Fate / Hybrid Stories   作:さんくてるるるく

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やっと投稿できました。嘘つきまくってごめんなさい。
前回の予告辺りまでなので物語的にはそこまで動きません。


9話 柳洞寺

 士郎が体を起こすと、窓から陽が差し込んできていた。まだ醒めきらない目はそれを瞼で遮ろうとする。しかし士郎はそれをぐっとこらえ、陽の存在をしっかりと認識した。

「...」

 今日はまだ見ぬキャスターとの決戦の日。士郎は無意識に拳を握りしめた。

 

 

 その朝の食卓は衛宮史に残る出来映えであった。冬木の虎でさえも黙らせることのできたそれを伝説と呼ばず何と呼ぼう。『なんと...』発したのはその一言のみで、虎は嵐のごとく料理を頬張り、その勢いの緩まる間もなく愛馬に跨がりエンジン音とともに学舎へ駆け抜けていった。

 

 

「士郎」

「ああ」

 起きてきたセイバーはすでに戦いの装束であった。肩から背負った十戒(テン・コマンドメンツ)が朝日に照らされて輝いている。

「まだちょっと早いんじゃないか?セイバー。戦いは夜だぞ?」

「こっちが有利とはいえ油断は出来ないからな。朝から精神統一しとくんだ」

 やはり彼も一級の剣士なのだ。いざ戦いに赴くとなるとこうも凛としてしまう。その眼差しは真っ直ぐに透き通り、今夜の決戦に向けられていた。

「士郎」

「なんだ?」

「また後でな」

「ああ」

 セイバーに手を振り、家を出た。セイバーの影響か、士郎も心の高ぶりを感じながら学校へと歩き出した。

 

 

 校門前につくと、大勢の生徒が登校してくるところだった。登校時間の30分前、やはりみんなこのあたりに集中してくるのだ。

 人の波の一部となり教室に歩いていると、流れに逆らってくる者がいた。彼女が歩いている周囲だけ波も遠慮するように揺らぎ、彼女がただ者でないことを示す。

「おはよう、衛宮くん」

「遠坂、今日は早いんだな」

「ええ、だから衛宮くんを待ってたのよ」

 その一言でよりいっそう波がざわめく。彼女は遠坂凛、秀才かつ容姿端麗の、いわゆる学校のアイドル的存在であった。その彼女が『待っていた』などと言ったのだから周りが驚くのも無理はない。

「それは悪かったな」

「気にしないでいいのよ」

 そして二人は教室に仲睦まじく歩みだした。

 

 

 階段下を歩いていると、凛が口を開いた。

「お昼に屋上に来てくれる?確認しておきたいこともあるし」

「ああ、わかった」

 もちろん朝からその事を意識してはいたが、いざ言葉として聞かされると少しこわばるようだ。

 今までは戦いに巻き込まれていただけであったが、今回はこちらが巻き込む側だ。突然驚かされるのとわかっていて驚かされるのだと後者のほうがその衝撃が大きいことがある。それと同じようなことだ。

 

 

 その日の授業をこなし、昼休みに屋上に向かうとすでに遠坂凜はそこにいた。

「やっと来たのね」

 昼休みのチャイムが鳴ってから5分と経っていないのだが。

「待たせちまったか、遠坂」

 二人はフェンスによりかかるようにして座ると今夜の確認を始めた。

「いい?衛宮君、柳洞寺はサーヴァントは山門からしか入れないようになっているから、衛宮君とセイバー、それから私とアーチャーの四人で一斉に乗り込むわ。セイバーの宝具に封印の剣と呼ばれるものがあったわよね。対魔術のあの剣を使ってキャスターを討伐してほしいの。マスターは私たちで対処するわ」

「ああ、わかってる」

 昨日話した通りだ。

「何か質問はあるかしら?」

「大丈夫だ」

「それじゃあ」

 遠坂は立ち上がり、士郎を見下ろした。

「また放課後にね、衛宮君」

「ああ」

 そこで遠坂と士郎は別れた。

 

 

 士郎が午後の授業もこなして帰路に着こうとしていると、部活に向かうのだろうか、桜が目の前を通りかかった。

「桜」

 呼び掛けて振り向いたその少女はやはり桜であった。優しい微笑みをこちらに向けている。

「あ、先輩。今帰りですか?」

「ああ、桜はこれから部活か?」

「はい」

 彼女と話すとやっぱり落ち着く。自分が日常にいるように思えるからだ。彼女が戦争に巻き込まれたかもしれないと思ったこともあったが、それも杞憂であったわけで、士郎は穏やかな気持ちになった。

