Fate / Hybrid Stories   作:さんくてるるるく

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2話です。一夜で3話連続投稿しましたが、これからゆっくりになります、多分

場面はかわり、間桐家の屋敷でスタート。


2話 槍使いの少年

 暗闇の中を駆け抜ける。すでに2時間以上は駆け回っているだろうか。しかしそれでも息を乱さずにいられるのは、さすが英雄といったところか。

 背中に、紫の美しく長い髪をした少女を背負い闇を駆けるその少年は英霊、ライダーであった。

 獣のごとき俊敏さをもって風を切っていく。さて、なぜ彼がこのような行動に至ったかというと、それは数日前に遡る...

 

 

 薄暗い部屋、桜は一人立っていた。いや、正確には二人と言うべきだろうか。間桐臓硯もその場にいたのだ。しかし人として数えるべきか、まあ定義についてはまたの機会にしよう。

「素に銀と鉄...」

 桜が詠唱を開始する。

  「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 徐々に辺りが鈍く光を帯始める。

「―――――Anfang」

 触媒となるは一筋の槍。

「――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 間桐臓硯の口のはしが醜く歪む。

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」

 部屋全体が魔力に包まれる。

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 暗い部屋が光で満たされ、強烈な風が吹き抜ける。

 桜が光の隙間から目にした英霊。ソレは短い黒髪に白い装束、触媒であった槍携えた少年であった。

 特に感情も揺れ動かない。桜がただ立ち尽くしていると、臓硯が笑みを浮かべ彼に話かけた。

「よくぞこのような小汚ない屋敷に来てくださった。早速ではあるが、クラスと真名を何ですかな?」

「俺はライダーのサーヴァント」

 ライダーが臓硯に目を向ける。

「名は...蒼月(ツァンユエ)

 それを聞いて臓硯は満足したように笑いだす。

「カッカッカ、桜よ、よくやったのう」

 臓硯はぼうっと光る目を桜に向けた。

 

 

 ライダーは気づいていた。この間桐家、とりわけ臓硯がとんでもない悪だということを。

 ライダーの持つ槍は言わば破魔の槍で、魔なるものと悪意を持つものに敏感に反応する。臓硯に対面したその瞬間から、槍は反応し小さく身を震わせていた。

(でも、桜ねえちゃんは...)

 しかし桜が何か不満がっている様子もなかったので、ひとまず臓硯のことは様子見しておくことにしたのだ。

「おはよう、マスター」

「...おはよう」

 いつも通りの挨拶。少し暗いように見えるがそういう性格なのだろう。これから魔術の鍛練らしい。今日は桜の鍛練についていってみることにした。辛い鍛練だとは臓硯から聞いているが、如何程のものか。魔術の知識など無いに等しかったランサーは、ラインを通じて辛さがなんとなく分かっていたが、見てもしょうがないと思ってこれまでついていくことはなかった。しかし一度は見ておくべきかも知れないという考えに至ったのだ。

(随分暗いとこ降りてくんだな)

 蟲蔵へと続く石階段、下っていくライダーは徐々に嫌悪感にまみれていった。

(なんだよ、これ)

 そしてその光景を目の当たりにしたとき、なんとも言えない怖気がライダーの全身を駆け巡った。

 蟲、蟲、蟲。地下いっぱいに埋め尽くされた蟲達。そしてそれぞれが男性器などの形をしており、醜悪なことこの上ない。

 そしてそのなかに彼の主が沈んでいく。

「桜ねえちゃん!...ッ!!」

 ラインを通じて伝わってくる辛さ。当の本人はすでに慣れてしまっているのか、平然とした表情をしている。

(これが、魔術の世界では普通なのか...?これが...)

