極黒のブリュンヒルデsidestory   作:apride

21 / 22
第三話 藤崎真子

「… ? …!? は、はな‥ 離せっ!! 」

 

《 ガ バ ッ ! 》

 

 

「目が覚めたか‥ 」

 

 

気がつくと‥ ベッドの横から渡瀬が見つめている。

 

「お前っ! こ、殺すっ! 殺してやるっ! 」

 

《 カシャッ! 》

 

「なっ!? 」

 

掴み掛かる真子に動ずることなくスマートフォンを向けてシャッターを切った渡瀬はクルリと画面を向けてきた。

「!! …… 」

 

画面には殺意に満ちた醜い鬼が睨んでいた…

 

渡瀬はスマホを持ち直すと何やら操作して呟く。

 

「寝顔はこんなに可愛いのにな… 」

 

「勝手に撮るなっ!! 」

 

かっとなりながらスマホを奪おうとした真子に画面を向ける。

 

「ぁ… 」

 

さっきとは別人のような真子が天使の如く微かな笑みを浮かべていた。

 

「可愛いお前にあんな顔は似合わないぞ? 」

 

「…… ぐぅ 」

 

可愛いなどと真顔で誉めらたことなどない真子はどうして良いのか判らず赤くなり俯いた。

 

 

「っ! 千怜(ちさと)!? 千怜はどうなったの!? 」

 

「…さぁな? ヘクセンヤクトの連中に捕らえられたかもな? 死んではいないだろう… 」

 

 

真子は俯いたまま…

 

「…… 千怜に逢いたい。 千怜… グスッ 」

 

ポトッ 、ポトッと床に滴が落ちる。

 

「九は始末する予定だったのだがな… 」

 

「!! ‥千怜に手を出したら殺すぞ!!! 」

 

泣き顔が一転して般若の形相に変わる。

 

「九に逢いたいだろ? 」

 

「… 逢いたい 」

 

不貞腐れながら泣いてるような微妙な顔で真子は上目使いで答えた。

 

「ならば、私に協力しろ! 」

 

「協力? ナニを‥ させるつもり? 」

 

「簡単なことだ、良い子にしていろ。お前は黙っていれば清楚なお嬢様だからな」

 

「… 喋んなきゃいいんだ? 」

 

ポケーとした表情で返す真子に渡瀬は眉間に皺を寄せた。

 

「お前の表情…… 微笑むことは出来るか? 」

 

「で、出来るわよ! 失礼ね! 簡単よ‥ こう? 」

 

「! …… 」

 

真子の【微笑み】みたいなものを見た渡瀬は無言で固まった。

 

 

 

「お前は黙って無表情でいれば良いからな… 」

 

長官室へ向かう廊下で渡瀬は真子に念を押した。

 

「むぅ… 」

 

 

長官室の扉には巫女が待ち構えている。

 

「大副様‥お疲れ様です。神祇官様がお待ちです」

 

開かれた扉を抜けると広間の奥に白装束にオールバックの髪型、丸眼鏡を掛けた目付きの悪い男がデスクに鎮座して迎えた。

 

「ヴァルキュリアを回収して参りました」

 

「ご苦労… 九は始末したのだな? 」

 

「いえ‥ 捨て置きました。ヘクセンヤクトが確保したと思います… そのような状況で取り纏めました」

 

「…ノイマイヤーのところの小娘か。まあ、よかろう」

 

「連中は引続き游がせておきます」

 

「それで、そいつは使い物になるのだろうな?」

 

「は、少々躾を必要としますが… 」

 

「任せた… 下がれ」

 

 

──────────────────

 

 

───────────

 

 

──────

 

 

「えっらそーに! ムカついた! 」

 

真子は部屋を出た途端に頬っぺたを膨らませてプリプリとご機嫌ななめだ。渡瀬はそんな真子をまたも脇に抱えて黙って歩いている。

 

「… で、いい加減に下ろしてよ! 私は物じゃないんだから! 」

 

すると、抱えている真子を一瞥すると持ち直して肩に担いだ。またもやお尻が前で顔は後ろである。

 

「なんでよぉ! 離せぇっ! 下ろせぇっ! 」

 

肩の上でじたばたする真子の尻に平手打ちを喰らわす!

