあげてください」

「んあ?ここで待ってるっつったのに迎えに行ったら変に思われねぇか?」

「そんなことありませんよ。むしろ『来てくれて嬉しい』と小躍りする位だと思いますよ。さぁ、さぁさぁ!」

「だからなんでそんなに楽しそうなんだよ!」

「私みたいな一般人にとってゴシップよりもおもしろい話題なんて滅多にありませんって!ほらほらほら!」

 

 

天井知らずのテンションに辟易とする。良いのか仕事は、向こうで他のハンター待ってるぞ。

しかしまぁ、俺の考えよりもフリィラの意見の方が信頼できるのかもしれん。どうせこれから俺も暇だし・・・って。

 

 

「そういやそうも言ってられんわ。悪ぃが仕事(クエスト)を回してくれ。勿論契約金は無しのやつをな」

「あなた女との約束を反故にする気ですか?最低ですね」

「うわ一気にテンション下がった。悪いが俺の心配は女心より今晩の飯に向いてんだ。一文無しに女と付き合う資格はねぇ」

「──・・・・・・・・わ、かりました。それでしたら素材ツアーを手配します。何処がよろしいですか?」

「出来るだけ自然が豊かな所。具体的な場所は任せる」

「では・・・そうですね、二度目ですが今なら原生林のほうが安全でしょう。そちらを手配しておきます」

「助かる。・・・本当に安心なんだよな?またなんか湧いてきて逃げ回るのは嫌だぞ?」

「安心してください、周りに大型モンスターは居ませんので。何故だかは知りませんが」

「やっぱ危険じゃねぇか。まぁいいや、ホレ、速く契約書貸してくれ」

「はいはい、ではこれをどうぞ。多分、そうですね。一日くらい帰ってこないほうが良いかもしれませんよ」

「そうかい、んじゃ向こうで肉食ってベースキャンプでぐっすり寝て、また明日戻ってくることにするわ」

「それが良いでしょう。安心してください、彼女には私がしっかり説明しておきますので」

「欠片も安心できないが任せた。んじゃ行ってくるわ」

「お気をつけてー」

 

 

ついさっき降りてきた飛行船に再び乗船する。前回は収支無しだったから、今回はしっかり稼いで来ないとな。

先ずは薬草類とキノコ類の採取、運が良ければ鉱石とか虫とかもとれるかなぁ・・・。

 

 

 

 

 

時は少し遡り、トウマがアーリィンを追い払って直ぐのことである。

 

 

「ったく、なんやトウマんのやつ。うちに隠れて女なんぞ作りよってからに・・・」

 

 

アーリィンは壮絶な勘違いを起こしているが、それを訂正しうる者はここにはいなく、また唯一それを可能とするトウマも今この場には居なかった。

勘違いは膨らむばかりである。

 

 

「はっ!?まさかトウマん、もうあの女と!?・・・いやいや、あの唐変木に限ってそれはありえへんか。いや、でも、無きしにもあらずやもしれへんで・・・」

 

 

げに恐ろしきは人の妄想力なり。

しかし少女の空想は一旦蓋をされ、彼女の思考は現実世界へと引き戻されることになる。

 

 

「おお、お疲れさんだハンター殿よ。どうだったか?今日の狩りは」

「んぁ?・・・あぁ、団長かいな。どうもなにも、無粋な乱入者のお陰で全部おじゃんや。行って帰って、そんで終いや。ミケに顛末聞いとらへんの?」

「うむ、まぁ聞いているのだがな。それにして本人の気概というものがあるたろう?」

 

 

そこで団長は一旦言葉を切り、アーリィンの顔をしかと見つめ、そして頷いた。

 

 

「だが、本人を見ている限り問題はなさそうだな。うむ、安心した」

「安心された。ったく、団長は過保護やで。もちっとうちを信用しようとか、そんなことは思わへんのか?」

「それを言うならハンター殿こそ、もうちっと俺ら団員を頼ろうとは思わんのか?一人では越えられぬ壁でも、皆でかかれば乗り越えられるものもあるたろう」

 

 

アーリィンは団長のお小言を手で払って止める。何も口には出さないが、『もうやめろ』ということなのだろう。そのまま団長を一瞥することなく横を通りすぎていった。

 

 

受付嬢の手続きを終わらせ、宛がわれた自室で武具をおろす。インナーの上から普段着を着て、アイテムボックスから元気ドリンコを一つ引っ張り出してきて一息。

 

直ぐにでもトウマの元へ行きたい彼女だが、いつになく疲労が襲ってくる。眠気を無理矢理捻り倒し、重い腰を持ち上げられたのは5分後の事であった。

 

 

「人を信用し、信頼し命を任せてこそ出せる力というものも、ある」

 

 

ふと、部屋の奥(・・・・・)から声がかかった。アーリィンはそれを一瞥とすることなく、元気ドリンコの空き瓶をごみ箱に投げつつ、言葉を返した。

 

 

「乙女の部屋に気配を消して潜む変態を信用しろと?冗談上手いわ」

「乙女、かどうかは非常に疑問だがそれはいい。ここはお前に宛がわれただけであってお前の部屋ではないだろう」

「ここは今うちが団長から許可貰ぅて使っとる場所や、便宜上でもうちの部屋や。やったらあんたは変態で、うちは乙女や」

 

 

筋が通ってるようで全く通っていない超絶理論を聞いて、男は反論しようとした口を閉じた。なにをいっても無駄だと悟ったのだ。

アーリィンは軽くストレッチをしながら、男に問いかけた。

 

 

「で、なんや師範。まさか乙女の部屋にまで潜んで言うことがお小言だけか?随分暇やな」

「まあ暇だということは否定せん。それに、今になって良く良く考えてみれば、今のお前に私が忠告することなど大してなかった」

「まぁ相変わらずワケわからん。ちゃんと考えて行動せぇや、うちみたく」

「冗談が上手い」

 

