極黒のブリュンヒルデsidestory   作:apride

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閑話:消せない記憶【前編】

《防衛省駐在官》 と表示された部屋内

 

迷彩服姿の男と黒スーツ姿の女

 

迷彩服の胸には[keisuke watase] 襟には二本の横線の上に桜花模様が三つの[1等陸佐]を示す階級章

腰には拳銃とナイフを装備している。

 

「うん、この格好が一番しっくりくるな!」

 

本人は満足そうだが、スーツ姿の女は眉をひそめる・・

 

「なんだか・・凄く物騒な感じで怖いんですけど!!」

 

「本庄さんが言うこともわかるよ!しかし、あんな事件もあったことだしなぁ?制服だと動きにくいんだよ!」

 

事件とは[サオリ]が発現した魔法を使い暴走し、職員・警備員を多数惨殺したときのことだ。

現場に駆けつけた俺の制服・制帽は血だらけになり、革靴を履いていたために滑って転びそうにもなったのだ!そこで、使いなれた装備を取り寄せた。公式な行事等は制服を着るが、普段は作業服か迷彩服で行動することにしたのだ。無論の事、所長にも承認を得ている。

 

「そうかもしれませんが、私は制服姿の渡瀬さんが良いです。・・研究所内だけにしてくださいよ!?」

 

「わかりました・・外出着は制服かスーツにしますよ!」

 

と、その時!

 

 

《コンコン!》

「ノックするのは良いが・・ドアを開ける前にしろよ」

「あら、これは失礼しました~」

美樹が入り口に立っていた。

 

「あらっ?・・ノイマイアーさん!なにか御用かしら?」

 

本庄?もしかして仲悪いんか?

 

「御用があるから来たのよ?当たり前でしょ!」

 

「用があるなら事前連絡いだだけないと困るわ。スケジュールの都合もあるしね!」

 

「あなたには用はないわよ?私は渡瀬さんに用があ・る・の!」

 

「ま、まあまあ・・二人ともその辺で!」

 

慌てて間に割ってはいる!

 

「で、なんの御用かな?美樹ちゃ・・あ、ノイマイアーさん」

 

 

「この前、私に聞いたでしょ?[記憶を消す魔法]の魔女の件よ。対面できるみたいよ?どういたしましょうか・・渡瀬1佐?」

 

「ふむ、この後の予定は確か・・」

「本日の予定は19時から所長との会食だけですわ」

即座に本庄が答える。

 

「ありがとう本庄さん。問題無いようだから伺おう!」

 

「じゃ、行きましょう。行き先はいつもとは違い、その子の部屋に直接よ!」

 

「部屋に?個室を与えられてるのか?」

 

他の娘たちは数人の相部屋だと聞いている。

やはり特別視される能力なんだな。

 

「記憶を覗いたり、消されたりするのは非常に危険なのよ!あなたなら、魔法を中和してしまうから問題無いと判断して許可が降りたの・・でも、気をつけてね!?」

 

「わかった。しかし、どう気をつければ良い?」

 

「あなたが入室する際に、魔女を先行させる。理屈では、双方ともイニシャライザーの中和によって魔法は使えない状態になるでしょ?で、安全が確認できたら入室するって段取りよ!」

 

要するに[弾除け]役の魔女を使うんだ?

気の毒だが、仕方あるまい・・

 

「で、その気の毒な役回りの魔女は?」

 

「・・もう来てるはずなんだけど?」

 

その時!

 

「またせたな」

 

「えっ、所長!?」

 

九ちゃん自ら連れてきたぞ?

 

「所長が直々にか・・随分な待遇だな?」

 

腰まで届く長い黒髪が印象的な少女だ・・

 

 

「私が出向くのだ、双方の魔女はそれだけのレベルだということだ。丁寧に扱ってくれ・・壊さないようにな」

 

いつもながら、[大切な物]扱いだな。

 

「試しにこの男を撃ち殺せ!」

 

「「えっ!?」」

俺と少女は同時に驚き・ハモった!

 

「何度も言わせるな!7620番!やれ・・」

 

少女は苦悩の表情だ・・ふん、やれやれだな!

 

「構わん!私を撃て!」

 

「えっ!どうして?」

 

「やらないなら、こちらから行くぞっ!!」

 

・・と、適当なポーズで構えてみせた!!

 

「くっ!はぁっ!!」

 

7620番と呼ばれた少女は咄嗟に身構え、即座に[何か]を発した・・・かに見えた!

 

「っ!!・・?え、どうして??」

 

少女は何が起こったのか分からず戸惑う。

魔力が中和されたのは初めてだろう。

 

「よろしい!!では、予定通りに始めてくれ」

九所長が手振りを交えて制止し、美樹へ目で促す

 

「では、これよりイニシャライザー接見を開始します。7620番[黒羽寧子]は入室し、中に居る魔女へ攻撃しなさい!」

間髪入れずに割って入る!

「あぁ、・・その前にいいか?」

 

「・・なんですか?渡瀬1佐」

「作戦を円滑に行うべく、彼女と打合せしたいのだが?」

「渡瀬1佐に任せる!」

九ちゃんナイス!

 

「所長のお許しも出た!さ、おじさんと話そう」

戸惑う少女[黒羽寧子]の手をとり引寄せる。そして耳元で囁く・・

「さっき魔法が使えなかったろ!?私が近くにいると魔法が使えないんだよ!この後、部屋に入ると女の子がいる。言われた通りに攻撃しても私が魔力を打ち消す!君とその子を助けたい!」

 

少女はジッと此方を見つめながら、状況は把握した様子で答える。

「わかりました。・・・女の子なんだ」

「ん、相手は女の子だが?」

「ごめんなさい。私が捕まった時に男の子と一緒だったんです。怪我して入院したって聞いたけど・・」

「ここで男の子は見たことが無いよ。次に会えるかわからんが、調べとくよ!その子の名前は?」

「良太!村上良太です!一緒にダムから落ちたの!!気がついたら私だけ捕まって・・・」

 

「随分と長い打合せだな?!そろそろ始めてもらえないか?」

 

ヤバいな!所長が痺れを切らしそうだ!

 

「ムラカミリョウタだな!任せておけ!じゃ、たのむよ!」

 

「はい!良太のことお願いします!」

 

 

意を決して寧子は部屋へ入る!

 

 

 

 

────────────

 

──────

 

 

今日も長い一日が始まった。

壁と天井と床だけ見て過ごす・・・長い

私は斗光奈波・・・自分の名前を忘れないように呟く

 

 

『ガチャン!』

 

部屋の扉が開いた!?

 

・・・誰か入ってきた

 

「誰?」

 

長い髪の少女が攻撃姿勢で此方を見つめている!

二人の視線が合わさる!

奈波は眼球に力を込める!

 

「なっ?!見えない?」

 

初めての状況に戸惑う。背筋に寒気が走る!

心を読めない人間に出会うのは初めてだった。

 

侵入者の少女が振り返り、後ろにいる人物に話し掛けた。

「大丈夫です!彼女も私も魔力は中和されたようです」

 

「そのようだね?寧子ちゃん、ありがとう!」

入ってきた大人の男は、そう言って少女の頭を優しく撫でた。

頭を撫でられた少女は慣れてないのか、少し恥ずかしそうに頬を紅く染めている。

 

 

「あなた達・・誰?」

 

 

 

 

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