Fate / Hybrid Stories   作:さんくてるるるく

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はい、7話目です。
休みを挟んでリフレッシュ!かと思いきやなにやら不穏なくうきが漂い始めます。


6話 間桐桜の喪失

 月曜の朝、けたたましい目覚ましの音とともに士郎は目を覚ました。

「5時半...か」

 

 

 お弁当の用意。唐揚げに卵焼き、その下にレタスをしいて、あとは適当にすき間を埋めれば完成だ。やはり疲れが残っているのだろう。こった料理をする気は起こらない。

(まあたまにはいいだろ)

 それから朝御飯の支度をする。今日は魚の干物に味噌汁にほうれん草のゴマ和えその他。やはりこちらも簡単なものになってしまった。

(藤ねえ怒るかな)

 少し心配であったがそれは杞憂だったようだ。

『んん~~まぃ!!』と騒がしく料理をほおばり、嵐のように出勤していった。

「行ってくるわね、士郎」

「行ってらっしゃい、藤村先生」

 藤村を送り出すとセイバーが起きてきた。

「ふぁ~あ、おはよう士郎」

「ああ、おはよう」

 銀髪なのを除けば、上下スウェットで欠伸をしているその姿は現代人そのものだ。

「もう行くのか?」

「ああ、そろそろ行かないと遅刻するからな」

「そっか」

 セイバーが真剣な表情になる。

「何かあったときは令呪で呼んでくれよ」

「ああ、わかってる」

 令呪を使えばマスターは三回サーヴァントに強制的に命令できる。『助けに来い』と命じればサーヴァントが何処にいようと一瞬で駆けつけることもできる便利アイテムなのだ。

「じゃあ行ってくるよ」

「ああ、気をつけてな」

 士郎は屋敷をあとにした。

 

 

「おはよう、衛宮」

「おはよう、一成」

 教室の席につくと一成が朝の挨拶をしてきた。

 一成は士郎の心のおける友人の一人だ。しっかりした性格をしていて、それはおそらく彼の家に関係しているのだろう。彼の家は柳洞寺といって、それなりに大きな寺なのだ。

「ふむ、衛宮。放課後は暇か?少し頼みたいことがあるのだが」

 この話し方もおそらくその影響なのだろう...。

「わるい、今日は予定がある」

「なんと、それは仕方ないな。了解した、衛宮。また後日頼むことにしよう」

「悪いな」

「気にするな」

 いつ聖杯戦争で忙しくなるかわからない。しばらくは一成の頼みには応えられそうになかった。

 二人で朝礼前の談笑をしていると、唐突に二人の上にかげがふりかかった。

 なんだろうか、と顔をあげてみるとそこには笑顔のツインテール少女が立っていた。

「なっ遠坂!?キサマ何のようだ!?」

「二人ともおはよう。突然で悪いけど衛宮くん借りてくわね」

 有無を言わさず引きずられる士郎に一成が困惑の目を向ける。

「衛宮...?その女狐といったい...?衛宮まってくれ、衛宮、衛宮ぁぁぁああああ!!」

 かなしきかな、彼の声はツインテールの耳には届かない。無常にも士郎は廊下の向こうへと消えていってしまった。

 

 

「突然ごめんなさいね、衛宮くん。ちょっと言っておかなきゃいけないことがあるの」

「聖杯戦争のことだろ、むしろ感謝してるよ」

「ランサーとバーサーカーには会ってる上に真名までわかってるわ」

 けどね、と少し不安げな表情になる。

「まだほかのサーヴァントの情報がまったくないのよ」

「でも聖杯戦争は始まったばかりなんだろ?」

「ええ、だから普通だったら問題はないわ」

「普通...じゃないって言うのか?」

 もちろん聖杯戦争自体が異常なことだ。しかし凛のいう異常とはそういうことではない。それは士郎にもなんとなくわかった。

「士郎くん、今日桜...間桐桜にあったかしら?」

 そういえば今日は会っていない。桜にも忙しいときがあるのだろう、と特に気にしていなかったが。

「桜が...どうかしたのか?」

「いなくなってるのよ、サークルにも来てなかったらしいし」

「えっ...」

「あの子だけじゃないわ。ほかにも何人かいなくなってる」

 その話は士郎も少し聞いていた。学校の生徒が何人か行方不明になっているとか。気にしてはいたが、やはり自分の知っている人物がそうなるとショックを隠せない。

「そん...な。まさか、聖杯戦争の...」

「ほぼ確定的だと思うわ。街のところどころに魔力の痕跡が残ってる」

 心臓が高鳴る。

「他のサーヴァントのことがわからない以上できることは少ないわ。学校内にいるとは思えないけど...でも少し敵のことを意識しておいてほしいの。それが伝えたかったことよ」

