しかも今話は短め
午前2時。俺は自室にこもり、携帯で集めたオカズを手に下半身丸出しでいつもの日課に勤しんでいた。いつもはもう少し静かに行うのだが、今日に限ってはリミッターを外し獣と化していた。
今日は朝から2人とも居なかった。しかも帰ってくるのは約1週間後だ。第二回モンドクロッソ。TVでは必死に各国のリポーターが中継しているのだろうが、そんなことはどうでもいい。千冬姉は日本の代表とし、一夏はその応援としてドイツに渡っていた。俺も一夏に誘われたのだが、部屋の前に応援している旨の手紙を貼ることで、その難を逃れた。本心でも応援しているが、流石に外には出たくない。しかも国外などとは尚更だ。
「……ん、電話か?」
肌色の画面が急に切り替わると、電話のコール音が部屋に鳴り響いた。電話なんてかかってくるのは約一年ぶりだ。しかも、俺の電話番号を知っているとなると、電話の向こうの相手はかなり限られてくる。
案の定、その電話の呼び出しの相手は千冬姉だった。
「……もしもし」
「春助!無事か⁉︎」
一年ぶりに電話をかけてくるなんて、只事ではないと思っていたが、予想を遥かに上回る焦り声だ。あまりの声の大きさに、思わず耳から少し離してしまう。
「ど、どうかしたの?」
「春助は無事か……。いいか、落ち着いて聞け。……一夏が、誘拐された」
声の様子も予想できなかったが、電話の内容も俺の予想を遥かに上回っていた。
一夏が誘拐?にわかには信じられないが、千冬姉がわざわざ一年ぶり、しかも、モンドクロッソの決勝日にいたずら電話なんてかける訳がない。恐らく一夏は本当に誘拐された。こんな動揺した千冬姉の声は初めてだ。今さっきの言葉は大分落ち着いている様だったが、焦りは完全に消えていなかったことから、まだ一夏を救出できていないとみえる。
「……事情は分かったよ。一夏はまだ見つかってないよね?」
「あぁ。だが、今ドイツ軍の協力のお陰で大体の場所は把握している。これから向かうのだが……春助、お前も気をつけろ」
そこで電話は切れた。耳の横からツー、ツーと聞こえてくる。
通話終了のボタンを押し、肌色の画面に戻るが今更続ける気はない。賢者タイムだってとうの昔、否、継続中だ。
携帯を適当に投げやり、ベットに飛び込む。埃が部屋を舞うが、それを気にかける余裕はなかった。
(…一夏が誘拐?。これも原作で起きるイベントなのか?)
転生者の俺には原作知識という限りなく未来予知に近い力がある。が、俺の原作知識は、ISという女性しか扱えない機械があり、その学園に男で唯一ISを扱える一夏が入学するハーレムもの、くらいしかない。
どんな人が登場し、どんな物語になっていくのか俺は分からない。正直あらすじレベルだ。死ぬ前に、もっとISのアニメや原作を読んでいたらーーーー今になって後悔する。
仮にこの事件が本来起こる事だとしよう。そうなれば問題なく、とまでは言わないが、最低でも原作を開始できるだろう。しかし、もしこれが予想外の事件だとすると…。そこで俺は考えるのを放棄する。
(難しいことはやめだ。とにかく、この家からは絶対出ないぞ!)
一夏のことは無論、心の底から心配している。堕ちるとこまで堕ちた俺を見捨てず、毎朝部屋の外から声をかけてくれる。鬱陶しいと思うことはあったが、それでも俺は一夏に感謝していた。
(神様…どうか一夏をお助け下さい)
居なくなって初めて気づく大切なものは存在する。とにかく、今は一夏の無事を祈るしかない。
ベットから起き上がり、充電するため携帯を拾い上げる。
【登録が完了しました。3日以内にご指定の口座に登録料をお振込下さい】
携帯の画面には違法な額が表示されていた。
恐らく、携帯を投げやった時に運悪く変なURLにでも触れたのだろう。
(神様…お願い事が一つ増えました……)
俺がその画面を消すことに成功したのは、それから4日後のことだった。
一夏が誘拐された時系列がバラバラかもしれないですが、目を瞑ってくださるとありがたいです。
さて、もう一話プロローグ、もしくは次話から原作入りです。