「ところで桜、慎二はどうしてるんだ?最近見ない気がするんだけど」

「ッ...兄さんですか?最近体調が悪いみたいで休んでるんです」

「慎二が?明日にでもお見舞いにいこうかな」

「だ、大丈夫です!大丈夫ですから!兄さんも少し大袈裟にしてるだけなんですよ、本当に大丈夫です」

「そう、かな。大袈裟にね、まあ慎二らしいか」

「はい...」

 そう言って桜が軽くうつむく。二人の間に流れる沈黙。それを破ったのは桜であった。

「それじゃあ先輩。私部活に行きますので」

「ん、ああ。頑張れよ桜」

「はいっ」

 部室まで駆けていく桜を見送り、士郎も歩き出した。

 約束の時間は7時、家に帰って着替えたら頃合いだろう。

 

 

「準備はいいかしら?」

 そう言って他の三人に目を向けるのは遠坂凛だ。

「いつでもいけるぞ」

「俺も大丈夫だ」

 時刻は7時を3分ほど過ぎた頃、四人は柳洞寺の境内の階段を下りたところで立っていた。

「行くわよ!」

 一斉に駆け出し、境内を登っていく。目指すはキャスターだ。

 あと少しというところでアーチャーが足を止めた。

「どうしたのアーチャー」

「...」

 無言で両手に短剣を顕現させる。

 険しい目付きの先に広がるのは闇、明るければ寺の入り口が見えるであろう方向だ。

三十六煩悩鳳(36ポンドほう)

 アーチャーが剣を前に構えたと同時に爆風が吹き荒れた。

 士郎と凛が必死に階段に踏みとどまる。

 立ちこめる煙の中から、声のしたほうにアーチャーが矢を放つ。同じく爆風が巻き起こったが、あまり手応えはない。

 やがて煙が晴れると、アーチャーの凝視していた闇から、低い男の声が漏れてきた。

「ほう、テメェ弓使いか」

「そういう君は...わからないな。何者だ?」

「そいつはテメェで確かめな、弓使い」

 闇と会話をするアーチャーを傍らに、凛が士郎とセイバーに話しかける。

「さっきの一撃、魔力を感じなかったわ」

「どういうことだ?遠坂」

「つまり、奴は魔術師じゃないってことか」

「そうよ、セイバー。確定した訳じゃないけど、まぁまずキャスターじゃないと思うわ」

「新手の敵ってことか」

「そういうことね、恐らくアサシン。キャスターと手を組んだってところかしら」

 今だ姿の見えない敵に士郎が目を向ける。暗闇に紛れるその者はやはりアサシンなのだろうか。

「仕方ない、ここは私達が受け持つわ。衛宮くんたちはこのまま柳洞寺に入ってキャスターを倒してくれるかしら」

「わかった」

「そうと決まったら...」

 3人が立ち上がりアーチャーの脇に立った。

「四人か...さすがに分が悪いか?」

「安心しなさいアサシン。あなたの相手をするのは...」

 そう言って凛が投擲の態勢をとる。

「私とアーチャーよ!!」

 凛の手から放たれた無数の宝石は的確にアサシンの頭上まで飛んでいった。

「くらえぇ!!」

 ピカッと光ったと思えば、それは甲高い音を放ちつつ爆発した。あたりには砂煙がたちこみ、強烈な音が鳴り響く。つまり視覚と聴覚を潰す目眩ましのようなものだ。

音速の剣(シルファリオン)!」

 風のようにセイバーと士郎が駆け抜けた。

 二人は山門を抜け、キャスターのいる場所をめざす。

「山門を守るのが俺の仕事だったんだけどな」

「君は今二人を見逃したのか?」

「どうだかな」

 アサシンがクククッと笑う。

 素人が見れば二人の間に流れる空気に気づかないだろう。しかし凛は感じ取っていた。今にも獲って喰わんとするその静かな殺気を全身をもって感じていた。

 まさに瞬きの瞬間、凛のすぐ目の前までアサシンが迫っていた。

 アサシンが持つのは一振の柄の白い刀。それを左腰の鞘から引き抜き、アーチャーに斬りかかる。

 しかしいつの間に顕現させたのか、アーチャーも両手の短剣でそれに応じる。

 一瞬の間もなく響く鉄の音、数秒の間で数十にも及ぶ剣撃を前に、凛は策を練っていた。




こんな具合です。日曜には12話も投稿します。
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