極黒のブリュンヒルデsidestory   作:apride

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硫黄島基地へ向かうことになったのだが、その前に美樹の実家に立ち寄ることになった。
ドイツ人とのハーフの実家は浅草だそうだ…
東京出身と聞いてはいたが、勝手に目黒とか世田谷あたりを想像していた…先入観というやつだな!前にも似た話があったような?



第十話 出港前夜

防衛省を出て左折し、そのまま外堀通りを走る。

秋葉原を過ぎると台東区に入り、浅草界隈…所謂(下町)だな。助手席のナビゲーターの指示に従い、昭和の風情漂う住宅地へと進入する白いアリスト…じゃなくてレクサスGS!…大柄な車だと緊張する。

美樹の指示で駐車場に着いた!

 

「ほう、ここが美樹ちゃん家か!どデカイ駐車場だな‼で、玄関はどっちだい?」

 

「あんた馬鹿?看板見えない!?」

 

「ふっ、視力は両眼2.0だ!月極駐車場と書いて…あります…」

どスッ‼

 

脇腹に肘鉄を頂いた(笑)

 

 

漢字の名前が並ぶ中に〔ノイマイマ〕とカタカナ表記の立て札スペースに車を停めた。…微妙に違ってたのはご愛嬌だろう。

「何ニヤついてんのよ?ほら、チャッチャと行くわよ!」

歩きながら制服の上着を着る。運転中は上着は脱いでるんだ…シワが寄るのも嫌だが、昔程ではないが軍服アレルギーが国内にはあると思う。

 

美樹の後から細い路地を歩いて行くと、初めて来たのに懐かしいような不思議な光景が…日が傾き夕焼けに染まる空が穏やかな日常を感じさせるのだろうか…

 

10分も歩いたか?漸くノイマイアー家に到着!ちゃんと玄関が目の前にある!

古い日本家屋だ。通りに面した板壁に引戸の門…なんだか、料亭みたいな…下町の民家というより屋敷に近いぞ!

スタスタと美樹は玄関の引戸ん(からから~)と軽快に開いて入って行く、暫く振りのわりには何故かそうみえない。

「ただいま~!おばあちゃん!」

 

「美樹ちゃん!?あらまあ、まあ!久しぶりねぇ!休暇貰えたのかい?」

70代くらいの上品な感じの婆さんが廊下の奥からスタスタと足早に玄関へ出てきた。と、目が合ったので会釈する。

「あらあら、そういうことかい。国家の重要な研究をしていると、仕事一辺倒で男っ気ないのかと心配してたんだよ」

 

「えっ、あ~!?おばあちゃん!紹介するわ、こちら渡瀬さん。研究所で一緒に仕事をしていて…」

言い終わる前に婆さんがずいっと進み出て、三つ指ついて深々と…

「美樹の祖母でございます。不束な娘ではありますが、どうか幸せにしてやってくださいませ!」

 

「あ、おばあちゃん!違っ…!」

「しかも、こんなに立派な将校さんだなんて!素敵な旦那様見つけたわね!早く曾孫を見せてもらいたいわね!」

 

走り出したら周りが見えなくなるらしい……

 

「おばあちゃん!勘違いよ!渡瀬さんは、うちの研究所に防衛省から派遣されてきてるの!お仕事で!今日は渡瀬さんのお供で防衛省に出張だったのよ。明日は早いから、ちょっと立ち寄ってみただけなのよ!」

 

婆さんガッカリしたぞ…

 

「なんだ、そうだったの。久しぶりに一緒に夕御飯食べられると…すぐ帰るのかい?」

「うん、明日の早朝出発だからホテルに帰って休まないと…」

「それで、宿はどちら?」

俺に問いかける婆さん。毅然としてて、ちょっと恐いw

 

宿は…あれ?

元々は日帰り予定だから…手配してないぞ?

小暮部長も黒服君からも宿の指定はなかった…自由行動と…そうだ、横浜辺りでビジホでもと考えてた時に浅草行きの話になり忘れたんだ!…ヤバくないか?

 

「まだ決めておりません…けどw」

困ってしまい、つい…はにかんだ笑顔をみせたw

 

「泊まっていってくださいな。…是非!」

婆さん…笑顔だwwww

 

 

「えっ!ホテル手配してないの?防衛省で手配済みなんじゃない?」

美樹ちゃんピクピクする頬っぺたが怖いです…

 

「自由行動と言われたら、当然…自由だ!」

開き直ります!

 

因みに俺と美樹は携帯電話を持ってはきているが、かなりの制約がある代物だ。ネット接続は可能だが、閲覧機能しか使えない。今時はホテルの空室情報や予約など携帯端末から簡単に済ませるものなのだか…俺達は国家機密に携わる人間だから制約は多い。

便利は情報と引き換えなのだ。

 

 

「それじゃ、早速支度しなきゃね!美樹ちゃん、渡瀬さんお連れして散歩でもしてらっしゃい」

 

「ふぅ…しょうがないか、わかったわ!久しぶりにおばあちゃんの手料理食べられるしね。うちは空部屋もあるから泊まれるしね」

ちらちらと俺を睨みつつ…無理矢理納得したようだ。

 

 

まあ…なんだ、結果オーライではないか‼

 

 

 

 

 

美樹に連れてこられたのは近所の居酒屋?

 

 

「いらっしゃい‼あ、美樹ちゃん!?ひっさしぶりねぇ~‼」

「おばちゃん!久しぶり~‼とりあえずビールね!」

散歩がてら飲むのか!

ジョッキが2つと…なにか具が入ってるボールがきたぞ?