「わ、わかった」

「放課後、屋上に来てくれる?」

「...」

 授業が始まるから、と言って去っていく凛のことはすでに士郎の意識になかった。

 桜が聖杯戦争に巻き込まれているかもしれない。それも最悪の形で。

「じっと...してられるわけないじゃないか!」

 士郎は学校を飛び出した。

 

 

 あてもなく走り回ってみるが痕跡すらつかめない。

 最後にあったのは金曜日だったか。それから今日をいれて三日、いついなくなったのかもわからない。途中で立ち止まったりしながら、士郎の捜索は夜まで続いた。

「くそっこれじゃらちが明かない」

 道行く人にも聞いてみたがまったく手がかりはつかめなかった。

 夜の7時ごろ、セイバーも心配しているかもしれない。疲れとともに少し落ち着いてきた頭でそんなことを考えながら、休息をとるために公園に入る。

(夜の公園て不気味だよな)

 ベンチに腰掛けようと思い、公園を見渡す。するとベンチに誰か座っているように見えた。

(こんな時間に何してるんだ?)

 小さな街灯に照らされたベンチに座っていたのは中学生ぐらいの少年であった。

「こんな時間に出歩いてると危ないぞ?」

 少年も士郎に気付いたようだ。

「兄ちゃん、誰だ?」

 いぶかしげに士郎を見つめる少年。その瞳はどこか苦しげで、余裕のないように見えた。

「俺は衛宮士郎だ。このあたりの高校に通ってる」

「衛宮...」

 士郎の名を復唱しつつ少し悩んだような表情をした後、少年は目を見開いて身を乗り出した。

「衛宮士郎!?兄ちゃん衛宮士郎っていうのか!?」

「あ、ああ。どこかで会ったことあったかな...?」

「兄ちゃんが...桜姉ちゃんの...」

 こんどは士郎が驚いた。少年は間桐桜の名を口にしたのだ。

「桜を、桜を知ってるのか!!」

「...やっぱり兄ちゃんがあの衛宮士郎なんだな」

「頼む、教えてくれ。桜はどこにいるんだ」

「それは...」

「頼む!!」

 少年は困った顔をした。

「うん、兄ちゃんになら話してもいいかな」

 それを聞いて全身の力が抜ける。さっきまで気を張りっぱなしだったのだ。やっと手がかりをつかんだ。いや、もしかするともうゴールは目の前にあるのかもしれない。

「けど今は教えられないから、また明日の夜ここにきてくれ。安心してよ、桜姉ちゃんは安全なところにいるから」

「教えられないって、どうしてさ!」

「それは...」

 唐突に地面が爆発した。土が巻き上がり、士郎は対応できずにしりもちをつく。

「こういうことだ」

 爆発したのではない。何本もの魔力の込められた矢が少年の立っていた場所に着弾したのだ。

「お、おい!大丈夫か!」

 あんな子供があれほどの衝撃に耐えられるはずがない。士郎は土煙の中を手探りで少年を探した。

 しかし突然の衝撃に吹き飛ばされる。腹部に鋭い痛みが走る。そして地面にたたきつけられ、士郎はひどくせき込んだ。

「下がっていろ、衛宮士郎」

 そこに立っていたのはアーチャーであった。赤い外套を身に纏い、両手には白と黒の短剣を携えている。

「貴様ランサーではないな、キャスターというわけでもあるまい。ライダーか」

 土煙がはれて、少年の姿が見える。

「ああ、俺はライダーのサーヴァントだ」

 どこから槍なんて出したのか。右手にそれを携えて、何事もなかったように少年は立っていた。さっきまで話していた少年はサーヴァントだったのだ。

「ふん、ならばやることは一つだ。君はここで退場しろ、ライダー」

「そういうわけにもいかねえよ」

 アーチャーとライダーがそれぞれ武器を構える。

 アーチャーが姿を消したと同時にライダーの背後に迫り短剣で切りかかる。それをライダーが躱し槍で弾く。粉々になる短剣、しかしアーチャーが再び切りかかるころには復元している。何度も復元する剣。しばらくそのような戦闘が続いたあと、ライダーが間合いを取るために離れた。

