極黒のブリュンヒルデsidestory   作:apride

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こんごう型二番艦『きりしま』

基準排水量7250トン
満載排水量9485トン
【注】諸外国の軍艦は満載排水量を公称にするのだが、海上自衛隊では基準排水量を公称している。要するに、実際より[小さく]見せたいのだ!

全長161m
全幅21m

最大速度30ノット以上
【注】30ノット~

乗員300名


「イージス艦」とテレビなどで映像と共に紹介されたりして、こんごう級護衛艦が自衛艦の中で一番有名かな?米軍が開発した[イージスシステム]を搭載した艦のことだ。ちなみにベースとなった米軍のアーレイバーグ級駆逐艦よりも、巡洋艦のタイコンデロガ級に近いサイズなのだ!
こんごう級護衛艦の艦橋は巨大で、停泊中の姿を間近に見ると驚くだろう。
例えるなら、大阪城天守閣が海に浮かんでいるようなものかな?


第十二話 護衛艦きりしま

《横須賀を出港して太平洋を南下中》

 

 

硫黄島へは明日の正午には到着予定だ。

それまでの間、俺たち二人は横須賀海上訓練指導隊[FTC]として乗り込んでいる。長瀬3佐と野々宮2尉の身分を名乗る。執務室として士官部屋を用意していただいた。偽者なんだから仕事などない・・・艦長は適当に艦内をそれらしく彷徨いてもらえば良いと言っていたが・・・

 

「あの~、長瀬3佐どの?」

「ん、どうしかしたか?」

「この船、男しかいないみたいだけど?」

美樹がなにやら不安そうに尋ねてきた。

 

「確か、護衛艦など[戦闘艦]には女性隊員は配属されないらしいよ?」

 

「そうすると・・トイレやお風呂は?」

 

「あっ、それは・・・まずいなぁ」

 

トイレや風呂は共同だ・・幹部用はあるが、個室にバス・トイレが付いてるのは艦長私室だけだ。

 

『コン、コン』

 

部屋の扉がノックされた。

 

「失礼します!船務科の者ですが、艦長が司令室まで来ていただきたいそうです。ご案内いたします!」

 

「司令室?ま・・いいか。伺います」

 

こんごう型護衛艦は司令部機能を供えているんだな?

だから[司令室]が存在する。

 

 

 

 

《司令室内》

 

「この部屋は普段は使用しない。司令が座乗時のみだ・・ところで、この艦には女性用設備が無いことは気付いてるかな?」

 

「ちょうど今、そのことで・・困ってました」

 

「一泊のみだが、お貸ししょう。・・内緒だぞ!」

 

助かった!・・とにかくは一難去ったよ。

 

「そういうことで、食事は他の幹部と一緒に士官室でとってもらうが、バス・トイレは私室を使用するように!」

 

「はい!有り難う御座います!」

ちゃんと敬礼してる・・だいぶ慣れたな。

 

 

 

その後、艦内を邪魔にならない程度に彷徨いてみた。

皆、興味津々にチラチラと視線を投げてくるが・・・勿論、その視線の先は俺ではない(笑)

 

ひそひそ話が聞こえる・・視力だけでなく聴力も良いのだよ!

「・・ミニスカだ!」

「・・ハーフかな?」

「・・オッサンが邪魔だな」

 

ま、どうでもよい・・・

 

しかし、怪我をする前よりも明かに感覚が鋭くなった。五感は常人のやや上のレベルだろうか?問題は《第六感》というやつだ・・・慣れない為か上々ストレスに感じているんだ。

怪しげな能力の覚醒の影響なのかもな?

オカルトには関心がないのだが、ヴィンガルフに関わってからは《否定的》ではなくなった。

心霊とか霊魂という・・いや、少し違うな。

ヒトが抱く『思い』・・そういった思念を感じるようになった。それが強いとより鮮明に感じる・・・それと、思いを伝えてくるのはヒトだけでない、持ち物や愛着のある場所などもだし、生死も関係ない。既にこの世を去った人が残した思い・・・だと厄介だ!

向かう先の《硫黄島》は近代戦史でも有名な激戦地だ。当然[負の思い]が渦巻いてるだろう・・・

硫黄島基地へ立ち寄ることは避けたいものだ。

 

 

 

「・・・・!」

 

ん?

 

 

「どうしたんですか?ぼぅ~としてますよ!?」

 

「ん、ちょっと考え事をしていた・・それにしても、君の上司はいいとこあるなぁ・・」

 

「はぁ?どこを見て言ってます?最果ての島へ、それも船旅させる人ですけど!!」

 

「その前だよ・・どうやら、この船旅が本命みたいだ。なら、防衛省へ私に同行した意味はなんだ?話は既についていたし、2人とも出向く必要がなかっただろ?」

 

「・・確かに、ケーキを食べて帰ってきただけね?」

 

防衛省ではコーヒーとケーキをいただいただけだ!

では、わざわざ俺に美樹を同行させたのは?