テーブルには鉄板…

「夕飯前に食べて大丈夫か?」

お好み焼きは腹が膨れるだろ…

 

「ビールにつまみくらい大丈夫よ」

そう言いながら、慣れた手つきで阿蘇の外輪よろしく土手を盛って行く……土手?

「何を作ってる?」

 

土手盛りの手がピクッと止まる!

「何って?まさか…もんじゃを知らないってこと?」

 

「初めて見た。これが有名なもんじゃ焼き…なのか?」

 

「はぁ、まあ京都府民だものね?府民ね!京都市民じゃなく」

わざわざ(京都府民)と強調すんな!

 

いつの間にか、土手の中には汁が入ってる?

「これを混ぜるのか?」

と言いつつヘラを持って…

 

ビスッ‼

 

「イテッ!」

ヘラの角で刺しやがった!

「触るでない‼」

美樹ちゃん…目が怖い‼

 

「素人が土手に触れるなど10年早いわよ‼」

 

素人とか…セリフが笑えるw

 

「ヒュ~‼ねーちゃんかっこいい‼」

「おじちゃんはねーちゃんの土手に触ってみたい‼」

「「ギャハハ‼」」

奥の席にいるオッサン達が騒いでるよ。…土手にかけて美樹の土手とはw

 

「なによ、私の土手って?イミフなんですがー?」

ん、わかってないの?下ネタは…

女の土手と言えば…あそこのことだろw

「ちょいと、大佐どの!説明してよ!あのオッサン達と目の前にいるオッサンはウケて面白いみたいけど~‼」

 

「いいぞ!にいちゃん教えてやりなよ~‼」

うるさいよ酔っぱらいおやぢども

 

美樹の耳元に小声で教えてやった!

「ボソボソ…部分の盛り具合のことをドテ。盛上がりの大きなのは俗に(もり⚫ん)と呼んだりする。O.K.?」

 

「…***∀がドテ‼」

 

美樹が挙動不審だ…赤面して俯いてしまったよ!?

 

しかし手元のもんじゃはきっちり…て、ぐちゃぐちゃ?

 

「あのー美樹ちゃん?もんじゃ焼き大丈夫か?」

「え?あ、当たり前‼出来てるわよ」

「このぐちゃぐちゃしてるのを食べるの?」

元々、関西人の俺には得体の知れない食べ物だな。

「ヘラを使って、こうやるのよ!」

 

真似して一口……むぅ‼

 

「イケル‼イケルゾ美樹ちゃん!ビールに合うなぁ♪」

見た目はアレだが、味は旨味がぎゅぎゅっとくるね!

 

「見た目はアレでも旨いでしょ!」

「うん、ビールがすすむ!土手崩しがこんなにイケルって‼」

「土手ネタはやめい!!ビールおかわりしたいんだけど、おばちゃんの夕飯が食べられないと困るし、そろそろ帰りましょ」

 

そうだ、美樹の婆さんが待ってるな!

 

 

日も落ちたし、急いで帰る。

 

帰宅すると、既に夕飯の支度ができていた。

「2人ともずいぶんと長い散歩ね~美樹ちゃん、口元にソース付いてるわよ!」

 

「あ、えっ!?」

慌ててハンカチを取り出すが…

「嘘よ!やっぱりね~」

散歩がてら一杯引っかけてきたのはバレてるんだな~

「すみませんね。この子は普段はツンとしてるかもしれませんが、小さい時からおてんばでね。でも、地を見せてるだけ…渡瀬さんには気を許してるんですね。ほほほっ!」

「おばちゃん…その辺で堪忍して‼」

 

肌が白いためか、最近はやたら美樹の赤面を見るな?

赤面性なのかな?

 

「さあさあ、お夕飯にしましょう。美味しいのよ~ここの鰻重」

テーブルには人数分の鰻重が置かれていた。

あれ?手料理じゃないんだ?

 

「あれ?おばちゃんの手料理だと思ってたわ」

美樹はそう言ってたから、普段は婆さんの腕によりをかけた手料理なんだろう。

 

「あなた馬鹿ですか?あんな時間にいきなりきて手料理を作る時間があるわけないでしょ!」

いつも俺が言われてるような光景だな、美樹の言動は婆さん譲りかな?

 

老舗の鰻屋なんだそうだ。老舗のタレは代々受け継がれるそうな…濃厚な旨味が凝縮されて…いかん!どこぞの料理オタク漫画みたいなセリフが出るところであった!

 

食事の後にはお風呂をいただいた。総檜造りの風呂場だ…1人では広すぎなくらいだな?

「美樹ちゃん、お風呂入って良いわよ♪」

「渡瀬さんが入ってるでしょ!その手はくわないわよ!」

やりとりが筒抜けだよ…

 

風呂を上がると浴衣が用意されていた。美樹のお父さんの物だ。…う~ん。ビッタリじゃないか!

ご両親は仕事の都合で、現在はドイツに住んでるそうだ。

寝室用に客間を用意されていた。

何故か布団が並んで敷いてある。ツインですか…

 

後ろでスーっと襖が開いた!

「なんであんたが居るのよ!」

2組の布団を見て…また赤面

「ちょっと!おばあちゃん‼なんで一緒の部屋なのよ!」

叫びながら出ていったが、すぐ戻ってきた。

「明日早いから寝る…」

そう言いながら布団に潜り込んだ。

 

「そうだな、おやすみ」

 

今日は疲れてる。寝るとしよう…zzz

 

 

 

 

「ねえ、横に居るからって…変な気起こさないでね?」

 

「…zzz」

 

「ねえ、渡瀬さん?こら!渡瀬!…寝てるし」

 

「あんたとなら構わないのに…」

 

「馬鹿…」

 

 

「zzz…z」

 

 

下町の夜は深まって行く…

 

 

 

 

 

 

 

 

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