本編では潜入捜査官の意
《岐阜県高山市郊外》
〔ドレスデン製薬高山工場〕
「操業はしているようだな?」
辺り一帯が暗闇の中で、建物の窓からは明かりが見える。歴とした製薬会社ではあるが、近年は販売実績が全く無い。
巷で流通している脱法ドラッグに関わりがありそうだと感じ、この数日は張り込みを行っている。
「今日も動きは無しかぁ・・・ん?」
黒の高級車が入ってきた。
手にした暗視装置付きの双眼鏡から様子を伺う。
黒っぽいスーツにサングラス姿の男が2人と、レオタードのような奇妙なスーツを着た少女が1人の3人組・・・
「怪しすぎるぜ・・・何者かね?」
「(こりゃ・・ビンゴ!かな?)」
監視しながら心が踊り出している♪
最近、巷で『脱法ドラッグ』が大量に出回りだした。押収したドラッグはきれいに製造されており、本部では国内に製造拠点があるとみて内偵しているのだ。
その一つとして、ここドレスデン製薬は製品が国内市場に出回っていない。街中のドラッグストアは当然ながら、処方箋薬局にも全く販売された実績が長らくない。
しかし、ここ高山工場は明らかに《操業中》だ!
「怪しい!怪しすぎだぜぇ!」
片田舎の森に潜んでいた苦労が報われると思うと、不謹慎ながら心は踊る。
と、その時!
『 ド ン 』
「! なんだ!?爆発?」
音がしたのは正面玄関の辺りだ!
双眼鏡を向けて覗いた。
ワンピース姿の長い黒髪が印象的な少女が破壊された建物に入って行くのが見えた。
「・・・ふんっ。これまた怪しいのが現れたな」
明らかな〔不法侵入〕なだけにむしろやり易い♪
即座に携帯電話を手にする。
「夜分遅くにすみません。ドレスデン製薬高山工場に侵入者です。内部へ潜入し、対象の監視を行おうと思います。岐阜県警へ協力要請をお願いします」
「・・わかった。県警の到着までは早まった行動は慎め」
「了解です。尚、対象は爆発物を使用しました。銃器所持の可能性が高いため、護身用に銃の使用許可を・・」
「許可する」
電話を切った俺は、懐から拳銃を取り出し確認した。
〔ニューナンブM60〕リボルバータイプの銃で、警察官が所持しているのと同じ官給品だ。
実のところ、この銃を使うのは初めてだ。俺はつい最近までは〔ヤクの売人〕だ。そんな奴が官給品の銃を所持してたら・・バレちゃうじゃん!
ということで、久しぶりの正統派捜査官?に戻った途端にデカイヤマに当たりそうな予感にウズウズだ!
不安と期待を抱きながら工場内へ進入する。
先程停まった車を確認・・(黒色の日産シーマか、ナンバーは品川300や●●●●)
車内は無人のようだ。
駐車場傍に通用口が見える・・・奴等はあそこから入って行った。こっちは鉢合わせるかもしれんから、正面の爆破された入口へ向かう。
正面には人影はない、様子がおかしい・・
「事務所と工場の灯りは一部見えたのだが、無人ではないはずだが?」
と、その時!
民間警備会社のパトロールカーがやってきて、完全装備の巡回警備員が降りてきた。(民間だがら、ヘルメットに防刃プロテクター・特殊警棒程度だが)
「ここで何をしているのですか?関係者ですか?」
警備員の言葉は丁寧だが、明らかに俺に不信感を抱きながら警戒しているのがわかる。背は190くらいで体重は100キロはある巨漢だ!機動隊崩れかな?
(仕方ないな)
「厚労省の者です。近くにいたところ、爆破音がしたので来てみたのです」
そう言いながら、身分証を見せる。
「厚労省の・・え、麻薬取締官⁉」
「侵入者は銃火器を所持している。県警には連絡済だが、あなたはここで待機してください」
「わかりました」
俺は内部へと進む。
しかし、民間警備の対応は早いな!発生から15分くらいで駆けつけてきた。郊外でこのスピードには驚いた!因みに、街中の施設ならば機械警備が侵入検知したら5~10分で駆けつけるぞ!コソ泥するなら5分で退去しないと屈強な兄さんがやってくる(笑)
さて、中の様子はどうだ?