 

《 パンッ! パンッ! パンッ! 》

 

「痛いっ! 痛いっ! 痛ぁぁいっ! 」

 

《 ナデナデ ポンポン 》

 

「ひぃっ!! 撫でるなぁっ! エッチ! 変態! エロオヤヂ! 」

 

「着いたぞ」

 

部屋に入った途端にベッドに放り出す。ふかふかのベッドは衝撃をふんわりと吸収して優しく真子の身体を受け止めた。そのベッドは天蓋付きの豪奢で巨大である…然も貴族か富豪が女を侍らすような…

そこで真子は手術着のような服の裾が捲り上がり、白い太腿が露になっていることに気づきはっとなる。

 

「っ!? まさか… 私を… 」

 

魔法を封じられた真子は目の前にいる男に対して無力である… 彼女は貞操の危機を感じて恐怖を覚えた。

そのとき不意に!

 

「えと‥ はじめまして」

 

声がしたベッド脇をみると、黒いスーツ姿の少年が少し緊張気味な笑顔を向けていた。

 

「お前のルームメイトといったとこだ… 後は任せた」

 

いい放つと渡瀬は退室していった。

 

「ちょっ!? 待ちなさいよ! 」

 

《 パタン 》

 

真子の言葉に耳も貸さずドアが閉まった。

 

《 ダダッ! バンッ!? バンバン!! 》

取っ手の無い扉にすがり付き叩くが… 反応は無い… 当然、室内からは開かないようだ。

 

「無駄ですよ。中からは開きません… 破壊しない限りは… 」

 

後ろで少年が声を掛ける… はっ!? となり、真子は扉に魔力を放つ……… つもりが、放てなかった。

 

「まさか… お前、イニシャライザーか? 」

 

真子は振り返り、少年に憎悪の視線を投げつける…

 

「はい。お察しの通りです‥真子さん」

 

「…… 。 どうして名前(・・)で呼ぶ? 」

 

「え? だって、あなたは藤崎真子さんですよね? 」

 

ヴィンガルフでは魔女はナンバーかコードネームで呼ぶ。真子はコードネームである【ヴァルキュリア】と呼ばれる魔女だ。『真子さん』などと呼ばれた覚えはない… 内心、戸惑いを抱いている。

 

「……そうだが、私はヴァルキュリアだぞ? 」

 

「ああ、成る程… 僕は貴女を【藤崎真子】と呼ぶようにと仰せつかっておりますから! そう呼ばせていただきますから… 藤崎 真子さん」

 

少年は真っ直ぐな瞳で真子を見つめて言い放った。

 

「………好きにすればいい」

 

プイッと横を向きながら溢した言葉に少年は満足気に微笑むのだった。

 

 

「それでは、まずはお部屋をご案内しましょう! こちらがパウダールームで右側がトイレで左側がバスルームへの扉です。なかなか広いでしょ? 」

 

如何にも女性用の化粧室である… 10畳間くらいの空間に大きな鏡と化粧品類が並べられたテーブルが鎮座している。奥にはガラス越しに豪華なバスルームが見える。

 

「凄い… でも、化粧なんて… 」

 

「ご心配なく! ちゃんとその道のプロが教えに来てくださいますから! 」

 

「は? どういうことだ? 」

 

「あれ? 聞いて無い…んですか? 真子さんはこれからみっちりと行儀作法から諸々…教育という話ですよ? 」

 

行儀作法? 教育? 真子には全く理解に苦しむ話である。

 

「ナニが目的… なんだ??? 」

 

 

混乱して呆然となる真子にお構いなしで案内は続いた。

 

「クローゼットです。一通りのお洋服と靴、あとアクセサリー類が揃えてございます。サイズは採寸済みです♪ 」

 

ドレスや着物まで… 下着類も清楚なものから、どういう勝負に着用するのか疑問な勝負下着(・・・・)というモノまで… 見るとブラサイズがちゃっかり【D65】

 

