のんべんだらり狩猟紀行 作:手巻きおにぎり
「ほんなら、まずは自己紹介といこか!兄ちゃん、名前はなんて言うんや?」
あ、やべ。出発後一分で判断ミス確定したわこれ。どうしよ、今すぐ降りてもらうか?いやでも2人用クエストで頼んだからいなくなったら困るよなこれ。いやでもーー
「兄ちゃん、どないした兄ちゃん!なんや、なんかウチ怒らせるようなことしたか!?シカトせぇへんでもええやーん!!」
「ん?あ、いやすまん。ちょっとぼーっとしててな。それよりも、名乗る時は自分から名乗れ。親から習わなかったか?」
「ん?いやいや、親父からは何も習わんかったなー。っと、それはええか。ウチはアーリィンっちゅうもんや、生まれはこの辺ちゃうけど、育ちはこの辺でな?そんでそんでーー」
「あぁ、はいはい。身の上話はその辺まで、どうせ今日か明日までの付き合いなんだからそんなことまで話さんでいいだろ」
「えー!!そんな寂しいこと言わんだってぇな!これが終わった後も仲良うしようや!な?」
だぁぁ!面倒クセェ、なんなんだよこいつは!もう一回言おう、面倒クセェ!!だめだこりゃ、完全にミスったわ。くっそー、変な親切心沸かすんじゃなかったよ!こいつ誰にでもこんななのか!?だったら相当鬱陶しい奴だぞ!
「あーはいはい。そうだな、時間もあるし、狩りの打ち合わせでもするか?」
「ちょい待ち!なんで兄ちゃんの名前言わへんのや!煙に巻こうったってそうはいかへんで!」
チッ、ばれたか。こういう奴に名前教えると絶対後から押しかけてくるんだよな。あんまり教えたくないが、煙に巻く方法も効かなさそうだし。仕方ねぇか・・・
「あーはいはい、そうだなまだ名前言ってなかったなー。俺の名前はトウマという。まぁ、よろしく」
「おう、よろしゅうにな!ほんなら、打ち合わせしよかー。まず、にいちゃ、いやトウマん!あんたの武器はその太刀っちゅうことでええよな?」
ト、トウマん!?なんてネーミングセンスしてやがる、初めて言われたぞそんなあだ名!いや、確かになんとなく語呂はいいけど、いいけども絶対に認めたくない!
「・・・おぅ、太刀だ。あとその呼び方まじでやめてくれ。いや、ほんとに大真面目に」
「なんでやー、ええやんトウマん。なんちゅーか、こう、まるっとして、きゅっとしてるような。愛されキャラみたいな感じで、な?」
「・・・・・・帰りたい」
帰りたい
「さて、気をとりなおして打ち合わせをしよう。俺の武器は太刀だ。そんで、お前の武器は、その鉄塊でいいのか?」
「鉄塊とは失礼な!こいつはウチの大切な初武器、アイアンハンマーや!鉄槌先輩にしっかり敬意を払いぃ!」
もうやだ、このテンション。全くついていけねぇよ。
にしても、ハンマーか。確か鈍器系武器はモンスターの頭に当てると脳震盪を誘発出来るんだとか。んなら、頭を狙わせるってのが定石だよな。・・・タイクンザムザとやらがどんな奴かは知らんが、あんな重そうなものぶち当てても潰れないもんなのか?モンスターってのは本当に奥が深いというか、超常的すぎるというか、規格外な奴らなんだな。
「はいはい、それじゃハンマー使いなアーリィンは頭付近に配置な。その敬意に値する
「おう、任せとき!っと言いたいところなんやけどなぁ、ちょっと今回は勘弁してほしいんや。いや、なんや。今回ウチがトウマんに同行させてもろたのはザムザハンマーへの強化の為の素材を集める為やろ?ほんでな、その素材ってのがな、ザムザの右腕についてるでっかいハンマーやねん。せやから、今回だけはそこを重点的に狙わしてほしいんや。だめか?」
ハンマー、だと?そんなのが本当に生き物の腕についてていいのか?想像も付かんが、それは実物を見ればすぐにわかるだろう。
「まあそれが目的なら仕方ない。好きにするといい、が。その前に一つ質問させてくれ。武器の素材として使うんなら壊さないほうがいいんじゃないのか?わざわざ壊すメリットを教えてくれ」
すると、アーリィンは『なに言ってんだこいつ?』という顔をし、数秒後突然ニヤニヤしだした。気持ち悪い。
「気持ち悪い」
「ひどっ!幾ら何でもそれは言わんでやトウマん!せめて心のなかだけでいってくれや!」
「わざと言ったんだよ。そんで、お前がいきなりニヤニヤしだした理由はなんなんだ?」
「・・・まあいいわ。そんならウチが無知なトウマんにしっかりバッチリと教えてしんぜよう!」
「あ、じゃあいいです。結構です」
「トウマんが聞いたことやろ!?質問したならちゃんと聞いてぇや?まず、トウマん。部位破壊っちゅう単語を知っとるか?」
