極黒のブリュンヒルデsidestory   作:apride

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第三話 九(いちじく)

この研究所の最高責任者に会う

 

つい先ほど見た少女達の件について説明があるだろう…

そして、俺の役割もわかるだろう。

 

 

 

「本庄です。防衛省の渡瀬1佐をお連れしました」

 

 

一呼吸置いて

部屋の「施錠」表示が「解錠」に変わり、ドアが音もなく開いた。本庄に続いて入室すると…薄暗い

大型モニターの前に立つ人物は色白で細身の「優男」といったところだ。

(これだけの規模の所長にしては随分と若いな)

 

 

「早速だが、あなたには表の仕事を頼みたい」

挨拶などなく、いきなり本題から切り出してきた。

研究者とはこんなものなのかもな…

 

 

「表というからには、当然…裏のほうが本来の仕事なんですね?」

 

元より(特別渉外担当官)などという肩書きが表向きの予感はあったが、いきなり正解だが…嬉しくない

 

 

「察しが良いな。では、裏の仕事を教えましょう。あぁ、申し遅れた…所長の九です」

 

「渡瀬です。で、裏とは?」

回りくどい話や社交辞令には関心がなさそうなので、こちらも単刀直入にいくことにした。

 

「先程見てもらった実験体の躾をしてもらう。普通の人間では直接対峙しての活動は危険であり、非効率的である。毒には毒ということだ。」

矢継ぎ早にそう言うとモニターに裸の少女が映し出された。2画面で後ろ姿で上半身と首筋のアップが表示された。

 

「あの者達の首筋にはハーネストが埋め込んである。右側の画面のリング形状のものだ。」

 

 

成る程…リングの縁にはボタンが3つあり、それぞれの取り扱い説明を受ける。

理解に苦しむ内容だが、マニュアルとして記憶した。

そして、俺の権限で操作できるのは1つだけ(ハングアップボタン)のみだと…他の2つは押す気など起きない代物だから、内心ホッとした。

 

 

「要するに、実験の際に最後に側で拘束を解いて監視する係だな?」

 

 

説明された内容を要約すると、そんな感じだったので確認してみた。

 

 

「暴れた場合には、殺さない程度に痛めつけてでも止めるのが役割だ。殺すかどうかはこちらで判断する。」

 

さらりと殺すなどという…

 

「よくもまぁ…簡単に人殺しを口に出来るものだな…」

 

あまりに人の命を軽く扱う物言いに呆れてしまった。

思わず憎まれ口を叩いた。

 

「人殺しはそちらが本職でしょう?中東では何人殺した?」

 

「くっ!」

 

我ながら墓穴を掘った。経歴は全て把握しているのだろう。

最近は自衛隊の海外派遣も任務の危険度が高まり、施設・補給の部隊に警護目的で戦闘部隊も供に派遣されるようになった。当然、戦闘が起こりうるから…実際に交戦はあった。しかし、政府は徹底的に隠蔽した。謂わばトップシークレットなのだが、そこまでも情報開示されてるとはな…

 

 

「奴らは中東のゲリラとは比較にならん危険生物だ。外見に惑わされないよう、奴ら(魔女)の正体を教えよう」

 

そう言うと、またモニターに映像が映し出された…

 

実験風景が流れる…全裸の少女が手術台の上にうつ伏せで拘束されている。麻酔が効いているのだろう…眠っているようだ。首の付け根辺りに特殊な器具を嵌め込み、レーザーメス?いや…レーザー特有の発光や焼ける際の煙が見えない。ほぼ一瞬で首の肉が真円状に取り除かれた‼

医療に関して素人の俺にもわかる。あまりに断面が綺麗なのと、驚異的なことに頸椎が剥き出しに見えている!

どうやって肉を円柱状に?しかも底部は頸椎…要するに骨が凸凹してるのにだ!出血もしていない!

