自分の頭の中にはとんでもない代物があることを知ったからか、あまりに理解の範疇を超えた話に疲れたのか…
とにかくベッドに倒れこみ、1日を振り返る間もなく眠りについた。
そして翌朝
午前6時30分食堂
着任2日目を迎えた。
ここヴィンガルフでも、所員は全員が食堂で三食を食べる。所長や幹部も例外ではないが、隣に別室が用意されており、テーブルや椅子は少し豪華だ。
こういったところは自衛隊とかわらないな…
因みにメニューも同じで、好き嫌いは通用しない。
ま、どうしてとなる場合…実はコンビニもある!
フ⚫ミ⚫ーマートがあるのだ‼防衛省御用達なのかは知らないが?自衛隊基地では珍しくない。
他の店舗との違いは、直営店ではなく…ヴィンガルフ職員が運営する《FC店》なんだよな(笑)
今朝のメニューは
白飯・わかめの味噌汁・玉子焼き・味付け海苔・納豆
オーソドックスな和食メニューだ…
駐屯地の飯よりは旨い。
「はぁ、また納豆か~ 苦手なんですよ…ねばねば」
と、目の前でぶつぶつ言ってるのは本庄さんだ。
一夜あけたら、普通のOLに見えるのは気のせいか?
「本庄さんは何処の出身?」
「茨城…ですけど…納豆は苦手です!」
茨城ケンミンが皆納豆好きでないよな…当たり前か。
「茨城出身なのに納豆嫌いだと、必ず驚かれるんです。先入観強すぎの偏見ですよ…」
「いや、全員が同じ嗜好なわけないのが当然だ。私は驚いてないぞ」
気にしてるみたいからフォロー
「渡瀬さんはどちらですか?」
「京都だよ」
「ええぇ!京都人て納豆食べないって聞きますけど!?」
こいつ…けっこう俗物だな(笑)
「京都と言っても、舞鶴だ。親父が海自でね、舞鶴地方隊にいた時に生まれたから京都出身てことだよ」
「お父様も自衛官ですか!艦長さんですか?なんかカッコいいなぁ~海の男!」
おまえも先入観強すぎ…
「いや、施設員だ。主に電気設備のメンテナンスを担当してた。陸上勤務一筋だな(笑)すでに定年で退官したよ」
そうこうしてる間に時計は7時を回っていた。
「おっ、そろそろ時間だ。これから出掛けるが、くるまは借りれるかな?」
歩いて行ける距離ではないし、公共交通機関もない。
「車でしたら渡瀬さん専用にご用意があります。すぐに手配いたします。」
携帯電話で何処かへ手配しているようだ。
「地下駐車場に連絡いたしました。警備窓口でキーをお渡しするそうです。駐車場までご案内致します」
先程とは別人のようだ…
なかなか優秀な秘書かもしれんな。
地下駐車場にて
「こちらをお使い下さい。以後、この駐車スペースが渡瀬1佐専用です。お戻りの際にはキーを窓口へ返却願います」
2番のスペースには白のレクサスGS350が停めてある。
(アリスト)とうっかり間違えて言いそうになるのは何故だろう?顔が似てるからかな?
何れにせよ、専用車がレクサスとは贅沢だな!
「それで、どちらへ?」
本庄が聞いてくる。
「松本駐屯地だ!」
言い放ったと同時にシフトをDレンジへ…V6-3500ccのエンジンは静かに加速する。と、横目に珍しい車をチラッと確認して駐車場を後にした。
…70スープラ
「物好きな奴がいるみたいだな…」
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松本駐屯地に到着
正門の隊員へ身分証を呈示しながら
「V機関駐在の渡瀬だ」
「はっ!連絡を受けております」
案内された先は、第13普通科連隊ではなく…
新設された「災害即応集団東部方面分遣隊」である。
名称だけだと、如何にも災害時のために特別予算で作られたかのようだが、V機関専属部隊というのが実情だ。
300名程の人員と96式装輪装甲車・軽装甲機動車・UH-60JA多用途ヘリなど装備する。
隊長に着任の挨拶をしにきたのだ。
駐屯地内でV機関の存在を知るのは、駐屯地司令を兼務する13普通科連隊長を除けば唯一である。
九所長によると、従来は必要に応じて両省次官レベルまで話を持って行く手間がかかったが、今年になって現場レベルで直接要請をだせることになった。両省へは事後承認ということに変わった。即応性を求めた結果だ。
俺が実質的な出動命令を伝える。
やはり、ヘリや装甲車を使うとなると自衛隊所属であるほうが都合がよいのだ。民間人の目に触れてでも(訓練名目)でごり押しが可能だからな。
分遣隊長に会って驚いた。
「渡瀬じゃないか!久しぶりだな!いつ復帰したんだ!?…つか、1佐って…おいおい?驚きだな、出世には興味ない奴だと思ってたが」
防大で同期だった本間2佐だった。
「昨日のことだ、復帰と同時にV機関へ駐在になってな」
「そうか、貴様がV機関の駐在官だったか。えらくヤバそうなとこに配属されたな…」
部隊編成を見れば、災害派遣任務が表向きでしかないことは想像に容易いのだろう。本間は西普連(西部方面普通科連隊)で中隊長だった。所謂、特殊部隊だ…
「渡瀬、どうやら俺達はヤバいことに関わるようだな。この部隊の中核を成す普通科中隊は俺が西普連で指揮していた部隊をそっくりそのまま連れてきたんだ」
本来は島嶼防衛任務の強襲部隊を長野の山中に配備など…明かに裏の任務が存在する。
「詳しいことは話せないが、向こうから要請があれば俺がパイプ役となる。恐らくは非合法な任務の可能性が高い」
「承知している…元々、任務の性格上余計な詮索は無しというのが当然だ」
幾つかの確認を二人で話し、1時間程で駐屯地を出て帰路についた。
「聞いてた話とは随分かけ離れてる…移送任務に使える装甲車を配備した部隊を要望したとか言ってたが、移送程度じゃねぇな…」
渡瀬は車を走らせながら呟いていた。
本編は「極黒のブリュンヒルデ」1話から遡り数年前を描いております。