Fate / Hybrid Stories 作:さんくてるるるく
プリヤも始まって、書きたくて仕方なかったので出しました。
急いで書いたせいで変なところがあるかもしれません(オイ。
昼下がりの、陽も落ちようとしていたころ、士郎が傍らに立っていた。
「そろそろ寒くなってくるぞ。部屋に上がったほうがいいんじゃないか?」
「わかってるわ」
まだはっきりしない意識のまま返事をし、眼をこすりつつ体を起こす。もう半分しか見えていない太陽は、凛と士郎の座る縁側を赤く染めていた。
「隣、座ってもいいか?」
「...どうぞ」
お言葉に甘えて、と言って士郎が横に腰を下ろす。
「夕日がきれいだな」
「そうね」
まだ疲れがたまっているからか、それとも気持ちの問題か、凛は士郎に適当な相槌を返した。
柳桐寺での戦闘から帰ってのち、こらえきれずに寝てしまいはしたが、凛は縁側でアーチャーを待ち続けていた。そういえば彼も赤い装束を着ていた。陽に赤く染め上げられた世界のなかにアーチャーを探す。もしかしたら見落としているのかもしれない。
「まったく、いくら君が普通より頑丈だからといっても、いつまでもそんなところで寝ていては風邪をひくぞ、凛」
(みたいなこと言ってくるかしら、アイツ)
もちろんそこにアーチャーはいない。ただ静かに風がそよいでいるのみだ。
「あ、あのさ遠さ...」
「こんなことしてても仕方ないわよね」
そう言って凛が立ち上がる。
「遠坂?」
「出かけましょ、衛宮くん。アイツなら待ってなくたって『やれやれ』なんて言いながら肩をすくめて見せるくらいよ」
急に元気になった凛を目を丸くして見上げる士郎。いや、気丈にふるまっているだけか、もしくは割り切ったのだろうか。
「出かけるってどこにさ?」
士郎が尋ねると凛はニッと笑った。
「アインツベルン城」
「...え?」
時刻は11時を過ぎようとしている頃だ。黒く深い森、まだ冬というわけでもないのに冷気が立ち込めている。辺りは霧で覆われており、少し先も見えない。そのなかを士郎、凛、セイバーの三人は枝をかき分け城に向かって歩みを進めていく。
「突然どうしたんだよ、遠坂」
足元に注意しながら進んでいく。
「...アーチャーとアサシンが戦ったとき、単純な戦闘力ならアサシンのほうが強かった。そのせいでアーチャーは負けたわ。だから私は令呪を使って二人のところに向かったの」
凛の手の甲の令呪はすでに二画が消え、残りは一画になっていた。
「そしたら衛宮くん達も追いつめられていた」
霧で凛の顔は見えない。
「ううん違うの、衛宮くん達やアーチャーが悪いって言ってるんじゃない。敵の戦力の把握が足りなかったのが問題だった」
「遠坂...」
まだ遠いのだろうか。代わり映えのしない森の中を、霧を分けて進んでいく。
「でも、だからってあの子に戦いを挑むなんて無理じゃないか?アーチャーも今いないのに」
「あたりまえじゃない、今の私たちじゃ勝てないわ。もちろんアーチャーがいたとしてもかなり難しいと思うけどね」
「じゃあなんで...」
「同盟を組みに行くわ」
「!!」
「あのアインツベルンは生意気だけど、話すくらいならできそうだったからね」
驚いた拍子に足を踏み外し、士郎がこけかける。
「は、話すくらいならって...会った瞬間俺たちのこと殺そうとしてこなかったか?」
「大丈夫よ、正面から会いに来た相手を無下に扱うようなことはしないわ。アインツベルンのプライドがそんなこと許さない」
「まぁ、遠坂がそういうなら」
「ふぅーん、言ってくれるわねぇ、凛も」
アインツベルン城の一室、凛たちの様子が映し出された水晶を見ながら少女が呟く。
「どう、する?」
「即刻排除いたしましょう、お嬢様」
少女の背後には二人、女性が立っている。彼女らはリズとセラ、少女専属のメイドである。
「待ちなさい、セラ。凛の言ったこと聞いたでしょう?私たちが見てることに気付いてるうえで言ってるのよ。ここで手を出そうものならアインツベルンの名折れだわ」
「...わかりました」
はぁ、とため息吐きつつセラが承諾する。
「イリヤお嬢様」
「キャア!!」
バチッという音とともに凛が弾き飛ばされ木に激突する。
「ッいったあ...うぅ」
かすかに焦げたような臭いにおいがする。
「大丈夫か!?遠坂」
突然だった。先導して歩いていた凛が、何もない壁ぶつかったように跳ね飛ばされたのだ。
「くぅ、アインツベルンのトラップね。まったく、あるならあるって言いなさいよもう!」
「...それは無茶だと思うぞ、遠坂」
この様子なら大丈夫だろう、苦笑いをしながら士郎が凛を見下ろす。
『クスクスクス、凛ったら無様ね。少しは淑女らしくできないの?』
どこからともなく声が響く。霧で辺りは見えないがその中に隠れているというわけでもあるまい。おそらくどこかから魔術で音声を転送しているのだろう。