(オーバーテクノロジー)…脳裏をよぎる

昔にテレビのUFO特集で紹介されていたキャトルミューティレーションを思い出した。

 

「どういう仕組みだ?」

あまりの違和感に口からでた質問だが…

 

「そちらの説明は必要ない」

九はさらりと流す

 

 

映像は次の場面に替わる

 

頸椎に穿孔が成され脊髄が剥き出しに見えて、そこへハーネストが埋め込まれていく。

中心の丸い蓋のような部分が突出状態だ。

すると手術着姿の人物が手に乗せたゼリー状の物質を…!中へ入って行く!?生物なのか‼

 

「なんだ‼あれはなんだ‼」

 

奇怪な光景に狼狽して叫んでいた‼

気持ちが悪い…

 

「あれはドラシル。魔女を形成するコアだと言えば理解可能か?」

 

お前には理解出来ないだろうから、簡単に言えばこんなものだと言わんばかりの言い方。

確かに、あれは人智を超えている光景だ。

 

 

映像は進み、先程の得体の知れない生物が入った瞬間に勢い良く蓋は閉まった。

ここで映像は終わった。

 

映像に出ていた少女がその後どうなったかは説明がなかった。

 

「あのようにして魔女を作りだしている。験体とドラシルの適合性は事前確認済みだが、発現する魔力は融合してみないとわからない」

 

「魔女と言うからには、攻撃性の魔法を使うのか?」

 

俺の頭ではアニメの魔女キャラが踊っており、攻撃とは言ったものの、精々…ピコピコハンマーで叩くとかの可愛いらしいイメージだったのだが、映像を見て変化していた。

(人を殺す程の力なのだろう)由々しき研究だなと…

 

次の九所長の言葉で、自身の考えの浅はかさを思い知った。

 

 

 

 

「戦略兵器レベルの発現もあり得る」

 

 

 

(戦略)って言ったな…

 

(戦術)ではなく…

 

戦略兵器とは、核兵器レベルだぞ‼

 

 

「そんな大それた相手を私がどうにか出来るというのか!?冗談だろう‼」

 

半ば呆れ顔で叫んでいた。

 

 

 

「出来るから呼んだのだ。入手した臨床データが裏付けている。2006年のイラク…撤収直前に起きた交戦で後頭部に小銃弾を受け、意識不明の重体のまま帰国。そして、脳外科の世界的権威である帝都医大の生澤教授の執刀により一命を取り留めた。その後、幾度にも渡り検査・手術を繰り返し、数年間に渡るリハビリを経て回復した…」

 

九は矢継ぎ早に語った。

 

「その通りだ…」

 

「生澤教授はあなたの脳にあることを見つけたのだ。当然、我々の情報網は国内全ての医療機関を網羅している。弾丸は防弾ヘルメットを貫通し、下垂体が収まるトルコ鞍に先端部が微かに触れて刺さっていた」

 

下垂体とかトルコあん?用語が理解出来ないが、88式鉄帽を貫通したカラシニコフの弾は後頭部に突き刺さっていたそうだ。

 

 

【注】88式鉄帽は名称は鉄となっているが、素材は表面は樹脂・内部にはアラミド繊維など防弾性の高い素材で作られている。防弾性能は拳銃弾は防ぐが、小銃弾には無力らしい?基本的に防弾は拳銃弾対応程度が現状。

【注】カラシニコフとは旧ソ連が開発した突撃自動小銃。後にAK-47と型式がつけられた。現在主流の5.56㎜に対し7.62㎜の弾丸を使用し威力も大きい。

 

 

 

 

「生澤教授はそこに見た、本来は単に下垂体の受け皿でしかないはずのトルコ鞍が臓器の如く活動していたのをな!」

 

意味がわからなかった??

 

しかし、次に九が語ったことは別の衝撃を渡瀬に与えた!

 

 

 

 

 

「地球上の全生物は太古に宇宙人によって造られたのだ!」

 

 

 

おまえは矢●純一か!!

 

と、ここへ来る前なら突っ込んだだろう…

 

 

 

 

しかし、あまりに荒唐無稽な話であり…

 

 

「人体にも隠された器官が存在する。覚醒の術は解明されていなかったが、わたしの目の前に宇宙人の封印が解放された験体がいるのは事実!」

 

 

 

 

おい!俺も実験体扱いだったのかよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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