のんべんだらり狩猟紀行   作:手巻きおにぎり

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(タイトル詐欺注意)


私の思い、貴方の願い

先制攻撃は白骸魔から。一瞬でチャージを終えたブレスを前に放つ。

トウマは地面を滑るそれを危なげなく避けるが、あろうことかそれはまるでトウマが避ける方向を予知していたかの如く、進路を曲げてなおも迫ってきた。

 

 

「嘘、だろお前!まじで曲がるのかよ!?」

 

 

しかしそれはあくまで曲がっただけである。落ち着いて体をもう一回転転がれば、それ以上の追尾は無く少し離れた所を通っていった。

 

さて、これからどうしょうか。あくまでこれは時間稼ぎであるが、だからといって逃げてばかりでは男として恥である。

よし、と考えを纏めたトウマは一転、攻勢へと移った。

 

ざっと地面を踏みしめ加速、一気に白骸魔へと迫った。こういうときに砂に足を取られないことは、軽い防具の数少ない利点の一つである。

勢いもそのまま、体重を有らん限りに籠めて剣を振るった。狙いは右前足付け根。

 

 

しかし、無情にも剣はガリガリと鱗の表面を削るに留まった。一歩全身といえばそうであるが、余りにも小さすぎる。

カウンターの角振るいを盾で受け流して、次は頭を狙う。

 

先程まででは無いものの力の籠った一撃。伝わる感触は、ゴンッという正に岩を叩いたときのようなそれ。

 

 

「やっぱ、ダメかっ!!」

 

 

瞬間、紫色。多分白骸魔のブレス。この至近距離で次こそは当てる、ということなのだ。

咄嗟に盾を間に挟んで、剣を持った腕で顔を覆う。片手で振るえるような小盾では非常に心許ないが、あるのとないのでは生存確率が違う。飛び出た四肢はとうしようもない。精々力を入れて引きちぎれないようにするぐらいか。

 

 

ボゴォ、と爆発音。体全体に満遍なく衝撃が行き渡り、骨を軋ませる。

飛ばされて、ズザザと砂の上を滑る。文字通りの布装備なので、背中が擦れてないか若干心配である。

 

 

「グッ、ヘッ。ゲッホ!・・・チッ、くそったれ。派手にやってくれんじゃねぇか」

 

 

しかし幸い、痛みは感じない。実際何本折れてるのかは不明だが、痛みがないということなら好都合。動きを阻害するものはない。

追撃のつもりなのか、一直線に迫ってきたブレスをなんとか避け、再び走り出す。今は攻撃あるのみだ。

 

 

 

狙うなら同じ部位。そう理解したのは、ハンターを始めてすぐの頃であったか。命を賭ける殺しあいの中で、ふとトウマは考えた。

 

ただ追い払っていた時は、如何に効率的に相手の命を削いでいくかなんて考えたこともなかった。

ただ追い払うだけならば、自らを強く見せればいい。お前なんかには負けないぞ、と。相手の本能に理解させればモンスターは逃げだし、つまりそれは自分の勝利であった。

 

しかしハンターになってからは、その考え方を否応にも変えねばならなくなった。

ハンターとは即ち生き物を、それの善悪に関係なく殺す仕事。そして仕事であるからには、効率というものも考えなければならない。今までのやり方をやっていれば、モンスター一匹倒すのに何日もかけなければならなかっただろう。

その点、始めて早々に師を持てたのは行幸だったなと、今は遠くに居る先達に心の中で礼を送る。

 

 

思考を目の前の事に戻す。今は殺しあい中だ、不要な考え事は死を招く。

 

 

ギャリリ、と鱗の表面を剣が引き裂き滑る。流石に5回も同じ場所を斬られれば、いくら堅牢な鎧とて無傷では済まないということだ。

しかしそれでも傷というには余りにも浅い。もう少し深く切り込まねば──

 

 

その瞬間、空気が変わった。

 

 

自身を貫く殺気が辺りの空気に移ったかのように、酷く寒い。

先程まで以上の圧力がグッと体にのし掛かり、動きを鈍らす。

 

辺りが薄暗くなった。雲でもかかったのか、いやそうではない。空を仰げば、燦々と輝く太陽。しかしなぜだか、群青色に照っているように見えた。

 

 

ガアアァァァァァァ!!

