極黒のブリュンヒルデsidestory   作:apride

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第十一話 横須賀基地

目が覚めると、まだ薄暗い。

隣の布団では美樹が軽い寝息をたて眠っている。

 

「ふっ、据え膳を喰いそびれたな」

 

 

時計を見ると[午前4時]を過ぎたところだ。

横須賀基地を0800即ち[午前8時]に出港する護衛艦に乗れと言うことは、1時間前の[午前7時]には基地に入るようにしないとな・・・

民間の船舶や航空機だと搭乗手続きがあるが、軍艦や軍用機でも乗組員以外の外部の人間が搭乗する場合はそれ相応の手続きが必要なのは当然だ。

陸自の俺はまだしも、美樹は自衛官ではない。

階級の高い者への命令内容は簡素だが、それは『当然わかっている』との前提に基づいているからなのだ。

民間企業でも、部長クラスへ細かい指示などしないのと同じだ。

ギリギリに行って海自に迷惑もかけられんしな・・・

 

 

 

そろそろ美樹を起こすとしよう。

と考えてたら、隣から

 

「おはよう・・・・」

 

「おはよう・・・起きてた?」

 

「ついさっき起きたところ。見たら、考え事してるみたいから・・・・」

怖い顔してたかな・・?

 

「今日のことを考えてた。早くてすまないが、そろそろ支度しよう。7時までには横須賀基地に入りたい」

 

「わかったわ。時間ギリギリとはいかないしね」

 

「おはようございます。渡瀬さん、開けてよろしいかしら?」

 

襖の向こう側から婆さんの声がした!

 

「あ、おはようございます!大丈夫です」

 

スーと襖が開き

「朝御飯、簡単なものだけど・・・食べる時間はあるかしら?」

 

先に起きて、朝食を用意してくれたみたいだ。

まだ時間に余裕がある。折角だからいただくことにする。

 

「朝早くからすみません!有り難くいただきます」

 

美樹と二人で朝御飯をいただいた。

今朝は婆さんの手料理だった・・・出来立ての卵焼きが美味しかった!

 

婆さんに見送られながら、美樹の実家を後にした。

 

 

 

───────────────────

 

 

 

早朝で道路は空いているが、ここはやはり・・・湾岸線だろ?試してみたかったんだ(笑)

 

「なんか・・ずいぶん速くない?ちょっ!なんキロ出してんのよっ!!!」

 

助手席からクレームがきた!

現在速度220km/h…まだイケルんだが、やめとこう。

やはりリミッターは無しだった!

 

「いい歳のオッサンが暴走しないでよね‼パトカーに捕まったら遅刻するわよ‼」

 

「すみません!おっしゃっるとおりです・・・」

 

確かに!オービスは揉み消しできるだろう。しかし、パトカーはまずい‼行政処分はくらうことはないだろうが、所轄の警官は職務を実行するからな…

絶対に遅刻する・・・・・

 

 

 

 

 

 

道路が空いているのと、少々スピードが速かったこともあり・・・・6時半には横須賀市内に入っていた。

余裕で7時前に横須賀基地に到着!

 

「誰かさんが飛ばしたから余裕だったわね~‼」

 

横から嫌みが聞こえる・・・

 

さて、向かう先は護衛艦隊司令部だ!

横須賀基地とは、この地域にある海自の施設全体を便宜的に呼んでいる。正式名の[横須賀基地]という施設は存在しない。

 

 

 

 

通された部屋では、護衛艦隊司令と艦長が待っていた。

 

「お待ちしてました。陸自の渡瀬1佐と・・V機関のノイマイアーさんですね?連絡を受けております。細かい段取りは私どもに一任とありましたので、目的地までは指示に従っていただきます。宜しいかな?」

 

「はい。お任せ致します」

 

護衛艦隊司令からの指示に従う。俺たちは〔積み荷〕なのだ。

 

「今回のミッションは秘匿性を考慮して、艦長のみが知っている。他の乗組員にはバレないように頼みますよ?」

 

「承知しました。しかし、私らが乗艦すること自体が不自然ですが・・・・」

 

「貴殿方には海自隊員に変装してもらう。これなら乗艦しても不自然さは無い!!制服と身分を用意したので、まずは着替えからだな!」

 

時間も少ないから、言われたとおりに着替えをする。

 

 

用意されていた制服は夏服だ!真っ白な開襟シャツに真っ白なパンツ、黒地に金糸刺繍の肩章。第三種夏服というタイプで、海軍夏服の定番スタイルだ。

やっぱり海軍が一番かっこいい‼

 

と、美樹も着替えを終えて戻ってきた‼

WAVEの第三種夏服だ!