「ふん、こそこそ隠れてトラップでお出迎え?それがアインツベルン流の挨拶なのかしら?」
『勝手に庭に入り込んでくる人を客とは言わないと思うけど?』
「庭も何も入り口がないじゃない!」
『いいわ、屋敷に迎えてあげる』
「!」
願ってもない。凛はムスッとしているが、士郎とセイバーは少し安堵した。
『ただしお兄ちゃんだけ』
一瞬空気が張り詰める。身にまとわりつく冷気のせいか、いや、それ以上に、心臓がつかまれたかのような感覚。後ろから背中を貫かれたような感覚。
ハッとして三人が後ろを振り向くと、そこには全身から黒いオーラを放つ鎧騎士が立っていた。
『つれてきて、バーサーカー』
バーサーカーが剣を振り上げセイバーに迫る。そう見えたのは一瞬で、凛と士郎が振り向いたときには、振り下ろされた剣によってセイバーははるか霧の奥まで弾き飛ばされていた。
「なっ!?」
「グオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
「逃げて!衛宮くん!!」
無数のルビーが空に舞い、バーサーカーの頭上を覆う。
「くらぇえ!!」
それぞれが強い光を放ち割れるような音ともにバーサーカーにまとわりつき、地面に押さえつけた。
「!?ッグゥゥゥウウウウ」
「遠坂!?」
「早くしなさい!狙いはアナタなのよ!!」
「グゥ...ォォォオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
5秒と持たなかった。バーサーカーにはこの程度足止めにもならないのだ。
「え...」
「衛宮くん!!」
凛が手を伸ばす。しかしそれは空を切り、目を閉じまた目を開くころには見えなくなっていた。
「こんっのぉ...」
(無力だ、アーチャーがいない私は)
地面にへたり込み、土を握り締める。
「大丈夫か?凛」
セイバーが凛の肩に手を置く。
「セイバーこそ、大丈夫なの?」
吹き飛ばされたセイバーが戻ってきた。伝承の力により無傷だ。
「ああ、でも悪い。俺が油断してたから」
「ううん、どちらにしてもセイバー一人じゃバーサーカーは抑えられなかった」
「悔しいけどそうだろうな」
二人とも黙り込む。しかし考える余地もない。やるべきことは一つだ。
「俺は士郎のサーヴァントだ。助けに行くよ」
「アインツベルンに同盟を申込みに行くのは絶望的だけど、行くしかないわよね。これは私のせいだし」
バーサーカーの駆け抜けた跡が残る、なぎ倒された木々を抜けて城に歩き出した。
(ここは...?)
洋室だろうか、石造りの部屋に絨毯が敷かれている。ほかにはベッドだろうか、カーテンが付いている。そのほかにも姿鏡、シャンデリア、クローゼット等ここに住む者が上流階級であることを示していた。
(あれは...くま?)
椅子に腰かけている大きなぬいぐるみを見ていると、視界に少女が映り込んできた。
「お兄ちゃん起きた?」
(誰だ...?)
雪のように白い髪を揺らし、微笑んでいる。
「うーん、まだ意識がはっきりしてないみたいだね。ちょっと強くかけすぎたかしら」
そう言うと少女は視界から消え、部屋から出ていった。
(頭が...痛い)
階段を降りつつイリヤがセラとリズに訊ねる。
「セラ、あの二人はどう?」
「あの少年をお迎えしてから六時間ほど、いまだ森の中ですが、着実にこちらに向かっています」
「黒髪、意外と強い、迷いが、ない」
「随分時間がかかってはいるけど、あの森の結界を抜けられるくらいの力はあったのね、ちょっと過小評価してたみたい」
楽しそうにイリヤが笑う。
「いいわ、凛も客人として迎えてあげる。正面から会いに来た以上、最低限の礼儀として手を出さずに返すつもりだったけどね、これはこれで面白そうだもの」
城の正面の扉に立った。
「危険です!あの魔術師はともかく、最優のサーヴァントであるセイバーもいるのですよ?」
「大丈夫よ、あの程度のサーヴァント、バーサーカーの敵じゃないわ。アーサー王とかみたいな有名な英雄ならともかく、あの程度のマイナーなサーヴァントは障害にならないわ」
重々しい音とともに扉が開き、森に道が開かれる。そしてそれとともに朝日が入り込んできた。
「まったくお嬢様は...」
「ん?」
「道が、開いたな」
霧が晴れ、木々の間に道が見える。凛は少し仮眠をとっていたが、霧が晴れたことより射してきた陽の光に目を覚ました。
「来いってことか?」
「だったら襲ったりしないで最初から案内しなさいよ」
悪態をつきつつ、その道を進みだした。
はい、ありがとうございます。
次話はまたすぐに投稿します。物語も動き始めてくるので、クライマックスではないですが、そろそろいろんな伏線ばらまいたり回収したりしてきます、たぶん笑
お楽しみください~