かなりの緊張状態で、久しぶりの制服姿で向かった先では「黒塗の高級車」が待っていた。
第一話 魔を宿す男
日本国本州某所
人里離れた山中を走る黒い高級車。
後部座席にはオリーブ色の制服を纏った壮年男性と三十代後半くらいの男性の二人が座っている。
「そろそろ教えて頂けますか?」
言葉を発したのは若い方の男性だった。
「そうだな、あと数分もすれば目的地が見えてくる。同行して貰ったのは、君に辞令を伝えるためなのだよ。渡瀬三佐」
そう応えた壮年の男性の制服には肩に三つ星の肩章が光り、左側胸には多数の彩りの略綬が付いている。制服の色と階級から、この男性が陸将であることを表していた。
「こんな山奥で辞令でありますか?そもそも一介の普通科中隊長の自分が呼ばれた理由すら想像出来ません。統幕渉外部なんて部署も初耳ですよ…小暮部長」
「今向かっているのは統幕渉外部とは関係のない施設だ。貴官への辞令はその施設への出向みたいなものだと思ってくれ。」
「みたいなもの?正式な出向ではないのですか?」
「そうだ。身分はあくまでも統合幕僚監部特別渉外担当官が貴官の辞令書の内容だ…が、一部追加文がある。」
「…?」
「●●省外局 高次生命機構研究所ヴィンガルフ駐在とする!」
「???…自分との関連性がなさそうな名前ですな、、ハハハ…」
「まあ、じきにわかる。見えてきたぞ」
いきなり開けて整備された幹線道路のような場所を進んでいく先には物々しい警備の正面ゲートが見えた。
ゲートに着くと数名の警備員(警察でも自衛隊でもない独自の制服だ)が取り囲む。
一人が運転席へ近づくと、運転手の一尉が許可証らしき書面を提示した(普通は運転手は下士官クラスなのだが…)続いて乗車している全員に身分証の提示を求めてきたので応じる。
漸くゲートが開き、先にはトンネルがあり、車は走りだした。
暫く進んだ先にある地下駐車場に到着した。
そこには黒服を纏った男性が一人だけ立っている。気になったのはゴーグル?サングラスをかけていることだ?
渡瀬(地下でサングラスかよ?)
サングラスの男
「お待ちしておりました。人事部の宅間と申します。早速ですが着任の手続きを行いますので、こちらへどうぞ。」
「渡瀬君!我々はこれで失礼するよ。あとは宜しく頼むよ宅間君。」
「お疲れ様でした。」
「え、ここへは自分を送り届けるためだけにこられたんですか!?」
「あぁ、辞令書ちゃんと見ておけよ。渡瀬一佐!」
「一佐?」
「貴官は今回の辞令によって二階級特進となっておる。2年もここに拘束する見返りとでもとっても構わん。」
「二階級特進!?…それほどの任務というか‼に、2年‼」
「…詳しくは、宅間君から説明がある。」
そう言うと車に乗り込み帰って行った。
(死んでもいないのに、二階級特進?死亡フラグたってる?…)
「では、ご案内します。渡瀬一佐殿…」
このあと驚愕の任務を知ることになる
帰りの車中
「さっぱりわからん…」
「何がです?」
「何もかもだ!今回のことは私も何一つ知らんのだ。」
「渡瀬三佐…あ、いや一佐の人事はかなり特殊みたいですね?」
「ふははは!人事どころか、今のヴィンガルフとかいう機関がなにをしているかもわからん。渡瀬がなにをさせられるかもな!」
「まさか!?統幕の中枢にいる小暮陸将が知らされない程の機密…」
「余計な詮索は無用だ…今日のことは忘れろ」
次回
渡瀬の任務が明らかに‼