白の上下だが、膝上10㎝程のミニスカート・・・えっ?!

 

「・・・・」

「・・・・」

「・・・・」

 

部屋にいるオッサン三人はその姿に一瞬言葉を失う…

 

「あの・・・・なにか変ですか?」

 

「あゎ、その・・・髪は纏めないといけないぞ!ですよね?司令?」

まずい!かなり刺激的なWAVE(女性海上自衛官)が出来上がりかけた!

慌てて対処策を考えたら、ひとつしかなかった!司令に同意を求める!

 

「うむ、惜しいが・・あっ!いや、女性自衛官服務規程で髪は肩に掛からない長さ・または纏めるとなっておるのだ」

 

 

「あ、そうでしたか!?すみません!直ぐに直してきます!」

そう言って更衣室へ戻って行った。

 

美樹が退室した後・・・

 

 

「いや、驚いた!足が長いなぁ!それに加えて!あの髪と瞳は反則だな!!」

司令・・・にやけ面だよ

 

「男所帯の護衛艦にはキツいですな・・・」

艦長は真面目に心配顔だな。

 

今更、スカートを直す時間はない・・・

ミニスカWAVEが誕生しちまった!!

 

しばらくして美樹が髪を纏めアップにして戻ってきた!

これはこれで…さっきとは違う色気があるが、凛々しさが出てるし大丈夫だろ?

 

「では、この後の段取りを説明しよう。まず、制服に付いている氏名・階級を確認!」

 

「長瀬啓介・3等海佐」

 

「野々宮美樹・2等海尉」

 

偽の氏名と階級だ!渡瀬が長瀬くらいは良いが、ノイマイアーが野々宮とは!まぁ、野村や野口ではベタすぎだしな(笑)

 

「私は『野々宮』?なんだか可愛らしい名前だわ~」

 

美樹は野々宮姓には違和感無いようだ。しかし、珍しいような・・どこかで聞いたような名前だな?

 

 

「2人にはその氏名・階級で身分証明書を発行済みだ!もちろん今回限りの期間限定だがね。職務は横須賀海上訓練指導隊の所属とする。腕章を左腕に付けてくれ!」

 

腕章には[FTC]と書いてある。

 

「君たち2人は、出港直前に車で乗り付ける。そして、抜き打ちの乗艦調査を行う!・・・と、いう感じで頼む!宜しいかな?」

 

「了解しました!」

 

なるほど、訓練指導隊が抜き打ち調査に突然乗り込んで行く…これは良いな!こちらは堂々と動きまわれる上に、逆には近寄りがたくて距離を保てるな!こちらは幹部だから、曹・士は問題ない・・・僅か数人の幹部さえ気をつけていれば良いだろう?

 

艦長は一足先に乗艦すべく退室した。

 

 

─────────────────────

 

 

 

時刻は0745

 

 

「では、行きたまえ!」

 

「はっ!長瀬3佐・野々宮2尉両名、行ってまいります!」

 

見送る護衛艦隊司令に敬礼して、73式小型トラック(パジェロ)に乗り込んだ!

 

 

 

イージス護衛艦[きりしま]が目の前に迫る!!

「さすがにでかいな!!」

満載排水量1万トン近い艦だ!駆逐艦というより[巡洋艦]だな!!

 

「す、すごぉい!大きいわぁ!!」

 

お前っ!微妙な台詞だぞっ!

運転手の海曹が一瞬動揺したぞ(笑)

 

 

 

艦に車を横付けする!

すかさず車を降り、タラップをかけ上がる!

 

 

出港直前の来客に驚く乗組員達に軽い笑みを浮かべ話し掛けた。

 

「横須賀海上訓練指導隊です。これより臨時乗艦調査を行う!」

 

全員が一斉に緊張の面持ちで敬礼して、俺たちも答礼する。

 

 

 

 

 

 

 

南硫黄島にあるというV機関隔離施設への航海が始まった!

 

 

 

 

 

 

 




後半での護衛艦隊司令部でのやりとりの最後に出てくる『海上訓練指導隊』= Fleet Training Commandの頭文字『FTC』で良いかと…呼び方などは想像です。「亡国のイージス」のワンシーンを参考にしました。
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