「…なんかムカつくわね」

 

 

「こちらがダイニングルームでございます。テーブルマナーを学んで頂く都合上、少々大きいですけどね♪ 」

 

少々… ? 会議が出来そうな長テーブルが鎮座してる。

 

「最後に書斎でございます。蔵書は少ないですが、大概の書物はPCで閲覧可能ですので問題ないと思います」

 

蔵書が少ない…… ちょっとした書店では? 移動式の脚立が棚に付いてる。

 

「以上ですが、何かご質問はありますか? 」

 

「…… 。 無い… 」

 

「そうですか… じゃあ、お茶でもいかがですか? 」

 

「ええ、その前にシャワー浴びたい気分… 」

 

そう言うとフラフラした足取りでバスルームへ向かった。

広い浴室にはゆったりした湯槽があるが、今はシャワーだ!普通のシャワーベッドとは別に壁面にノズルが幾つも取り付けてある… 徐に別のコックを捻ると…全身へボディーシャワーを浴びる!

「うわ、気持ちいい♪ ‥あら? 壁かと思ったら全体が鏡なんだ? ふうん… 」

 

鏡に映る自身を眺めて…(我ながら素晴らしいプロポーションね)と…

 

 

「ふぅ、さっぱりしたわ… あ、いい香り」

 

白いバスローブを纏い、まだ乾ききらない髪を片側に束ねてリビングに戻ってきた。

 

「ベルガモットティーをご用意しました。気持ちの切り替えには良いかと… 」

 

真子はふと思う…少年の物腰は見た目に不相応だ?

 

「まだあんたの名前聞いてなかったわ… それに歳はいくつ? 」

 

少年は少し戸惑いの表情に…

 

「僕は… 名前はありません。呼ばれるのは番号で… 3番とか、サードです。歳は27…ヶ月くらいかな? 」

 

「えっ!? 27?…ヶ月?…ヶ月って、2歳ってこと!? 」

 

一瞬『27』と聞いて(ガキみたいな27歳か!)と思ったら、27ヶ月とは別次元の驚きだ!

 

「はい、僕は人工的に造られたイニシャライザーですから… 」

 

「そ、そういうもんなんだ? 名前が無い…んだ? 3番? 呼びにくいわね…… さん‥ サンタにしよ! 」

 

3番だから3太… サンタ 如何にも思いつきだ。

 

「サンタですか… ありがとうございます!とっても嬉しいです! こ、こんなに嬉しいことはない! です♪」

 

名前を貰った少年は涙を浮かべて喜んだ。

 

「そ、そうか? うん、これからお前をサンタと呼ぶから! 」

 

予想外の反応に面食らってドギマギする真子にサンタがじっと見つめて問いかけた。

 

「話は変わるんですが… さっきから気になってたことがありまして… 真子さんはハーフですか? 」

 

「…… 。生粋の日本人‥だよ。そう見えないよね? 」

 

少し躊躇して真子は口を開いた…

 

「ごめんなさい… 悪気はなかったのです。白い肌と髪が凄く綺麗だったから… 瞳も淡いブルーだし… 」

 

 

「アルビノ… だからね」

 

「アルビノ? 」

 

「先天的に色素が極端に少ないのよ。だから、髪もプラチナブロンドだし… 肌は白いから身体中色が薄いんだ。小さい頃はよくいじめられたわ… 」

 

 

真子の口から語られた事実を耳にしてサンタは合点がいったとばかりに叫んでしまった!

 

 

 

「そうだったんだ! それであんなに綺麗な乳… っ!」

《 バキッ!! 》

言い終える寸前、顔面に真子の拳がめり込んだ!

 

「てめえ!覗いたなっ!? 」

 

 

 

 

「いたた… ごめんなさい。覗くというか… 丸見えなんです。不測の事態に備えてありまして… 」

 

浴室の全面鏡はマジックミラーでした。

真子は部屋から丸見えの浴室を見て呟いた…

 

 

 

「最低…… 」

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告