「いや、知らんな。どういったものなんだ?聞いた限り、今回の質問と関係ありそうだが」
「せやな、まず部位破壊について説明しよか。部位破壊とは、ズバリ『モンスターの部位を破壊すること』!そのまんまやな。部位っつっても色々あるけど、基本的に素材になるものを指すんよ。今回のザムザについては二本の腕や胴体の甲殻。他にも怪鳥の耳や羽、ドスランポスのトサカ、跳緋獣の牙、爪、角、尻尾などやな」
怪鳥、跳緋獣、これらはモンスターを簡略的に表した、要はあだ名だとか二つ名だとか、そういったものだ。といってもこれらのものはハンターズギルドが公式で発表しているもので、モンスターの素材の呼び方に使われることが多いな。またこの呼び方はごく一部のモンスターを除き全ての中型、大型モンスターに付けられている。ハンターズギルドの方もよくネタが尽きないもんだな。
「そんでな、部位破壊をすると何があるかっていうとな・・・、実のところ、何もあらへん」
「・・・一瞬でもやったほうがいいと思った俺の気持ちを返せコラ」
「まぁまぁそんな怒らんでぇな。何もあらへんとは言ったけどな、だからってやたらめったら素材もろてったらギルドに睨まれるんやで。へんな気ぃ起こしたらあかんで?」
「ギルドに睨まれるって、どうやってだ。まさか職員がここまで来てる訳じゃないだろ?」
「それが来とるんやなぁ、ギルドの雇われ職員が。正体はあのタク屋さんや。あれは実はギルドと裏で繋がっててな、ハンターがへんな事やらかさんように見張っとるらしいんや。実際、それのおかげで最近は不正発覚件数がグングン上がっとるって、もっぱらの噂やで?」
「なるほどな、つまり俺らは部位破壊をしないとその部位を手に入れられないと。まあそういうことなら構わんよ、俺はどちらかといえば報酬金目当てだからな」
「んふふ、これで交渉成立や!んじゃウチは腕を狙うから、トウマんは足とか狙って隙を作ってちょうだいな」
「・・・了解。どうもハンターとしてはあんたの方が上手みたいだからな、言われた通りにしますよっと」
「まぁまぁ、そう卑屈にならんでぇな。しかしここは先輩ハンターとして一つ、ガツンと喝を入れたる!」
スゥ、と大きな口を開いて息を吸い込む。そしておもむろに立ちだした。いやいや、どれだけ大声出すつもりだよ?程々にしてくれよ、ったく・・・。
「いくでっ!!『1に生還、2に達成。3、4が道具に金勘定』やっ!!!」
思わず耳を押さえる。うるせぇ!!こんな狭い、しかも半ば閉鎖された場所でどんだけ大声だすんだよ!こんなこったろうと思ってたよちくしょうめ!
「ギニャァァ!!な、何にゃ!?何が起きたんだにゃ!??」
「あー、タク屋さん。こっちのことは気にせんでえぇから、ちゃっちゃと運んじゃってぇや」
「いや、そりゃお前あんまりだろ!ただでさえネコは耳がいいんだからよ、そんな大声出したら鼓膜弾け飛ぶだろ。常識的に考えろ、常識的に!」
「ニァァ、男の人の言う通りにゃ!アイルーの耳はデリケートなんだにゃ!大切にしてほしいにゃ!・・・まあそれはさておきにゃ、もうすぐ潮島に到着するにゃ。準備を済ませておくんだにゃー」
おっと、もう到着か。武器の点検でもしておくかなっと。
「なーなー、なんかお話しようやー。だんまりってのもなんか嫌やんかー」
「うるさい。いいからその
「さっきから全く敬意を感じられへん!ええか、先輩はなーー」
「ここが潮島だにゃ。狩猟場所は南側の洞窟の奥にゃ、気をつけて行くにゃー」
「あいよー。それじゃ、行くか」
「おっけぃ!さあさあ、腕がなるでー!」
洞窟の奥に行くまでに今のネコ、もといアイルーの説明をしとこうかな。あのネコはハンターを狩猟地まで運送する事、それと力尽きて死にかけのハンターを安全地帯まで運ぶ事を生業としている奴らだ。
前者は直ぐに理解できるだろうが、後者はわけわからんよな。俺も実際見た事はないから聞いた事しか説明できんが、何処からともなく現れて死にかけハンターを台車に乗せて運んでくらしい。本当にわけわからんな。因みに、通称ネコタクと呼ばれている。さっきの『タク屋』ってのはこれが元々だろうな。
「ほれトウマん、なにボサッとしとるんや!見えてきたで、ここがいっちゃん奥や」
「ん、おお悪い。奥か、意外と近い最奥だったな」
「こん中におるんがタイクンザムザや。よっしゃ!気合入れて行こか!」
「おーう。お前が腕で、俺が脚だったよな。そんじゃ行くぞー」
「おうっ!ってトウマん行くの速すぎやて!待ってぇやー!」
洞窟の最奥は直ぐに開けた。しかしなんだか視界が悪いな、洞窟の奥って埃とか溜まるのか?