 

 

高い音と低い音が混ざったような、酷く耳障りな咆哮が響き渡る。聞くに耐えないその声に、トウマは思わず耳を塞いでしまう。

そしてトウマは感じた。彼が持つ唯一の天賦の才、その第六感で。

 

背中を這いずり回る悪寒に従って前に転がる。後ろでドォン、とくぐもった音が鳴った。

何が起こったのか、今はそんなことどうでもいい。このまま相手のペースになってしまえば、こちらに勝ち目はない。少し離れて体勢を整えよう、と後ろを振り返らず白骸魔の間合いから外れていった。

 

 

 

白骸魔は、地面に付けた翼腕を持ち上げ、握り込んだ(・・・・・)手をほどく。

眼球のない洞穴から覗く光は、暗く淀んだ敵意と殺意で溢れていた。

 

 

 

戦っていた場所から然程遠くない所、トウマは岩の影に隠れて白骸魔を観察していた。

外傷はあるがどれもなんてことない傷であるが、消費した体力は無視できない。この調子で大丈夫なのだろうか。

 

白骸魔はこちらに来てから動いていない。時たまこちらを伺うものの、あちらも動くこと無く体力を温存している。

 

 

「ったく。余裕だな、向こうも。場所を分かってるのに動かないのか。・・・怒りに任せて暴れられたら楽だったんだがなぁ」

 

 

独り呟くが意味を成さない。言っても無駄である。

しかし今までの時間で、向こうの動きは大分把握できた。

 

動きを把握できれば、攻撃を避けることが出来る。

攻撃を避けることが出来れば、生き残ることが出来る。

生き残ることが出来れば、勝つことが出来る。

トウマだけではなく、大半のハンターが持つ信条、そして彼ら彼女らの狩りの指針でもある。

 

 

「──ふぅ。大分息も整ってきたな。それじゃ、第二ラウンドと行かせて貰おうか・・・!」

 

 

グッと足に力を籠め、一気に走り出す。当然気付かれるが、そんなものは今更。

曲がってくるブレスをどうにか避けて、白骸魔に近づく。

 

しかし白骸魔は、負傷した右前足を庇うように右に半歩回り、左翼腕にて殴打を仕掛けていきた。

これにはトウマも驚き、つい半歩余分に下がってしまう。

 

 

「くっそ、勘のいい奴め。狙われてる右足を下げやがったか。不味いな、これじゃ迂闊に攻撃出来んぞ・・・!」

 

 

こういうときに罠があれば良いんだが、と愚痴をこぼす。

現在、トウマの手元には何も道具がない。動きを止める方法が一つでもあれば、十分なダメージを与えることができるのだが。

 

鞭のようにしなる尻尾を受け流し、振るわれる翼腕を避けてなんとか胴体下に潜り込む。

手に持っている剣とはまた別、腰のナイフを抜き取り思いっきり突き上げる。狙い目は勿論、甲殻や鱗の隙間。

表皮を引き裂く音と肉を断ち切った感触。間違いなく、初めての一撃。

 

痛みに驚いたのか、小さく唸った後に翼腕を広げて飛び上がった。すぐ近くに再び降り立ったので場所に変更はないが、これは紛れもなく討伐への第一歩。

引き抜いたナイフに付いた血を払い、腰のホルダーに戻す。きっとこれからもまたお世話になるだろう。

 

それからと言うもの、今までとはうって変わって、白骸魔の行動が酷く消極的になった。

自らブレスを使った攻撃は控え、専らトウマの攻撃に対する防御ばかり。特に腹下への入り込みを酷く恐れるようになった。そんなに痛かったのだろうか。

 

 

「まぁ、けど。相手の嫌がるとこを攻めてこその戦いだからな!」

 

 

非道と言うことなかれ。これが現実だ。

 

 

それからは、トウマはひたすら腹下を狙って攻め込んでいった。

白骸魔も翼腕で払ったり飛び上がって避けたりと抵抗はしたものの、その隙間を縫ってトウマは攻めていく。

そして数分の後、ついに腹下に潜り込むことに成功した。

 

瞬時に先程の傷痕を発見、そこに今度は剣を突き刺す。

これは相等堪えたのか、悲鳴を上げて逃げようとする白骸魔。

勿論そんなぬるいことは一切せず、むしろ剣で傷口を抉って更に追い討ちをかける。

 

その後少しもがいたあと、飛び上がって逃げられた。しかしこれだけ傷を深く付けられれば一先ずは良いだろう。そう判断した。

 

 

少しの距離をおいて、暫く両者は見合う。

あちらはこちらをどう殺すかを考え、こちらはあちらにどうやって攻め入るかを考える。

 