 しかし魔術を知らないライダーには判別が出来なかった。彼に出来るのはただ、己がマスターを見守ることのみであった。

 

 

 ある日の朝、感情などないと思われたマスターの顔に暖かさが見えた。今までになかったことだ。その天真爛漫な姿に思わずライダーは見惚れた。そして、無意識のうちに彼女に尋ねていた。

「マスター、今日何か良いことでもあるのか?」

 また少し明るさが増したようだ。軽く微笑んだように桜は答えた。

「ええ、今日は先輩の家に行くの」

「それは、学校の先輩ってこと?」

「そう、すごく...一生懸命な人」

「そっか、マスター、いってらっしゃい!」

 桜は意気揚々と家をでた。その背中を見送りながらランサーは一つ悩み始めていた。

 

 

 ある時ライダーは、この屋敷や臓硯だけでなく桜も悪に侵されていることに気づいた。それも生半可なものではなく、壊され方で言えば臓硯よりもひどいかもしれない。

「ただいま戻りました」

 桜が帰ってきたようだ。しかし少し浮かない声色をしていた。何かあったのだろうか。

「あの、お爺様。私」

 居間に行くと臓硯と桜が机を挟んで座っていた。

「聖杯戦争に出たくないんです」

「なに?」

 衝撃の一言。ライダーは自分の耳を疑った。

「先輩が...先輩と戦いたく...ないんです」

「...あの衛宮の小僧か、ふむ」

 しばらくライダーの思考が混乱し、そして先日からの悩みに一つの答えが出た。

「マスターの権限を慎二に譲る、というのは構わん。がしかし桜よ、この聖杯戦争から身を引くというのは認められんのう」

 断られると思っていたのだろう、少し驚きつつも安堵する桜。

「ありがとうございます...おじいさ...ッ!!!!」

 なにが起こったのか、全身の神経に刺すような痛みが走り意識が飛びそうになる。朦朧とする意識のなかで、自分を貫くライダーが見えた。

「ライ...ダー...?」

「貴様、何のつもりだ」

 次の瞬間、臓硯の体が細切れに砕け散り蒸発した。

 ライダーの持つ破魔の槍は突いた対象が魔のものであらば、それを即座に消滅させる。

「この屋敷も、もういらないよな!」

 そうして家中を駆け回り、槍であらゆるものを破壊した。大方終わり桜のもとへ戻ってくる頃には屋敷はほぼ廃墟のような様子であった。

 そしてライダーの姿は短い黒髪から腰まで伸びる長髪へと変わっていた。 槍の副作用というべきか、使用時には使い手はその身を獣へと近づけてしまうのだ。それが彼の場合は髪の毛に表れるのである。

「さて、ここから逃げないとな」

 

 

 冬木の街を駆け抜けること3時間。ようやく落ち着ける場所を見つけた。

 大きな川沿いに隠れるのにうってつけの大穴を見つけたのだ。下水道だろうか?よくはライダーにもわからないが、ここなら聖杯戦争中桜を守り抜くことができそうだ。

「...」

 目を覚まさない桜。破魔の槍は特性上、人を傷つけることはなく体をすり抜ける。故に桜の体の蟲共を一掃することができたのだが、それしか方法がなかったとはいえ、桜の身に巣くい一体化していた蟲を一度に消滅させたのは少々手荒であったか。しかしいつ令呪をもって枷をはめられるかわかったものではなかったのだ。仕方ないだろう。

「...でも、どうしたものかな」

 桜の心臓と一体化している巨大な悪は、この槍をもってしても破壊することは出来ない。宝具なら恐らく出来るだろうが、今度は桜の体を破壊することになるだろう。

 寝息をたてる彼女を横目に見て、あまりの綺麗さにまたしても見惚れてしまう。そんな自分に気づき赤面する。彼は年で言えば中学生程度。複雑な年頃ゆえ仕方ないことであった。

「き、今日は星がキレーだなー、あはは、あは」

 シンと静まった空気がよりいっそうライダーの気まずさに追い討ちを駆ける。そしてチラッと桜のほうを見てまた赤面する。

「あー!何してんだ俺は!集中しろ!戦争に!そうだ、俺は聖杯戦争の参加者だ!敵をさがしにいかなくちゃ!」

 ライダーは言い訳ぎみに街に飛び出していった。

 

 

「ちくしょー、ついてねえぜ」

 赤毛の少女は悪態をつきながら夜の街を歩いていた。

「あともう少しだってーのに」

 怒りの腹いせに電柱を殴りつけヒビを入れた。つまり彼女も英霊なのだ。

 セイバーと一戦交えた帰りであった。

「ついてねーよなー、そもそもあんな変態神父にあたっちまう時点でついてねーんだよな、ッくそ」

 収まる様子もない怒り。しかし彼女の怒りの矛先を向けるにふさわしい者が彼女に近づきつつあった。

「!この道の先か」

 彼女は槍を構えた。

 

 

 飛び出してきてしまったライダーは何気なしに街を散歩していた。元々あまり戦うことが好きではない彼は、あんなことを言い訳にして出てきたがそんな気はあまりなかった。しかし、彼がいかに非好戦的であろうと歩いていれば敵に遭遇してしまうだろうに。とどのつまり彼は間抜けなのである。

「っくしゅん!誰か俺の悪口でも言ってるのかな」

 英霊もくしゃみぐらいするようだ。

(桜ねえちゃん大丈夫かな...)