 

鼻で笑われた。

 

 

「それはそうと、一つ伝えねばならんことがある」

「さっきと言ってること逆やんけ」

「ん?なんだ、言いたいことははっきり言ってくれ。俺ももう年だからな、最近耳が遠くて」

「あぁもう面倒だからさっさと言いや!」

「応ともよ。研究所の方から召集がかかっている、どうやら狂竜化についてまた何かしらがわかったらしい。このあとは空いているか?」

「くっそ、聞こえとるやんけ・・・。悪いが今日は無理や。明日やったらどうにでも工面できるから、そっちにしてや」

 

 

師範、と呼ばれた男は返事がわりに一つ頷くと、外に出ていった。

食えないというか、面倒なじいさんである。あれでいてここら一帯では伝説と名打たれた元凄腕ハンターなのだから、人間どうなるかわかったものではない。

 

実際、アーリィンが成体になったばかりとはいえ古龍を倒すまでに至ったのは、彼のお陰であるのだが。

 

部屋着の上から一枚羽織り、外へとでる。今は寒冷期、いくら温暖なドンドルマといえどそれなりに冷え込む。

トウマんはこの中凍えとらへんか、と心配になり、アーリィンは少し歩くスピードを速めた。

 

トウマ発つ、の知らせを受けて激昂する一分ほど前の話である。

 

 

 

 

 

「っ!?・・・なんだか寒気が、気のせいか?どうも最近ついてないからなぁ」

 

 

或いは体調が悪いのかもしれん。こっちに着てからなんかずっと頭痛いし。

グア、と食いつきに来る赤い頭を左に避け、右に持った片手剣で頭の側面を一閃。普段ならその程度では掠り傷程度しか負わないであろうその鱗の鎧は、しかし既に赤々とした血を吐き出し続けている。

 

ドスイーオス。真紅の鱗に身を包んだ、ここらのならず者(イーオス)を束ねる長である。

 

しかしその命もあと幾ばくか。先程の斬撃で骨を抉った感触がした、討伐も目前である。

 

 

グギャ、ァ、ァア!

 

「っと、危ねっ」

 

 

ドスイーオスの決死の突撃を紙一重で躱し、その頭の傷口に向かって剣を鋭く突く。

鳥竜種特有の薄い頭、それも骨まで抉られているところを突けば、剣を貫通させることもできないことではない。

 

結果、頭蓋骨を粉砕して神経や脳すらも貫かれたドスイーオスは、あまりにも呆気なくその生命活動を終えるわけだ。

 

 

「ふいっと、討伐完了。さて、んじゃ少し素材をわけてもらいましょうかね」

 

 

ドスイーオスの無傷な胴体、それの側面部から赤い皮と適当な鱗、それから珍しい紫色の鱗を拝借して、あとはその場に残しておく。

合掌、一礼。ハンターのみならずこの世に生きるものは、皆がそれぞれ命の重みというのを覚えておかないといけない。この大自然で存在する、唯一の義務だと思う。

 

これを素晴らしいと思うのは、何故なのだろうか。

 

 

「一人でいると、どうも色々考えちゃって仕方ねぇや。持てる限界まで集めたし、そろそろ日も落ちてくる頃だろう。肉食って、今日は寝るか」

 

 

ここは高台になっていて、辺りの景色が一望できる。できるはずなのだが、どこにベースキャンプがあるのか俺にはさっぱりである。

伊達に『永久安息地』なんて呼ばれてない。モンスターから限りなく見つかりにくい、あるいは進入しにくい場所に設営されているのだ。

 

ここは今朝に一度通ったところなので、大体の地理は覚えている。崖を降りて(落ちて)川を下れば、ベースキャンプに着く筈だ。

 

途中で例の緑色の草食竜も探さにゃならんなぁ、と心の中でぼやいていると、スッと一瞬俺の周りに影が差した。

そして次に、コツンと何かが頭に落ちてきた。

 

 

 

──ミツケタ──

 

 

 

一瞬にして頭の中を電流が駆け回り、激しい痛みが襲う。

 

 

「ングァッ!?い、ってぇな、おい!くっそ、何だってんだ・・・?」

 

 

何が落ちてきたのかと辺りを探せば、先程まではなかった奇妙な物質が落ちているのを見つけた。

 

 

「なんだこりゃ・・・?鱗、なのかな。それにしちゃあ変な色だが」

 

 

なんと言えばいいのだろうか。例えば、黒い水に白い油を落として中途半端に混ぜたような。あるいは、黒い粘土に白い粘土を混ぜて中途半端に練り混ぜたような。

俺の低い語彙力じゃ上手く説明できないが、とにかく、自然物としては明らかにおかしい配色をしているわけだ。

 

 

「・・・まぁ、これも戦利品の一つか。持って帰って、売れるかどうか聞いてみるとしよう」

 

 

それに、あのときに聞こえた声、のようなものも疑問である。

ミツケタ、とな?俺は探されるような人間じゃあないと思うんだが。

そもそもあれは人間の声だったのか?なんというか、もっと異質な感じがした。

まぁ幻聴だったのかもしれんな。

 

そんなことより、今すぐに対処せにゃならん用事ができた。

ギャア、ギャアと周りがうるさい。どうやら俺の怒鳴り声でまた鳥竜種どもが集まってしまったみたいである。

 

こちとら頭痛が酷くなってイライラしてんだよ。お望み通り、蹴散らしてくれよう。







なんだか変なものが出てきましたね
黒に白が混ざった、あれです。
あれが、この物語でどういった役割を果たしてくれるのか

それは、まぁまた後日ということで・・・
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