極黒のブリュンヒルデsidestory   作:apride

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閑話:消せない記憶【後編】

突然、部屋に侵入してきた二人。

 

兵士の姿をしたおじさん?

 

私と同じくらいの歳の女の子

 

 

どちらも初めて見る顔だ・・

 

 

それよりも、私の魔法が使えない!

 

 

 

「あなた達・・・誰?」

 

 

 

 

 

 

「私は黒羽寧子。貴女と同じように魔法使いです」

 

「私は防衛省駐在官の渡瀬1等陸佐だ。イニシャライザーとも呼ばれている」

 

 

 

 

「・・・そう、何の用?」

 

どうせ、ろくな用事ではないだろう・・

 

 

 

「私達と一緒に町へ遊びに行こうよ!・・と、誘いにきたんだが?・・嫌なら無理にとは・・」

男が話終える・・

 

「行くっ!!」

 

迷うことなく即答した。

ここから出られるなんて奇跡。

 

「私達って?私も町へ行けるの!?」

寧子が驚き、目を輝かせる。

 

「そうだよ、二人共連れてくよ!」

 

 

 

《隣のモニター室内》

 

「ちょっ!渡瀬さん!何を勝手に・・」

予想外の行動に驚く美樹が焦った。

 

「・・いいだろう。渡瀬1佐に任せたのだからな」

 

一瞬考えて、所長の九は言葉を発した。

 

「よろしいのですか?」

 

「彼と一緒なら魔法は使えないし、念のためビーコンを装着する。お前は監視役として同行しろ」

 

「了解しました」

 

 

 

 

─────────────

 

───────

 

 

「驚いたわよ!!魔法使いを連れて外出するなんて言い出すんだから・・・おまけに人探し?よくもまぁ、瞬間的に一石二鳥な行動を考えつくわね?流石というか・・尊敬するわ」

 

既に外出着に着替えた美樹は言葉とは裏腹な感じだな?何て言うか、お洒落してます感が強い!

 

「指揮官は素早い判断力が要求されるからな。瞬時に浮かんだのが[取り敢えず外に連れ出す]ことだったんだ。ここから出ないことには足枷が多すぎて話が進まんからなぁ・・・ははは」

 

俺はデスクの端末画面を見つめながら応える。

寧子が言っていた[ムラカミリョウタ]の情報を閲覧していた。本来は部外者であるが、情報閲覧に関してはかなり高いレベルの開示が許可されている。ここでは[課長級]で、実は美樹よりも上なのだ。例えでは、大使館へ防衛駐在官として赴任すると〔一等陸佐➡一等書記官〕の扱いみたいな感じだ。

 

「聞いた通りだな。当時、この近くにある水力発電所のダムで児童二名の転落事故の記録がある。対外的には寧子は即死、良太は重傷を負い入院か・・・何の気紛れだ?リスクを犯してまで不要な男児を助けるとは・・・ま、いいか?その後は退院して自宅へ戻り、以降に監視対照にすらなってないな?・・・腑に落ちんな?」

 

 

モニターを凝視しながら独り言を呟いていると・・

 

 

「お待たせ!二人とも可愛くなったわよ」

 

本庄が二人を連れて入ってきた。

髪を整え、外出着にはワンピース・・避暑地のお嬢様っぽい。

 

揃った四人を見て・・本庄が一言!

 

「親子ね!ま、母親は後妻に入った継母ってとこね」

 

「継母って!ちょぉっと!私はどう見ても姉でしょ!」

 

母親と言われた美樹が反論する。年令的にはそうだが、ハーフの姉の存在説明が複雑だな。

 

「ハーフの姉だと、設定が複雑になって面倒だ!本庄さんの案がわかりやすいよ」

 

「はいはい、夫婦と娘二人でO.K.ね!今から渡瀬一家は妻の美樹、長女の寧子、次女の奈波の設定ね!」

 

本庄さんの仕切りで親子設定がされた。

 

 

「留守中は宜しく頼む。行ってきます」

 

「寧子と奈波はお留守番のお婆ちゃんにご挨拶しなさい」

美樹?誰にお婆ちゃん・・あっ!