 

ふと、何かに気付いたトウマが急に動き出す。

 

剣を抜き体制を低くし、一気に詰め寄る。白骸魔も少し驚きつつ、ブレスと翼腕をもって迎え撃った。

 

ブレスを避けて翼腕からも逃れ、通り抜け様に顔に一撃、その勢いで右前足の傷へと剣を刺す。

もがく白骸魔の元からずれて一呼吸、力を入れ直して再度突撃をかけた。

 

 

二回、三回、四回と回数を重ねていくうちに白骸魔も何かおかしいと感づく。しかしそれは余りにも遅すぎたのである。

 

同じように一度離れ、再度詰め寄ったトウマ。そのまま攻撃してくるか、次こそは返り討ちにしてやると息巻くが、それは無駄足に終わる。

突如姿勢を低くし、足から滑り白骸魔の胴下を抜けていくトウマ。どうしようもなく、白骸魔はそれを見ているしかなかった。

 

しかしだから何なのだ。抜けられたのなら、出てきたところを潰せばよい。

振り向いた先で、頭をかち割る衝撃に迎えられた。

 

 

 

 

 

「だらっしゃぁぁあああああ!!!」

 

 

アーリィンが振るう超重量の鈍器が白骸魔を襲う。

もろに受けた白骸魔の頭部はずたぼろ。頭蓋骨が変形でもしたのか、形がひしゃげている。至るところから血を吹き出し、角も両方ポッキリと折れて地面に落ちていた。

本体も力無く倒れ伏している。死んだのだろうか、そう思いながらもトウマは油断無く観察することに決めた。

 

 

 

──呆気ない。実に、呆気ない。あれほどまでに自らを圧倒し続けた、その戦いの終末がこれか。

 

 

 

 

感慨に耽っていると、ハンマーを腰に背負い直したアーリィンがツカツカとトウマの元へやって来た。

 

 

──パァン──

 

 

乾いた音が乾燥した大地に響いた。

 

 

「よぉトウマん。随分派手にやったみたいやなぁ?」

「・・・まぁ、そうだが。今のビンタには何の意味が?」

「別に。強いて言うならついカッとしてやった、そんなもん」

 

 

トウマはじんじんと痛む頬を押さえてアーリィンに抗議をする。しかし彼女の反応は冷たいもの。どこかトウマをみる目も冷たい。

俺にはそっちの気はないんだがなぁとトウマが誰にも知られずぼやいていると、冷たい声のままアーリィンから声がかかった。

 

 

「なぁ、トウマん。随分派手にやったみたいやなぁ」

「・・・まぁ、派手にやったのは認めるよ。しかしだからといってビンタはないだろ──」

 

 

グイッと体が持ち上がる。気がつけばアーリィンはトウマのすぐ目の前に迫っており、彼女は胸ぐらを引っ付かんで持ち上げていた。

 

アーリィンの怒った荒い息遣いと、トウマの運動後の荒い息遣いがぶつかる。さも、お互いの主義主張を相手にぶつけ合っているかのように。

彼女は、一寸先の彼の目をしっかりと見つめて、問うた。

 

 

「あんたは、命が惜しくないんか」

「命は惜しい。だからこそ、戦うんじゃないのか?」

 

「何故に逃げん。その方が生き延びられる可能性は高いやろ」

「逃げても追い付かれるのはお前が証明済みだろう」

 

「なんでや。昔のお前やったら、一も二もなく逃げを選んだやろうに」

「昔と今は違うってことだ。俺は戦う力を得た、だから逃げるのではなく戦うんだよ」

 

「・・・お前は、戦ってる間に、死を考えんのか?」

「だから言ってるだろう、死なない為に戦ってるんだ。なのに死を考えない奴がいるか」

「んなわけあるかッ!!」

 

 

「・・・どうしたんだよ、急に怒鳴って」

「人は!人とは!モンスターなんかより圧倒的によく死ぬ生き物や!この世で一番死に近い生き物や!」

 

「人間ならっ、何時かは死ぬ!お前の親もうちの親も!あんたの師匠やってうちの師範やっても!あんたかてうちかて、何時かは死ぬんや!」

 

「そういうとき、残された人はどうなる!?誰かが死んで、そいつを待っていた人は!?」

「・・・悲しむ、な。それは分かってる」

 

 

「・・・なら、うちを心配させんでや。あんたに死なれると、うちも悲しいもんで」

 

 