「25本、それだけ壊してもまだ復元するのか」

「...」

 静かなにらみ合い、この場にいるだけで失神してしまいそうなほどに張りつめている。

 そんな一瞬の勝負に士郎が割って入った。

「まってくれアーチャー!桜の手がかりをコイツが持ってるみたいなんだ」

「ふん、そんことは知ったことではない」

 アーチャーがライダーから視線を外さず、冷たく言い放つ。

「誰が死のうと関係ない。私は凛に聖杯を届けるそのために剣を持つ。よって今重要なのは」

 全身から溢れる殺気がその濃度を増す。

「コイツを倒せるか否かだ」

 それを聞いて落胆した表情を見せたのはライダーだ。

「もともと話す気なんかなかったけど、やっぱりお前には言えねえや」

「聞く気もないさ」

 そしてまた攻防が始まる。

 士郎にはどうしてもライダーが悪いサーヴァントには見えなかった。何とか止めなくては、それだけが士郎を突き動かした。

「セイバーーーーーーー!!!!!!」

「なにっ!?」

 光とともにセイバーは士郎のもとに現れた。そしてそのまま剣を抜き、アーチャーに構える。

真空の剣(メルフォース)

「くっ」

 突風が巻き起こりアーチャーを公園のそとにまで吹き飛ばす。

 第四の剣『真空の剣(メルフォース)』風圧で敵を飛ばしたり、動きを抑えたりする。直接的な攻撃能力はない。

「ありがとな、兄ちゃん」

 すぐにはアーチャーが戻ってこれないであろうことがわかったライダーは、士郎に礼を言い夜の闇に姿を消した。

「やはりここで消しておくべきか」

 士郎のすぐ背後に迫る声。アーチャーの刃が士郎を貫かんとしていた。

 一瞬士郎の息が止まる。そして凍り付いたようにアーチャーが静止した。

「俺がそんなこと許すわけないだろ」

「...」

 セイバーが剣をもってアーチャーの動きを止めていた。

 しばらく動かない三人。その止まった空気を動かしたのは。

「ちょっとあなたたち何やってるのよ。衛宮くん見つけたなら早いところ帰りましょ」

 凛であった。

 

 

 そのあと、ライダーとの戦闘についてのみ凛には説明したがそのほかのことには触れなかった。

『いいかしら?これから私との約束すっぽかしでもしたら衛宮くん許さないんだからね』とは彼女の談だ。

 なにはともあれ、桜の手がかりが得られたわけだ。これは十分な収穫と言っていいのではないだろうか。

(明日の夜か...)

 セイバーに一人で行きたいということを伝えると『危ないときは呼んでくれ』というのみだった。少々拍子抜けした感があるが、やはりセイバーの許しが得られたのは都合がよかった。

 しばらく凛からお説教をくらったあと、解散した。アーチャーはすでに殺気を放ってはいなかったが警戒していたほうがいいだろう。それはセイバーも同意見なようで、終始アーチャーから目を離すことはなかった。

 その日の夜、また士郎はセイバーの夢を見た。今度はエリーとの出会いの夢だった。

 

 

 

 

「ただいま、マスター」

 どこかに行こうという気はあまりないのだろうか。空虚な目をした桜がライダーを迎えた。

「今日はマスターの先輩?に会ったよ」

 それを聞いて桜の目が少し揺らぐ。

「まさか」

「衛宮士郎に...会ったんだ」

 桜がライダーに這いより、質問をまくし立てる。

「先輩は、先輩は元気にしてた?怪我はなかった?先輩は...」

「大丈夫だよ、元気そうだった。それと、すごくマスターを心配してた」

「先輩、うれしい」

 桜が幸せそうな顔をしてへたり込む。

「会いたい、先輩に会いたい」

 まだ会わせるわけにはいかない。さっきのアーチャーもそうだが、どこに危険があるかわからない。本当に任せられる人が見つかったなら、その時はライダーは自害して桜を一般人として預けるつもりであった。

「もう少しで会えるよ、マスター」

「本当に?」

「ああ、蟲爺さんも聖杯戦争もない。幸せになれるんだ。だからもう少し待ってて、マスター」

 かつての桜なら希望を持つこともなかっただろうが、間桐家が破壊されて臓硯がいない今、桜は少々楽観的になっていた。

 桜は来るべき未来に思いをはせながら、ゆっくりと眠りについた。




さてさて、それなりに物語も動き始めてきたと言っていいのではないでしょうか?
相変わらず低空飛行なこの作品ですが、なんとか面白いと思えるよう盛り上げたいと思います。(>□<)
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