っと、その中で大きな影を発見。俺の倍ぐらいの大きさがある、岩だ。何処を見ても生き物のような影は見えて見当たらない。ハズレ、かな?確か来てる途中に横穴が幾つかあったから、そっちの方かもしれんな。
「おーい、アーリィン。どうも、ここはハズレみたいだぞ。別の横穴をーー」
「アホかトウマん、何処見とったんや!後ろや、危ないではよこっち来い!」
は?だから、何もいないだろ!そう言おうと口を開きかけたとき、薄明かりのなか動く影を見つけた。その影は俺の後ろから、影の頭をぐんぐんと伸ばしていた。いーや、これはきっと頭じゃないだろうな。さっきあいつが言ってた『ハンマーのような腕』、それに違いない。って、それならまずいだろ俺!
走り出すんじゃ間に合わない。全体重を前に傾け、体を思いっきり投げ出す。一秒程後に地面に何かを叩きつけたような衝撃。俺はバランスを崩して更に転がり、アーリィンのいる場所まで戻ってきてしまった。
「トウマん、よぉ生きて帰ってこれたなぁ。あれ、ウチがあそこにおったら帰ってこれる気せぇへんもん。それはともかく、や。奴さん、おねむ邪魔されて激おこ状態やで?」
「野生児の本気舐めてもらっちゃ困るぜ。激おこ状態っつっても、そこまで速くなる訳でもなさそうだな。俺はさっきの通り脚を狙っていく、そっちもそっちで好きにやってくれ」
「りょーかいや。さあ腕がなるでぇ、お祭りの始まりやぁ!!」
ザムザの鈍い攻撃を掻い潜り脚に太刀をねじ込んでいく。何度目かわからない転倒をおこし、アーリィンが右腕を狙う隙を作る。俺はその間尻尾や背中の下の方など、手の届く範囲で傷をつけていく。どれだけ戦っているだろうか、そろそろ一時間は過ぎるくらいかな。
しかしそこでザムザに変化が起きた。先ほどからザムザが出してきた埃が突然多くなり、すると突然動きを止める。埃でむせるといけないので一旦離れて観察をしよう、見てみると埃の奥でザムザが苦しそうに右腕を上げていた。
「なぁ、アーリィン。あれって、凄い既視感があるんだが気のせいじゃないよな?」
「奇遇やなトウマん、うちもあれ見た事あるような気がすんのや。より具体的に言えば、何か叩きつけるような感じで見た事あるんよ。なんやったけなぁ?」
アーリィンが言い終わるか否かのタイミングで腕が振り下ろされる。しかしそこに対象はおらず、虚しく地面に振り下ろされるだけであった。地震と勘違いしそうなほどの振動、続いてバキバキと
慌てて下を見たが、予想に反して地面が割れていくなんてことは無かった。最悪な予感が当たらなくて良かった、と思って前を向きなおしたらあらびっくり。そこにはオレンジ色の見たことがない蟹が一匹いるではありませんか。つまりどういうことだ、まるで意味がわからん!
「お、あれがおっちゃんの言ぅとったオレンジ色ってやつかいな。ようやくお出ましなすったで。ほらトウマん、さっさと狩り再開するで!」
「いやいや、ちょっと待てや。あれがさっきの蟹?冗談きついぜオイ」
「なんにせよ狩らなあかんやろ!それが何であれや。ほら、ボサッとしとると潰されてまうで?」
「・・・何でもありなのは今更か。んじゃ、やることやって帰りましょうかな」
動きはあまり変わってない。が、左腕がハサミのような形から槍とか、突っつく用の形に変わっている。それに付随する行動の変化が大きいかな?しかし相手も最終奥義だったのかもしれず、それから程なくしてタイクンザムザは地に倒れ伏した。
狩りが終わったら既に夕方になっていた。潮島と言うだけあってか、近くに海がある。潮風が気持ちいいな、海なんて記憶にある限り初めて見た。なのに『やっぱり大きいな』と頭に浮かぶ限り、いくら忘れても俺の中には『経験』があるんだなー、と再確認させられる。だからどうした、といったもんだが。
「いやー、気持ちええなトウマん。そや、せっかくやから少し海で遊んでかへんか!?」
「誰が遊ぶか面倒くさい。金具が錆びるといかんし、さっさと帰るぞ」
「全く、イケズやなートウマんは。もちっと可愛げあってもえぇと思うんやけど?」
「断る!何が可愛げだ馬鹿らしい!速くしないと置いてくぞ!」
「しゃーないな、ならウチだけでも・・・って!トウマん、タク屋!待ってぇな、置いてかんでやー!」
「・・・よし、決めた」
「なんやトウマんいきなり」
「お前のあだ名は『アン子』だな。あんこ、餡子。アッハハハハハ!」
「トウマん・・・、そのネーミングセンスはドン引きやわ」
「てめーには言われたくねぇよタコ」