 桜を心配するライダー。しかしやはりそれは思春期らしく妙な方向へ変換されていく。

「あー!もうなんだってんだ俺は!集中だ集中!ふんぬぬぬぬぬ」

 赤面と合わせて、顔を真っ赤にして眉間に意識を集中させるライダー。

 そんな一部始終を端から見ている者がいた。

「なにやってんだ、アイツ」

 気が抜けたのか、両手に込めた力を抜き、その者はライダーに近づく。

「おい!テメェ、サーヴァントだろ。こんなとこでなにやってんだ?」

 ライダーもやっと存在に気づいて振り向く。そこに立っていたのは赤毛の少女、ランサーだった。

「サーヴァント...てことはお前も!」

 今にも槍を振り回しそうなライダーにランサーが両手を挙げて制する

「待てよ、別にやりあおうってわけじゃないさ。アンタの様子見てたらそんな気も削がれちまったよ」

 ランサーが苦笑する。

「アタシはランサーのサーヴァント。槍を持ってるってことは、セイバーもアーチャーもすでに会ってるしな、アサシン?いやライダーか」

「う、うん。俺はライダーだけど、ねえちゃん、戦わないのか?」

「ハッその気が起きねーだけさ。どーしてもってんなら殺ってもいいけどさ...」

 そう言ってランサーは槍を持つ手に力を込める。

「いや、いいよ!戦わない!」

(変なやつだな...)

 ふっと息を吐き、ライダーに微笑みかけた。そこにはサーヴァント同士の争い事などなかったかのような暖かさがあった。そしてランサーは懐をあさり、何かを取り出した。

「この時代の菓子はホントにウマイよな。ポッキー?とか言うんだってさ」

 少し困惑した表情のライダーにランサーがそのお菓子を差し出す。

「食うかい?」

「も、もらうよ」

 ライダーはそれをポリポリとかじりだし、ランサーにお礼を言った。

「ありふぁとな」

「ああ。それじゃまた会おうぜ」

 赤い服を翻し、もとの道を歩きだす。

「次は容赦しねーぞ」

 そうしてランサーは夜の街にまた姿を消した。

 

 

 ライダーが帰ったとき、桜はすでに目を覚ましていた。しかしまだ体は痺れが抜けないようでライダーに支えられて座った姿勢のまま動けずにいた。

「あな...たは...わた...し...を...どうす...る...つも...り?」

 少しバツが悪そうな顔でライダーは説明する。

「俺はあの爺さんがマスターを苦しめてるって思ったんだ。それで、助けるにはこうするしかないと思って...」

「...」

 桜は何も答えない。

(余計なお世話)

 もちろん臓硯からの責苦は嫌だったがそれでも士郎には会えた。むしろこうなることで士郎と会いにくくなってしまったことでライダーを恨んだ。

 しかしどうしても恨みきれないのは、ライダーと士郎が少し重なって見えるからだろうか。彼のひた向きさ、純真さ、優しさは士郎のソレと同じではないまでも近いものがあった。

 だからだろうか。

「...そう」

 桜は少し彼に頼ってみようかと思ってしまった。




槍使いの少年
クラス:ライダー
マスター:間桐桜
真名:蒼月(ツァンユエ)
宝具:不明


はい、夏にはアニメもやりますね。
個人的にすごく楽しみです。ランサーだろ、て人もいるとは思いますが、2匹で1匹と遠野の長も仰られていたのでライダーになりました。

お気づきかも知れませんが、少しマイナーな路線で色々な引用をするつもりです。
ていうか私の年齢がバレそうな人選かも(^^;

次は一週間以内には投稿する予定です。
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