それっきりアーリィンは黙りこくった。持ち上げていた腕もおろし、最初の気迫が見る影もない。ザスッ、と地面に膝をつき顔も俯き、膝立ち状態のトウマからも彼女の表情は窺い知れない。

 

トウマは酷く狼狽した。いくらなんでも、彼女がここまでしょげるとは思ってもいなかった。精々がまたバカ騒ぎの喧嘩をして終わりだと思っていた。

 

 

──自分がどうのこうのと心の中で言い訳を考えているうちに、自らは彼女にとって、そこまで大きな存在になってしまっていたのだ。

 

 

「あ、あのなトウマん。気付いとるかもしれへんけど──」

「と、とりあえず移動しようか。ほら、日も落ちた事だし、体が冷えて風邪でも引いたらいかん。町に戻ったらゆっくりと話そうか、な?」

「──・・・、うん。はは、やっぱいつものトウマや。わかった、ありがと」

 

 

そういって笑ったアーリィンの顔は、嬉しくもあり悲しくもありといった、儚げな笑顔であり、

 

トウマは不覚にも、見とれてしまったのであった。

 

 

「──さっ、帰ろか!こんな遅くなる予定やなかったからな、団長達も心配しとるかもしれん。リィだってあんたのこと心配しとるで?きっと」

「・・・お、おう。そうだな、さっさと帰ろうか。ところで、リィって?」

「フリィラ。なんか、せっかくやからそう呼べって」

「意外と仲良いんだなおまえら・・・」

「それよか、トウマんはなんでそんなぼろぼろなん?金属パーツぐにゃぐにゃやんけ」

「ブレスに吹き飛ばされた。あんちくしょうのな・・・って、あれ?」

 

 

トウマが、急に辺りを見回した。何事かとアーリィンもキョロキョロと見渡すが、そこには何もなく、やはりだだっ広い砂漠があるだけ。

 

──そう、何もない(・・・・)のだ。ある筈のものも。

 

 

「逃げられた、か。死んどらんかったんやな」

「ああ。ま、とりあえず生き残れたことに感謝だな。さっさと帰ってしまうとしよう」

「おう!さ、はよはよ」

「おいおい、押すなって」

 

 

二人ならんで帰る。空には満天の星が浮かび、明るい月が彼らを照らしいている──

 

 

 

 

 

「あ、そうそう。帰ったらトウマんのこと団の皆に紹介せなあかんで、向こう着いたらうちに着いてきてな?」

「えっ」

「拒否権なし。もう二度とバカな真似はやらせんで」

 

 

──しかし、未来が明るいとも限らないようである。








以下、小芝居───









アン子「なぁ、二人とも。今日が何の日か覚えとるか?」

トウマ「何の日って、そりゃ・・・GWの間のくそったれな平日──」

手巻き「メタくね!?いやそりゃ確かにくそったれだけども。・・・あ、そういや。今日だったか」

トウマ「なんだよダ(めし)、分かってたならさっさと教えてくれよ」

手巻き「ひっでぇ。5月9日ったらあれだよ、俺の気の迷い記念日」

トウマ「はぁ?」

アン子「トウマん、ええからこの作品のいっちゃん最初の投稿日見てみ?」

トウマ「はぁ・・・。あれ、5月9日。って」

アン子「そ。トウマんの誕生日」

トウマ「はー、はえぇな一年。なんだよこれ、なんでこの頃こんなに淡白だったんだっけ」

手巻き「うっ」

アン子「文も長ったらしい上によぉわからんし、なんやこの中途半端なネタ。無い方がましやろバカかあんたそうかバカか」

手巻き「ぐふっ」

トウマ「更新もとろくせぇし、読者の皆さん、よくこんなもん読んでくれたな」

手巻き「失礼だから!俺だけならまだいいけど、読者の皆様に失礼だから!」

アン子「うわっ、自分はええんかい。ドMやなドM」

トウマ「ないわー」

手巻き「うっせ。・・・ゴホン。えー、拙作もいつの間にか一周年を迎えてしまいました。惰性で書いていた駄作も、ここまでくるといっそ、ね・・・」

トウマ「まぁ、なんだ。ダ飯が書きたいことばっか書いてるから読む分にはつまらんかもしれんが、それでもよければ二年目もよしなに頼む。・・・これでいいのか?」

アン子「上から目線、最後の余分な一言。30点やな。・・・うちからも、今後ともご贔屓に!」


手巻き「以上、小芝居でした。もしよければ、今後ともよろしくお願いいたします」
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