奥からは爆発や切断の騒々しい騒音が響いてくる。
「お薬を作ってる音じゃあないな~」
いた!
さっきの少女達だ!ん、奥の暗がりにもう一人いる?
薄明かりの中を双眼鏡で視認すると、高校生くらいのボウヤが隠れて様子を伺ってる。
次の瞬間!
「ああ?なんだありゃ?」
奇妙な様子に身を乗り出す・・・『ゴリッ!』!?
俺の後頭部に銃口が押し付けられた。
「声をだすな」
俺は両手を軽く上げた。
首筋にチクリと痛みがしたと思った・・・
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「・・う、ううん?ここは?」
目を覚ますと、見慣れない天井がある。
身体を起こす・・・どうやら病室だ。
「気が付きましたか?」
扉から入ってきたサングラスを掛けた黒服姿の男が話し掛けてきた。
一緒にフードを頭からスッポリ被った少女が立っている。体つきと白くスラリとした生足が少女と認識させる。
「あんたは誰だ?」
「厚労省の者です」
「見ない顔だな?」
「それはお互い様です。それより、彼女を見てください」
そう言って少女の被っていたフードを捲り上げた。
「ほう、なかなか可愛らしいお嬢さんだ」
「終わったか?奈波」
黒服の男は横を向きながら少女に話し掛けているようだ。
「ダメ。この人鏡越しに横顔見ただけ」
「何っ⁉」
俺は違和感を感じ、咄嗟に入口にある洗面台の鏡を見た。
「奈波というのか?可愛い君にお似合いの良い名だな」
「・・・」
照れてるみたいだ。
「大方、暗示とか催眠術の類いだろ。俺になにをする気だ?」
「参りましたな、詳しくお話ししましょう」
そう言ってサングラスを外した。
「その子のフードを被せないのか?」
「そうだった!なっ!しまった!」
黒服が固まったな?
「もう大丈夫。こっち向いてもいいよ」
「ん、そか?えっ・?」
目が合った・・・(やられた)
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「よくやった。機転を利かせてくれて助かった」
「私は命令に従っただけ」
「そうか、しかし、逃げようと思わなかったのか?」
「逃げても無駄でしょ」
「まあな、お前は賢いな。それで、奴の記憶は消せたんだな?」
「命令通りにした(褒めてくれたから今日のことは消してないけど)」
「よろしい。帰るぞ」
ライトスイッチを捻ると、リトラクタブルライトが瞬時にポップアップして前方を照らし出す。
黒服の運転するスープラは軽快に高山を後にした。
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「どういうことですか?」
「どうもこうもない。この件からは手を引くってことだ・・・察しろ!」
「・・わかりました。しかし、あんな非常識な・・・・あれ?」
「どうした?」
「ドレスデン製薬・・(で、なにを見たっけ?)」
「DRにはもう関わるな!お前は次の仕事がある」
「また
「そうだ。お前さんは素質があるからな♪それが新しい身分だ」
渡された資料を見る。
「おやまぁ、ゴシップ雑誌の記者ですか・・・」
「DR絡みでの調査を継続しろ・・」
「!・・部長、いいんですか?」
「違法ドラッグどころでないモノが釣れるかもしれん!だが、くれぐれも慎重にな・・内山」
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「橘、お前の妹の消息が掴めるかもしれん。俺が追っている〔V機関〕が幼女誘拐事件と繋がりそうなんだ」
「内山さん!その話詳しく聞かせて!」
「慌てるな、まだ入口に辿り着いたとこだ。調べが進んだら教えてやるよ」
「私にも手伝わせて!」
「駄目だ・・素人のお前が首を突っ込むにはヤバ過ぎる」
「素人って!?私も一端のジャーナリストよ!」
「・・・そういう意味の素人じゃない。これは俺の様な〔裏家業〕の仕事なんだよ。わかるな?美奈・・・」
「わかった・・・」
数日後・・・内山は