 

「「お婆ちゃん、行ってきます!」

迷いもなく挨拶する娘役(笑)

 

「ちょっ!あたしはまだアラサーよ!せめて叔母さんでしょ!!」

 

「継母にされた仕返しよ!行ってきます」

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

そう言って、本庄と美樹は互いにコクりと頷いた。

 

・・・どうやら、仲悪いのは表面的のようだ。

 

 

 

 

────────────

 

──────

 

《地下駐車場》

 

愛車のレクサスGS350(白)に乗り込む。

運転席は俺、助手席には妻役の美樹、後席には娘役二人が座る。

今更だが、この車は[防弾仕様]である。外観からは全くわからないが、窓ガラスを下げるとガラスの分厚さに驚く!防弾装備のスペースや重量増に対応するには、せめてこれくらいの高級車でないと余裕がないそうだ。

 

「それでは、出発するよ!」

 

スルスルと静かに地下駐車場から走り出す。長いトンネルを抜けると外界の景色が広がった。

 

「これが外・・・明るい」

 

奈波が呟いた。

 

「奈波ちゃんは外に出るのは初めてかい?」

 

「研究所に来てからは初めて。その前の記憶は無いから・・わからない」

 

「ハーネストを装着すると、以前の記憶は無くなるのよ。稀に記憶がそのまま残る場合もあるみたいね?」

 

そう言って美樹は後席の寧子を見た。

 

 

 

そうしてる間に車は一般道路に入っていた。

 

向かう先は・・松本市

 

ヴィンガルフは松本市から近いのだ。長野県は他に松代大本営の遺構もあるしな。某アニメでは第二新東京市として松本市に遷都とか・・・

 

 

─────────────

 

───────

 

 

松本市内に到着し、街中を歩いている。

 

ちょうど時刻は正午になろうとしている。

 

「そろそろお腹が減っただろ?食べたいモノはあるかな?」

 

「ケーキが食べたい」

「いつものより美味しければ何でも・・」

 

娘たちは施設での[給食]しか食べた覚えがない。

 

「信州なんだから、やっぱり蕎麦かしら・・あ、家族ならファミレス!そうよ、ファミレス入りましょうよ?」

 

そうか、家族連れはファミレスか!

 

「そうだな、ファミレスなら好きなメニューを選べるぞ!」

 

おあつらえ向きに目の前に某大手チェーン店がある!

 

 

では、ドアを開けて入店!

 

『いらっしゃいませ!ようこそ⚫⚫⚫へ!何名様でしょうか?』

ユニホーム姿のお姉さん?・・俺と歳は同じくらいじゃないか?平日のランチタイムだし、パートの兼業主婦か?

 

「あ、よん・・4メイ様です」

 

『4名様ですね!かしこまりました!禁煙席と喫煙席がごさいますが、どちらがよろしいでしょうか?』

 

「禁煙席でお願いします!」

 

『かしこまりました!ご案内いたします』

 

ふぅ、初めてで緊張した!

 

「ねえ、もしかしてファミレス初めて?」

 

美樹が耳元で囁く。

 

「ああ、妻子を連れては初めてだよ!君以外は初ファミレスかな?」

 

「失礼ねっ!あたしは一応[お嬢様]なんだから、下々のことには疎いのよ!」

 

下々って・・・もんじゃをビールのつまみにするお嬢様が笑わせる(笑)

 

テーブルに案内され、メニューを開く。

 

「わぁぁ!なにこれ!いっぱいある~」

「す、すごい・・食べきれない」

娘二人は目を輝かせながらメニューに食い入ってる。

 

「食べてみたいのを一品ずつ注文して、小皿に取り分ければいいよ。遠慮なく注文しなさい」

 

「「いいの?!」」

 

「食べきれない分はパパに任せなさい!」

 

 

ということで・・テーブルの上にはスパゲッティが三品、グラタン・ドリアが三品、ハンバーグが二品、他に唐揚げ・フライドポテト・ソーセージ盛り合わせ・サラダなどが乗り切らないくらいに並んだ!

食後にはデザート類がメニュー全てやってきたよ(笑)

 

レストランを出て街を散策する。監視役と言いながら、美樹も一緒になってショッピングの真似事に忙しそうだ・・・欲しい物があれば買ってあげたいのだが、美樹はともかく娘たちは私物を持ち込めないのだ・・

 

「ねぇ!パパ!これ一緒に撮りましょうよ!」

 

呼ばれて見ると[プリクラ]だな?俺だってプリクラくらいは知ってます!

 

・・・結局はノリノリで何枚も撮った!