美樹の実家(正確には母親の実家)と防衛省は皇居を挟んだ反対側だったな。

 

「内緒だったんだが、出発前に奴が一言(ノイマイアーの実家は浅草だそうだ)とな!」

 

「まさか!・・室長が?」

 

「血も涙も無い冷血漢だと思ってるのか?」

 

「大義の為には犠牲を厭わない人よ?何人の魔女を始末してきたと・・・」

 

「確かに、奴は大義の為には鬼になる。だが、話してみると・・根は他人を気遣う情を持つ男だよ。私から見たら、奴も九もまだまだ不器用な若者だな」

 

「室長はまだしも、所長のことなんて!あの人こそ感情の欠片すら感じられないわ・・」

 

「私は[部外者]で年長者だからなぁ!?部下の前では出せない本音が出しやすいのだろう・・仕事の後には頻繁に話というか、半分愚痴を聞いてやってる(笑)今聞いたことは、戻ってから口外無用な!」

 

「わかってる!・・・でも、意外だったわ?あなたがあの二人と仕事外の話をしてるなんて・・」

 

「話だけじゃないぞ?格闘術や射撃の手ほどきも合間にやってるよ!」

 

「彼らは研究員よ?・・・なにを教えてるのよ!?」

 

「男の嗜みだ!いざというとき戦わねばならんからな!それに、中々のみ込みが早い!頭の良い若者は教え甲斐があるよ!」

 

「はいはい・・大佐どの」

 

「大佐はよせ・・・赤い軍服を着て仮面を付けたくなる(笑)」

「あっ、そのネタはわかる!ガ⚫ダムですよね?」

 

なぜわかる!1979年の作品だぞ?あ、メジャー過ぎだった!!赤い軍装・・・悪くないかも?

 

銃の腕前は2人ともだいぶ上達したな・・

最初はグリップからダメ出ししたが、優秀な頭脳は覚えも早いが、理解して確実にモノにしてる。

オートマチックの45口径や9㎜を片手撃ちできるだけで大したものだ!素人がいきなり撃って当たるものじゃないんだ。

 

 

 

そうしている間に昼食の時間が近くなっていた。

特にやることもない航海・・・楽しみは飯くらいだ。

食堂へと向かうことにする。

 

「護衛艦って狭いんですね?それに、通路は扉だらけだし・・・歩きにくいわ」

 

「軍艦は[水密扉]があるんだよ。浸水したときに区画ごと閉鎖する。昔に比べたら快適になってるみたいだがな?」

最近の自衛艦は大型化し、外洋で長期の任務を考慮した造りになってる。ベッドも二段が普通になったしな。

 

「中から見たら、客船とは明かに違うなって・・ちょっと怖いな」

「それが普通の人の感覚なのだろう・・実戦を経験しないまま艦命を終えてもらいたいものだ」

 

 

昼食の後も艦内を適当にブラブラしたりしながら、それとなく仕事をしている振りをした。仕事をしている振りというのは疲れる・・美樹は興味深く見学に勤しんでいたな!軍艦は初めてなので、目に映る物全てが珍しいのだろう!

俺は、高校卒業まで舞鶴に住んでいた。親父は海自だったので、護衛艦の見学はよく行ったんだ。「大きくなったら、艦長になる!」といつも言ってたっけ・・・

 

 

 

夕食の『金曜カレー』を食べた後に、艦長に呼ばれた。

因みに、金曜カレーとはメニューでなく、海軍時代からの伝統で、曜日感覚を失わないように週末にカレーを出すのだそうだ。現在は金曜が週末なので、海自では金曜にカレーが出る!陸と空にはこの風習はない。

 

 

 

《艦長室》

 

「明日1000に硫黄島海域に入る。硫黄島基地からヘリが迎えに本艦にやって来る。それに搭乗されたし!との連絡があった」

 

「了解しました」

 

 

こんごう級護衛艦にはヘリは搭載されていない。発着艦スペースは艦後部にあるので、こういった段取りだろうと予想していた。

 

いよいよ硫黄島基地ならぬ、南硫黄島基地?へ到着が近づく!

 

「明日の昼には目的地だな・・・硫黄島か南硫黄島かは知らないが、隔離施設となるとやはりかな?」

そう言って視線を横の美樹に移す。

 

「残念だけど、恐竜はいないわよ・・・相手は間違いなく《魔女》よ!」

 

「ただの魔女ではないよな?隔離するくらいヤバイんだろ?」

 

「そうね、多分・・・」

 

美樹には大方の予想はついているようだ。

 

「以前、研究所内で魔女が《孵卵》して大勢の犠牲者がでたそうよ。ハーネストに潜んでいるドラシルが成長すると孵卵するのよ・・」

 

初耳だ!

孵卵てことは、何かに生まれ変わるのか?

SF映画の『エイリ⚫ン』が頭に浮かんだ!

 

「はぁぁ・・やれやれ、相手は怪獣かよ!」

 

「何を想像したか知らないけど、当たらずも遠からずかしらね・・・」

 

 

 

 

明日は島でバケモノを相手に実験なんだろう・・・

早めに休んでおこう。

 

二人はそれぞれ自室へと戻る。

 

 

 

 

慣れない船旅の疲れもあり、艦の揺れも気にならず熟睡したのだった。

 

明日に備えて身体を休めておかねば・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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