 

 

──────────

 

─────

 

夕方になり、帰路につく車内

 

「でも、このプリクラどうする?寧子ちゃんと奈波ちゃんは張り付ける私物ないだろ?」

 

すると奈波がシートの間から前に乗り出してきた。

 

「ここに貼っておく」

 

ダッシュボードとルームミラーにペタペタ貼り並べた。

 

「この車が四人一緒の場所だから」

 

 

「そうだな・・・ファミリーカーだ」

 

そう言って俺は奈波の頭を撫でていた。

 

「今日は楽しかった。一生忘れない・・」

 

「おいおい、大袈裟だな。良い子にしていたら、また上手い理由つけてお出掛けするんだ!約束する!」

 

九所長からは(上手く手懐けてほしい)と頼まれている。だが、俺は本当の娘のように思える・・・

 

 

「本当?じゃ、良い子にしてるからヨシヨシしてね」

 

「ヨシヨシ?あぁ、御安い御用だ!」

 

俺はまた奈波の頭を撫でていた。

 

 

その時!

 

「ねぇ!あの子じゃない?」

 

美樹が誰かを見つけた様子だ!

 

 

学校帰りの学生達が周りに沢山いた。

 

歩道を後方から歩いてくる男子学生が見えた。

 

「寧子ちゃん!後ろから歩いてくる男の子を見てごらん?」

 

言われて気づいたのか、不安な表情で振り返りリアウインドウ越しに見つめる!

 

 

 

「良太?・・!良太だ!りょーたー!!」

 

必死に叫ぶ!

そうしている間に良太は横を通りすぎて行く。

 

「良太!良太!りょーたーっ!!」

 

叫びながらサイドガラスを叩くが、良太は気づかず歩いて行った・・・

 

「嫌っ!!行かないでっ!待って!」

《ガチガチ!ガチャガチャ!》

パワーウインドウのスイッチもドアノブも虚しく反応しない。さらには防弾処理による分厚い車体は叫び声も遮る・・・

 

「寧子ちゃん!すまない!私に出来るのはここまでだ・・・いつかきっと逢える。二人とも生きているんだからな・・」

 

「寧子・・私達は自由じゃない。あの子の元気な姿見れただけでも感謝しなさい・・」

 

奈波が寧子を抱きながら慰めている。

 

 

「いつか、絶対に逢いに行くから・・・良太」

 

「羨ましい・・私には誰もいない」

寧子と違い、奈波には過去の記憶がない。

 

「奈波ちゃんも一緒に行こう!良太なら奈波ちゃんとも友達になってくれるよ!」

 

「わかった。私も一緒に行く」

 

「絶対だよ!約束だからね!」

 

寧子は涙をポロポロ流しながら奈波を見つめる。

 

「うん。約束する!いつか・・・二人で良太に逢いに行こうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────

 

────────

 

────

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・まぁ、なんだ。おれは最初からお前とは友達になれると思ってたからな」

やや照れながら良太が話しかけてくる。

 

(寧子・・・本当だった)

 

「友達が出来たら、もう死んでも構わないと思ってたけど・・・バカね」

「余計、死にたくなくなるに決まってるのに・・・」

 

(死にたくない!もっとみんなといたい!)

 

 

『ああ!!ダメ!!』

 

佳奈が悲痛に叫ぶ!!

 

 

《 ボ ン ッ 》

 

勢いよくビーコンが弾け飛んだ!

 

 

《カラ カラ カラ 》

 

無情にも軽やかに床を転がっていくビーコン・・・

 

《シュウウウ》

 

《ジュワァアァアァアァ》

 

奈波の身体が溶けて行く・・・

 

 

 

(ご褒美・・・もらえた・・・)

 

(みんな・・・友達になってくれてありがとう・・・)

 

(今日は・・・今までで一番・・・)

 

 

 

 

 

(みんなを・・・悲しませたくないから)

 

 

(これでいい・・・良太だけは)

 

 

 

(ヨシヨシしてね・・・パパ)

 

 

 

(・・・ )

 

 

 

 

 

 

 

「うわあぁああああああ!!」

 

叫びながら号泣する良太

 

 

「悲しまなくていい 」

 

( !? )

 

「・・・・・奈波・・・!?」

 

現れた奈波の姿を見て驚く!?

 

 

「ごめんね あなたの記憶に私の人格を書き込んだ。だいぶ あなたの記憶の容量使っちゃったけど」

 

話の内容に引きぎみの良太・・・

 

 

 

「私また・・・忘れちゃいけないことを忘れてしまった気がする・・・涙があふれて止まらないの・・・」

 

寧子は直感的に感じている・・・また忘れてしまったことを・・・

 

 

「奈波・・・おれは いつまでも忘れないから・・・」

 

良太は奈波の墓前で誓った。

 

 

 

 

(・・・・・ありがと)

 

 

 

 

 

 

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